カテゴリー「欧州・EU」の72件の記事

2019年11月10日 (日)

◆ベルリンの壁崩壊30年と世界 2019.11.10

 ベルリンの壁崩壊から9日で30年を経過。ベルリンで記念式典が開かれた。30年と言えば1世代。世界の変化を振り返るのに良い機会だ。

▼分裂していた世界の統合

 1989年の壁崩壊は冷戦を終了させ、旧ソ連陣営は崩壊。東欧はその後ヨーロッパに復帰した。世界的には東西2大陣営に分かれていた体制の垣根が崩れ、全世界が1つのシステム下の体制となり、グローバル化が加速した。

 壁崩壊当初は民主主義と自由主義経済が世界の基準として定着していくという楽観論が強かった。しかし、事態はそう単純ではなかった。

▼世界金融危機とテロ・紛争

 経済グローバル化は世界の成長を加速し、人々の生活を豊かにしていくと期待された。しかし実際には格差拡大などの問題が深刻化。2008年のリーマンショックとそれに続く世界金融危機は、資本主義体制の欠陥を表面化させた。冷戦時代の東西対立に代わって地域紛争が各地で発生。世界の安全保障を揺るがした。

 2001年の同時多発テロは世界がテロ戦争の時代にある事をあらわにした。その後中東や欧州などでテロが続発する状況が続く。

 中東は混乱が止まず、世界の火薬庫であり続ける。テロの発生源である状況も変わらない。2011年のアラブの春は、結果的に混乱の拡大を生み、シリアやイエメンなどでは内戦が止まらない。混乱は「イスラム国」のような時代の鬼子も生んだ。

▼民主主義の危機

 欧米では成長の恩恵から取り残された人々の増加を背景に、ポピュリズムや反移民・難民政党が勢い付いた。民主主義が揺らいでいる。米トランプ政権の誕生、英国のEU離脱(Brexit)の動き、欧州のポピュリズムや極右政党の台頭、トルコなど強権色の強い政権の誕生などは、同根を持つ。

 民主主義に対する挑戦は、米国流の「ワシントン・コンセンサス」に対する開発独裁的な「北京コンセンサス」の挑戦という形でも表れる。共産党1党独裁の中国は、過去30年間に年率10%近い驚異的な成長を続け、2010年からは世界第2位の経済大国になった。

▼IT革命の影響、踊り場のグローバル化

 これからの世界がどう進むかを予測するのは難しい。ただ、ヒントはいくつか考えられる。

 ネットを中心としてIT革命はこの30年間加速し、人々の生活や経済を決定的に変えた。この流れが止まることはないだろう。ただし、これからは巨大IT企業や国家による情報独占や、IT技術が人の体やあり方を変えるような、非連続的な変化も想定できる。

 グローバル化は踊り場に差し掛かった。それでも、モノやサービス、情報の流れが国境を超えて加速する潮流は、長期的には変われないように見える。特に情報やサービスの国境を超えた移動は加速しそうだ。

▼消えたユーフォリア、改善点も

 民主主義が持ちこたえるのか。文明の衝突や、キリスト教徒イスラム教のような宗教の衝突はないのか。先行き不透明な「大問題」は数多く存在する。

 30年前のユーフォリア(幸福感)や楽観主義は、すっかり消え去った。それでも、30年間に世界が悪くなったとは言い切れない。技術革新の恩恵で、世界がよくなった点も多い。途上国伊置ける貧困率の減少などはそこに含まれるのだろう。

 ベルリンの壁の問いかけ。答えが見えない者は多く、問いは深く、重い。

◎ 30年(みとせ)前、世界は良くなったと思った日
◎ 冷めた夢それでも世界は持っている
◎ 民主主義「危機」と叫んでさてどう動く

2019.11.10

 

 

 

2019年8月27日 (火)

◆G7首脳会議が映した世界の変化 2019.8.26

 G7首脳会議が24-26日、仏南西部ビアリッツで開かれた。会議は米トランプ大統領に掻き回され、通商や環境など多くの問題で意見の違いが際立った。40年以上に渡る会議で初めて包括的な首脳宣言の採択を見送るなど、世界の変化を映した。

▼包括的首脳宣言なし

 今年の会議は包括的首脳宣言の採択を見送った。採択見送りは前身のG5首脳会議が1975年に始まって以来初めてだ。

 首脳宣言は世界が直面する経済・政治問題全体をカバーし、G7首脳の共通認識や、協力して取り組むべき政策などを示してきた。向こう1年の世界の針路を示すものともいえた。内容は詳細で、2016年の伊勢志摩サミットの場合32ページだった。

 これに対して今年のサミットの「宣言」(G7 Leaders’ Declaration)は1枚。内容は、通商、イラン、ウクライナ、リビア、香港情勢の5項目で、いずれも1-4行のとどまる。宣言というよりメモのような形だ。

▼トランプ時代のサミット

 トランプ米大統領が2017年に登場してから3年。大統領はそれまで米欧など先進国の共通認識だった保護主義反対や多国間主義重視に異を唱え、自国利益第一(米国第一)の立場を鮮明にした。米国は地球温高防止のパリ条約や、イラン核合意からも脱退した。

