カテゴリー「世界の潮流」の113件の記事

2019年11月10日 (日)

◆ベルリンの壁崩壊30年と世界 2019.11.10

 ベルリンの壁崩壊から9日で30年を経過。ベルリンで記念式典が開かれた。30年と言えば1世代。世界の変化を振り返るのに良い機会だ。

▼分裂していた世界の統合

 1989年の壁崩壊は冷戦を終了させ、旧ソ連陣営は崩壊。東欧はその後ヨーロッパに復帰した。世界的には東西2大陣営に分かれていた体制の垣根が崩れ、全世界が1つのシステム下の体制となり、グローバル化が加速した。

 壁崩壊当初は民主主義と自由主義経済が世界の基準として定着していくという楽観論が強かった。しかし、事態はそう単純ではなかった。

▼世界金融危機とテロ・紛争

 経済グローバル化は世界の成長を加速し、人々の生活を豊かにしていくと期待された。しかし実際には格差拡大などの問題が深刻化。2008年のリーマンショックとそれに続く世界金融危機は、資本主義体制の欠陥を表面化させた。冷戦時代の東西対立に代わって地域紛争が各地で発生。世界の安全保障を揺るがした。

 2001年の同時多発テロは世界がテロ戦争の時代にある事をあらわにした。その後中東や欧州などでテロが続発する状況が続く。

 中東は混乱が止まず、世界の火薬庫であり続ける。テロの発生源である状況も変わらない。2011年のアラブの春は、結果的に混乱の拡大を生み、シリアやイエメンなどでは内戦が止まらない。混乱は「イスラム国」のような時代の鬼子も生んだ。

▼民主主義の危機

 欧米では成長の恩恵から取り残された人々の増加を背景に、ポピュリズムや反移民・難民政党が勢い付いた。民主主義が揺らいでいる。米トランプ政権の誕生、英国のEU離脱(Brexit)の動き、欧州のポピュリズムや極右政党の台頭、トルコなど強権色の強い政権の誕生などは、同根を持つ。

 民主主義に対する挑戦は、米国流の「ワシントン・コンセンサス」に対する開発独裁的な「北京コンセンサス」の挑戦という形でも表れる。共産党1党独裁の中国は、過去30年間に年率10%近い驚異的な成長を続け、2010年からは世界第2位の経済大国になった。

▼IT革命の影響、踊り場のグローバル化

 これからの世界がどう進むかを予測するのは難しい。ただ、ヒントはいくつか考えられる。

 ネットを中心としてIT革命はこの30年間加速し、人々の生活や経済を決定的に変えた。この流れが止まることはないだろう。ただし、これからは巨大IT企業や国家による情報独占や、IT技術が人の体やあり方を変えるような、非連続的な変化も想定できる。

 グローバル化は踊り場に差し掛かった。それでも、モノやサービス、情報の流れが国境を超えて加速する潮流は、長期的には変われないように見える。特に情報やサービスの国境を超えた移動は加速しそうだ。

▼消えたユーフォリア、改善点も

 民主主義が持ちこたえるのか。文明の衝突や、キリスト教徒イスラム教のような宗教の衝突はないのか。先行き不透明な「大問題」は数多く存在する。

 30年前のユーフォリア(幸福感)や楽観主義は、すっかり消え去った。それでも、30年間に世界が悪くなったとは言い切れない。技術革新の恩恵で、世界がよくなった点も多い。途上国伊置ける貧困率の減少などはそこに含まれるのだろう。

 ベルリンの壁の問いかけ。答えが見えない者は多く、問いは深く、重い。

◎ 30年(みとせ)前、世界は良くなったと思った日
◎ 冷めた夢それでも世界は持っている
◎ 民主主義「危機」と叫んでさてどう動く

2019.11.10

 

 

 

2019年10月13日 (日)

◆エチオピア首相にノーベル平和賞の意味 2019.10.13

 ノルウェーのノーベル賞委員会は11日、2019年のノーベル平和賞をエチオピアのアビー・アハメド首相に授賞すると発表した。国内の民族融和やエリトリアとの和平など地域安定に取り組んできた功績を評価した。

▼人口1億人、多民族のエチオピア

 エチオピアは人口1億人を超えるアフリカの大国の一つ。80以上の民族が暮らす。最大民族はオモロ人で、アムハラ人、ティグレ人などが暮らし、民族関係は複雑だ。

 宗教的にはエチオピア正教などキリスト教徒が半分を占めるのが特徴。その他にイスラム教徒や伝統宗教の信仰者がいる。

 1974年に皇帝を追放するクーデターで軍事政権が樹立されて以来、不安定な政情が続いた。1991年の政変以来エチオピア人民革命民主戦線が権力を掌握しているが、ここでは少数民族のティグレ人が政治・経済を掌握してきた。

▼若い指導者のアビー氏

 アビー氏は2018年4月に41歳で就任し、現在43歳という若い政治指導者。オモロ人のイスラム教徒として生まれ、エチオピア国内や英国で教育を受けた。博士号はエチオピアの開発問題で取得しているが、コンピューターなども学んでいる。

 与党であるエチオピア人民革命民主戦線で政治活動を始め、2018年に首相に就任した。国内では民族対立の緩和に努め、政治・経済改革を推進した。

▼エリトリアとの和平

 エチオピアは隣国エリトリアと1998年から国境紛争を抱え、2000年までに10万人が死亡。その後も緊張が続いた。アビー首相は就任から4か月の2018年7月に国交正常化で合意した。

