カテゴリー「環境」の4件の記事

2021年3月15日 (月)

◆福島原発事故10年とエネルギー問題の推移 2021.3.14

 東京電力福島第1原発の事故から10年が経過した。世界の環境、エネルギー政策に与えた影響は大きい。少したどってみたい。

▼原発廃止国と推進国

 福島の事故の後、世界における原発、エネルギー政策については色入りな議論があった。実際の動きも様々だ。

 ドイは脱原発を決定。2022年に原発ゼロを実現するメドを立てた。ベルギーやスイス、台湾なども脱原発を進め、イタリアやオーストリア、豪州などは原発ゼロの政策を確認する。

 一方、米国や英国、フランスなどは様々な条件の下で原発維持の姿勢だ。ロシアは新規建設を進める。核保有国は安保上の理由からも、原発を維持せざるを得ない面がある。

▼アジア、中東で建設

 中国はすでに50基弱の原発を稼働。今後も建設を進め、2030年には米国と並び世界最大の発電量とする見込みだ。インドも原発拡大を基本政策とする。

 ただ、ベトナムで2016年に原発建設の予定が中止になるなど、国により情勢は異なる。

 中東でも原発建設が進む。UAEは昨年8月、同国西部にバラカ原発を稼働させた。アラブ諸国初の原発だ。トルコは2か所に原発を建設中だ。

 一方、イランは核開発を巡り揺れる。同国は平和利用目的と主張するが、米国やイスラエルなどは核兵器開発の疑惑を主張する。

 原発は各国のエネルギー事情に加え、安全保障上の問題も加わり、一筋縄ではない。 

▼議論が少なく

 福島事故の直後、原発の安全性や是非を巡る議論は活発になった。しかし時間の経過とともに、正面切った議論も少なくなった印象を受ける。

 もちろん、原発の議論は事故のリスクや温暖化ガス排出が少ないメリット、経済性など様々な要素を考慮して行う必要があり、容易に結論が得られるものではない。ただ、議論をしていると隠されていた情報や新しい視点などが出て来ることもある。

 年月の経過とともに正面切った議論は国内的にも国際的にも少なくなり、原発を巡る政策決定は「先に結論ありき」の感じが強まっている。1

▼再生可能エネルギーへの移行

 こうした中で、確実に進んでいるのが再生可能エネルギーへの移行だ。

 1次エネルギーで見た全エネルギー消費中に再生エネルギーが占める割合は、2010年の10%から2019年には16%に上昇した(再生可能エネルギーには薪のように伝統的なものも含む)。原発の占める割合は、同期間中に4.7%から3.99%に低下した。それに比べると対照的だ(BPのデータをベースにアワー・ワールド・イン・データがまとめた資料から)。

 特に欧州では太陽光や風力などへの移行が進む。英国やドイツでは2020年、再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を上回った。

▼大きな変化

 原発を含むエネルギーの行方は、単純ではない。地球温暖化、安全保障、経済情勢など様々な要因が絡む。しかし過去の延長線では語れない大きな変化が起きていることは間違いない。

 エネルギー問題はデータが複雑で(意図的に隠されることもあり)、スッキリしない面もある。福島原発事故10年など節目をきっかけに、論点整理してみることも大事だろう。

◎ 事故10年 福島アイコンになったけど
◎ いつの間にか熱い議論より既成事実
◎ あえて無視?原発拡散大丈夫?

2021.3.14

 

 

2017年6月 4日 (日)

◆米国のパリ協定離脱が映すもの 2017.6.4

 トランプ米大統領が地球温暖化対策のパリ協定からの離脱を表明した。国際世論を無視する形の「米国第一」の決断。ある程度予想されていた事とはいえ、現実のものになると衝撃は大きい。

▼法王の忠告も無視

 離脱発表のタイミングは、欧州などからの外遊から戻って間もなく。欧州では各国首脳のほか、ローマ法王もパリ協定の重要性を強調。離脱しないよう訴えた。しかしそうした要望も無視された形だ。

 大統領の表明を読むと、「米国第一」や「米国の利益」が頻繁に登場する。一方、地球環境全体について語った部分は少ない。「米国第一主義」が改めて、しかも明確に打ち出された。

 パリ協定離脱はトランプ氏が選挙戦時から公約に掲げていた政策。一部エネルギー業界や炭鉱産業従事者などの要望に応えるものだ。米国内には科学者にも、温暖化に否定的な見方がある。

 しかし産業界を広く見渡せば、多くはむしろパリ協定推進派だ。離脱の決定に多数の企業が遺憾を表明。政府の方針にかかわらず、産業界として温暖化削減に取り組む姿勢を強調した。産業界の大統領助言委員会のメンバーであるテスラなどのイーロン・マスク氏は、辞任を表面した。

 世論調査によれば、共和党支持者であっても半分以上はパリ協定離脱に反対だ。こうした状況の中で大統領は離脱を決めた。

▼石炭増加にはつながらず?