 G7首脳会議に対しても懐疑的な姿勢を取り、不要論を公然を唱える場面もあった。昨年(2018年)のカナダでのサミットは首脳宣言にいったん合意したが、終了後に署名を拒否、混乱に陥らせた。

 こうした「トランプ時代の現実」を踏まえ、議長国フランスは最初から包括的首脳宣言の採択を前提としないで準備を進めた。その結果が包括的首脳宣言なしだ。

▼「保護主義反対」を言わない世界

 G7首脳会議は元々、世界経済を議論するために始まった会議。その世界経済を揺り動かすのが米中貿易戦争だ。会議で各首脳は米中貿易戦争に懸念を示したが、それ以上の具体的な議論は進まなかった。

 宣言には世界経済の安定希望など常識論を盛り込んだ。また米国の立場に配慮してWTOの抜本的な改革の必要性を指摘した。一方、トランプ大統領の登場以降、主要な国際会議の宣言から消えた「保護主義反対」の表現は今回もなかった。それどころか議論も行われなかった。

▼地球温暖化問題とアマゾン火災

 地球温暖化問題も米国と仏独などが対立したままだった。議長国フランスのマクロン大統領は温暖化問題を正面から取り上げて、トランプ米大統領と衝突するのを避け、からめ手で環境問題の議論を進めた。

 焦点を当てたのがアマゾンの火災。アマゾンは地球全体の酸素の5分の1を生み出していると推測されるが、今年に入り火災が急増している。ブラジルのボルソナーロ大統領が自然保護より開発優先の政策を打ち出し、その結果、農地開発や牧畜のため森林焼却が増えているためとされる。

 G7で取り上げたことから、この問題を巡る国際的な報道が急増。ブラジルに対する国際世論の批判が高まった。G7としても2000慢ドルの緊急支援など支援策を表明した。ボルソナーロ氏は支援を拒否したものの、国際世論に配慮し、軍隊を派遣し消火活動に動き出した。

▼イラン外相の電撃訪問

 マクロン氏はイラン問題でも独自色を出した。会議の場所にイランのザリフ外相を招き同氏の電撃訪問を実現。イラン核問題に新たな議論を引き起こした。訪問は、米国との事前調整などなしに進めたと報じられる。

 首脳会議にはアジアや中東、アフリカの首脳も招き、G7の枠組みの会合のほか、拡大版の会合も多数開催した。

▼首脳間の相性

 G7サミットの中継からは、首脳間の関係の良し悪しや相性も伝わってきた。夫人とともに各国首脳を迎えたマクロン氏は、メルケル独首相、トルドー・カナダ首相らとは親密に抱き合った上で話をし、良好な関係を示した。

 トランプ米大統領とはぎこちない握手の一方、会話に努めているように見えた。ジョンソン英首相とは、冷めた感じの握手ばかりが目立った。日本の安倍首相は緊密に迎えたが、直接の会話が難しいせいか共にいた時間は少なかった。

▼変化を映す場面

 米CNNは首脳会議について、"Trump's Chaos on full display at G7" (トランプが引っ掻き回したG7)と論じた。トランプ時代の現実をよく表現する。一方で、中国やロシアが不在であるのもG7の現実だ。

 今年のG7首脳会議は例年以上に話題が多く、見えてくるものも多かった。

◎ G7昔は世界を仕切ってた
◎ トランプで会議ゴタゴタ織り込み済み
◎ 「価値観を共有」と言った4年前
◎ アマゾンの火災に唸る10億人

2019.8.26

 

 

2019年7月29日 (月)

◆英ジョンソン新首相の意味 0219.7.28

 英国首相にボリス・ジョンソン元外相(55)が就任した。英国のEU離脱をリードした強硬離脱派の中心人物。型にはまらない言動で国民の人気が高い一方、言動の幅が大きくポピュリスト的な面もある。ジョンソン首相誕生で合意なし離脱のリスクが高まったが、Brexitの行方はなお不透明だ。英国の政治的混乱も続く。英政治の劣化を指摘する意見も多い。

▼離脱強硬派の新政権

 ジョンソン氏は、メイ前首相(前保守党首)辞任に伴う与党保守党の党首選を制して首相就任が決まった。約16万人の保守党員による選挙は、ジョンソン氏が9万2000票でハント外相(4万6000票)に圧勝した。これを受けてジョンソン氏は24日、エリザベス女王から首相に任命された。

 ジョンソン氏は24日、新政権の閣僚を発表。ほぼ全員を離脱強硬派で固めた。与党保守党からはBrexitを巡り離党者が相次ぎ、閣外協力を得ている北アイルランドのDUP(民主統一党)を合わせても実質過半数ギリギリ。政権基盤が脆弱な形での船出だ。

▼ポピュリスト的な側面?