 2019年には軍と市民グループの対立が続くスーダンで仲介を推進。民政以降に向けた合意形成に貢献した。

▼貧困と高度経済成長

 エチオピアは他のサハラ以南(サブサハラ)の国々と同じように経済発展が遅れ、1人当のGDPは1400ドル程度(2014年)。国連開発計画委員会の2017年発表のリストでも、後発開発途上国に留まる。

 しかし過去10年あまりの経済成長は顕著で、平均10%前後の成長を続ける。近年の経済発展の背景には、中国による投資も大きい。

▼ノーベル賞のメッセージ

 近年のノーベル平和賞授賞は、地域の和平促進や全地球的な問題(環境問題、女性の教育など)への取り組みを後押しする意味合いを込める事が多い。今回のアビー氏への授賞もそうした脈略で捉えられる。

 地域和平の促進は、ノーベル賞の授賞後に頓挫・後退したケースも多い。エチオピアやアフリカ情勢の今後に注目だ。

 参考に、過去10年のノーベル平和賞をリストアップする。

・2010 劉暁波(中国) 中国の人権活動家
・2011 エレン・ジョンソン・サーリーフ(リベリア)、レイマ・ボウィ(リベリア)、
    タワックル・カルマン(イエメン) 女性の権利
・2012 EU 欧州の発展と安定
・2013 化学兵器禁止機関 化学兵器排除の活動
・2014 マララ・ユスフザイ(パキスタン)、カイラシュ・サティーアーティ(インド)
    女性や児童などの権利の擁護、教育の権利
・2015 チュニジア国民対話カルテット 同国民主化に対し
・2016 サントス大統領(コロンビア) コロンビア内戦の和平推進
・2017 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN、スイス) 核兵器廃止条約への貢献
・2018 デニス・ムクウェゲ(コンゴ民主共和国)、ナーディーヤ・ムラード(イラク) 
    戦時の性暴力
・2019 アビィ・アハメド(エチオピア)

◎ノーベル賞ニュースにアフリカ考える
◎サブサハラ貧困と笑いが十重二十重

2019.10.13

 

2019年9月 8日 (日)

◆INCD1000号:この20年の世界の変化 2019.9.8

 INCDは2000年7月の創刊から1000号に達した。この間20年弱の世界の変化は、予想を超えるものだった。

▼グローバル化とIT革命、国の形の変化

 20年前に世界をどう見ていたのか。2000年12月30日号のINCD(年間回顧)は、『冷戦後の世界は、経済的には「新産業革命」や「グローバリゼーション」、政治的には「国の形の変化」をキーワードに動いてきた』と指摘している。世界の潮流を見るキーワードは、現在にそのまま通じる。

 ただ具体的な変化の内容となると、当時は想像できなかった形で世界は動いた。2001年の同時多発テロ、2008年のリーマン・ショック、スマホやSNSの普及、アラブの春、中国台頭のスピードなどは予想を超えていた。格差拡大などグローバル化の矛盾は、Brexitやトランプ米大統領の登場、難民危機などの形で顕在化した。

▼世界の枠組み:米国1強→「警察官」不在、テロ、中東混乱の時代

 2000年当時は「米国の1極支配」が論じられた。冷戦後の1990年代を通じ米国の軍事力やハイテクの力は突出。旧ユーゴ紛争などで米国が世界の安保を仕切る姿が目立った。

 しかし翌2001年9月11日の同時テロを契機に局面は変わっていく。世界はテロ戦争の時代に突入。米国はアフガン戦争、イラク戦争を仕掛けるが、中東情勢は泥沼化。米国の権威と指導力は揺らぐ。米国は次第に海外での役割を軽減する姿勢に転じ、「世界の警察官」の役割から降りていく。

 2011年のアラブの春で、中東の混乱の渦は拡大した。シリアやリビア、イエメンなどで内戦が拡大。混乱の中から「イスラム国」のようなテロ集団も台頭した。

 混乱の背景には、世界の安全保障体制とグローバルガバナンスの問題、格差、文明の衝突など様々な問題が指摘される。2019年の今は、イラン問題など新たな紛争リスクが持ち上がる。

▼IT革命

 ITを中心とした新産業革命は潮流としては20年前に予測されたものの、具体的中身は想像を超えた。2000年当時、すでにインターネットは普及していたが(Windows95の登場から5年目)、携帯は一部のユーザーが使うだけだった。Goodleなど検索サービスはまだ初期段階で、iPod(2001年発売)もWikipedia (2002年開始)もYouTube(2006年)もなかった。

 2000年代にはFacebookをはじめとするSNSが発展。2007年にはアップルがiPhoneを発売してスマホの時代に入る。UberやAirbnbなどシェアリングサービスも本格的に始まった。

 2010年代になるとこうしたサービスが急速に浸透。世界の過半数を超える人々がネットでつながり、様々なサービスを受けられる時代が到来した。

 一方でGAFAに代表される大手IT企業が情報を独占し、中国など国家が個人の情報や行動を厳しく監視するようになっている。SNSを通じた情報の流れは世論形成のメカニズムを変え、アラブの春や香港での抗議運動の原動力となる一方、フェイクニュースが横行しトランプ米大統領流の政治を拡大させた。光と影の両面を持って、IT革命は世界を変えている。