 シェール革命の進展などで、エネルギーの分野では石炭→天然ガスや再生エネルギーなどの動きが加速中だ。米国がパリ協定を離脱したからといって、石炭が消費が拡大に向かう情勢ではない。再生エネルギーの拡大、エネルギー効率の上昇というトレンドは、長期的には変わらないとの見方が多数だ(原発の行方については、先進国における脱原発の動きと新興国での原発利用拡大の動きがあり、複雑だ)。

 パリ協定離脱が石炭産業などの雇用増加に実際につながる可能性はそれほど大きくないと見るのが自然だろう。

 石炭転換が進まないのであれば、米国で今後温暖化ガスがどんどん増えていくという状況ではない。今回の離脱がそうした点まですべて織り込んだ決断だったかは不明だが、政治的な狙いが大きかった可能性がある。不明な点がなお多く残るのは、トランプ流といえばそれまでだ。

▼トランプ政権vs国際世論

 独仏伊首脳は共同で声明を発表。遺憾を表すとともに、協定の再交渉は拒否した。中国の李克強首相、英国のメイ首相なども協定推進を表明した。この問題では、トランプ政権vs世界の大多数、という構図が明確になった。

 国際情勢の観点から見れば、離脱表明によりトランプ大統領の「国際協調より米国第一」の姿勢が改めて明確になった。トランプ大統領が世界の指導者が共有する危機を共有していないこと、世界がこれまで積み上げてきた秩序を(たとえ代替案がなくても)躊躇なく否定することも再度露呈した。

 米国はこれまで世界の警察官として、グローバルガバナンスを総合的な視点でとらえてきた。しかし、最早状況は異なる。世界全体より米国の利益を優先。問題を総合的に関連付けて解決策を探るというより、個々の問題に時にはばらばらに取り組む。そして時には既存秩序の破壊も厭わない。世界は指導者なき時代(G0)に入ったとの感を新たにする。

▼技術革新

 一方で、10年単位で経済や技術革新を見ると技術革新を改めて認識することも多い。全世界的に地球の気候温暖化に関心が高まり、リオで地球サミットが開かれたのが1992年。その後温暖化ガス削減が全地球的な課題として認識され、省エネや再生可能エネルギーの開発が進んだ。シェール革命も起きた。

 電気自動車が本格的に登場したのは約10年前。今日では先進国の各地に電気スタンドが整備され、テスラやグーグルなど先端企業が次世代の自動車開発を加速する。

 パリ協定など温暖化防止の動きが、こうした技術革新を促している面も見逃せない。

◎反環境 協定離脱で名を残す?
◎また一つ、リーダーなき世界を実感す
◎トランプ時代 EVの風景日常に

2017.6.4

2016年5月 2日 (月)

◆チェルノブイリ30年の問うもの 2016.5.2

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故から30年が経過した。26日には追悼式典が行われた。

▽老朽化する石棺

 爆発した第4号機を覆ってきた石棺は老朽化し、現在全体を覆うシェルターの建設が進む。しかし、メルトダウンした核燃料の取出しなど廃炉のメドは立たず、関係者もシェルター建設は「問題先送り」と認める。

 周辺住民10数万人以上が立ち退きを命じられ、移住を余儀なくされた。周辺30キロはいまだに立ち入りが厳しく制限されている。のちにがんの発生などで亡くなった人々、病気に苦しんでいる人々も多い。

▽世界の原発

 チェルノブイリ事故は、原発の安全性について大きな問いを投げかけた。しかし明確な答えが出なまま時間が経過し、2011年には福島第1原発の事故が起きた。

 福島第1原発の廃炉作業には40年以上の年月が必要と言われる。未来のフクシマの廃炉跡も、ある意味「石棺」と言っていいかもしれない。

 福島第1原発事故の後、ドイツやイタリアは脱原発へと動き、フランスも原発比率を下げる方向に進んだ。しかし中国、インドなど新興国では新規建設が進む。原発の是非、安全対策などを巡る議論は収束していない。

▽人口急減

 チェルノブイリ事故は、情報隠しなどソ連の旧体制の問題点を改めて映し出した。事故がその後のソ連崩壊続くきっかけになったとの見方もある。

 ソ連崩壊後、チェルノブイリの管理はウクライナ政府が負うことになった。そのウクライナの歩みは厳しい。

 2014年には西部の新欧米派と東部の親ロシア派の対立が激化。クリミア半島はロシアの併合された。ウクライナ東部は事実上政府の権限が及ばない地域になり、衝突が断片的に続く。ウクライナ経済は連続で大幅なマイナスを記録している。

