カテゴリー「世界の潮流」の121件の記事

2020年9月20日 (日)

◆米中対立:戦線拡大・複合化ーTikTok、ファーウエイ、台湾 2020.9.20

 米中対立が激しく揺れた。動画投稿アプリのTikTokの米国での活動を巡り、両国は水面上・水面下で攻防を展開。米国はファーウエイへの禁輸措置を強化した。台湾を巡る駆け引きも動いた。米中対立は領域を広げ、複雑に絡みながら動き、両国関係は分断(デカップリング)が進んでいる。

▼トランプ政権が規制の動き、中国も対抗

 動画投稿サイトのTokTokを巡る情勢が目まぐるしく動いた。

 同サービスは、中国の北京字節跳道科技(バイトダンス)が2017年から提供している。全世界のユーザーは8億人、米国で1億人が利用する。

 トランプ米大統領はTikTok利用者の個人情報が中国政府に流れているとして、7月末にTikTOkの禁止を表明。その後、米企業による買収かサービス禁止を迫り、9月15日までと期限を定めた。こうした中、米マイクロソフト、オラクル、ウォルマートなどが交渉に乗り出していた。

 中国は米国の動きに反発、8月には対抗策として自国の輸出規制を強化した。輸出規制の対象にはAI関係の技術やサービスも含まれ、米社とTikTokの交渉に中国がストップをかける可能性も生じていた。

▼二転三転、今後の展望なお不透明

 トランプ政権の定めた期限が迫る中、マイクロソフトは13日までに交渉中断を表明。オラクルとTikTokは14日までに、買収ではなく提携案をまとめ、米政府に示した。オラクルがTikTokのグローバル事業に資本出資し、サービスのアルゴリズムはTikTokが保有する一方、顧客データの管理はオラクルが実施するという内容。ウィルマートもオラクルと共に出資に加わる。

 提携案を受けて米商務省は18日、TikTokの米国内での新規ダウンロードや更新を20日に禁止すると発表。一方、サービス自体は11月12日まで認めるとした。

 翌19日、トランプ大統領は提携を原則承認すると発表した。商務省は新規配信の禁止を20日から27日に延期した。

 米政府の対応は二転三転している。判断の背後には、もちろん11月野大統領選をにらんだ思惑もある。中国側の反応もはっきりしない点が残る。TikTok問題がどう推移するか、なお流動的だ。

 ちなみに、ピーターパンの人食いワニは、Tick Tockと表記される。

▼テンセントやファーウェーも

 当面の焦点になっているのはTikTokだけではない。米国は中国大手ITのテンセントが提供する微信(ウィ―チャット)の利用も禁止した。

 大手通信機器、スマホのファーウェイに対しては、2018年以降何度かの決定で取引規制を京っかしている。米国から技術を盗んだなどという理由。

 9月15日には、同社に対する禁輸措置を強化。米国の技術が絡んだ半導体の同車への輸出を事実上全面禁止した。同社への直接輸出だけでなく、外国企業による輸出も制限する内容だ(同車に米国技術が絡んだ半導体を輸出した企業は、米国の制裁対象とする)。

▼米中ハイテク摩擦

 米中のハイテク分野での摩擦が強まったのは、トランプ政権2年目の2018年から。米国は中国のハイテク企業が知的所有権や侵害や技術の窃盗などをしていると主張、締め付けを強化した。次世代通信ん5Gの通信機については、ファーウェイからの導入禁止を打ち出し、欧州や日本、豪州などにも同調を求めた。

 米国は今年8月、ファーウェイ以外に通信基地やスマホのZTE、監視カメラのハイクビジョンなどとの取引を制限する法律を施行した。TikTokやテンセントへの規制強化も、同じ戦略上にある。

▼台湾との関係強化

 TikTok問題が揺れた同じ週、台湾を巡っても注目すべき動きがあった。米国のクラック国務次官が台湾を訪問。7月末に死去した李登輝元総統の告別式に参加し、蔡英文総統と会談した。行政院長(首相)や経済部長(経済相)とも会談し、米台関係経済関係の強化などを話し合った。

 米国からは8月厚生長官が訪台したばかり。相次ぐ政府高官の訪問で、米台関係強化の動きを誇示する戦略だ。

 中国は反発し、米国への批判と警告を繰り返す。19日には戦闘機19機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入、圧力をかけた。

▼安全保障の対立

 米中関係はトランプ政権の発足以来、急速に対立を深めた。米国は2018年以降、中国からの輸入品に高率関税を導入。まず貿易戦争が勃発した。次いでハイテク分野で対立を深めた。

 加えてここに来て、安全保障分野でも対立が強まっている。6月末に香港に国家安全法が導入されると、米国は中国を厳しく批判。香港への制裁を強化するなど、警戒の姿勢をあらわにした。7月には南シナ海問題を巡り、中国側の主張は国際法的に見て違法であると初めて明言した。9月の東アジアサミット閣僚会議(ビデオ)では、ポンペオ国務長官が南シナ海問題で中国を激しく批判した。

 台湾との関係強化の動きも、この脈略にある。香港の1国2制度は国家安全法により空洞化し、香港が中国に飲み込まれつつある。台湾が同様の姿にならないように、米国は支援強化を見せつけている。

▼デカップリング

 米中関係の行方には、不透明要因も多い。11月の米大統領選で民主党のバイデン候補が当選すれば、対中政策はトランプ時代のやり方とは変わるだろう。それでも、対中警戒感の高まりは、野党民主党も含め米国に広く浸透している。

 1990-2000年代、米国は中国を国際社会に受け入れることが中国の民主化や世界の安定に繋がるという見方を取り、関与政策を推進した。この考え方はいまや完全に後退している。

 米中の分断ともいえる「デカップリング」が、経済のみならず科学技術、人的交流など様々な分野で進んだ。全世界的なサプライチェーンは、中国外しの動きが広がる。ハイテク分野では、米中それぞれが相手企業の活動を制限し、締め出す動きが加速する。新型コロナの流行は、心理的に経済的効率優先主義より製品供給の確保や安全性が重要という流れを強めた。