▼グローバル化新段階

 1990年以降、グローバル化は貿易や投資の拡大を通じた新興国経済の発展など、明るい面に光が当たった。しかし2000年代以降、負の側面も注目されるようになっていく。

 2001年の同時テロで焦点が当たった「格差」の問題は、その後も解決されることなく推移。「勝ち組」や「負け組」という言葉は世界でも強く意識された。紛争やテロの拡散(グローバル化)は各地の安定を揺るがし、地域紛争は大量の難民を生んだ。2015年の欧州難民危機はその代表だ。

 格差は世界各地でテロの温床となり、先進国ではポピュリズムや反移民・難民運動が横行するようになった。トランプ米大統領は中国に対し貿易戦争を仕掛け、関税引き上げ合戦が加速する。

 グローバル化は明らかに新段階に入った。これが一時の踊り場なのか、見極めは重要だ。

▼リーマン・ショックと世界経済

 2008年のリーマン・ショックとそれに続く世界金融危機を契機に、資本主義体制のあり方が問われた。世界経済を巡っては1980年の米レーガン大統領、英サッチャー首相の時代以降、新自由主義的な考え方が支配的だった。

 しかし世界金融危機では大手金融機関救済に大量の公的資金が使われ、市場万能主義の限界が明確になった。危機直後には資本主義の見直しが必要と強調されたが、議論は進まないまま年月が経過している。

 金融危機後、米国や欧州などは経済立て直しに大胆な金融緩和を実施した。その結果世界恐慌に陥る事態は防止したが、世界経済は大量の緩和資金を抱える構造になった。景気回復後もその資金は回収されず、新たなバブルが発生しているという指摘は多い。

▼中国の台頭

 中国経済はこの20年の間に急速に発展した。期間を通じ年率10%近い成長を維持。2010年には世界第2の経済大国に発展し、2020年代には米国を追い抜く可能性がある。

 1人当たりのGDPは1万ドル近くに到達し、アリババやテンセントなど世界的なハイテク企業も育った。

 リーマン・ショックで新自由主義やそれを中心としたワシントン・コンセンサス信頼が失われた。それに代わるかのような形で、開発独裁的な国家資本主義の元で急速な成長を続けた中国式のモデルが魅力を増した。

 その中国経済も、米トランプ大統領の仕掛けた貿易戦争で局面が変わる可能性がある。今後どう推移するか、注目点の一つだ。

▼環境、社会の変化

 この20年を振り返ると、その他にも重要な変化がある。地球温暖化などの環境問題が世界共通の問題という認識が広がり、様々な取り組みが進んだ。パリ協定など国際的な枠組みはトランプ米政権の離脱など曲折がある。しかし、電気自動車の開発や普及は加速し、欧米など先進国では食の安全(オーガニック食品の普及)やプラスチックごみの規制、エコシティの拡大など実体のある動きが広がっている。

 社会規範も変わった。LGBTの権利は着実に拡大。欧米では同性婚の受け入れが拡大する。安楽死は受け入れが広がり、女性の社会進出は曲折あるものの進展している。ネットの発展で、文化の変化も顕著だ。

▼新たな変化の方向は

 今後に向けた変化の兆しは多様で材料も多い。トランプ米政権は、貿易や安全保障、米中関係など他分野で従来のルールを否定し、新しいルール作りを目指している。第2次世界大戦後秩序の見直しとも言ってもいい。米中の争いは新たな派遣争いかもしれない。

 国家の姿も変わっていく。BrexitやEUの行方は、国民国家の行方を占う。中東の混乱やテロは、イスラムとの共存という問題を突き付ける。

 IT技術の発展は社会の仕組みを変えようとしているが、そのインパクトは未知数。歴史学者のハレリが指摘するような「ホモ・デウス」の時代に進むのであれば、その変化は人類というの存在にも関わる。

 変化は未知数だが、少なくとも、従来の変化を延長する「未来年表」的な予測で見通せるものではない。次の20年の変化が、過去20年の変化より大きいであろうことは間違いないだろう。

◎ メルマガに綴った「リーマン」「テロ」「スマホ」
◎ ネットありウーバーは想像外のふた昔
◎ アメリカの時代が続くと思ってた

20190908

2019年8月27日 (火)

◆G7首脳会議が映した世界の変化 2019.8.26

 G7首脳会議が24-26日、仏南西部ビアリッツで開かれた。会議は米トランプ大統領に掻き回され、通商や環境など多くの問題で意見の違いが際立った。40年以上に渡る会議で初めて包括的な首脳宣言の採択を見送るなど、世界の変化を映した。

▼包括的首脳宣言なし

 今年の会議は包括的首脳宣言の採択を見送った。採択見送りは前身のG5首脳会議が1975年に始まって以来初めてだ。

 首脳宣言は世界が直面する経済・政治問題全体をカバーし、G7首脳の共通認識や、協力して取り組むべき政策などを示してきた。向こう1年の世界の針路を示すものともいえた。内容は詳細で、2016年の伊勢志摩サミットの場合32ページだった。

 これに対して今年のサミットの「宣言」(G7 Leaders’ Declaration)は1枚。内容は、通商、イラン、ウクライナ、リビア、香港情勢の5項目で、いずれも1-4行のとどまる。宣言というよりメモのような形だ。