 1991年のソ連崩壊・独立時のウクライナの人口は約5200万人だった。今では約4500万人(クリミア共和国の約200万人を含む)だ。人口減少は急激だ。

 チェルノブイリの問いかけはとてつもなく大きい。それはフクシマにも通じる。 

≠ 30年の 迷走見届け 石棺朽ちる
≠ ここからか 混乱の連鎖 まだ続く
≠ この地球 原子の石棺 いくつ建つ

2016.5.2

2009年12月20日 (日)

◆COP15会議の成果 2009.12.19

 コペンハーゲンで開催されていたCOP15会議は、具体的成果を生み出すには至らず、問題を来年以降に持ち越す形で終了した。ただ、地球温暖化会議として初めて首脳級会合を開き、オバマ米大統領をはじめ各国首脳が真剣に議論した意義は過小評価すべきでない。「次のステップへの重要な第一歩」になるかどうかは予断を許さない。

▼合意採択できず

  米、欧州諸国、中国、インド、日本など主要国は、18日から首脳級会議を開催。期限を延長して19日午前までの協議で合意案をまとめた。しかし、その後の全体会議でスーダン、ベネズエラなどを中心とする途上国は反対。結局文書の採択は断念し、議長の「合意に留意する」という宣言を了承する形で終了した。

▼主要国合意の内容

 その主要国合意の内容は、(1)来年1月末までに、先進国は2020年に向けた削減目標、途上国は行動計画を提示する(2)先進国は途上国支援に10-12年に300億ドル拠出。2020年までに1000億ドル拠出を目指す(3)ポスト京都議定書の枠組み交渉作業部会を継続--など。

 合意は削減目標について法的約束を強いるものではないし、ポスト京都議定書の枠組みを示すものでもない。2007年12月のバリ島でのCOP13で決めた交渉日程の目標に比べたら後退した内容だ。全体会合ではそん合意すら採択できず、温暖化問題の難しさを改めて認識させる結果となった。

▼根深い対立

 地球温暖化を巡っては先進国対途上国、欧州や日本対米国、途上国内(中国やインド対島嶼諸国)などの間に根深い対立がある。それはCOP15会議でも解消できなかった。
 中国は今や世界最大のCO2排出国。しかし「温暖化の責任は先進国にある」として一貫して主張し、削減義務受け入れを拒否し続けている。会議でもこの立場は変わらなかった。
 この「まず先進国が(一段の)責任を」という立場は、インドやアフリカ、中南米諸国など多くの途上国が共通して主張した。
 米国(京都議定書不参加)はオバマ政権になって温暖化問題取り組みに前向きな姿勢を示している。それでも「中国の参加しない枠組みへの参加は意味がない」という基本姿勢は崩さなかった。
 京都議定書参加のEUや日本は、次の枠組みには米中の参加が不可欠との繰り返した。ツバルなど島嶼諸国は先進国、途上国を問わず排出国の責任を追及した。
 会議は12月7日から精力的に続けられた。議長は様々な提案を示した(京都議定書の延長+非参加国については新たな枠組み協議、などの提案もあった)。しかしいずれも決定打にならなかった

▼夜通しの首脳会合

 COP15には米国のオバマ大統領をはじめ欧州各国(英独仏)首脳、温家宝中国首相、シンインド首相ら各国首脳が参加。オバマ大統領らはメンバーの組み合わせを変えて精力的に協議した(米中印と主要途上国の会合、米欧中心の会議等々)。最終的には、夜を徹した会議で主要国合意を目指した。その結果、何とか合意案をまとめ上げ、決裂を回避した。
 COP会議で首脳会合が開かれたのは初めて。コペンハーゲン合意の内容はとにかく、首脳がリスクを追って地球温暖化に取り組む姿勢を見せた政治的な意義は軽視すべきではない。

▼最低限の合意

 世界の主要メディアの会議直後の評価は、基本線では似ている。英Economist誌はbatter than nothingと論評。英Financial Times紙はClimate conference ends in discord(温暖化会議は意見の違いを残したまま終了)と表現した。NY Times紙はA grudging Accord in Climate Talks(ぱっとしない合意)と伝えた。いずれも最低限の合意という見方だ。

▼持ち越された課題

 京都議定書の期限は2012年まで。それまでに政治合意のみならず、法的な枠組みができなければ温暖化問題は協定なしの時代に入ってしまう。
 当面は来年1月までに先進国、途上国がどのような数値目標や行動計画を出すかが焦点。そこをクリアすれば、ポスト京都議定書の枠組み作りなどの議論に入れるという段階だ。課題は大きく、打開には米欧中などの首脳の政治決断しかない。
 国連の潘基文事務総長は、意味のある第一歩(an essential beginning)と強調した。ただ会議の成果が今後の交渉にどこまで生かせるかは不透明。行方は予断を許さない、としか言いようがない。

2009.12.19

 
 

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