 新冷戦という言葉もすっかり定着した。今後の米中関係を見るうえで、対立の拡大や深まりはすでに所与の事実となっている。

◎ Tick Tockと紛争刻む時の音
◎ 戦争は「貿易」だけだった2年前
◎ 「冷戦」に違和感消えるコロナの夏

2020.9.20

 

 

2020年7月 5日 (日)

◆香港1国2制度の黄昏 2020.7.5

 香港で国家安全維持法が施行された。中国の直接統治が強まり、1国2制度の形骸化の懸念が強まる。自由な自治を前提としてきた香港は、重大な曲がり角を迎えた。政治体制や価値観を巡る米欧と中国の対立にとっても、重要な節目になる。

▼中国が直接関与

 国家安全法は6月30日に中国が交付し、同日午後11時に香港で施行された。主な内容は、(1)国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託を犯罪を規定、(2)中国政府は香港に治安維持期間を新設する、(3)香港の他の法律と国家安全法が矛盾する場合は、国家安全法を優先する、などだ。

 (1)の犯罪の規定は、反中的な抗議活動や民主化デモなどを念頭にしているとみられる。(2)は、これまでの香港政府を介した間接的な関与ではなく、中国が香港に直接関与することを意味
する。(3)は、香港法が中国法の下に置かれことを鮮明にする

 

▼1国2制度の骨抜き

 

 香港は1997年の返還から50年間、「1国2制度」を約束されてきた。香港は中国の領土でありながら、法律や司法などは香港独自の制度を維持する仕組みだ。香港のビジネスは英国法の影響下に作られた香港法の下で運営され、金融業などは返還前と変わらず繁栄を維持してきた。

 国家安全法は、香港法が中国法の下に位置づけられると明確化した。1国2制度が骨抜きされると言ってもいい。

▼中国と同じ状況に

 安全法は外国人にも適用される。外国人であっても、「国家分裂」をみなされる発言は許されないし、違反を理由に逮捕されることもある。

 いわば、中国国内に居るのと同じ状況になる。これまで香港は、「言論や通信の自由がある地域」だったが、中国と同じようになる、と考えるのが分かりやすい。

▼中国は民主化に危機感

 中国が国家安全法制定に動いたきっかけの1つが、昨年の抗議デモと言われる。香港の議会が、香港で犯罪を犯した犯人を中国に送ることを可能にする「逃亡犯条例」の制定に動いたことに、民主派の住民らが反発。昨年6月以降、100万人、200万人以上が集まる大規模抗議活動が続いた。

 抗議活動の要求は民主化拡大の要求にもつながり、11月の区議会選(権限は小さいが、民意のバロメータと位置付けられる)でが民主派が圧勝した。

 この間、香港政府は有効な対抗策を打ち出せず、中国政府は危機感を強めた。結果、直接統治に繋がる香港安全法制定に動いた、という見方だ。

▼「香港の自由の死」

 香港の民主派住民らは7月1日以降、安全法に対し反対活動を展開。これに対し香港警察は取締りを強化し、安全法に対する逮捕者を出した。報道機関やネットに対する監督も強化している。香港の民主派団体も解散を余儀なくされるなど、統制が強まっている。

 元々香港の社会から自由が失われていくという見方は、幅広くあった。例えば2015年に政策された映画「十年」は、自由が失われてた10年後の香港の日常を淡々と描いている。

 しかし、今回は、1国2制度が急激に覆される展開。民主派からは(例えば蘋果日報=アップルデイリー=代表など)は、「香港の自由は死んだ」などの発言も出る。

▼経済にはダメージ、中国は想定済み

 米欧など国際社会は安全法制定に反発。米国は香港や中国に対する制裁措置を発表した。香港に進出している企業は、香港法による財産の保護などが保証されなければビジネスも展開しにくい。事業の撤退などの動きもでてくるだろう。実際、ヘッジファンドなど金融機関には、拠点を香港からシンガポールに移す事例もある。

 経済的なダメージは避けられないだろう。しかし、中国政府もその辺は十分に理解した上での決断だろう。香港が中国経済に占める割合が、返還時とは比べ物にならないほど縮小した(1997年には香港のGDPは中国の7%程度、現在は2%程度)。これも、中国が思いきった決断ができる理由の1つだろう。

▼香港住民の受入れ

 民主派の住民らが、香港から海外に流出する動きもある。旧宗主国の英国や豪州、台湾などは、香港住民を受け入れる姿勢を表明している。

 ただし、百万人単位の流出になれば、簡単に対応できるものではない(香港の人口は750万人)。欧米などの中国批判・民主派支持が、単なる言葉だけのものか。それ以上のものになるかも問われる。

▼欧米vs中国の最前線

 香港問題は、香港個別の問題であるほか、国家体制や価値観などを巡る米欧と中国の対立(競合)の最前線でもある。欧米は自由や民主主義、法の支配を尊重する体制が、人々の幸福や経済発展という観点から見て相対的に優れていると主張してきた。香港のあり方でも、中国が「1国2制度」を尊重する方が利益になる、という読みがあった。

 ただ中国は、欧米のモデルにとらわれない国家のあり方や経済発展を志向する傾向を強めている。2008年の世界金融危機以降は特にそうだ。そして、経済成長の持続や人々が豊かになるという面では、結果を出している。

 国際社会における存在感を拡大し、中国式モデルが新興国などから支持を拡大しているのも事実だ。

 香港問題は、自由や民主主義、国家のあり方に関わるこうした問題に改めて問いを突き付ける。香港住民受入れなど、個別問題についても総論では答えにならない疑問を投げかける。

 

◎ コロナの夏1国2制度黄昏時
◎ 「自由の死」を呆然と見つめ盛夏来る
◎ 嫌われても中国伸長この事実
◎ 「頑張れよ」声だけ声援空虚なり

2020.7.5

 