▼トランプ時代のサミット

 トランプ米大統領が2017年に登場してから3年。大統領はそれまで米欧など先進国の共通認識だった保護主義反対や多国間主義重視に異を唱え、自国利益第一(米国第一)の立場を鮮明にした。米国は地球温高防止のパリ条約や、イラン核合意からも脱退した。

 G7首脳会議に対しても懐疑的な姿勢を取り、不要論を公然を唱える場面もあった。昨年(2018年)のカナダでのサミットは首脳宣言にいったん合意したが、終了後に署名を拒否、混乱に陥らせた。

 こうした「トランプ時代の現実」を踏まえ、議長国フランスは最初から包括的首脳宣言の採択を前提としないで準備を進めた。その結果が包括的首脳宣言なしだ。

▼「保護主義反対」を言わない世界

 G7首脳会議は元々、世界経済を議論するために始まった会議。その世界経済を揺り動かすのが米中貿易戦争だ。会議で各首脳は米中貿易戦争に懸念を示したが、それ以上の具体的な議論は進まなかった。

 宣言には世界経済の安定希望など常識論を盛り込んだ。また米国の立場に配慮してWTOの抜本的な改革の必要性を指摘した。一方、トランプ大統領の登場以降、主要な国際会議の宣言から消えた「保護主義反対」の表現は今回もなかった。それどころか議論も行われなかった。

▼地球温暖化問題とアマゾン火災

 地球温暖化問題も米国と仏独などが対立したままだった。議長国フランスのマクロン大統領は温暖化問題を正面から取り上げて、トランプ米大統領と衝突するのを避け、からめ手で環境問題の議論を進めた。

 焦点を当てたのがアマゾンの火災。アマゾンは地球全体の酸素の5分の1を生み出していると推測されるが、今年に入り火災が急増している。ブラジルのボルソナーロ大統領が自然保護より開発優先の政策を打ち出し、その結果、農地開発や牧畜のため森林焼却が増えているためとされる。

 G7で取り上げたことから、この問題を巡る国際的な報道が急増。ブラジルに対する国際世論の批判が高まった。G7としても2000慢ドルの緊急支援など支援策を表明した。ボルソナーロ氏は支援を拒否したものの、国際世論に配慮し、軍隊を派遣し消火活動に動き出した。

▼イラン外相の電撃訪問

 マクロン氏はイラン問題でも独自色を出した。会議の場所にイランのザリフ外相を招き同氏の電撃訪問を実現。イラン核問題に新たな議論を引き起こした。訪問は、米国との事前調整などなしに進めたと報じられる。

 首脳会議にはアジアや中東、アフリカの首脳も招き、G7の枠組みの会合のほか、拡大版の会合も多数開催した。

▼首脳間の相性

 G7サミットの中継からは、首脳間の関係の良し悪しや相性も伝わってきた。夫人とともに各国首脳を迎えたマクロン氏は、メルケル独首相、トルドー・カナダ首相らとは親密に抱き合った上で話をし、良好な関係を示した。

 トランプ米大統領とはぎこちない握手の一方、会話に努めているように見えた。ジョンソン英首相とは、冷めた感じの握手ばかりが目立った。日本の安倍首相は緊密に迎えたが、直接の会話が難しいせいか共にいた時間は少なかった。

▼変化を映す場面

 米CNNは首脳会議について、"Trump's Chaos on full display at G7" (トランプが引っ掻き回したG7)と論じた。トランプ時代の現実をよく表現する。一方で、中国やロシアが不在であるのもG7の現実だ。

 今年のG7首脳会議は例年以上に話題が多く、見えてくるものも多かった。

◎ G7昔は世界を仕切ってた
◎ トランプで会議ゴタゴタ織り込み済み
◎ 「価値観を共有」と言った4年前
◎ アマゾンの火災に唸る10億人

2019.8.26

 

 

2019年7月23日 (火)

◆トランプ氏のGo Back発言の波紋 2019.7.21

 トランプ米大統領が野党民主党急進派の女性議員らに「国に帰ったら」とツイッターで発信。これに内外で批判が高まり、波紋を広げている。ドイツのメルケル首相は公然とトランプ氏を批判、米欧の首脳間で価値観を巡る対立が公然化するなど、事態は尋常ではない。

 ツイッター発信は14日に行われた。Huffington Post日本語版によれば、ツイートは「興味深いことがあります。いわゆる“進歩的“な民主党の女性議員たちはもともと、政府が完全に崩壊していて、最悪で、腐敗していて、世界中のどこにあっても機能しない国の出身です。(もしそれが政府と言えるならの話ですが…)」

 「そんな議員たちが、地球上で最も偉大で最も強力な国家であるアメリカ合衆国の人々に、私たちの政権運営への悪口を吹聴しています。なぜ彼女たちは政府が崩壊して犯罪が蔓延している出身地に戻って、手助けしないのでしょう?」

 「その後戻ってきて、どうやって解決したのか教えて欲しい。そうした国は、あなた方の援助をひどく必要としているから、簡単には戻って来れないがね。(民主党の)ナンシー・ペロシ下院議長が喜んで無料の旅券を手配してくれると確信しています!」