 ジョンソン氏は新聞記者出身。保守党下院議員を経て2008-16年にロンドン市長を務めた。その後、下院議員としてEUからの離脱キャンペーンを先導。国民投票後に成立したメイ前首相の政権では外相を務めた。しかしメイ首相が2018年夏にEUとの関係を重視する離脱(穏健離脱)に転じると外相を辞任した。

 イートン→オクスフォードの典型的なエリート。しかし、歯に衣着せぬ発言と型破りな言動で庶民の人気をつかむカリスマ政治家の要素がある。ロンドン市場時代には自転車で通勤し話題になった。

 一方で主義主張に一貫性がなく、ポピュリスト的な側面があるとの批判も多い。元々反EUの色彩は強かったが、一貫してEU離脱派の先頭に立っていたわけではない。国民投票で離脱支持を鮮明にしたのは投票の4か月前だ。それも、ライバル関係にあったキャメロン元首相との関係を考えた判断、との報道がある。道化師的との評価は、定着していると言ってもいい。

▼Brexitの先行きは不透明

 ジョンソン氏は首相就任後、10月31日に離脱を何が何でも実現すると強調。EUとの交渉に期待を寄せつつも、交渉が不調な場合合意なし離脱も辞さないと述べた。しかし、実際に交渉をどのように進めたいかなど、具体策は示さなかった。

 懸案の北アイルランドの国境問題は、解決のめどがつくまで英国全体を関税同盟に残すという「バックストップ」に反対すると強調した。しかし、具体性のある代替案は示していない。

 EU側はメイ政権と合意した離脱案の微調整はあっても、再交渉には応じないとのスタンスを変えない。Brexitの行方は全く不透明なままだ。

▼解散や再度の国民投票の観測も

 保守党内にも合意なし離脱派避けるべきだ、との意見が多い。ジョンソン首相が強硬離脱で突っ走ろうとしても、下院が認めない可能性もある。そうなれば、解散・総選挙や2度目の国民投票が避けられない、という観測も出ている。

 Brexitの行方は、英国政治の行方とも表裏一体。ともに、先行き不透明の状態が続く野は避けられない。

▼英国の政治の劣化

 それにしても、英国政治の混乱は目を覆う。Brexitから3年以上を経過し、何も決められない状況が続く。国民の意見は分裂したまま。無責任なポピュリズム的な訴えに支持が集まる状況が続く。5月の欧州議会選では反移民のBrexit党が英国で最大の議席を獲得した。 

 仮に合意なし離脱になれば、経済的な混乱が拡大するだけにとどまらない。北アイルランド情勢の悪化や、悪くすれば紛争再燃の懸念も増す。スコットランドの独立問題が再燃する可能性も高い。

 強硬離脱派は「主権の回復が第一」と強調するが、こうしたリスクを十分に考えて対応しているのか。どうも、そうでないように思えてならない。

 もちろん、政治の劣化が指摘されるのは英国だけではない。フランスやドイツもポピュリスト政党や極右・反移民政党の台頭に悩む。イタリアではポピュリストと極右の連立政権が誕生した。米国はトランプ政権を選択した。しかし、英国の場合、小選挙区制に基づく議院内閣制に支えられて政治はここ30-40年、比較的安定していた。これがBrexitを契機に急速に揺らいだように見える。

 英国が保守党と労働党を2大政党とする政治体制に入ったのが1920年代(それまでは保守党と自由党の2大政党)。女性参政権が完全な形で実現したのは1928年だ(制限付きは1918年から)。それから100年近くを経過し、制度疲労を起こしているのだろうか。

◎ 道化師に宰相託す老大国 
◎ 混乱の上乗せの予感 新首相

 

 

 

 

 

 

 

2019年7月23日 (火)

◆トランプ氏のGo Back発言の波紋 2019.7.21

 トランプ米大統領が野党民主党急進派の女性議員らに「国に帰ったら」とツイッターで発信。これに内外で批判が高まり、波紋を広げている。ドイツのメルケル首相は公然とトランプ氏を批判、米欧の首脳間で価値観を巡る対立が公然化するなど、事態は尋常ではない。

 ツイッター発信は14日に行われた。Huffington Post日本語版によれば、ツイートは「興味深いことがあります。いわゆる“進歩的“な民主党の女性議員たちはもともと、政府が完全に崩壊していて、最悪で、腐敗していて、世界中のどこにあっても機能しない国の出身です。(もしそれが政府と言えるならの話ですが…)」

 「そんな議員たちが、地球上で最も偉大で最も強力な国家であるアメリカ合衆国の人々に、私たちの政権運営への悪口を吹聴しています。なぜ彼女たちは政府が崩壊して犯罪が蔓延している出身地に戻って、手助けしないのでしょう?」

 「その後戻ってきて、どうやって解決したのか教えて欲しい。そうした国は、あなた方の援助をひどく必要としているから、簡単には戻って来れないがね。(民主党の)ナンシー・ペロシ下院議長が喜んで無料の旅券を手配してくれると確信しています!」

▼民主党4議員

 女性議員の名指しはしなかったが、幼少期にソマリアから移住したイルハン・オマル氏、プエルトリコ系のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏、パレスチナ系のラシダ・タリーブ氏、アフリカ系のアヤンナ・プレスリー氏の4人とみられている。

 ツイートは直ちに世界に拡散。トランプ氏の"Go back to your country"発言として認識された。

 4人は15日会見し白人至上主義の考えであるなどと批判。下院は16日大統領批判の決議を採択した。海外ではメルケル独首相が会見でトランプ発言(発信)を批判、自分は4人の議員側に寄り添うと表明した。

