カテゴリー「ロシア」の12件の記事

2019年7月 1日 (月)

◆米中休戦とプーチン発言―G20周辺発のニュース 2019.6.30

 G20首脳会議が大阪で開かれた。会議には世界の首脳が集合し、会議本体もさることながら、重要な2国間会談多数開催された。世界的なニュースがG20周辺発で流れた。

▼米中貿易協議再開

 世界の注目が集まったのが29日の米中首脳会談だ。貿易やハイテク分野を巡る米中の対立は、過去1年の世界のニュースのヘッドラインを提供し続け、世界経済に多大な影響を与えてきた。

 トランプ大統領は昨年3月、中国が知的財産権を侵害しているとして対中関税を引き上げると発表。その後3段階に分けて、今年5月までに合計2500億ドル分の中国からの輸入品に対する関税を25%に引き上げた。対象は米国の対中輸入総額のほぼ半分に相当する。

 加えて米国は中国のハイテク企業を狙い撃ち。昨年はZTEとの取引を禁止し、同社に対し多額の罰金や経営陣後退などの条件を呑ませた。昨年末からはファーウェイに狙いを定め、G5市場からの締め出しや事実上の取引の禁止などを打ち出してきた。

 米中は昨年12月のアルゼンチンでの首脳会議で、貿易協議に入ることで合意した。しかし協議は今年5月に事実上決裂。それを受けて米国は制裁関税の第4弾計画(2500億ドル=1-4弾合計で米国の中国からの輸入のほぼ全量)を発表するなど、米中摩擦の日は益々激しくなった。

▼見えない先行き

 大阪での首脳会談で米中は協議の再開を決定。米国は第4弾の関税引き上げを見送った。ファーウェイに対する取引も、一部容認する姿勢だ。

 ただ、米中対立を解くのは容易ではない。米国は技術的な優位を維持するために中国に対し知的財産権保護を保証するシステム導入を求める。一方中国は米国流ルールの押し付けに対抗する。その底流には、安全保障や経済での覇権争いがある。問題は構造的だ。

 世界経済はすでに、米中摩擦激化の深刻な影響を受け始めている。アジアからは輸出が減退。景況感も低下している。世銀やIMFなどは経済見通しを相次ぎ下方修正した。経済減速は金融市場の不確実性拡大にも繋がりかねない。

 米中首脳会談の結果はそうした懸念を一服させた。しかし先行きが見えてきたわけでは全くない。

▼波紋広げるプーチン会見

 G20首脳会議に先駆けて、ロシアのプーチン大統領が英FT紙と行ったインタビューが物議を醸している。プーチン氏は自由主義が時代遅れになっている(obsolete)と指摘。トランプ米大統領の一方的な政策を批判した。

 また2015年の欧州難民危機の際に独メルケル首相が判断した寛容な移民政策が間違いであり、後に問題を大きくしたなどと批判。リベラル派は影響を及ぼせなくなったと語った。

 インタビューは多くのメディアが引用。EUのトィスク大統領(首脳会議議長)は強く反発した。

 プーチン大統領の発言は意図的に刺激的な部分がある。しかし、ここ数年の難民危機やトランプ米大統領の誕生、英国のEU離脱決定(Brexit)など、寛容な精神に裏付けされた自由民主主義(リベラル・デモクラシー)の存在価値と力が問われているのは間違いない。そんな環境だからこそ、プーチン大統領の発言が波紋を広げているのだろう。

▼驚きの米朝首脳会談

 トランプ米大統領は大阪で北朝鮮の金正恩委員長との会談の可能性に言及。2日後には板門店で会談を実現した。米大統領が軍事境界線を越えて北朝鮮領に入ったのは初めてだ。

 トランプ大統領の予期しがたい行動が、ここでも現れた。同時に、周到な準備よりスピードを重視する同氏の特性が現れた格好だ。

 G20会議本体は、公正貿易などの理念や海洋プラスチックごみの2050年までの廃止などを盛り込んだ大阪宣言を採択して閉幕した。ただ、貿易については昨年に続き保護主義に反対する文言はなく、環境でも地球温暖化問題への言及はなかった(議長国日本が米国に配慮したためと、英FTなどは批判的に報じた)。

 G20が始まった2008年は、リーマンショックの直後。最初のうちは世界恐慌防止と金融危機の拡散防止に、各国が必至で取り組む姿勢が伝わってきた。その後、会議は「集まること」が重要になり、周辺の2国間協議にむしろ注目が集まる。

◎ ボス集う 何かが動くこともある
◎ 先は不明 それでも安堵の米中休戦
◎ 自由批判 饒舌を許す 辛い時世
◎ 自由主義「古い」に「それなら」と質したい

2019.6.30

 

 

2018年3月20日 (火)

◆中ロの新体制・米国の体制変更 2018.3.19

 世界の枠組みに影響する大きなニュースが相次いだ1週間だった。

▼中国・習近平体制2期目

 中国全人代は習近平国家主席を再任。同時に国家副主席に王岐山・前政治局常務委員を選んだ。同氏は昨年秋の共産党大会で党の役職を退任している。共産党が国家の上位に来る中国で、党の役職がない人物の国家副主席就任は異例だ。

 全人代は憲法改正も承認。5年2期までだった国家主席の任期を撤廃した。毛沢東元国家主席のような独裁の出現を防止するために鄧小平氏が導入した制度。その撤廃は、中国の統治システムの根幹にかかわる。憲法改正により、習近平氏の長期政権も理屈の上では可能になる。

 今回の全人代は、中国の枠組み変化を端的に示した。これまで常識として考えてきた前提が通用しないケースが増えてくると。そう考えた方がいいだろう。

▼ロシア大統領選挙

 ロシア大統領選も世界の枠組みに関係するニューだプーチン大統領の4選はもともと予想されたことで、焦点は投票率や得票率だった。得票率は77%と高率だった。しかし投票率は6割台にとどまったとの情報が流れており、政権が目標にしていた7割に達しなかった模様だ。