▼民主党4議員

 女性議員の名指しはしなかったが、幼少期にソマリアから移住したイルハン・オマル氏、プエルトリコ系のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏、パレスチナ系のラシダ・タリーブ氏、アフリカ系のアヤンナ・プレスリー氏の4人とみられている。

 ツイートは直ちに世界に拡散。トランプ氏の"Go back to your country"発言として認識された。

 4人は15日会見し白人至上主義の考えであるなどと批判。下院は16日大統領批判の決議を採択した。海外ではメルケル独首相が会見でトランプ発言(発信)を批判、自分は4人の議員側に寄り添うと表明した。

▼白人至上主義の影

 トランプ支持者は集会で発言を歓迎。トランプ氏の"Go back"をさらに強めて"Send back"などと連呼する動きも出た。これにはさすがにトランプ氏も距離を置いた。

 言葉の細かいニュアンスなどについては議論が分かれるところがあるだろう。しかし、米大統領がここまで人種差別に無警戒な発言をし、社会にインパクトを与えた例は少ない。トランプ支持層に、本音では白人至上主義の人々が多く含まれている表れと見ることも可能かもしれない。メルケル独首相が論争に参加するのも異例だ。

 トランプ氏はビジネスマン時代、テレビ番組で"You are fired"の発言で一段と有名になった。私企業(のモデル)ならとにかく、国が”Go Back"と言ったら基本的人権に抵触する問題だ。

 

 トランプ発言の一つとして、歴史的にも記録されるものになるだろう。しかし後味はかなり悪い。

 

◎ 「米国第1」も「国に帰れ」もはや定着
◎ "Go Back" トランプの姿に重なりぬ

2019年6月17日 (月)

◆香港の抗議デモと世界への問いかけ 2019.6.16

 香港で「逃亡犯条例」改正を巡り市民らの抗議活動が拡大。行政長官は改正の延期を表明した。しかし今後事態がどう展開するか、予断を許さない。香港の事態は、民主主義体制の経つを米欧などが中国とどう付き合っていくかなど、世界への問いも投げかける。

▼100万人の抗議デモ

 条例改正は、香港で逮捕した容疑者などを中国本土に送れるようにする内容。英語ではExtradition lawと表記されることが多い。親中派が多数の立法会は、20日ごろまでに採決の構えを見せていた。

 民主派は条例が改正されれば、中国にとって都合の悪い人物が不当逮捕され大陸に送られると懸念。同派が呼び掛けた9日のデモには、主催者発表で103万が参加した。この規模は、2003年の固化安全条例反対(50万人)や、2014年の雨傘運動(10万人)をはるかに上回る。

▼揺らぐ1国2制度

 香港は1997年の返還後、50年間は1国2制度を認められるはずだった。しかし現実には中国の支配が次第に強まり、自由な言論や政治活動が抑制されている。今回条例改正が実現すれば、司法や警察でも中国による支配がさらに強まりかねない。

 そうなれば、香港の法律体系の上に回っている経済活動にも影響が出てくる。実際、外資系企業の撤退や拠点縮小がささやかれる。

 こうした心配があるから、抗議活動には民主派だけでなく、一般市民が加わり、経営者も理解を示した。

▼延期表明後→200万人デモ

 林鄭月娥行政長官は15日、対立緩和のために規制の延期を発表した。しかしあくまで撤回ではないと主張した。

 これに対し民主派は撤回を求め、16日も抗議集会を継続。参加者は主催者側発表で約200万人に達した。行政長官の辞任を求める声も上がった。

▼雨傘運動の記憶

 今回の抗議活動の舞台は、香港島の立法院前とその周辺の道路。2014年に雨傘運動の中心になった地と同じだ。雨傘運動は2017年の香港行政長官選挙に事実上親中派のみしか立候補できず、自由選挙でなくなることに抗議する学生らが始めた。同年9月26日から12月15日まで80日あまり続いたが、結局要求を聞き入れられることなく終結した。

 今回は雨傘運動に比べ、市民の参加者も多く、とりあえず条例改正の延期を勝ち得た。しかし、香港当局屋中国がこのまま撤回に応じると見るのは楽観すぎる。今後の行方は全く不透明だ。

▼天安門事件30年の年

 抗議活動は、天安門事件30周年に起きた。6月4日、香港や台北などでは追悼式典や様々な行事が行われたが、北京は全くの平穏だった。中国では、事件について何も語られなくなった。これが香港の未来図か、と不安を抱く人も多い。

▼世界への問い

 実際大きな流れとしては、中国による香港支配の強化が進んでいるのが現実だ。この先、再び強硬策が導入されても不思議ではない。

 条例改正は、1国2制度の行方(まやかし)、中国による自由社会支配のあり様、住民の生き方など様々な問題に問いを突き付ける。それは、世界が中国とどう付き合うかという問題にも関係する。奥は深い。

◎ 雨傘の記憶再生 もう5年
◎ 自由なき大国の膨張どう生きる
◎ 怖いけどただ飲み込まれてなるものか

2019.6.16

2019年6月11日 (火)

◆天安門時代30年の問いかけ 2019.6.9

 中国で1989年の天安門事件から30年が経過した。中国はその後、世界の予想を大幅に上回る高成長を実現し、国際社会における存在感と影響力を大きく高めた。一方、民主化や政治的自由はむしろ後退。欧米とは異形の大国になった。