 

2020年6月30日 (火)

◆コロナ「感染確認者1000万人」の風景 2020.6.28

 新型コロナウイルスの感染確認者が1000万人を超えた。「確認者」の信頼性や意味には議論があるが、節目の数字としては重要だ。

▼大台到達

 新型コロナの感染が本格的に始まったのは1月。同月23日に中国の武漢が都市封鎖されたころから世界的な関心事になった。

 感染はその後、欧州から米国、さらに新興国に広がった。確認感染者数は、2月末に約10万人、3月末100万人、4月末300万人、5月末600万人、そして6月末に1000万人突破だ。

 実は確認の方法は国により異なるし、感染しても確認されない人も多い。実際の感染者は10倍という見方もある。そうだとすれば、現在の感染者は1億人だ。

▼感染拡大の風景~新興国・米国

 現在はブラジルなど新興国で感染拡大しているほか、米国では南部や西部の州を中心に感染の再拡大が始まった。

 ブラジルやインドなど、新興国の様子が映像で流れて来る。その人込みの風景をみると、感染拡大はもっともな感じがする。

 米国からはフロリダなどのビーチがにぎわい、人々が集会にマスクなしで集まる映像が流れる。マスクの共用は自由の侵害という人もいる。お国柄の違いと言えばそれまでだが、ここでも感染再拡大もうなずける。

 感染再拡大を受けて、テキサス州やフロリダ州では経済再開の中断に追い込まれ、逆に一部規制の再導入に踏み切った。

▼スペイン風邪との比較

 当初は新型コロナの感染をSARSや2009年の新型インフルエンザと対比して議論することもあったが、すでに感染規模はケタ違いになった。

 今では1910-20年代のスペイン風邪との比較が参考になる。スペイン風邪は感染者数億人、死者1700-5000万人と推定される。今のところはまだ背中を見ている状況だが、距離は接近している感じがする。

 ちなみにペストとの比較は規模的にも死亡率からみても、まだ遠い。今のところは話のための話で済む。

▼経済に打撃・基本システムは維持

 ワクチンや治療薬開発のニュースはあれこれ入ってくるが、メドは依然立っていない。新興国などでは第1波の拡大、欧米やアジアでは第2波、第3波の懸念が消えない。

 経済活動は打撃を受け、4半期ベースで見れば1-3月の中国のGDPが前年比マイナス6.8%、インドの4-6月GDPの推計は前年比約20%の落ち込みと推定される。ユーロ圏の1-3月は前4半期期比年率(前年比ではない)で10%以上落ち込んだ。

 ただ、少なくとも主要国では物流システムのマヒや食料不足など、経済崩壊をもたらす状況には陥っていない。

 コロナにより各国の政治、経済、社会の仕組みなどに様々な変化が起きている。テレワークやオンラインの活用が拡大し、政府の強権化の動きも目立つ。コロナの影響は始まったばかり、と認識すべきだろう。

◎ 月ごとに桁数繰り上げ感染者
◎ SARS並みからスペイン風邪級視野に入り
◎ 海水浴一時(いっとき)の歓声コロナの夏
◎ 「自由か死か」民主化ならば響くけど

2020.6.28

2020年5月31日 (日)

◆米中対立・新ステージに 2020.5.31

 中国が香港国家安全法制定を決めたことに対し、米国は対中国・香港制裁措置を発表した。新型コロナの感染拡大を巡っても、対立がエスカレートする。米中対立は、新ステージに入った。

▼香港国家安全法

 中国の全人代は28日、「香港国家安全法」の制定を決議して閉幕した。香港の反体制活動を禁じる内容で、中国が直接取り締まるようにする点がこれまでと異なる。

 香港は1997年の中国への返還以来、「1国2制度」の下に運営されてきた。香港の法律は、基本的に中国の法律と別のものだった。その下に、企業の自由な活動や言論の自由(程度については色々な議論がある)が維持されてきた。

 今回の決定について、香港の民主派や欧米各国は、1国2制度を骨抜きにすると懸念する。

▼米国が制裁措置

 米国は中国の決定を批判。トランプ大統領は29日、一連の制裁措置を発表した。内容は、(1)米国が香港に対して認めてきた関税やビザ発給の優遇措置を廃止、(2)中国や香港の当局者への制裁、(2)中国からの大学院生の一部の入国停止、などである。

 同時にトランプ大統領は、かねて中国寄りと批判してきたWHO(世界保健機関)からの脱退を表明した。

 コロナ問題で米国は、中国が初期の段階で情報公開を十分に行ってこなかったなどと批判。さらには、新型コロナウイルスが武漢の中国の研究所から流出したなどの批判もしている。これに対しては中国が根拠のない批判などと反論する。

▼ハイテク、企業上場、人権でも

 ここに来て米国が対中批判を強めているのは、香港問題だけではない。ハイテクや金融、人権など様々な分野で措置を打ち出している。

 ハイテクでは5月、通信大手のファーウェイに対する禁輸措置を一段と強化した。米国製の半導体装置を使った製品は、たとえ外国製でも輸出を認めないようにする内容。これにより、台湾のTSMCはファーウェーからの新規受注を停止した。

 ナスダックは新規上場企業のルール厳格化を決めた。中国企業の新規上場のハードルを高くする。米上院は、米国に上場する外国企業の透明性強化を求める法案を可決した。

 米上下院は中国がウイグル人の人権侵害批判するウイグル人権法を採決した。

▼コロナと大統領選

 2017年の米トランプ政権の発足以来、米中関係は緊張が高まった。トランプ氏は「米国第1」を掲げ、自国産業保護を優先させる姿勢を鮮明にし、2018年以降中国からの輸入品に高率の関税を課た。米中貿易戦争が勃発した。