▼白人至上主義の影

 トランプ支持者は集会で発言を歓迎。トランプ氏の"Go back"をさらに強めて"Send back"などと連呼する動きも出た。これにはさすがにトランプ氏も距離を置いた。

 言葉の細かいニュアンスなどについては議論が分かれるところがあるだろう。しかし、米大統領がここまで人種差別に無警戒な発言をし、社会にインパクトを与えた例は少ない。トランプ支持層に、本音では白人至上主義の人々が多く含まれている表れと見ることも可能かもしれない。メルケル独首相が論争に参加するのも異例だ。

 トランプ氏はビジネスマン時代、テレビ番組で"You are fired"の発言で一段と有名になった。私企業(のモデル)ならとにかく、国が”Go Back"と言ったら基本的人権に抵触する問題だ。

 

 トランプ発言の一つとして、歴史的にも記録されるものになるだろう。しかし後味はかなり悪い。

 

◎ 「米国第1」も「国に帰れ」もはや定着
◎ "Go Back" トランプの姿に重なりぬ

2018年12月11日 (火)

◆仏・反マクロン大統領デモの衝撃 2018.12.10

 フランスでマクロン大統領の進める改革に抵抗するデモが拡大。仏社会を揺るがしている。

▼週末の連続デモ

 直接のきっかけは燃料費の値上げ。政府は2019年1月からガソリンなど燃料費を引き上げる政策を打ち出した。これに対し11月中旬から週末に全国的なデモが発生。パリなどでは一部が暴徒化し、治安部隊と衝突して死傷者も出た。

 12月1日のデモには13万人あまりが参加。南仏で1人が死亡し、パリでは130人以上が負傷した。凱旋門に落書きがされ、自動車が焼き討ちに遭った。12月8日のデモには12万人以上が参加。1700人が逮捕されたと報道される。

 デモ発生以来、パリの中心部では週末になると店舗がシャッターを降ろして閉店。ルーブル博物館やオルセー美術館など観光地も閉鎖された。観光や経済への影響も広がっている。

▼SNSで拡大

 デモは中心になって組織した団体などがあるわけでない。SNSの呼びかけに人々が集まる格好だ。具体的な要求も整理されているわけではない。燃料費値上げ反対のほか、賃金引上げ、マクロン退陣、格差反対など様々だ。

 人々の不満が反マクロンのデモに表れた格好だ。加えてデモ隊の中にはカサーと呼ばれる過激派が入り込み、破壊活動を扇動している。極右や極左政党はデモをマクロン政権攻撃の材料にしている。

▼遅い成果、高まる不満

 2017年5月の就任後、マクロン大統領は経済改革を推進した。公務員12万人の削減を計画。硬直的と言われる労働市場の改革も打ち出し、雇用・解雇をしやすくする労働法改正を決めた。社会保障改革や社会保障増税を決定し、環境対策を狙い燃料税増税も打ち出した。一方、経済活性化のために「富裕税」と呼ばれる税の廃止も実施した。

 しかし改革の成果はたやすく出てくるものではない。負担増ばかりが先行していると受け止められ、富裕税廃止などで「金持ち優先」の批判も高まった。

 マクロン氏の支持率は就任当初の60%超から最近は20%程度にまで低下している。

▼親EU、国際協調の旗振り

 マクロン大統領はEUや国際政治の世界でも存在感を増していた。

 そもそもマクロン大統領は、反EUや反移民を打ち出す国民戦線のルペン候補を破って大統領に当選した。EU政策のスタンスは、常に親EU。難民問題などでEUが困難に直面すると、メルケル独首相と共にまとめ役として奔走した。

 欧州では近年、反移民や反EUを掲げる極右政党やポピュリスト政党が台頭し、内向き傾向が強まっている。こうした中でマクロン氏は、リベラルな価値観を打ち出し、親EUを唱える人々の中心となっている。

 世界ではトランプ米大統領が米国第1を唱え、保護主義的な貿易政策やパリ協定からの脱退、イラン核合意離脱など国際協調に背を向ける政策を進めている。マクロン氏はこれに対し、国際協調路線の重要性を説き、自由貿易を強調してきた。

 9月の国連演説や11月の第1次世界大戦終戦100年の式典でもこうした姿勢を鮮明にし、トランプvsマクロンの構図が映し出された。

▼正念場

 そのマクロン氏が改革への抵抗に遭い窮地に陥っている。

 フランスではこれまでもデモにより政治が大きく動いた事例がある。1968-69年にゼネストやデモがきっかけになってドゴール大統領時代が終わったのは代表だ。

 マクロン大統領は10日午後に国民向けに演説。最低賃金の引き上げなどを約束した。しかし効果は未知数で、事態収拾の道筋は見えない。

 39歳の若さで大統領に就任して1年半。マクロン氏の求心力低下が進めば、フランスのみならず欧州全体や世界にも影響する。正に正念場だ。

◎ 催涙弾の向こうに揺らぐ改革案
◎ 混乱に極右の笑い背が凍る
◎ パリ燃えて欧州揺れる冬来たる

2018.12.10

2018年11月 5日 (月)