 中国の台頭は、様々な面で世界を揺るがす。開発独裁的な中国型の成長モデルは、途上国にとって一つの見本になった。冷戦後の規範になると思われた米欧流の「民主主義+市場経済」モデルに、中国モデルが挑戦している図式だ。天安門事件後の中国の30年の歩みは、世界の価値観をも揺るがしている。

▼香港・台湾で追悼、北京は厳戒

 天安門事件から30年の6月4日、香港や台湾では民主派団体らが追悼集会を開いた。香港のビクトリアパークの集会には主催者発表で18万人(警察発表は3万7000人)が参加。犠牲者を追悼するとともに、政治犯の釈放などを求めた。台北の自由広場でも集会が開催された。

 米国のポンペオ国務長官は、中国を国際社会に組み入れればより開かれた社会になると期待したが「希望は打ち砕かれた」と表明。EUのモゲリーニ外交安保上級代表も中国で「表現、集会、報道の自由への抑圧が続いている」と批判した。

 一方、中国・北京の天安門広場では、普段より多数の警官を配備し、多くの監視カメラを配置するなど厳戒態勢が敷かれた。当日、広場には普段通り観光客らが集まり、あたかも「何もなかった」かのように1日が過ぎた。

 30周年を前に中国当局は、インターネットやパソコンの監視を強化し警戒を強化。そこには当局が平静をよそに、神経質になっている面もうかがわせた。

▼30年間で経済規模30倍

 天安門事件の後、米欧は中国に対し経済制裁を実施。中国経済の先行きを危ぶむ見方も強まった。

 しかし、実際には事件直後の成長率こそ実質4%程度に落ち込んだものの、その後実質10%前後の成長を実現。名目のGDP(米ドル換算)は、事件前の1988年の4110億ドルから2018年には13兆4570億ドルに30倍に増えた(IMFのWEO2018年10月推計)。購買力平価のGDPは、2014年から世界1だ。

 30年の間に中国経済は「世界の工場」から「世界の市場」へと発展。アリババやテンセントなどの世界的なIT企業も育ってきた。中国政府は「一帯一路」構想を打ち上げ、世界的なインフラ開発などのプロジェクトでも主導権を取ろうとしている。

▼政治的抑制、凄まじい監視社会

 一方で、政治的には抑圧が強まった。天安門事件に参加した学生や知識人は厳しい監視下に置かれたり、自ら中国を去ったりした。メディアに対する規制は強まり、政治的な批判を載せる場はなくなっていった。

 インターネットやSNS時代になると、ネットの監視や検閲、ネットを使った世論誘導を強めた。2017年に施行したインターネット安全法は、事実上当局に対しネットの内容を検閲したり規制することを認めるもの。ビッグデータや監視カメラを使い、国民一人一人の行動やネットでの活動履歴を追跡することも可能になり、中国は凄まじいまでの監視社会になりつつある。

▼政治・軍事的膨張

 国際的には経済でなく、政治、軍事的な膨張も目立つ。
 
 南シナ海では南沙諸島(スプラトリー諸島)に軍事基地を建設するなど、実行支配を拡大。ベトナムやフィリピンなど周辺国との緊張を繰り返しながら、勢力を拡大している。一帯一路戦略に沿って、スリランカやギリシャの港湾の利用・運用権を獲得し、米国などの警戒を呼び起こした。アフリカ諸国との経済・政治面での結びつき着々と強化している。

 サイバー分野での戦略も進む。人民解放軍はサイバー軍の強化に努め、軍が抱えるハッキング集団は強力だ。米国などへのサイバー攻撃がしばしばニュースになる。

 米トランプ政権が中国に対し、貿易と並んでハイテク戦争を仕掛けているのも、中国のこうした動向を警戒するためだ。

▼異形の大国

 冷戦終了後、欧米では民主主義と市場経済が世界の規範となるとの見方が広がった。フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」に代表された歴史観だ。中国も経済発展が進めば、政治的な自由化も徐々に進み、いずれ民主化されると、楽観論を唱える識者も多かった。

 実際に起きたことは別。経済面は市場経済ルールを活用して大いに発展した。しかし政治では民主化が進まないどころか、ますます抑圧が強まった。「政治は独裁・経済は自由」という欧米とは異なる、「異形の大国」に育ったと言っていいかも知れない。これが天安門事件後30年(1世代)の中国の歩みだ。

▼北京コンセンサス

 民主主義と言う価値観を共有しない一方で、経済発展著しい中国に対し、米欧は心穏やかではない。米トランプ政権は、中国の位置づけを協調する相手から「覇権を争う競争相手」へと明確に変えた。欧州諸国も中国を競争相手とする位置づけを強めている。

 しかし途上国の中には、中国式のモデルに魅力を感じる国は少なくない。特に、政治面で強権体制を敷いていたり、独裁的な政治指導者には都合がいい。この開発独裁的な、北京コンセンサスとも呼ばれるモデルが、価値観の面でじわじわ広がっているようにも見える。

 天安門事件は、こうした流れの出発点だった。

▼リベラル・デモクラシーの試練 

 英FT紙のギデオン・ラックマン氏は、6月4日付紙面で"Beijing, Berlin and the two 1989s"というコラムを掲載した。1989年は天安門事件が起きたとともに、ベルリンの壁崩壊で冷戦が終結した年だ。後者は自由主義体制が共産主義体制に勝利した節目として、世界史上の重要な事件に位置付けられてきた。