 2014年のクリミア併合以来の4年間のロシアは、米欧との対立が激化し、経済苦境が続いた。プーチン政権は国内的には締め付けを強化し、対外的には強硬姿勢を強めた。同国が関係しているとされる米欧へのサイバー攻撃やフェイク・ニュースの流出、英国でのスパイ毒殺事件、シリアなど中東での存在感拡大、核戦略の強化などはこの脈略で出てきた。

 4選でプーチン氏は2024年まで大統領の地位にとどまる。強力な権力を握る同氏の下でも経済改革は停滞しており、次の6年でどこまで改善できるかは不透明だ。2024年に71歳になる同氏の後継体制作りも見通せない。ロシアの今後も不透明要因は多い。

▼米国務長官解任

 米国務長官の解任は通常ならば「今週のNo1ニュース」だろう。そうでないのは、中ロなど各地で重要なニュースがあったため。世界的に大事なニュースが集中した影響だ。

 ティラーソン国務長官の辞任は昨年以来何度も観測に上っていた。背後には、外交を巡るトランプ大統領と国務長官の考え方の違いがある。トランプ氏が「米国第一」を前面に掲げ、国際協調の伝統を軽視し、強硬な政策を辞さなかったのに対し、ティラーソン氏は国際協調や伝統的な外交を尊重した。具体的にはイラン、北朝鮮、鉄鋼関税などで対立したと指摘される。国務長官が大統領をmoron(馬鹿)と言ったとの情報も流れた。

 それにしても驚いたのが、解任を本人に通告する前に、ツイッターで発表したという手法。トランプ流といえばそれまでだが、そこまで国務長官の地位を軽くして大丈夫かという感じもする。

 後任の国務長官は強硬派とされるポンペオCIA長官。大統領とのソリはいいとされる。米外交が従来以上に、強硬姿勢を強めるとの警戒もある。

 政策の是非については様々な意見があるが、世界1の強国である米国の外交が、従来以上にこれまでの伝統的な政策の延長線から離れていくことだけは確かだろう。

2018.3.19

2016年5月 2日 (月)

◆チェルノブイリ30年の問うもの 2016.5.2

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故から30年が経過した。26日には追悼式典が行われた。

▽老朽化する石棺

 爆発した第4号機を覆ってきた石棺は老朽化し、現在全体を覆うシェルターの建設が進む。しかし、メルトダウンした核燃料の取出しなど廃炉のメドは立たず、関係者もシェルター建設は「問題先送り」と認める。

 周辺住民10数万人以上が立ち退きを命じられ、移住を余儀なくされた。周辺30キロはいまだに立ち入りが厳しく制限されている。のちにがんの発生などで亡くなった人々、病気に苦しんでいる人々も多い。

▽世界の原発

 チェルノブイリ事故は、原発の安全性について大きな問いを投げかけた。しかし明確な答えが出なまま時間が経過し、2011年には福島第1原発の事故が起きた。

 福島第1原発の廃炉作業には40年以上の年月が必要と言われる。未来のフクシマの廃炉跡も、ある意味「石棺」と言っていいかもしれない。

 福島第1原発事故の後、ドイツやイタリアは脱原発へと動き、フランスも原発比率を下げる方向に進んだ。しかし中国、インドなど新興国では新規建設が進む。原発の是非、安全対策などを巡る議論は収束していない。

▽人口急減

 チェルノブイリ事故は、情報隠しなどソ連の旧体制の問題点を改めて映し出した。事故がその後のソ連崩壊続くきっかけになったとの見方もある。

 ソ連崩壊後、チェルノブイリの管理はウクライナ政府が負うことになった。そのウクライナの歩みは厳しい。

 2014年には西部の新欧米派と東部の親ロシア派の対立が激化。クリミア半島はロシアの併合された。ウクライナ東部は事実上政府の権限が及ばない地域になり、衝突が断片的に続く。ウクライナ経済は連続で大幅なマイナスを記録している。

 1991年のソ連崩壊・独立時のウクライナの人口は約5200万人だった。今では約4500万人(クリミア共和国の約200万人を含む)だ。人口減少は急激だ。

 チェルノブイリの問いかけはとてつもなく大きい。それはフクシマにも通じる。 

≠ 30年の 迷走見届け 石棺朽ちる
≠ ここからか 混乱の連鎖 まだ続く
≠ この地球 原子の石棺 いくつ建つ

2016.5.2

2015年11月28日 (土)

◆テロに揺れる世界  2015.11.22

 13日のパリ同時テロから1週間強。余波は収まらず、世界を揺るがしている。

▼パリ、ブリュッセル

 仏当局は18日、同時テロの容疑者が潜伏している拠点の制圧作戦を実施した。約7時間の銃撃戦の末に制圧し、同時テロの首謀者アバウド容疑者を殺害した。当局は同容疑者らが新規テロを計画していたと発表した。

 同容疑者は当初シリアに滞在していると見られていた。それが警戒をかいくぐり、欧州に再潜伏した模様だ。管理の難しさを改めて見せつけた。

 ベルギーは21日、ブリュッセルのテロ警戒レベルを最高の4に引き上げた。地下鉄の運行を停止、スポーツの試合を中止するなど市民生活にも大きな影響が出た。ブリュッセルは欧州のイスラム過激派の拠点になっていると指摘される。今回は、テロ計画の情報も伝えられる。

▼ロシア、マリ、レバノン

 ロシア大統領府は17日、10月31日のエジプト・シナイ半島でのロシア航空機墜落がテロだったと発表した。「イスラム国」(IS)系の過激派がすでに犯行声明を出している。

 マリの首都バマコでは、アルカイダ系のイスラム過激派が外資系のホテルを襲撃。多数の死傷者が出た。

 これ以外にイスラム過激派によるテロは、ここ1-2週の間にレバノン(12日)などで起きている。世界を覆っている。

▼空爆拡大

 世界は苦渋に満ちた対応を迫られる。

 世界の指導者は当然、テロ非難の政治メッセージを出した。トルコでのG20首脳会議特別声明、マニラでのAPEC首脳会議声明、マレーシアでの東アジア首脳会議などだ。国連安保理はテロ非難の決議を採択した。具体的な行動では、まず対IS空爆強化の動きが出ている。