◆メルケル時代の終焉?――党首辞任のインパクト 2018.11.4

◆メルケル時代の終焉?――党首辞任のインパクト 2018.11.4

 ドイツのメルケル首相が与党CDU(キリスト教民主同盟)の党首を退任すると表明した。首相は2020年の任期まで続けるというが、求心力の低下は避けられない。欧州の行方への影響も甚大だ。

▼地方議会選敗北の責任

 メルケル氏は29日、12月7-8日に行われるCDU党大会で党首選に出馬しない述べ、党首退任を表明した。首相は2020年5月の任期まで続けるとしている。同氏はかねて、党首と首相は同一人物が務めるべきと述べていたが、言動を覆した。

 辞任決断のきっかけは、10月に行われた地方議会選での与党の敗北だ。14日のバイエルン州議会選で、与党(姉妹党のCSU)が歴史的な大敗を喫した(得票率は2013年の48%→37%)。続く28日のヘッセン州議会選でも、CDUは38%→27%に大幅に議席を落とした。

 メルケル氏がCDU党首になったのは2000年。18年の経歴に幕を閉じる。

▼難民問題で批判

 地方選敗北の重要な理由が難民問題だ。メルケル氏は2015年の欧州難民危機の際に、難民受け入れに寛容な姿勢を示し、前後で100万人を上回る難民を受け入れた。これが難民・移民に反対する勢力の攻撃の的となり、極右や反移民政党の台頭を許すことになる。

 2016年の総選挙で極右のAfDは第3党に躍進。10月のバイエルン州議会選でも10%(前回はゼロ)、ヘッセン数議会選では13%(前回比9%増)と大きく得票を伸ばした。

 与党内でも極右などへの対抗上、より厳しい難民・移民政策を求める声が拡大。メルケル首相を公然と批判する動きも目立ち始めた。6-7月にはCSUのゼーホーファー党首との対立から連立政権(CDUとCSU、社民党の大連立)崩壊の危機に直面した。メルケル首相はこうした動きを押さえ政権の枠組みを維持するため、党首辞任のカードを切った模様だ。

▼欧州のアンカー役

 党首辞任でメルケル氏の求心力低下は避けられないとの見方が多い。欧州のメディアは、「メルケル時代の終わり」と表現するものもあった。

 メルケル氏は過去10年余り、欧州の政治をリードしてきた。同氏が首相に就任したのは2005年。フランスとの「独仏協調」を基本に親EU路線を貫き、重大局面での意思決定に決定的な役割を果たしてきた。

 2008年のリーマン・ショック後の金融危機対応や、2010年からのユーロ危機では、金融機関救済や金融システム安定策の決定に寄与。2008年のジョージア(グルジア)危機や2014年のウクライナ危機では、欧州を代表してロシアのプーチン大統領らとやり合った。2015年のイラン核合意でも大きな役割を果たした。

 EUの政策決定は首脳会議や閣僚理事会で決まるが、重要な案件の場合は独仏の調整などで決まる。特にメルケル氏が認めなければ何も決まらない、というのは欧州ウォッチャーの常識だった。メルケル氏は非常時の政策決定のアンカー役を担った。だからこそ「欧州最強の政治家」や「欧州の女帝」と言われたし、メディアのカメラもメルケル氏に集中した。

▼欧州・EUへの影響甚大

 メルケル氏の政治力を支えるのが、ドイツの経済力であり、国内的な政治基盤の安定だった。党首辞任で政治基盤の安定が揺らぐ。それが深刻なものとなれば、欧州やEUへの影響は甚大だ。

 欧州が抱える問題は多岐で深刻。難民・移民問題は各国の利害が対立し、極右・反移民政党の台頭に歯止めがかからない。英国のEU離脱問題は交渉大詰めの時期に来ても先が見えない。米トランプ政権との関係はギスギスし、関係再構築は喫緊の課題だ。イタリアはバラマキ型の予算案を作成し、EUとの対立が表面化しつつある。ギリシャなどの財政改革は遅れ、ユーロ危機再燃の懸念は常にくすぶる。ロシアとの関係はいつ何があってもおかしくない。中東の混乱は続いたままだ。

 こうした問題に適宜対処するとともに、EUとしての新たな政策や改革を打ち出していくには、強力なリーダーシップが不可欠で、アンカー役が求められた。メルケル氏の影響力低下は、こうした役割を担う政治家が見当たらなくなる懸念がある。

▼新時代

 メルケル氏は旧東独の出身。元々科学者だったが、ベルリンの壁崩壊を受けて政治の世界に身を投じた。政治思想や哲学を積極的に語ることは少なく、世界観は広く知られてなく、未知数の部分がある。難民受け入れに寛容的だったのは、社会主義体制下で生活した経験が影響しているとの見方がある。トランプ米大統領のメルケル氏に対する姿勢は極めて悪い。

 英FT紙は党首辞任のニュースを受けて、「ドイツは新時代に直面する」(Germany confronts new era sa Merkel calls time on leadership)と位置付けた。同紙社説はメルケル氏がドイツと欧州のために良い働きをしてきたと評価したうえで、「ドイツは欧州のために強さを維持するべきだ」(Germany needs to keep strong for Europe's sake)と評した。