 しかし、欧米の経済と民主主義と経済はいま、重要な危機直面している。経済は成長が鈍化しているうえ、格差の拡大など深刻な問題が目立つ。

 民主主義に関係する動きとしては、欧州でも米国でもポピュリズムや極右政党の台頭が顕著。人々は内向き思考を強め、反移民政党が力を得ている。フェイク・ニュースが蔓延し、一部の国では権力者による情報操作も強まっている。トランプ大統領らは移民問題などで、しばしば強引(強権的)な手法を使う。

 ラックマン氏は、「未来の歴史家は、1989年の重要な出来事はベルリンの壁の崩壊ではなく、天安門事件だったと判断するかもしれない」と指摘する。

 米欧の近年のポピュリズムや反移民の動きの台頭や内向き思考、一部で見られる強権的手法への傾きの背景には、もちろん様々な事情がある。しかし、中国の成功に影響された面はないのか。そうだとしたら、経済や政治のみならず、価値観の面でも中国の影響拡大が、予想を超えて進んでいると言えるかもしれない。

▼知った気にならずに
 
 中国の天安門事件30年を語る時に忘れてはいけないのは、30年前に中国がこれだけ(経済的に)成功すると予想した人はほとんどいなかったという事実だ。現在から振り返って、「中国がなぜ成功したか」を明快に語れる経済学者もほとんどいない。我々は、実はあまり分かっていない。この点を謙虚に認めることは重要と、つくづく思う。

◎「こんな矛盾 持つわけない」と一世代
◎ 好調な独裁国家に「どうしよう」
◎ 自由より内向きが受けてる、正念場

2019.6.9

 

 

2019年3月18日 (月)

◆NZテロ事件が投げかけるもの 2019.3.17

 ニュージーランド・クライストチャーチのモスクで乱射事件があり、移民のイスラム教徒ら50人が犠牲になった。世界でも平和で寛容な同国での事件は、世界に衝撃を与え、課題を突き付けた。

▼金曜礼拝の襲撃 

 犯行は15日昼に金曜礼拝が行われていたモスク2か所で行われた。押し入った男が銃を乱射。50人が死亡し、50人が負傷した。

 被害に遭ったのは、パキスタン、トルコ、サウジアラビア、バングラデシュ、インドネシア、マレーシアなどからの移民が多い。シリアからの難民もいた。NZは移民受け入れに比較的寛容な国として知られる。

 動向当局が逮捕した犯行の中心人物は、28歳の豪州人の男。本人の供述など詳細はまだ分からない。しかし、分かっている事実だけでもいくつかの重要な点がある。

▼反イスラム・反移民

 一つは容疑者がSNSサイトに、反移民や反イスラム、白人至上主義的内容の投稿していたという点だ。犯行の動機を反移民や反イスラムに短絡的に結び付けるのは、現時点では慎重であるべきだ。しかし、これらの言葉がキーワードであるのは間違いない。

 犯行後、様々なSNSやネット上に反イスラムなどを支持する投稿が寄せられた。世の中にそうした人々は、残念ながら少なくないようだ。そうした重い事実は、無視できない。

 世界金融危機と経済不況などを契機に、2010年代に入り世界的に反移民の動きが強まった。2016年の英Brexitや米トランプ政権誕生も、そうした流れの上に実現したとも指摘される。最近、欧州などで極右・反移民政党が台頭しているのも、そうした脈略でとらえられる。

 2001年の9.11以降、イスラム過激派によるテロが世界各地で起きた。そして「イスラム過激派」への対応は世界的な課題になった。欧米各国は、イスラム穏健派との協調などいくつかの課題を指摘するが、問題克服の展望は描けない。

 欧米などの一部には、反イスラムの感情をあからさまにする人々も表れ始めている。欧州の極右政党のいくつかは、反イスラムを公約に掲げる支持率を伸ばしている。

 今回の事件が今後どう解明されていくかは不明。しかし、反移民や反イスラムなど、現代の世界が抱える問題にイメージが重なるところがある点は否定できない。

▼犯行をネットで中継

 第2に容疑者が犯行の様子を、17分に渡りFB上に生中継した点も重要だ。ネットによる悪質な投稿の排除はここ数年、世界的に大きな課題になってきた。IT大手は対策の強化を強調する。

 しかし今回の事件では、極めて悪質といえる殺害の中継がそのまま映し出された。排除の難しさが改めて示されたともいえるし、FBはじめ大手ITがどこまで本気かを問いたくもなる。
 
 さらに、「銃」の問題だ。容疑者は銃を合法的な手段で取得していた。これが惨劇の一因にもなった。NZのアンダーン首相は早速、銃規制の強化を指示した。

 米国や欧州の一部、発展途上国の一部では、いまだに銃の野放しともいえる状態が続いている。こうした社会では、たびたび乱射事件が起きている。しかし本格的な規制は進まないのが現状だ。

▼問題の投影

 事件は、トランプ米大統領の言葉を使えば「頭のおかしい」人物が引き起こした問題かもしれない。しかし銃、イスラム、移民、ネットなどのキーワードが関連してくる。現在の社会が抱える重要な問題が投影されている。今後の展開に要注意だ。