 フランスのオランド大統領はテロに屈しない決意を表明。シリア領のIS拠点への空爆強化を命じ、15日以降連日空爆を拡大している。英国のキャメロン首相は17日、対IS空爆への参加の方針を表明した。

 ロシアも空爆強化を表明、仏などに対ISでの連携強化を訴える。オランド大統領は24-26日に米港とロシアを訪問、対ISでの協調などを協議する。

▼決め手不足

 ただ、空爆強化で一致しても、その背景には各国の複雑な利害関係がある。ロシアが、対ISで欧米との協調姿勢を示す背景には、アサド政権延命の狙いがある。対シリア政策で、欧米はこれまでアサド政権退陣を求めており、どこまで歩み寄れるかは不透明だ。

 空爆だけでISを殲滅できるかとなると懐疑的な見方が多い。かといって欧米は国内政治的にも地上軍を派遣できる情勢にはない。

 対ISが決め手を欠く状況は変わらない。各国が今後も、ISを背景にしたテロの脅威にさらされる状況に変わりはないだろう。

▼難民問題

 同時テロの実行犯のうち一部は、難民に紛れて欧州に侵入した。こうした動きは、欧州内の反難民の動きを加速させる可能性がある。ポーランドの新政権は、先にEUが決めた国別の難民受け入れの合意を実施できないと主張。その他の国でも反難民・反移民を主張する極右などの政党が勢いを増している。

 欧州への難民流入(申請者)は、1-9月で80万人に及んだ。「受け入れ拒否」だけで済む問題でないのは明らかだ。しかし、各国は自国の利益を主張。難問に対し、欧州全体で取り組むことがなかなかできない状況だ。

 米国でも野党共和党中心の議会が19日難民制限法案を可決した。オバマ政権が打ち出したシリア難民受け入れを年間1万人に増やす計画を否定する内容。大統領は拒否権で対抗するが、難民に対する不寛容の姿勢が表れている。

▼内向き

 危機の時には、人々も国も内向きになり、寛容さが失われがちだ。テロの脅威に直面し、世界はまさにそうした状況に向いている。その上で今後を考える時、月並みに「政治指導者のリーダーシップが問わる」と指摘することはもちろん重要だろう。同時に何より、世界の厳しい現実を直視する覚悟と態度が欠かせない。

▼サイバーの戦い

 伝統的な国際情勢分析では「余談」になるかもしれないが、匿名のハッカー集団「アノミマス」がIS系のサイトやSNSをハッキング攻撃し始めたという動きは、注目に値する。ISはネットやSNSを活用して戦闘員などをリクルートしてきた。そこに攻撃を仕掛けるのは、テロを防止する側にとっても当然の行動だ。

 それを国家のみならず、アノニマスのような集団が関与するところに、現代世界の構造が反映されている。

2015.11.22

2014年10月19日 (日)

2014年42号(10.13-19 通算745号)  国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2014年10月13-19日
 

◆エボラ、欧米でも感染拡大 ☆
・エボラ出血熱の感染が欧州や米国でも拡大し始めた。
・米国では17日、2人目の感染患者(看護師)が確認された。リベリアからの患者から感染。
・米医療当局は、患者と同じ航空機に乗った乗客ら1000人を観察対象にした。
・オバマ大統領はエボラ担当の補佐官を指名した。
・スペインでは3次感染者が出たとの情報が流れた。確認はまだ。
・EUは保健相などの会議で、検疫体制の強化を確認。各国は空港検疫などを見直す。
・英米仏伊の首脳は15日電話会議を開催しエボラを協議。国際的優先度が高まっている。
・エボラ問題対応は11月4日の米中間選挙にも影響する情勢になっている。

◆香港混乱3週間経過、当局が一部強制排除 ☆
・2017年の長官選を巡る香港の混乱は続き、3週間を経過した。
・当局は一部地域で学生らを強制排除。数十人単位で逮捕した。
・全面的な衝突や全面的強制排除には至っていない。
・本政府は学生との対話を21日に実施すると発表した。ただし対話は何度も先送りされた。

◆アイルランドが優遇税制廃止(14日) ☆
・アイルランドは多国籍企業の優遇税制を廃止する。2015年の予算案を併せて発表した。
・同国進出企業は、関連会社への利益移転などを利用すれば非常に低い税負担で済む。
・米アップルへの優遇税制などが、国際的名批判を浴びていた。
・欧州委員会はアイルランドの税制が違法との判断を示していた。
・税の公平性は、国際的な課題の1つになっている。

◆ロシア、ウクライナへのガス供給再開へ調整(17日)
・ロシア・ウクライナ首脳はミラノで独仏首脳を加えて会談した。
・ロシアからウクライナへの天然ガス供給再開で前進した。
・会談後、プーチン、ポロシェンコ両大統領は会見し、再開の基本条件で合意したと語った。
・ただし、詳細条件の調整は済んでいない。
・ロシアの天然ガスはウクライナに供給されるほか、同国経由で欧州にも供給されていた。
・冬場をにらみ、再開は関係各国にとって差し迫った問題になっている。
・緊張が続くウクライナ情勢は小康。当面26日の選挙が焦点。

◆フェイスブックとアップルが卵子凍結に補助 (^^)
・フェイスブックとアップルが、女性従業員の卵子凍結・保存に補助を行う。
・アップルは最大2万ドルを支給する。
・両社は育児休暇取得などの支援も手厚い。
・欧米先端企業は優秀な人材確保に様々な策を導入。従来タブー視された手段にも及ぶ。
・ただし英FT紙は、今回の策について流石にやり過ぎ、という趣旨の記事を載せている。

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 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
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 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
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◎寸評:of the Week
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 【エボラ】 西アフリカ以外でエボラ出血熱の感染が広がり始めた。米国では2人目の2次感染者が見つかり、感染防止の対応で不備が明らかになった。オバマ大統領は担当補佐官を指名。政策アジェンダとしての優先度を引き上げた。スペインでは3次感染者の疑いが出た。世界的流行を食い止められるかどうかの瀬戸際に立っている。