 その後中国のハイテク産業が米国の技術を不当に盗んだり、知財権を侵害しているなどとして制裁などの措置を導入した。

 米中の貿易・ハイテク摩擦は、今年1月に第1段階の合意を締結し、一時休戦したかに見えた。

 そこにコロナの感染拡大で、状況が変わった。米政権はコロナを巡り中国への不信を強めた。トランプ大統領が秋の大統領選をにらみ、対中強硬姿勢を強めるのが得策と判断したとの見方も強い。

▼中国は勢力拡大の動き

 中国側は、コロナでは「マスク外交」とも呼ばれる感染国支援などで影響力を拡大。一方で領土問題を抱える南シナ海で実効支配を強化するなど、勢力の拡大に余念がない。香港国家安全法の制定決定も、コロナ問題で国際社会の香港への関心が弱まった機を利用したとの見方がある。

▼覇権を巡る対立

 米中の対立は、背景には覇権を巡る争いがあるとの分析も多い。中国経済の規模はすでに米国の3分の2に達し、購買力平価で比較すれば米国より大きい。数年前から一帯一路などの世界戦略を打ち出し、21世紀半ばには米国と並ぶ世界の強国になるとの目標も打ち出した。

 2000年代までの米国は、中国が経済発展を実現すれば民主化するとの見方にも届いていた。今や、そうした観測は後退している。共産党1党独裁の異形の国家が、米国の覇権国の地位を脅かそうとしているとの警戒は、トランプ政権のみならず野党民主党でも強まっている。

◆デカップリング

 トランプ政権が打ち出した自国優先、対中警戒の政策は、米国と中国の経済を分断するdecoupling(デカップリング)につながるとの見方が、以前からあった。振り返れば、東西冷戦時代の世界は2つに分断していた。コロナの流行拡大は、そうした傾向に拍車をかける可能性がある。

 コロナ感染が生み出す新常態は、経済システム、生活、政治の枠組みなど様々な分野に及ぶ。新常態への移行の多くは、スムースに行われるわけではないだろう。様々な軋轢や混乱があると考えるのが自然だ。

 その中でも、米中関係の変化は規模の大きいものの一つだろうし、覇権を巡る争いとなれば地球規模の地殻変動になるだろう。

 

◎ 新常態 やわらか表現中身は混乱
◎ そういえば 世界は割れてた世代前
◎ 疫病下の戦線拡大、またですか

 

2020年5月24日 (日)

◆コロナ禍と中国全人代・香港 2020.5.24

 中国の全人代が22日始まった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、当初予定から2カ月半遅れの開催。コロナ後の新風景や動向が見られた。

 全人代は中国の政策の基本方針などを決定(承認)するもので、毎年3月初旬に開催される。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、延期された。北京の人民大会堂に集まった全国の代表はマスク着用。雛段の指導部らはマスクを外していた。

▼経済成長の目標なし

 注目点の第1は経済。毎年、全人代冒頭での経済成長目標が注目されるが、今年は目標設定を見送った。先行き不透明要因が多いのが理由とみられるが、異例だ。

 中国の成長率は過去40年10%近い成長を実現してきたが、2019年は6.1%にとどまった。米中貿易摩擦の影響などを受けたため。

 そこに加わったコロナ禍。1-3月のGDPは、前年同期比▲6.8%と落ち込んんだ。4月以降は回復の兆しがあるものの、IMFなどの予測は通年でも1-2%程度の低成長を見込んでいる。

 コロナの今後は見通しがたい。そうした中で、中国指導部は最も重要な指標の1つだった成長目標を外すという新たな決断をした。コロナがこれまでの常識、枠組みを変えていることの表れの1つだ。

▼1国2制度の終焉?

 注目の第2は香港問題だ。李克強首相は年次経済報告で、「香港国家安全法」を制定する考えを明示した。

 香港は1997年の返還以来、50年間は1つの国の下に2つのシステムが並存する「1国2制度」を維持することになっており、法律制度も中国本土とは別だった。このため、香港の治安についても一義的には香港政府が責任を持ち、必要な法律も香港政府や香港議会が制定する仕組みだった。

 中国はこれまで、「1国2制度」の下で香港政府を支援する立場を取ってきた。香港の治安を維持する法律についても、昨年の全人代では香港政府を支援すると表明していた。この方針を転換し、中国が直接関与する姿勢を明確にした。

 こうした動きが続けば、香港は法律の上でも中国の法律の下に統合され、「1国2制度」でなく「1国1制度」になりかねない。香港の民主派などは懸念する。

 香港では2019年に、特定犯罪の犯人を中国に引き渡すことを可能にする「犯罪者引渡し条例」制定を巡り民主化運動が拡大。世界の注目を浴びた。コロナ問題の発生後は国際的に香港の動向が報道されることはめっきり減った。

 そうした中で、今回の「香港国家安全法」制定の動きが出て来た。香港問題においても、コロナが動向を左右する1つの要因になっている。

▼コロナ後の新世界

 コロナ後の世界は枠組みが従来から変わると指摘される。経済システムの変化、強権国家の増加、民主主義の危機など、様々な変化が指摘される。

 中国全人代や香港情勢からも、そうした世界の変化の予兆が見て取れる。

◎ コロナ後の世界をチラリ全人代
◎ 「緊急時」と力の支配が踊りだす
◎ 疫病がゲームのルールを変える年
◎ 非常時の反骨精神どこにある

 

2020.5.24

 

 

2020年4月 6日 (月)

◆コロナ:3か月の現実と各国の動向 2020.4.5

 新型コロナウイルスの感染拡大から3か月。世界の確認感染者は4月2日に100万人を超え、世界で移動制限などの規制を受けている人は30憶人を超える。事実関係と各国の動向をまとめてみる。

▼感染拡大の経緯

 中国・武漢で新型肺炎が確認されたのが昨年12月。新型コロナウイルスが報告されたのが2020年1月初旬だった。1月23日には武漢を封鎖し、感染は世界の行方を左右する出来事になった。その後の経緯は以下の通りである。