 メルケル氏はなお首相の座にはとどまる。しかし従来に比べ不確実性は高まった。新時代への移行=メルケル時代の終わりの始まり=に直面し、同氏の存在感の大きさと力量を改めて認識する。

◎ メルケルに安心した日々早や10年
◎ いつの間にかドイツが決めてるヨーロッパ
◎ 節目のたび 課題に嘆息 欧州の地

2018.11.4

 

2018年7月 1日 (日)

◆EU首脳会議と欧州の難民問題 2018.7.1

 EU首脳会議が6月28-29日に開催。難民問題を協議したが、亀裂が改めてあらわになった。

▼くすぶり続ける問題

 欧州は2015年に100万人を超える難民が流入。難民危機を迎えた。その後トルコとの難民管理協定締結などで減少したが、いまだに北アフリカや中東から年間数十万人単位で流入が続く。

 EUは難民問題対処のため、加盟国に応分の受け入れを求める案をまとめた。しかしハンガリーなどは受け入れを拒否。十分に機能していない。

 EUのルールでは、難民の審査は最初の受け入れ国が担当することになっている。結果、流入の多いイタリアやギリシャなどの負担が重くなっているのが現状だ。

 イタリアでは6月、ポピュリストと極右の連立政管が誕生。同月には新政権が北アフリカからの難民船の受け入れを拒否し、人道も絡む問題として全欧州の関心事となった。難民問題は形を変えてくすぶり続ける。

▼行き詰まり感
 
 首脳会議でイタリアのコンテ首脳は、他国の負担増を求め、事務局が用意した案を拒否。難民問題での合意がなければ、他のあらゆる合意への拒否権をちらつかせた。

 調整は9時間の徹夜協議に及んだ。その結果、何とか合意文書をまとめたが、内容は玉虫色で具体性を欠く。会議決裂を避けるのが精いっぱいだった。

 何より、首脳会議に及ぶ調整を見ていて、何かブレークスルーがありそうな動きを感じさせなかった。行き詰まり感が否定できなかった。

▼反移民政党の台頭とドイツの政治危機

 難民問題は欧州各国で極右政党や反EU政党の台頭を招き、欧州政治を揺るがしている。

 欧州のリーダーであるメルケル首相のおひざ元でも、連立相手のCDS(キリスト教社会同盟)が規制強化の要求を強め、メルケル首相からの離反も辞さない状況。ドイツの政治危機→メルケル退陣となれば、EUは最大の調整役を失うことになりかねない。アンカーなき欧州に陥る懸念がある。

▼Brexitより大きな問題

 EUは2015年の難民危機以来、様々な検討を重ねてきた。しかし打ち出せた対応はその場しのぎに留まる。根底は、EUや欧州を支える基本理念に関わる問題だからだ。

 野放図な難民流入容認は、社会の安定を崩壊させる。さりとて単純に締め出すことは、欧州が掲げてきた人道主義や、基本的人権の尊重という原則に反する。これは、EUの理念とも根っこの部分で重なる。

 難民にはイスラム教徒が多く、欧州のキリスト教社会との融合が可能かという問題も突き付ける。「文明の衝突」的な問いだ。貧富の格差の問題、過去の植民地支配の責任、旧共産党体制かの人権弾圧といった歴史的な問題にも関係する。

 Brexitは欧州の枠内で対応できる問題だ。それに対し難民問題は、欧州の枠内では対応できない。西洋文明の根本を突く問題と言ってもいい。

▼欧州の基本理念を突く

 移民問題に直面する米国は、トランプ大統領の強引な規制強化という、単純な方向に動いている。しかし強大な1国が対応を考える米国と違い、欧州には政治制度も言葉も異なる30以上の国が集まる。難民の流入源もアフリカ、中東など様々で、問題は米国寄りはるかに複雑だ。

 現在の枠組み内では、決定的な対応は難しいようにも見える。時間稼ぎをしているうちに、2015年に続く次の深刻な難民危機が再来する可能性も小さくない。

 安易な回答はないように見える。難民問題が突き付ける問いは、現在の世界のあり方をも問う。

◎ 難民に人権の歴史が揺らぐ夏
◎ 危機過ぎて虚脱の4年を空費する
◎ 首脳の集い寛容の言葉が消えていく

20180701

2017年10月12日 (木)

◆カタルーニャ住民投票の余波 2017.10.8

 スペイン・カタルーニャ自治州で独立を問う住民投票が行われ、有効投票の9割以上が独立に賛成した。スペイン政府はこれを認めず、協議にも応じない強硬な構え。混乱の拡大が懸念される。

▼独立志向

 カタルーニャはスペインと異なる文化や言葉を持つ(文化ではピカソやミロ、ダリ、ガウディなどを生んだ)。歴史的にはスペイン内戦で大きな傷跡を残し、フランコ将軍統治下では厳しい弾圧を受けた(スペイン内戦のルポとしてはジョージ・オーウェルのカタロニア賛歌が有名)

 経済的にはスペインの中でも豊かで、同地で徴収される税金が他の地域で使われる構造だ。こうした事情を背景に独立意識は強い。2014年には法的拘束力のない住民投票を実施。独立賛成が8割を占めた。

 今回の投票はそれに次ぐ動き。投票についてスペインの憲法裁は憲法違反と判断。ラホイ首相率いる中央政府も実施禁止を打ち出した。投票日前には警察官を派遣し、投票所の封鎖に動いた。このため各地で衝突が起き、流血事態にも発展。世界にショッキングな映像が流れた。

▼独立賛成大多数?意見2分?