 【世界のトレンド】 アイルランドが優遇税制の廃止を発表した。税制のゆがみ是正は世界共通のテーマの1つ。最近はアップルへの優遇税制が、問題の象徴のとして取り上げられていた。そのアップルとファイスブックの卵子凍結・保存への保護は、女性の活用、企業の働き方など時代の先端を巡る動き。中国・北京は19日、今年最悪のPM2.5を記録した。中国の環境問題も時代の風景の1つだ。

◎今週の注目(2014.10.20-26)&当面の注目
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・インドネシアのジョコ・ウィドド新大統領が20日に就任する。大統領当選時の熱は冷め、関心は実際の政策方針に移っている。就任演説や閣僚人事でどんな方向性を打ち出すか。
・ウクライナの選挙が26日に行われる。選挙の行方はポロシェンコ大統領の政権の安定性や、親ロ派、ロシアとの交渉の行方に影響する。
・ブラジル大統領選の決選投票は26日。現職のルセフ氏と野党社会民主党のネベス氏の争い。
・TPPの閣僚会合が25日から豪シドニーで開催される。

・香港情勢の推移は、引き続き焦点。当面は21日の対話に関心。
・エボラ出血熱感染の行方は重要な曲面を迎えている。

・米中間選挙が11月4日に行われる。
・APEC首脳会議が11月9日に北京で開催される。北京では6-12日に学校などが休みになり、自動車の通行規制も行われる。

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2014年9月 7日 (日)

◆NATO首脳会議と世界 2014.9.7

 NATO(北大西洋条約機構)が4-5日英国で首脳会議を開き、数千人規模の緊急対応部隊の設置を決めた。ウクライナ危機で表面化したロシアへの脅威に対応するもの。冷戦終了後、地域紛争やテロ対策に力点を移してきたNATOの戦略は、再び大きな曲がり角を迎えている。

▼課題急増

 今年に入り、世界の安全保障の課題は急増した。2月にウクライナ危機が勃発。ロシアによるクリミア編入とウクライナ東部の親ロ派支援で、米欧とロシアの対立は決定的になった。G8体制は事実上崩壊。「新冷戦」が懸念される。

 イラクとシリアの混乱には新たに深刻な懸念材料が加わった。イラクとシリア北部を拠点とするスンニ派過激派のISIS(後に「イスラム国」と自称)が、シリア内戦で流れ出た武器などを入手して勢力を拡大。6月にはイラク第2の都市バスラを陥落させた。拘束した米国人ジャーナリストの首を切り処刑する映像を世界に流すなど、その残酷な行為は世界に衝撃を与えた。中東情勢はイスラム国の勢力拡大で、ますます混沌としている。

 今回の首脳会議はこうした問題が山積。これまでにないテーマの多いものとなった。

▼冷戦後のNATOの推移

 大きな流れで見ると、ロシアへの対抗はNATOの戦略の転換を示すものとして重要だ。

 NATOは1949年の冷戦下に、ソ連など東側に対抗する軍事同盟として発足。1989年のベルリンの壁崩壊による冷戦終了後は、民族・地域紛争への対応に使命を変えた。旧ユーゴ紛争でのボスニア空爆、コソボ紛争でのセルビア空爆などに具体的行動が表れている。

 2001年の同時多発テロの後は、テロ対応も使命に加えた。アフガニスタンへの駐留、リビアの空爆などでその存在感を示した。

 こうした紛争の際には、NATOが軍事機構として行動する事例(旧ユーゴなど)、米国が単独で行動した例(タンザニアとケニアの米大使館爆破の後に、アルカイダの拠点とされたタンザニアの工場を空爆した例)、有志連合を組織した例(湾岸戦争、イラク戦争など)など様々。時々の政治状況と軍事的な利便性を見て、オプションが選択された。こうした点にも留意が必要だ。

▼東西対決の復活

 この間、東西冷戦対応の延長ともいえるロシアへの対抗は、少なくとも表面上は姿を消した。これが復活したところに、今回の決定が転換点たる理由がある。

 冷戦時代と違うのは、NATOに旧東欧諸国がメンバーとして加わり、西側(欧米)と東側(ロシア)の境界線が東西ドイツを南下するラインから、ロシア国境線およびその付近のラインに東進した点だ。NATOには旧東欧諸侯やバルト諸国の防衛という任務が加わっている。

▼首脳会議とNATOの変遷、世界の安全保障の推移

 冷戦後のNATO首脳会議を振り返ると、世界の安全保障の状況を映し出す。冷戦後の世界の安全保障の重大事件(★)、NATOの変遷(◇)および首脳会議(・)を整理してみる。

★1989.11 ベルリンの壁崩壊。東西冷戦実質終焉。
★1990   湾岸戦争(米中心の多国籍軍が対応)
・1990.7  NATOロンドン首脳会議。ソ連敵視→変更。政治機能重視。
★1990.10 東西ドイツ統一
・1991.11 NATOローマ首脳会議。新戦略決定(東西冷戦→地域紛争) 
★1991.12 ソ連崩壊
★1992  ボスニア内戦。NATOが軍事介入・空爆。1995年デートン合意で内戦終結。
・1994.1 NATOブリュッセル首脳会議。拡大方針。
・1997.7 NATOマドリッド首脳会議。ポーランドなどの加盟承認方針。
★1998  コソボ紛争。1999年NATOのセルビア空爆(国連決議なし)で紛争終結。
◇1999.3 チェコ、ハンガリー、ポーランド加盟(16→19か国)
・1999.4 NATOワシントン首脳会議。50周年記念。コソボ紛争の最中。
      新戦略更新。域外派遣などより大きな役割。
★2001 同時多発テロ、アフガン戦争(NATOも参加)
・2002.5 NATO・ロシア首脳会議。パーオナーシップ。ロシアとの協力を目指す姿勢。
・2002.11  NATOプラハ首脳会議。イラク問題。NATOの軍事能力維持・向上の計画など。
★2003.3 イラク戦争(米英と仏独の分裂)
◇2004.3 旧東欧7国加盟(バルト3国、ブルガリア、スロバキア、ルーマニア、スロベニア)(19→26か国)
・2004.6  NATOイスタンブール首脳会議。即応部隊など能力向上の点検など。
・2006.11  NATOリガ(ラトビア)首脳会議。旧ユーゴ3カ国と協定(将来加盟)。域外国との協力(対テロ)
・2008.4 NATOブカレスト(ルーマニア)首脳会議。クロアチアなど加盟承認。
★2008.8 グルジア紛争
◇2009.4 アルバニア、クロアチア加盟(26→28か国)
・2009.4 NATOストラスブール首脳会議。新戦略変更を決定。仏軍事機構復帰宣言。
・2010.11  NATOリスボン首脳会議。11年ぶりの新戦略。集団安保、抑止力、危機管理などバランス。
★2012 アラブの春→中東混乱に
・2012.5 NATOシカゴ首脳会議。アフガニスタン問題(2014年末撤退など)。
★2014.2 ウクライナ危機
・2014.9 NATOニューポート(英ウェールズ)首脳会議。対ロシア意識の緊急対応軍(東西問題の復活)。
     対イスラム国(地域紛争・テロ対応)          