・1月30日 WHOが緊急事態宣言
・2月2日 フィリピンで感染者確認、初の中国外(1月23日から10日目)
・2月11日 中国で死者1000人
・2月21日 イタリアで感染者確認(29日目)
・2月23日 イタリアが北部の11自治体封鎖
・2月26日 5大陸で感染者を確認(34日目)
・3月2日 日本が公立学校休校
・3月7日 欧米で感染者が拡大、NY州が非常事態宣言【感染者10万人】(44日目)
・3月9日 イタリア全土に移動制限
・3月11日 WHOがパンデミック宣言、米が欧州からの入国禁止(48日目)
・3月12日 中国がピーク超えたと宣言
・3月13日 米が非常事態宣言、スペインが非常事態宣言、WHO「感染中心は欧州」
・3月17日 EUが外国人入国禁止【感染者20万人】(54日目)
・3月19日 イタリアの死者>中国
・3月20日 NY、イリノイなど外出禁止【死者1万人】
・3月22日 【感染者30万人】(59日目)
・3月24日 東京五輪・パラリンピック延期
・3月25日 インド全国封鎖
・3月26日 米国の感染者>中国
・3月27日 【世界の感染者50万人】、米国の感染者10万人(64日目)
・4月2日 【世界の感染者100万人】、30億人以上が移動制限(70日目)
(感染者数などはジョンズ・ホプキンス大のデータによる)

 ちなみに、4月5日現在の世界の感染者は122万人。多い国は(1)米国31万人(2)(2)スペイン13万人(3)イタリア13万人(4)ドイツ(5)フランス(6)中国など。死者は6万6000人で、(1)イタリア(2)スペイン(3)米国などである。

▼各国の対応

 各国の対応はおおむね3通りに分かれる。

(1)行動の規制:入出国の制限(禁止)、外出制限、店舗の開業規制など。いわゆるロックダウンも含み、10人以上の集会の禁止、学校の休校なども含まれる。感染の爆発的な拡大を防ぐ「封じ込め」作戦で、時間を稼ぐ面がある。

(2)医療体制の整備:病床の確保など。ワクチンの開発支援も急ぐが、メドは立っていない。

(3)経済的支援: 経済的な打撃→恐慌や経済破綻を防ぐために、財政、金融面から政策を総動員している。職場封鎖などで働けなくなった人への所得保証、企業の負債返済猶予なども含まれる。究極のバラマキにも近い政策。長期的に後遺症が出るのは避けられないが、将来に気を回すことなどできない状況だ。

▼予測・見通し

 今後の行方は見えていないのが現状である。各国・企業はワクチン開発に取り組むが、1年程度かかるとの見方もある(ジョンソン&ジョンソンは2021年初めに新ワクチンんを提供すると表明)。患者や死者数の予測もまちまちだ。トランプ米大統領は、米国内の死者が10万-24万人に恐れがあると発言した。メルケル独首相は、国民の6-7割が長期的に感染する可能性があると警告した。

▼世界の変化:社会システム維持のリスク

 欧米などの都市からは人通りが消えた。国際旅行者はほとんどいなくなり、世界中の空港は閑散としている。欧米やアジアでテレワークの人々が増え(不便ではあっても何とかこなしている)、学校ではビデオ授業が拡大している。

 人の移動は減っても物流は何とか維持され、食料もガソリンも提供されている。主要国では社会秩序も一応は保たれている。一方で、患者の拡大による医療崩壊の懸念が強まる。

 仮に物流、医療などのほころびから社会システムが崩れたら、影響は現在のレベルとは比較できないほどになる。そうした事態は、歴史的には戦争や革命などの時に出現した。

 アフリカの一部の国や中東の難民キャンプなどでの感染拡大も気がかりだ。通常の国以上に、社会崩壊のリスクがある。こうした地が感染の温床となり、第2波、第3波の感染が世界に戻って来る可能性もある。

 内向き傾向が強まりがちな状況だが、グローバルな視点が通常以上に必要ともいえる。

◎ 感染100万 世界は何とか 持ってるが
◎ 紛争地 他人事など言ってると

2020.4.5

 

2020年1月 5日 (日)

◆2020年の展望 2020.1.5

 2020年が幕を開けた。前年から続く米中対立、中東混乱、香港の抗議活動などはどう動くか。米大統領選は世界にどう影響するか。2020年を展望する。

▼主な日程

 2020年のすでに確定している主な日程は以下の通りだ。
・1月31日 英国がEUから離脱
・2月3日 米大統領選の予備選が始動(アイオワ州の党員集会)
・3月5日 中国全人代
・7月24日 東京五輪開幕、五輪、パラリンピック9月6日まで
・11月3日 米大統領選

▼米大統領選のインパクト

 2020年の世界は、米大統領選にらみで推移するのが確実だ。米中貿易交渉、対イランなどの重要政策は、選挙をにらんで決定が下される。それが世界を揺り動かす状況が続くだろう。

 それ以上に重要なのが、トランプ氏が再選されるかどうかだ。選挙結果は今後数年の世界の行方を左右する。米大統領選が世界にインパクトを与えるのは4年ごとのお決まりの出来事だが、2020年はその重要性がいつになく大きい。

 過去3年間、世界はトランプ米大統領の政策に揺れ動いてきた。トランプ氏は米外交政策の基本姿勢を、従来の多国間主義や国際協調重視から自国利益優先に変更。中国と貿易やハイテクを巡って対峙する姿勢を鮮明にし、関税の大幅引き上げを実施した。世界経済はその打撃で大幅減速した。

 安全保障面では、イラン核合意からの離脱でイランとの緊張が増した。在イスラエルの大使館のエルサレム移動やゴラン高原の主権容認などの親イスラエルの政策は、従来の秩序を覆した。こうした変更が必ずしも整合性のある戦略の下に決定されるのでなく、一貫性を欠くのもトランプ政権の特徴だ。