 投票結果は、有権者530万に対し投票者数228万人(43%)。有効得票の92%が独立に賛成だった。ただ、棄権した人は独立に反対の人が多いと言われ、住民全体では意見が2分されたとの見方も有力だ。住民の気持ちも単純ではない。

 プチデモン州首相は当初、独立賛成が多ければ直ちに独立宣言をすると語っていた。しかし、ラホイ首相は独立宣言をすれば自治権を縮小するなどと発言。フィリペ6世国王も、独立に反対の声明を出した。

 州首相はEUに仲介を期待したが、そのEUは「スペインの国内問題」と突き放す。背後には、EU内の地域独立運動に火が付くことを警戒する。EUはスペインのバスク、英国のスコットランド、ベルギーのフラマンなど地域独立の問題を抱えている。

▼住民投票の難しさ

 住民の意思と国の一体のバランス。住民投票が行われるのは、これまで問題が放っておかれたから。そこを投票で問うのは、民主制など面がある。一方、複雑な物事を白黒の2分法で問うのは、ポピュリズムに繋がるの危険性もある。複雑に絡み合う利害や感情。問題の根は深い。

 カタルーニャの首都のバルセロナでは、8月に大規模なテロがあり世界の視線を浴びたばかり。事件は世界がテロに常に直面している実態を新たえて突きつけた。

 それから1カ月半後。今度は住民投票で世界の注目を集め、国のあり方や民族自立などの問題を突きつけるている。

 前週には、イラクのクルド人自治区で住民投票があり、やはり賛成多数で独立が支持された。これに対しイラク政府や、周辺のトルコやイラン(同様に国内にクルド人を抱えている)はクルド自治政府に対し事実上の封鎖を実施。問題は緊張を強めている。

 どちらも展開は予断を許せないが、楽観はできない。

◎ ピカソ、ミロ、ダリが育てる地の誇り
◎ 投票は最後の切り札だったはず

2017.10.8

2017年10月 4日 (水)

◆独総選挙の意味と影響 2017.10.1

 ドイツの総選挙が行われ、与党CDU/CSUが第1党の座を確保し、メルケル首相の4選が確実になった。しかし与党は議席を減らし、逆に極右のAfDが初めて初めて議席を確保するなど左右のポピュリズム、反グローバリズムの勢力が力を増した。選挙の影響は多岐に及ぶ。

▼2大政党後退

 選挙でCDU/CSUは33%を獲得たが、前回(2013年)の42%から大きく後退した。第2党で現在大連立を組む社民党も、26%→21%に後退。独の2大政党がそろって大幅に議席を減らした。独の選挙制度では、得票率がほぼ議席に反映される(少数政党乱立を防止する仕組みがある)。

 逆に議席を伸ばしたのが中堅の4党。極右のドイツのための選択肢(AfD)が13%を獲得し第3党となり、連邦議会で初の議席を維持。リベラルで経済界をバックにした自由民主党(FDP)が11%で、4年ぶりに議席を回復した。極左で旧共産党の流れをくむ左派党が9%、環境政党の緑の党が9%で続いた。

 2大政党の得票率は3分の2(67%)→半分(54%)に低下。中堅4党の合計は4割を超えた。

▼左右のポピュリスト政党の躍進

 中でも衝撃的だったのは、極右のAfDの躍進だ。同党は反移民・難民や反EUを掲げる極右政党。ポピュリスト政党の色彩も強い。ナチスを評価するかのような発言で注目を浴びたこともある。

 独で民族主義政党が議席を獲得するのは1990年の統一後初めて。旧西独時代を含めても、第2次大戦後の混乱期以来、約60年ぶりだ。その意味で衝撃は大きい。

 同党への支持が強かったのは 旧東独地域だ。この地域は過去、旧西独に比べて経済発展が遅れていたし、統合後も2党市民として差別されてきたと意識がの強い。AfDへの投票率が旧西独で約10%だったのに対し、旧東独では20%を超え、社民党をしのいで第2党だった。ドレスデンなどを抱えるザクセン州では27%を獲得し、第1党だ。

▼反移民・反難民の波

 ドイツの経済は好調で、失業率は3%台と完全雇用常態にある。その経済は選挙の大きな争点にならず、焦点になったのは、難民問題だった。

 欧州には2015年にシリアなどから大量の難民が流入し、メルケル首相は結果的に100万人の受け入れを決断した。しかしその後、難民による犯罪なども表面化(2015年大みそかにケルンで起きた暴行事件がとくに有名)。メルケル首相の寛容な政策への非難も強まった。