2014.9.7

2014年7月21日 (月)

◆ウクライナでのマレーシア機撃墜事件のインパクト 2014.7.20

 ウクライナ東部でマレーシア機が撃墜され、乗客乗員289人が死亡した。事件は混迷するウクライナ情勢の局面を変える可能性がある。同時にに、紛争の地域外への飛び火など新たなリスクを突きつける。

▽世界に衝撃

 アムステルダム発クアラルンプール行の航空機が墜落したのは現地時間17日夕方。数時間後には機体の破片や乗客の持ち物が散乱する映像が世界に流れ、大きなショックを与えた。

 墜落直後から、バイデン米副大統領などは「事故でなく撃墜」と表明。その後、親ロシア派が地対空ミサイルで誤射したという状況証拠が次々に公表された。地対空ミサイルはソ連製のSA11の可能性が高い。

 事故後の現場は混乱が目立つ。遺体の引き渡しや遺品の扱いが秩序立って行われているとは言い難い。一部遺品の略奪も指摘され、それが遺族の怒りを呼んでいる。

 国際社会はまず真相究明が最優先課題とし、OCSEは現地に調査団を送った。しかし、親ロシア派による妨害妨害も目立つ。ブラックボックスを巡っては、当初親ロ派とウクライナ政府双方にが回収したと表明し、その後否定されるなど混乱が目立つ。情報隠しの試みや情報戦もあるとみられる。

▽ロシアへの圧力

 ロシアのプーチン大統領の表情は、事故後2日間の反応を見る限りでは普段より精彩を欠く。墜落事故があったのは、欧米による対ロ追加制裁の発表があった数時間後。大統領はウクライナにおけるロシアの利権維持とともに、国際的な孤立を回避すべく、あらゆる手を講じてきた。事件の主責任が親ロ派にあるとなれば、そうした戦略は抜本的な見直しを迫らっる。

 今後の展望は難しい。事件が親ロ派の責任大となれば、国際世論はウクライナ政府側に傾く。しかし、ウクライナ情勢が政府側有利で決着する道筋が見えるかと言えば、そう簡単ではない。

▽制御不能?

 今回の事件は、プーチン・ロシア大統領がすでに一部では親ロ派をコントロールし切れなくなっている可能性を示唆する。親ロ派をこれ以上追い込めば、さらに過激化し、強硬な行動に出ないとも限らない。そうなれば、ウクライナ東部の一層の混迷→テロの拡散という事態になりかねない。

 欧米はこれまで、ロシアに対し親ロ派支援を止めるよう求めてきた。この主張の裏には、ロシアによる親ロ派制御の期待があった。しかし、それがどこまで効くかは分かりににくくなっている。また、ウクライナ東部でロシアに譲歩を求めることができるとしても、ロシアがクリミア編入を撤回することなど想像しにくい。落としどころは見えて来ない。

▽偶発アクシデント拡大の危機
 
 今回の事件は、偶発アクシデントの懸念を改めて想起させた。歴史は偶然の衝突や戦闘が制御不能になり、大規模紛争や戦争に発展した例をいくつも示している。今回の事件も、そうなる懸念を否定できない。

 欧米もロシアもウクライナ東部を失敗国家ならぬ失敗地域にすることは回避し、ウクライナ東部紛争を周辺に拡大させないという点では一致している。しかし、今年2月以来のウクライナ危機の背景には欧米vsロシアの勢力争いの面があるし、相互の不信感は相当募っている。そして国内世論は、事態を単純化し指導者に譲歩しない強い姿勢を求める(米国では中間選挙にらみ、対ロ強硬論が力を増している)。危機封じ込めには、相当複雑な連立方程式を解く能力が必要だ。

2014.7.20

 

2014年3月24日 (月)

◆クリミア併合の問うもの 2014.3.23

 ロシアがクリミアを併合した。クリミア住民投票による独立・ロシア編入支持を受け、プーチン大統領が一気に踏み切った。米欧は対ロ制裁を発動、関係悪化はさらに深刻になりかねない。今後の数によっては混乱はさらに拡大し、冷戦後の国際秩序を根底から揺るがしかねない。

▼ウクライナ危機からクリミア併合へ

 ウクライナ危機発生以来の動きは以下の通り。

・2012年11月 ヤヌコビッチ政権がEUとの連合協定締結を先送り。反体制派のデモ拡大。
・2013年2月18日 治安当局が野党デモ隊を強制排除。70人以上死亡。91年の建国以来最大の惨事。
・2月21日 大統領が野党と大統領選前倒しなど妥協案。反体制運動止まらず。大統領は首都脱出。
・2月22日 反体制派が大統領府など占領。首都掌握。
・2月23日 ヤヌコビッチ政権崩壊。議会が大統領代行指名。
       議会がロシア語公用語の法律廃止。親ロ路線決別。
       クリミア半島などで住民の新政権への反発拡大。 
・2月27日 親欧米派の新内閣が発足
・2月28日 オバマ米大統領がロシアの軍事介入に警告
・3月1日  クリミア自治共和国のアクショーノフ首相がロシアに介入要請。
       プーチン・ロシア大統領が軍介入辞さずとの姿勢表明。
・3月3日  ロシアと親ロ勢力がクリミア半島事実上制圧。
・3月4日  プーチン大統領がウクライナ新政権と違憲と批判
・3月6日  クリミア自治共和国議会がロシアへの組替え問う住民投票実施決定。3月16日実施。
       米がロシア制裁を発動。
・3月16日 クリミアが住民投票実施。独立とロシアへの編入を支持。
・3月17日 クリミアが独立を宣言
・3月18日 ロシアがクリミア併合を決定、条約に調印
・3月19日 英首相がロシアのG8追放に言及
・3月20日 米国が対ロ追加制裁、EUは21日追加制裁
・3月24日 核安保サミット(オランダ・ハーグ)。プーチン大統領は不参加。