 米大統領選は11月の本選をにらみ、2月から予備選に入る。並行して、トランプ大統領の弾劾裁判も進む。大統領選の行方に、世界が注目する。

▼地政学リスク――中東、香港

 地政学リスクで最も緊迫しているのが中東だ。2020年早々、米国がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害。緊張が高まった。中東ではシリア、イラク、イエメン、パレスチナ、リビアなども紛争を抱えて推移する。

 香港情勢も混乱が続く。2019年6月から続く抗議活動は8か月目に入った。民主化を求める住民の抗議活動に、香港政府や中国は譲歩の姿勢を見せない。問題解決の出口は見えない。香港情勢は、中国による1国2制度の行方や中国の政治体制の行方をも占う。

 中南米では2019年、政府に対する国民の抗議活動が広がった。チリ、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、ボリビアなどだ。抗議は政権が左派、右派いずれの場合もある。ベネズエラはマドゥロ政権の下で経済破綻、国内の抗議活動と共に、大量の国民が国外に流出している。

▼ポストBrexitの欧州

 欧州では英国の1月末のEU離脱が確実になり、ポストBrexit時代に入る。EUの求心力の回復、経済改革の推進などが課題になる。それ以上に注目されるのが、欧州政治の行方だ。ポピュリズムや極右政党の台頭という流れに歯止めをかけることができるのか。民主主義の危機を回避する糸口が見つかるのか。世界全体の民主主義の行方にも影響する。

▼経済・IT革命

 2019年は米中貿易戦争の影響で世界経済が大幅に減速する一方で、株価や不動産価格などが上昇した。2018年の正常化(引締め)→2019年は緩和に転換した先進国の金融政策の影響が大きい。カネ余り下の株式・不動産価格の上昇は、バブルの兆候との指摘もある。中国や新興国では、企業や個人の負債が拡大している。経済の行方は予断を許さない。

 IT技術の進歩は加速し続け、世界の経済や社会を変えている。2019年はAIブームやデジタル通貨のリブラ計画などが注目を浴びた。技術革新は今年も様々な形で進むだろう。

 昨年は、GAFAなど巨大IT企業への規制強化議論が深まった。従来のEUに加え、米国も規制強化の方向に舵を切った。ただ、こうした議論には時間がかかる。その間に、巨大IT企業や国家による情報独占が進み、高度監視社会が推し進められていく。2020年という1年間に限る話ではないが、現代社会の在り方を問う上で避けて通れない問題だ。

▼FTの2020年展望

 英FT紙は毎年恒例で、新年の展望記事を掲載している(今年は2019年12月27日付)。ポイントを整理してみる。

(国際情勢・世界の政治)
・トランプ氏は米大統領選の一般投票で多数をとれるか――取れない(選挙に勝つかは別)
・米・イランは戦争になるかーーならない
・中南米の反政府デモは続くか――続く

(欧州情勢)
・ジョンソン英首相はEUと貿易協定で合意できるか――できる。
・英労働党は再び選挙で勝利し政権を担える政党になれるか――2020にはなれない
・メルケル独首相の大捩率政権は崩壊するか――する
・イタリアの「同盟」(極右)の政権復帰はーーある
・マクロン仏大統領はロシアのプーチン大統領と関係改善を実現できるか――できない

(経済・技術)
・米景気は後退するか――しない
・巨大IT企業に実効性のある規制を課すことができるかーーできない
・中国は5Gで世界をリードするか――する
・インド経済は主要経済で最高の成長率を回復できるか――できない
・南アは投資不適切国になるか――なる
・世界のCO2排出は減少するか――市内
・北海ブレントは年末1バレル=65ドルを超えるか――越えない

2020.1.5

 

 

 

2019年12月31日 (火)

◆2019年の10大ニュース 2019.12.31

 

 2019年が終了する。世界は今年もトランプ米大統領の政策に揺れ動いた。10大ニュースの形で、2019年をレビューする。

▼INCDの10大ニュース

 INCDが選ぶ2019年の10大ニュースは以下の通り。

(1)米中貿易戦争継続、世界経済減速
(2)米・イラン緊張と中東緊張拡大
(3)香港で抗議活動
(4)Brexitに道筋、英首相にジョンソン氏
(5)トランプ大統領を弾劾、ロシア、ウクライナ疑惑で
(6)温暖化対策求め世界中で大規模デモ、米はパリ協定離脱手続き
(7)IT大手への規制強化の動き、リブラ計画に警戒
(8)ベルリンの壁崩壊30年
(9)中国建国70年、習近平政権による締め付け、高度監視社会化が進む
(10)米欧関係の緊張高まる

▼トランプ大統領に揺れる世界

 2017、2018年に続き、トランプ米大統領の政策に世界が揺れる状況が続いた。

 具体的な事例を挙げれば、(1)対中関係=貿易戦争やハイテクを巡る対立、(2)中東政策=イランとの対立の深刻化、イスラエルによるヨルダン川西岸への入植容認など、(3)地球温暖化・環境問題=パリ協定からの離脱手続き開始など、(4)移民規制の強化=メキシコ国境の壁建設のため非常事態宣言、(5)欧州との関係悪化=貿易を巡る対立、安全保障での負担増要求など、(6)単独主義的色彩への一層の傾斜=G7サミットで総括的な合意文書なし、(7)FRBの金融政策に対する介入や圧力の強化、などだ。

 トランプ米大統領は就任以来、国際協調や多国間主義を重視する伝統的な姿勢を否定し、米国第1を前面に打ち出す姿勢をあらわにした。2019年もその延長線上で、スタンスを一層鮮明にした。

 キッシンジャー元国務長官はトランプ大統領の登場の歴史的意味について、第2次大戦後の秩序の再編という趣旨の指摘をした。2019年の行動も、その脈略で捉えるべきだろう。

 問題は、政策の一つ一つに必ずしも整合性がなく、時に思いつきのような決定な行われることだ。中東政策などに典型的に表れる。この傾向も、2017年の就任以来変わらない。