◎ モスクの血 「平和の国」ではなかったか
◎ 移民、神、テロと繋がる言葉の連鎖
◎ 憎悪心広げるネット疾走中

2019.3.17

2019年2月21日 (木)

◆米非常事態宣言と国境の壁 2019.2.17

 トランプ米大統領が非常事態を宣言した。メキシコ国境の壁建設費を国防予算から賄うためだ。前例のない奇策は、様々な問題点を投げかける。

▼奇策

 非常事態宣言は1月からのねじれ議会との折衝の末に生まれた。大統領は壁建設を公約に掲げており、次年度予算で57億ドルを計上、234マイル(370キロ)の建設を目指していた。

 しかし民主党主導の下院は反対。次年度予算に壁建設費を盛り込まない案をまとめた。大統領は署名を拒否。2018年度末から1カ月以上、一部政府機関が閉鎖された。

 下院の共和・民主両党は2月に入り妥協案で合意。壁建設の費用は14億ドルのみ計上した。トランプ大統領はこれに署名をし、政府機関の再閉鎖を防いだうえで、非常事態を宣言した。

 暴動や自然災害が起きていないときに非常事態を宣言するのは異例。民主党は当然のごとく、権力の乱用の批判を強め、メインストリームのメディアなども同調している。

 民主党は提訴も辞さない構えで、宣言の是非の判断は法廷の場に進む。戦時と平治、大統領権限、移民規制のあり方など、様々な問題に問いを投げかける。

▼増加する壁

 今回の動きもあり、国境の壁に改めて脚光が当たる。米国・メキシコ国境は3145キロで、そのうち1100キロ余りはすでに壁やフェンスなどがある。トランプ大統領が当面建設を目指すのは残りのうち一部。大統領の建設計画に対する反対は野党民主党などから強いが、そもそも国境の壁をなくせという声はほとんど聞かない。

 イスラエルとパレスチナの間には、過去20-30年で頂戴なフェンスの建設が進んだ。2015年の欧州難民危機の際には、ハンガリーとクロアチアの国境などにフェンスが建設された。

 東西分断の象徴だったベルリンの壁が崩壊したのは1989年。その後30年で、世界には新たな壁が登場している。分断の時代象徴と言っていいだろう。

 トランプ米大統領の壁には話題が集中する。しかしこの壁を、特殊な大統領の異例の産物として片付けるのは、あまりに楽観的だろう。根は深い。

◎ 国境(くにざかい)いつの間にやら壁だらけ
◎ 壁崩壊 歓喜に酔った30年前
◎ また壁か当たり前になる日が怖い

2019.2.17

2019年1月 6日 (日)

◆FTの2019年見通し 2019.1.6

 2019年が始まった。2018年はトランプ米大統領の政策に世界が揺れ動き、米中貿易戦争やハイテク摩擦が激化。中東情勢は大きく変わった。今年もトランプ大統領を発信源とするショックに世界が動く環境は変わらないだろう。
 世界経済は欧米経済の減速懸念、新興国市場の動揺、中国経済減速などリスクを高めており、予断を許さない。欧州では2019年に英国のEU離脱が期限を迎え、反移民、ポピュリズムの台頭も続きなど不透明要因が多い。2018年に大手IT企業による情報独占が問題になったネットやAIの世界の動きも要注目だ。

 英FT紙は毎年年末に、翌年の世界を展望する記事を掲載(2018は12月29日)、専門記者の見方を紹介している。INCDも毎年、要点をまとめている。1年前に掲載した2018年展望は、設問20のうち8つが誤りだった。トランプ米大統領の過去の常識を覆す政策は、専門記者の予測を上回る変化だったというべきだろう。2019年はどうなるか。

▽欧州情勢
・Brexitは阻止できるか: 2回目の国民投票で阻止できる。(ただし希望的観測と記者も認める)。
・コービン英労働党党首は首相になるか: ならない。
・マクロン仏大統領は経済改革路線を軌道に戻せるか: できる。他に選択肢はない。
・5月の欧州議会選挙でポピュリスト政党や躍進するか: 躍進する。

▽米国
・民主党はトランプ大統領の弾劾に動くか: 動く。決着は2020年大統領選。
・米中貿易戦争は休戦するか: しない。

▽国際情勢
・ロシアはウクライナに対する軍事行動を拡大するか: しない
・インドのモディ首相は選挙後も続投するか: 続投する
・南シナ海で軍事衝突は: ない
・ブラジルのボルソナロ大統領は経済成長を加速させるか: 加速させる
・サウジのムハンマド皇太子は地位を維持するか: 維持する
・エチオピアのアビー・アハメド首相は改革を維持できるか: 維持できる。

▽世界経済
・金融危機は再発するか: 政治支援が必要な危機は起きない
・米国の金利は長短逆転となるか: なる
・S&P500 は2019年末に3000を超えるか: 超えない(2018年末は2507)
・北海ブレントは2019年末1バレル=60ドル以上か: 60ドル以上。(2018年末は約57ドル)
・UBERは史上最高額のIPOを実現できるか: できない。アリババは抜けない。
・ザッカーバーグはFBの会長を退任するか: しない
・ファーウェイは中国以外で活動できなくなるか: ならない。新興国では活動
・日産・ルノー連合はゴーン氏なしで維持できるか:できる

2019.1.6 

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