 ロシアのプーチン大統領の動きは急速だった。ヤヌコビッチ政権崩壊の数日後には、クリミアを事実上掌握。国際法に整合性を持たせるように段取りを踏みながら、クリミア住民投票→独立・併合へと突き進んだ。米国や欧州からの抗議や圧力に対しても動じることなく、妥協の姿勢を見せなかった。

▼武力による国境線変更

 今回のクリミア併合は、大国ロシアが武力を使い、直接併合した。この点は重要だ。

 冷戦後に地域が独立を宣言したり、国境線が変わった事例は、少なくはない。代表的な事例は次のようなケースが含まれる。

・チェコとスロバキアの分離(1993年)
・旧ユーゴスラビアの分裂(1990年代)
・東ティモールの独立(2002年
・コソボ紛争、コソボの独立(2008年)
・グルジア紛争、南オセチアなどが独立宣言。ロシアなどが承認(2008年)
・南スーダンの独立(2011年)

 ロシアは2008年のグルジア紛争でもロシア系住民の多い南オセチアとを軍事支援、独立を承認した。しかし今回のケースがグルジア紛争と違うのは、ロシアが直接介入し、直接併合した点。大国が支援ではなく著当事者となって、国境線を変更した。

 東アジアでは中国が南シナ海や東シナ海で領土問題を抱える。南シナ海の南沙諸島などでは、武力を背景にした実効支配を行っている。

 「大国による、武力を使った国境線変更」が安易に認められれば、世界秩序は大きく揺らぐ。

▼ウクライナ紛争:さらなる飛び火の懸念

 今回の紛争は、これで終わりではない。ウクライナはロシアによるクリミア併合を当然認めず、関係はかつてなく悪化している。

 ウクライナ西部では反ロシアの声が大きくなっている。一方でロシア系住民の多い東部や南部ではロシアとの関係悪化や新政権の欧州傾斜を懸念する住民が多い。国内で両勢力が対立し混乱が拡大してもおかしくない。

 そうなった時、ロシアがロシア系住民の保護などを名目に介入を拡大する懸念も否定できない。

▼民族・地域紛争と排他的民族主義の強まり

 今回の紛争の背後に、排他的民族主義が見らえるのも気がかりだ。

 ウクライナの混乱は、直接はヤヌコビッチ政権がEUとの連合協定締結先送りを決めたことで表面化した。しかし、背後には親欧米系(西部)と親ロシア派の対立があった。

 そうした勢力からは、相手方の主張を認めない排他的な動きも目立っている。極右勢力も絡む。こうした極右や排他的民族主義の台頭は、全世界的な傾向だ。

 冷戦終了時、世界の安全保障の脅威は東西対立から地域紛争や民族紛争に変わったと指摘された。その後21世紀に入り、テロやサイバー攻撃が新たな脅威に加わった。

 冷戦終了から4半期を経て、地域紛争・民族紛争はテロとも相まって中東、アフリカや中央アジア、南アジアで表面化した。旧ソ連でもカフカスや中央アジアで紛争が断続的に起きてきたが、ウクライナにも飛び火した形だ。

▼民族独立の動き

 クリミア併合(国境線の変更)で、世界各地の民族自立運動や独立運動に火が付く可能性がある。

 旧ソ連のモルドバでは、ロシア系住民の多い沿ドニエストル・モルドバ共和国がロシア併合を求める、ロシア下院に働きかけた。アゼルバイジャン内でアルメニア系住民の多いナゴルノカラバフでは、自治権強化を求める動きに火がついている。ロシア南部のカフカス地方では、イスラム系住民が分離・独立を目指している。

 中国は新疆ウイグルやチベットで自治拡大や独立の動きがある。こうした動きは、世界各地で数えきれない。

▼経済関係にも影響?

 米国や欧州は対ロ制裁を発動した。その効果は短期的には限定的という見方が強い。しかし、長期的にはボディーブローのように効いてくる可能性がある。そのダメージはロシアだけでなく、同国に石油や天然ガスを依存する欧州にも返ってくる。

 たとえ政治的な関係は冷え込んでも、経済は密接に結びついており、相互依存関係はそう簡単に崩れない、というのが冷戦後の国際関係をみる一つの視点だった。これがそのまま通用するか、問い直される。

▼G8崩壊

 キャメロン英首相はロシアのG8からの追放の可能性に言及した。リーマンショック後にG20 が形成され、G8の重要性は以前に比べれば相対的に低下した。しかしそれでも、世界秩序を形成する重要な枠組みの1つだ。

 冷戦時代の世界はG7が大きな影響力を持ち、ソ連が仮想敵国だった。1990年代にG7がG8に改組されたことには、冷戦時代の敵対関係がなくなり、仲間になった意味合いが込められている。G8追放が声高にんじられるところには、ロシアが仮想敵国に逆戻りとも受け止められる。
 
▼パンドラの箱

 ウクライナ危機はクリミア併合は、様々な波及効果が予想される。さながら「パンドラの箱」が開かれたようで、冷戦後の世界秩序を揺るがしかねない。歴史が大きく動き時には、事実が想像より速く動くことも多い。予断を持たず、冷静に見つめる必要がある。

2014.3.23

2014年3月 9日 (日)