▼大統領弾劾と大統領選

 米国では野党民主党多数の下院がトランプ大統領をウクライナ疑惑で弾劾した。問題は年明け、上院での審議に入る。与党共和党多数の上院では大統領解任には至らない可能性が大きいが、米政治はこの問題に揺れ動く。

 米政治はもう一つ、2020年11月の大統領選をにらんだ動きが佳境に入りつつある。民主党の候補は乱立気味で、行方は混とんとしている。これがトランプ氏再選につながる可能性もある。

 トランプ大統領だけでなく、米国内の政治動向は世界に影響を与える。2020年の大統領選をにらんだ影響は、早くも世界に及んでいる。

▼経済不透明

 世界経済は米中貿易戦争の影響で減速が進んだ。一方、金融市場では2018年の欧米における正常化(引締め)→緩和に流れが変わり、再び大量の緩和資金が出回っている。これが株式や不動産などの価格上昇や、途上国の金融市場の乱高下などに結びついている。

 実体経済の減速+金あまりの状況で経済は2020年に入る。バブルの発生などリスクを指摘する声もある。

▼香港の抗議活動と中国の高度監視社会化

 香港では犯人引き渡し条例の改正をきっかけに6月から市民による抗議活動が拡大。同月には200万人デモが行われた。これに対し中国を後ろ盾にする香港政府は強硬姿勢を変えず、緊張が継続。1国2制度の在り方が改めて問われた。

 11月の地方選では民主派候補が圧勝、民主化を求める民意が示された。問題は7か月経っても解決の行方が見えないまま年を越す。

 中国は10月1日に建国70周年を迎えた。習近平政権は、米中経済摩擦で経済面で難しい問題に直面しながら、政治面では強硬な姿勢を崩さない。香港問題でも民主派への譲歩を否定している。

 こうした政治、経済情勢の中で、ネットにより人々の行動を監視する「高度監視社会」化は急速に進む。この問題は、世界全体にとっても2020年代の重要な課題になる。

▼IT大手規制強化 

 GAFAに代表されるIT大手への規制は、2019年曲がり角を迎えた。これまでも規制に前向きだったEUに加え、米国も規制強化の方向に舵を切った。相次ぐ個人情報流出の発覚やなどが背景にある。

 一方、環境問題では欧州が温暖化対策やプラスチックごみ対策を強化する一方、米トランプ政権はパリ協定からの離脱手続きを正式に取るなど、温度差が明確になった。

 9月20日には世界各地で数百万人が参加し、温暖化対策を求めるデモが繰り広げられた。この運動の鮮度訳の1人が16歳のスウェーデンの少女、グレタ・トゥンベルさん。環境運動の新しい旗手として注目が集まった。

▼ベルリンの壁崩壊30年

 2019年はベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終了して30年(1世代)の年だった。同時に、中国で民主化運動を弾圧した天安門事件からも30年を数えた。世界で過去30年を振り返る議論が行われた。

 30年前には世界の民主化が進み、グローバル化のプラスの面が実現していくと期待された。結果はそうはならず、格差の拡大、テロや地域紛争の拡大などの問題が深刻化した。2008年のリーマン・ショックは、資本主義の在り方に疑問を突き付け、問題は今も解決されない。

 30年目の節目は、こうした課題を再認識させた。

▼APの10大ニュース

 AP通信が世界の編集者を対象にアンケートしまとめた10大ニュースは以下の通り。米国内と国際ニュースを分けていない。

(1)トランプ大統領の弾劾  TRUMP IMPEACHMENT:
(2)トランプ政権の移民規制強化 IMMIGRATION
(3)ロシア疑惑 TRUMP-RUSSIA PROBE
(4)フロリダ州などの乱射事件 MASS SHOOTINGS
(5)オピオイド問題 OPIOIDS
(6)地球温暖化問題、米はパリ協定から正式に離脱手続き CLIMATE CHANGE
(7) BREXIT
(8)米中貿易戦争 US-CHINA TRADE WAR
(9)ボーイング737Maxの事故、安全問題 BOEING JETS GROUNDED
(10)香港情勢 HONG KONG
(番外)NZモスクでのテロ、民主党大統領選候補選び、ノートルダム寺院火災

◎ トランプに揺れる世界は4年目に
◎ 秩序という言葉を忘れて年回顧
◎ 16の少女が運ぶエコの新風

2019.12.31

 

 

2019年11月10日 (日)

◆ベルリンの壁崩壊30年と世界 2019.11.10

 ベルリンの壁崩壊から9日で30年を経過。ベルリンで記念式典が開かれた。30年と言えば1世代。世界の変化を振り返るのに良い機会だ。

▼分裂していた世界の統合

 1989年の壁崩壊は冷戦を終了させ、旧ソ連陣営は崩壊。東欧はその後ヨーロッパに復帰した。世界的には東西2大陣営に分かれていた体制の垣根が崩れ、全世界が1つのシステム下の体制となり、グローバル化が加速した。

 壁崩壊当初は民主主義と自由主義経済が世界の基準として定着していくという楽観論が強かった。しかし、事態はそう単純ではなかった。

▼世界金融危機とテロ・紛争

 経済グローバル化は世界の成長を加速し、人々の生活を豊かにしていくと期待された。しかし実際には格差拡大などの問題が深刻化。2008年のリーマンショックとそれに続く世界金融危機は、資本主義体制の欠陥を表面化させた。冷戦時代の東西対立に代わって地域紛争が各地で発生。世界の安全保障を揺るがした。

 2001年の同時多発テロは世界がテロ戦争の時代にある事をあらわにした。その後中東や欧州などでテロが続発する状況が続く。

 中東は混乱が止まず、世界の火薬庫であり続ける。テロの発生源である状況も変わらない。2011年のアラブの春は、結果的に混乱の拡大を生み、シリアやイエメンなどでは内戦が止まらない。混乱は「イスラム国」のような時代の鬼子も生んだ。

