◆米欧の対中制裁と中国の対抗 2021.3.28
米EU英カナダがウイグル問題で対中制裁を発動した。前週に米中外交協議で激しくやり合ったのに続く動きだ。米国を中心として西側の陣営と、中国(およびその陣営)の対立は、様々な外交戦を繰り返しながら深まっているように見える。
▼ウイグル問題で人権侵害を批判
ウイグル問題での制裁は、EU、英国、米国、カナダが22日に相次ぎ発表した。中国のウイグル人の扱いが、人権侵害に当たるという理由だ。
今年に入り、ウイグル問題は相次ぐ動きを見せた。
米国は1月に中国によるウイグル人弾圧がジェノサイドと認定。新疆ウイグル自治区で生産された綿製品の輸入を禁止した。
2月には中国が、ウイグル問題を報じた英BBCインターナショナルの放映を禁止。カナダやオランダの議会が、中国によるウイグルの扱いをジェノサイドとする決議をした。
そして今回の制裁だ。制裁の対象はウイグル問題の関係者など。実際の効力は限定的だ。それよりも、中国に対する「強い姿勢」を示す意味合いが大きい。
▼米中対立
米国はトランプ政権下で中国に対する強硬姿勢を強め、高率関税の導入やハイテクでの締め出しを図った。南シナ海問題で中国の主張を違法と断じるなど安全保障面でも対決姿勢を強めた。
2020年に中国が香港国家安全法を導入し、香港の直接統治を強めると、米港は「香港自治法」を採択。当局者への制裁などを実施した。
バイデン政権はトランプ政権時代と異なり、欧州など同盟国との協調を強調する。また、地球温暖化問題などでは中国に協力を呼びかけている。しかし、中国に対し強い姿勢で臨むことは変わらない。
今回の制裁で、米国および欧州同盟国と中国の緊張が一層高まった。
▼中国外相の中東訪問
一方中国は前週、王毅外相がトルコ、サウジアラビア、イランを訪問した。イランとは通商や安保協力で25年間の協定を結んだ。
イランも核問題などを巡り、米国との対決が続く。協定には、中国とイランが協力して、共に米国に対抗する姿勢を示す狙いがあるとみられる。
外相はトルコでは新型コロナのワクチン協力などを協議し、サウジとも経済などの協力を協議した。
▼マスク・ワクチン外交
中国は昨年以降、マスクやワクチン外交で東南アジアやアフリカとの関係強化に努めてきた。今回の中東外交も、この脈略で捉えるべきだろう。
中国はロシアとの関係強化にも余念がない。世界が米国を中心とした陣営と、中国を中心とした陣営に分かれいがみ合うーーこんな冷戦時代のような関係も、荒唐無稽ではない状況だ。
▼中国の存在感
一連の動きからは、中国の存在感の拡大も改めて感じる。そもそも米国がこれだけ対中警戒を強めるのは、中国の経済力、国際的影響力が急速に拡大しているからだ。
今回の中東外交も、中国の国際的な地位向上を感じさせる。王毅外相は楊チエチー中国共産党政治局員に次ぐ中国外交のナンバー2だが、25人いる政治局員でもなく中国内の序列は高くない。
しかし今回の訪問で、トルコではエルドアン大統領、サウジではムハンマド皇太子、イランではロウハニ大統領と、いずれも国のトップと会った。米国務長官級の扱いと言っていいだろう。
既存の外交秩序が変わっていることは、明らかに見て取れる。
◎ 中国をキーワードにして地球(よ)は回る
◎ 外相と元首の会談が大見出し
2021.3.28