◆ウクライナ危機のインパクト 2014.3.9

 ウクライナ情勢が世界を揺り動かしている。ヤヌコビッチ政権が予想を超えるスピードで崩壊した後、クリミア半島のロシア系住民の新政権への反発、ロシアの事実上の軍事介入と、事態は刻々と進展した。ロシアと欧米の対立は深刻化し「新冷戦」も懸念される。影響はウクライナにとどまらず欧州、世界情勢に及ぶ。ソ連崩壊や9.11に続く重大事件との位置付けてもオーバーではない。

▼事態の推移

 2月下旬の親ロ派・ヤヌコビッチ政権の崩壊以来、事態は予想を超える速度と広がりで動いている。まず押さえるべき経緯は、以下の通りだ。

・2012年11月 ヤヌコビッチ政権がEUとの連合協定締結を先送り。反体制派のデモ拡大。
・2013年2月18日 治安当局が野党デモ隊を強制排除。70人以上死亡。91年の建国以来最大の惨事。
・2月21日 大統領が野党と大統領選前倒しなど妥協案。反体制運動止まらず。大統領は首都脱出。
・2月22日 反体制派が大統領府など占領。首都掌握。
・2月23日 ヤヌコビッチ政権崩壊。議会が大統領代行指名。
       議会がロシア語公用語の法律廃止。親ロ路線決別。
       クリミア半島などで住民の新政権への反発拡大。 
・2月27日 親欧米派の新内閣が発足
・2月28日 オバマ米大統領がロシアの軍事介入に警告
・3月1日  クリミア自治共和国のアクショーノフ首相がロシアに介入要請。
       プーチン・ロシア大統領が軍介入辞さずとの姿勢表明。
・3月3日  ロシアと親ロ勢力がクリミア半島事実上制圧。
・3月4日  プーチン大統領がウクライナ新政権と違憲と批判
・3月6日  クリミア自治共和国議会がロシアへの組替え問う住民投票実施決定。3月16日実施。
       米がロシア制裁を発動。

▼予想外の速度の政変

 今回の事変は昨年11月に始まり、今年2月に入り急転した。

 ウクライナは過去の親欧米派の政権が、将来のEU加盟を目指してEUとの連合協定の締結準備を進めてきた。ところが2012年11月、ヤヌコビッチ政権が連合協定締結の先送りを決めた。ロシアへの配慮を優先させたためだ。これに親欧米派の野党が反発。連日の抗議活動を展開した。

 約3カ月後の2013年2月18日に治安部隊が野党デモ隊を強制排除。70人以上が死亡し、1991年の同国建国以来の惨事となった。この後反政権の抗議活動は先鋭化、あれよあれよというまに首都キエフを制圧し、惨劇から5日後にはヤヌコビッチ政権の崩壊へと発展した。

 同国では親国家樹立後の親ロ政権→2004年オレンジ革命の親欧米政権(ユーシェンコ大統領)→2010年に親ロ政権(ヤヌコビッチ大統領)と揺れ動いてきた。背後にあるのは、「親欧米派の西部」対「親ロシア派の東部」という地域対立がある。今回は親ロ派→親欧米派の権力の交代が、反政府活動や建国以来の惨事の中で起きたところに特徴がある。

 強硬に見えたヤヌコビッチ政権が、惨劇からわずか5日という短期間に崩壊した原因など、まだ分からない点は多い。いずれにしろ事態の変化は、ウクライナ国内の当事者はもとより欧米やロシアの想像を超える速度で進んだ。

▼ロシア介入

 野党中心の議会は23日に大統領代行を指名。親欧米の内閣を27日発足させ、次々と親欧米・脱ロシアの政策を進めた。これに親ロ派の東部は反発した。特にロシア系住民が多いクリミア半島では、自治政府が新政権に公然と反旗を翻した。

 こうした中でロシアが事実上の軍事介入を実施。クリミア半島をロシア系住民と協力して事実上制圧した。この経緯や詳細も、現時点では分かっていない点が多い。

▼何年も続く

 このようにして問題はウクライナの内政にとどまらず、欧州情勢、国際情勢を揺るがすものへと発展した。

 ヘイグ英外相は、「欧州において21世紀最大の危機」と述べた。英Financial Timesは、今後何年も続くかもしれない危機と指摘する。事態は半月前からは想像できないほどに膨らんだ。

▼ロシアの危機感: 勢力圏の縮小

 欧米からみるとロシアの攻撃的な姿が目立つが、逆にロシア側から見るとその危機感は強い。

 冷戦終了後の欧州は、基本的に「西の拡大・東の縮小」が進んだ。EUは1991年の12カ国から2013年のクロアチア加盟で28カ国に拡大した。NATOも1991年の16か国から、2009年にはクロアチアとアルバニアの加盟で28か国に拡大した。ロシアは勢力圏を縮小し続けた。

 ウクライナ危機はそうしたトレンドの中で起きた。ウクライナはロシアと同じ東スラブ民族の国で、旧ソ連国家。ロシアは元々勢力圏と考えてきた地域だ。ロシアが同国に天然ガス提供などで優遇してきたのも、結びつきを重視してきたためだ。

 しかしウクライナはEUとの経済的関係を強め、連合協定締結の直前まで進んだ。そればかりか、欧米の軍事同盟であるNATO加盟も可能性もささやかれる。これはロシアにとって、決して看過できない。

 2008年のグルジア紛争の際、親米派のサーカシベリ政権に対し親ロ派の南オセチアやアブハジアが分離独立を要求し対立した。ロシアは独立派を支持して介入、両地域を事実上の勢力下に置いた。今回も構図は似ているが、グルジアとウクライナではインパクトが違う。グルジアは地域問題で済んだかもしれないが、ウクライナは欧州全体の勢力図にかかわる。

▼妥協のない姿勢

 そうであるから、プーチン大統領は強硬姿勢を崩さないのだろう。

 クリミア半島は安全保障上の重要拠点。クリミア半島は、元々旧ソ連時代の1954年にロシアからウクライナに移管した地域だが、住民の6割はロシア系で、半島内のセバストポリにはロシアの黒海艦隊の基地がある。当初は自治共和国の独立などを示唆していたが、ここに来てロシアへの編入も口にするようになった。それを強行突破で実施してもおかしくない。

 ウクライナについても、様々なカードを切って圧力をかけてくるのは間違いない。親ロ派の多い東部が西部中心の新政権の勢力下に組みこまれるのを、手をこまぬいて見ているとは考えにくい。ウクライナのNATO加盟阻止は、ロシアにとって絶対譲れない線だ。ポケットの中には、軍事圧力や天然ガスの供給停止などの「北風」も、経済協力のような「太陽」もあり、その使い方を考えているとみられる。

▼新冷戦?