▼民主主義の危機

 欧米では成長の恩恵から取り残された人々の増加を背景に、ポピュリズムや反移民・難民政党が勢い付いた。民主主義が揺らいでいる。米トランプ政権の誕生、英国のEU離脱(Brexit)の動き、欧州のポピュリズムや極右政党の台頭、トルコなど強権色の強い政権の誕生などは、同根を持つ。

 民主主義に対する挑戦は、米国流の「ワシントン・コンセンサス」に対する開発独裁的な「北京コンセンサス」の挑戦という形でも表れる。共産党1党独裁の中国は、過去30年間に年率10%近い驚異的な成長を続け、2010年からは世界第2位の経済大国になった。

▼IT革命の影響、踊り場のグローバル化

 これからの世界がどう進むかを予測するのは難しい。ただ、ヒントはいくつか考えられる。

 ネットを中心としてIT革命はこの30年間加速し、人々の生活や経済を決定的に変えた。この流れが止まることはないだろう。ただし、これからは巨大IT企業や国家による情報独占や、IT技術が人の体やあり方を変えるような、非連続的な変化も想定できる。

 グローバル化は踊り場に差し掛かった。それでも、モノやサービス、情報の流れが国境を超えて加速する潮流は、長期的には変われないように見える。特に情報やサービスの国境を超えた移動は加速しそうだ。

▼消えたユーフォリア、改善点も

 民主主義が持ちこたえるのか。文明の衝突や、キリスト教徒イスラム教のような宗教の衝突はないのか。先行き不透明な「大問題」は数多く存在する。

 30年前のユーフォリア(幸福感)や楽観主義は、すっかり消え去った。それでも、30年間に世界が悪くなったとは言い切れない。技術革新の恩恵で、世界がよくなった点も多い。途上国伊置ける貧困率の減少などはそこに含まれるのだろう。

 ベルリンの壁の問いかけ。答えが見えない者は多く、問いは深く、重い。

◎ 30年(みとせ)前、世界は良くなったと思った日
◎ 冷めた夢それでも世界は持っている
◎ 民主主義「危機」と叫んでさてどう動く

2019.11.10

 

 

 

2019年10月13日 (日)

◆エチオピア首相にノーベル平和賞の意味 2019.10.13

 ノルウェーのノーベル賞委員会は11日、2019年のノーベル平和賞をエチオピアのアビー・アハメド首相に授賞すると発表した。国内の民族融和やエリトリアとの和平など地域安定に取り組んできた功績を評価した。

▼人口1億人、多民族のエチオピア

 エチオピアは人口1億人を超えるアフリカの大国の一つ。80以上の民族が暮らす。最大民族はオモロ人で、アムハラ人、ティグレ人などが暮らし、民族関係は複雑だ。

 宗教的にはエチオピア正教などキリスト教徒が半分を占めるのが特徴。その他にイスラム教徒や伝統宗教の信仰者がいる。

 1974年に皇帝を追放するクーデターで軍事政権が樹立されて以来、不安定な政情が続いた。1991年の政変以来エチオピア人民革命民主戦線が権力を掌握しているが、ここでは少数民族のティグレ人が政治・経済を掌握してきた。

▼若い指導者のアビー氏

 アビー氏は2018年4月に41歳で就任し、現在43歳という若い政治指導者。オモロ人のイスラム教徒として生まれ、エチオピア国内や英国で教育を受けた。博士号はエチオピアの開発問題で取得しているが、コンピューターなども学んでいる。

 与党であるエチオピア人民革命民主戦線で政治活動を始め、2018年に首相に就任した。国内では民族対立の緩和に努め、政治・経済改革を推進した。

▼エリトリアとの和平

 エチオピアは隣国エリトリアと1998年から国境紛争を抱え、2000年までに10万人が死亡。その後も緊張が続いた。アビー首相は就任から4か月の2018年7月に国交正常化で合意した。

 2019年には軍と市民グループの対立が続くスーダンで仲介を推進。民政以降に向けた合意形成に貢献した。

▼貧困と高度経済成長

 エチオピアは他のサハラ以南(サブサハラ)の国々と同じように経済発展が遅れ、1人当のGDPは1400ドル程度(2014年)。国連開発計画委員会の2017年発表のリストでも、後発開発途上国に留まる。

 しかし過去10年あまりの経済成長は顕著で、平均10%前後の成長を続ける。近年の経済発展の背景には、中国による投資も大きい。

▼ノーベル賞のメッセージ

 近年のノーベル平和賞授賞は、地域の和平促進や全地球的な問題(環境問題、女性の教育など)への取り組みを後押しする意味合いを込める事が多い。今回のアビー氏への授賞もそうした脈略で捉えられる。

 地域和平の促進は、ノーベル賞の授賞後に頓挫・後退したケースも多い。エチオピアやアフリカ情勢の今後に注目だ。

 参考に、過去10年のノーベル平和賞をリストアップする。

・2010 劉暁波(中国) 中国の人権活動家
・2011 エレン・ジョンソン・サーリーフ(リベリア)、レイマ・ボウィ(リベリア)、
    タワックル・カルマン(イエメン) 女性の権利
・2012 EU 欧州の発展と安定
・2013 化学兵器禁止機関 化学兵器排除の活動
・2014 マララ・ユスフザイ(パキスタン)、カイラシュ・サティーアーティ(インド)
    女性や児童などの権利の擁護、教育の権利
・2015 チュニジア国民対話カルテット 同国民主化に対し
・2016 サントス大統領(コロンビア) コロンビア内戦の和平推進
・2017 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN、スイス) 核兵器廃止条約への貢献
・2018 デニス・ムクウェゲ(コンゴ民主共和国)、ナーディーヤ・ムラード(イラク) 
    戦時の性暴力
・2019 アビィ・アハメド(エチオピア)

◎ノーベル賞ニュースにアフリカ考える
◎サブサハラ貧困と笑いが十重二十重

2019.10.13

 

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