 AfDはこうした人々の不満の受け皿になった。社会的に不満を抱える人々の要求に応えようというのは、左派党も同じ。反グローバル的な姿勢や、人々を扇動するポピュリズム的な手法でも一致する。しかし、左派党は難民には寛容な姿勢だった。ここにAfD躍進との差があるとの指摘がある。

▼欧州へのインパクト

 反移民・難民や反グローバリズム、ポピュリズムの伸長は世界的な潮流だ。2016年の英Brexitや米トランプ政権誕生を支えたのもこうした動きだし、2017年の仏大統領選では国民戦線のルペン党首が決選投票に進出した。オランダ総選挙でも極右が存在感を見せつけ、ポーランドやハンガリーでは政権が民族市議・排他主義的な色彩を強める。

 そうした中で欧州最大の経済大国であるドイツは、ポピュリスト政党の勢力拡大に歯止めをかけてきた。安定した政治の下に経済改革を推進(現在の経済を支える改革は、シュレーダー前政権=社民党=が実現した点も見逃せない)、欧州の核としての存在感を示してきた。

 その流れに変化が生じる懸念がある。FT紙のGideon Rachmanは、"The end of German exceptionalism"(ドイツだけが例外なのは終わり)と書いた。 独の安定感が失われれば、それは欧州全体に影響し、世界に波及する。

▼メルケル首相の存在

 選挙の結果、メルケル首相の4選は確実になった。しかし社民党は下野を宣言。首相は自民党・緑の党との連立を目指すことになった。3党の政策は異なり、連立交渉は難航が予想される。仮に連立が実現した場合も、メルケル首相の政策を縛ることが増えそうだ。

 例えば緑の党は、ガソリン・ディーゼル車の早期(2030年ごろ)の販売停止を求める。これは親ビジネスの自民党とは相いれない。自民党は、厳格な財政規律などを求め、EU統合の方法で仏マクロン大統領の主張と対立する。

 メルケル首相は2005年に首相の座についてから12年を経過。ドイツの首相としての立場のみならず、EUの運営でも大きな影響力を発揮する。「欧州最大の政治家」という評価も定着しつつある。ドイツの国力はもちろん、首相個人の政治力がなければこうした状況は実現しない。

 同首相の人物像には公表されていない点やナゾも多いが、人生の半ばまでを旧東独の独裁政権下で過ごした経験抜きには語れない。

▼世界お注目

 世界は難民問題と、反グローバリズムやポピュリズムという課題に直面する。それは、リベラル・デモクラシーの行方という大命題にもつながる問いかも知れない。

 メルケル首相がどんな指導力を発揮し、ドイツがどう動くか。EUはどうなるのか。問題意識を整理したうえで、見つめていく必要がある。

2017.10.1
 

2017年6月25日 (日)

◆Brexitから1年の世界 2017.6.24

 世界をあっと言わせた英国のEU離脱決定から1年が経過した。この1年間、世界の風景は大きく変わった。

▼ポピュリズム・反グローバリズム

 Brexitをきっかけに、世界ではポピュリズムや反グローバリズムの動きが過熱した。

 米国では2016年11月の大統領選でトランプ氏が当選。米国第一の政策を打ち出した。欧州では一時極政党の台頭が勢いを増し、オランダやフランスでは政権奪取や国内政治に強力な影響力を持つ状況になる、との懸念が強まった。

 欧州のポピュリズムは、5月の仏大統領選のマクロン氏勝利で一服した。しかし、ポピュリズムの背景にあると指摘される格差拡大や人種差別など問題が解消したわけではない。課題はくすぶり続ける。

▼不透明な英離脱交渉

 英国のEUからの離脱交渉の行方は定まらない。英国のメイ首相の政治基盤は、総選挙敗北で弱まった。6月19日に始まった交渉は、まずはEU住民の権利保護など離脱条件の決着を目指すことで合意したが、具体的な展開は見えないままだ。

 英国では再度の総選挙や首相交代があってもおかしくない。EUは新たなユーロ危機防止や統合再強化戦略の構築を急ぐが、具体像を描くのは並大抵ではない。先行きを示す言葉としては、依然不透明や不確実が似合う状況だ。

▼米国の平和の終了

 トランプ米政権は迷走している。ロシア疑惑は政権にボディブローのように効いている。問題は尾を引き、政権の政策推進能力に悪影響を及ぼし続けそうだ。

 TPPやパリ協定からの離脱など、一部で保護主義(あるいは相互主義)的な政策が明確になってきた。オバマケアの修正など重要政策は実現のめどが立たない。外交政策は行き当たりばったりの感をぬぐえない。

 明確なのはやはり「不確実性の拡大」。そして、「パックス・アメリカナの終焉」だ。

▼各地で混乱

 サウジとイランの対立深刻化など、中東の混乱やリスク拡大している。米国の同地域での影響力低下が一因だ。ロシアや中国は、感激を縫って勢力の回復や拡大に努める。世界的に先行きが見えにくく、混乱が予想される。

 1年前の世界は、すでに遠い過去のものとなり、世界はより複雑で埠頭目になった。そんな印象を強くする。

2017.6.24

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