 欧米はウクライナの新政権の正統性を認め、ウクライナの領土保全や国境線の不変を支持する立場をとっている。その原則からロシアの介入を国際法違反と断定。ロシアを批判し、対ロ制裁を決定した。

 しかし、制裁だけでは効果は限定的だ。対ロを巡る欧米各国の立場も必ずしも一致してしない。ロシアに天然ガスや石油を依存する欧州は、強硬姿勢には慎重だ。

 問題はもちろん簡単ではないし、妙案があるわけでもない。国際社会やメディアの最大公約数を探れば、制裁など断固たる措置をとりつつも、対話のチャネルを残しておくべきだということだろうか。

 いかなる場合でも押さえておくべきのは、オバマ米大統領の「どこまで本気か」という覚悟が事態を大きく左右する事実。そして、世界がウクライナ危機で「第2の冷戦」の入口に差し掛かっており、今後の対応いかんで現実のものになりかねないことだろう。ウクライナ危機はそうした時代感覚で眺める必要がある。

2014.3.9

2013年9月 8日 (日)

◆シリア情勢と世界 2013.9.8

 シリア攻撃を巡り、激しい外交戦が繰り広げられた。

▽外交戦舞台のG20首脳会議

 外交戦の舞台は、G20首脳会議が開催されたロシアのサンクトペテルブルク。オバマ大統領は、シリアによる化学兵器は確実と表明。シリア攻撃の支持を取り付けるべく各国に働きかけた。これに対しシリア支持のロシア・プーチン大統領は「攻撃反対が国際世論の多数」という状況を作るべく動いた。

 米国は英仏やサウジアラビア、日本などの支持を取り付け。自国も含め11カ国(米加、英仏伊西、日韓、豪、サウジ、トルコ)によるシリア非難の共同声明を6日発表した。10カ国は米国の立場を支持する姿勢を示した格好だ。ただし、支持と言っても濃淡があり、各国が米国の攻撃に加わるわけではない

▽対立

 ロシアのプーチン大統領は議長国としてシリア問題に何度となく言及。「世界の大勢は攻撃反対」などと繰り返した。G20 終了後の記者会見では、たとえ米国によるシリア攻撃があっても同国支援を続けると明言した。

 シリア攻撃反対はロシアのほか中国やインド、アルゼンチン。欧州ではドイツが攻撃反対に回っている。世界の安保を巡る問題で、ドイツとフランスの判断があからさまに分かれるのも多くない。

 G20以外に目を向けると、イランはシリアのアサド政権を強力に支持。米国による攻撃があれば、イラクの米軍施設に攻撃を加えるなどとけん制する。

▽影響は中東から世界に

 元々シリア紛争は、中東情勢に多大な影響を与えている。シリアからの難民は100万人を超え、周辺のトルコやヨルダン、レバノン、(海上を経由し)エジプトなどに流出している。イランとその傘下のレバノンのイスラム原理主義組織ヒズボラは強力にアサド政権を支援しているし、サウジやトルコなどスンニ派の諸国は反体制派に対し武器供与も含め支援を与えている。 

 影響はさらに広い地域に及ぼうとしている。米国の下院委員会は、アサド政権が使用した化学兵器をロシアが供与したとの報告を発表した。ロシアはシリア攻撃が世界経済に与えるダメージや、他のイスラム地域に与える悪感情を強調する。

 かくしてシリア情勢を巡り、世界を巻き込んだ外交線が繰り広げられている。G20を中心とした先週は、それが端的に表れた。首脳たちの決断により、世界が変わるという場面を、G20を中心とした一連の動きは示した。

▽米大統領、議会承認請求

 そうしたシリア情勢を巡る駆け引きの中で、懸念されるのが米オバマ政権の指導力低下だ。オバマ大統領が8月末にシリア攻撃の可能性に言及した際には、9月初めにも限定攻撃を加えるとの観測があった。しかし大統領は31日になって議会の承認を求めると表明。結論をG20首脳会議後に先延ばしした形だ。

 大統領には元々開戦などの決断をする権限がある。その強権を使用せず、議会の理解を求めるという行動に出たのは、世論の後押しが必要という判断からと推定される。しかし、決断力の弱さを指摘される懸念も同時に生んだ。

▽誤算

 オバマ大統領にとって打撃だったのは、英国の動き。キャメロン首相はシリア攻撃を目指し、議会に軍事介入を認める法案を提出した。しかし議会は否決。軍事介入断念に追い込まれた。オバマ大統領が描いていた「幅広い有志同盟」によるシリア攻撃が難しくなった。フランスの動き次第では、単独軍事介入の選択も迫られる。

 G20首脳会議でも、軍事介入に反対するロシアや中国との溝を埋めることはできず、むしろ対立が際立った。現地ではオバマ大統領の存在感より、むしろプーチン・ロシア大統領の存在が目立った感もする。

 米国の決断に背景には、いくつもの誤算があったと指摘される。シリア問題解決の国際会議が開催できなかった事、化学兵器使用を「越えてはいけない一線」と明言し、後戻りができなくなったこと、英議会の否決などが上げられる。

▽影響力低下の懸念

 オバマ大統領は元々国際協調重視を強調しているし、米国民を新たな戦場に送りたくないという気持ちは人一倍強いといわれる。その大統領が、単独軍事介入の決断を迫られるのは皮肉だ。しかし、そうした逆境の中でも最善の判断を求められるのが、米大統領の宿命である。

 今後の対応いかんでは、大統領の影響量や米国の指導力に悪影響が出かねない。それは、世界の不安定に直結する。シリア情勢の動きと米国の対応は、世界の安定というより広い観点からも重要な局面を迎えている。

2013.9.8

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