カテゴリー「中国」の44件の記事

2020年9月20日 (日)

◆米中対立:戦線拡大・複合化ーTikTok、ファーウエイ、台湾 2020.9.20

 米中対立が激しく揺れた。動画投稿アプリのTikTokの米国での活動を巡り、両国は水面上・水面下で攻防を展開。米国はファーウエイへの禁輸措置を強化した。台湾を巡る駆け引きも動いた。米中対立は領域を広げ、複雑に絡みながら動き、両国関係は分断(デカップリング)が進んでいる。

▼トランプ政権が規制の動き、中国も対抗

 動画投稿サイトのTokTokを巡る情勢が目まぐるしく動いた。

 同サービスは、中国の北京字節跳道科技(バイトダンス)が2017年から提供している。全世界のユーザーは8億人、米国で1億人が利用する。

 トランプ米大統領はTikTok利用者の個人情報が中国政府に流れているとして、7月末にTikTOkの禁止を表明。その後、米企業による買収かサービス禁止を迫り、9月15日までと期限を定めた。こうした中、米マイクロソフト、オラクル、ウォルマートなどが交渉に乗り出していた。

 中国は米国の動きに反発、8月には対抗策として自国の輸出規制を強化した。輸出規制の対象にはAI関係の技術やサービスも含まれ、米社とTikTokの交渉に中国がストップをかける可能性も生じていた。

▼二転三転、今後の展望なお不透明

 トランプ政権の定めた期限が迫る中、マイクロソフトは13日までに交渉中断を表明。オラクルとTikTokは14日までに、買収ではなく提携案をまとめ、米政府に示した。オラクルがTikTokのグローバル事業に資本出資し、サービスのアルゴリズムはTikTokが保有する一方、顧客データの管理はオラクルが実施するという内容。ウィルマートもオラクルと共に出資に加わる。

 提携案を受けて米商務省は18日、TikTokの米国内での新規ダウンロードや更新を20日に禁止すると発表。一方、サービス自体は11月12日まで認めるとした。

 翌19日、トランプ大統領は提携を原則承認すると発表した。商務省は新規配信の禁止を20日から27日に延期した。

 米政府の対応は二転三転している。判断の背後には、もちろん11月野大統領選をにらんだ思惑もある。中国側の反応もはっきりしない点が残る。TikTok問題がどう推移するか、なお流動的だ。

 ちなみに、ピーターパンの人食いワニは、Tick Tockと表記される。

▼テンセントやファーウェーも

 当面の焦点になっているのはTikTokだけではない。米国は中国大手ITのテンセントが提供する微信(ウィ―チャット)の利用も禁止した。

 大手通信機器、スマホのファーウェイに対しては、2018年以降何度かの決定で取引規制を京っかしている。米国から技術を盗んだなどという理由。

 9月15日には、同社に対する禁輸措置を強化。米国の技術が絡んだ半導体の同車への輸出を事実上全面禁止した。同社への直接輸出だけでなく、外国企業による輸出も制限する内容だ(同車に米国技術が絡んだ半導体を輸出した企業は、米国の制裁対象とする)。

▼米中ハイテク摩擦

 米中のハイテク分野での摩擦が強まったのは、トランプ政権2年目の2018年から。米国は中国のハイテク企業が知的所有権や侵害や技術の窃盗などをしていると主張、締め付けを強化した。次世代通信ん5Gの通信機については、ファーウェイからの導入禁止を打ち出し、欧州や日本、豪州などにも同調を求めた。

 米国は今年8月、ファーウェイ以外に通信基地やスマホのZTE、監視カメラのハイクビジョンなどとの取引を制限する法律を施行した。TikTokやテンセントへの規制強化も、同じ戦略上にある。

▼台湾との関係強化

 TikTok問題が揺れた同じ週、台湾を巡っても注目すべき動きがあった。米国のクラック国務次官が台湾を訪問。7月末に死去した李登輝元総統の告別式に参加し、蔡英文総統と会談した。行政院長(首相)や経済部長(経済相)とも会談し、米台関係経済関係の強化などを話し合った。

 米国からは8月厚生長官が訪台したばかり。相次ぐ政府高官の訪問で、米台関係強化の動きを誇示する戦略だ。

 中国は反発し、米国への批判と警告を繰り返す。19日には戦闘機19機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入、圧力をかけた。

▼安全保障の対立

 米中関係はトランプ政権の発足以来、急速に対立を深めた。米国は2018年以降、中国からの輸入品に高率関税を導入。まず貿易戦争が勃発した。次いでハイテク分野で対立を深めた。

 加えてここに来て、安全保障分野でも対立が強まっている。6月末に香港に国家安全法が導入されると、米国は中国を厳しく批判。香港への制裁を強化するなど、警戒の姿勢をあらわにした。7月には南シナ海問題を巡り、中国側の主張は国際法的に見て違法であると初めて明言した。9月の東アジアサミット閣僚会議(ビデオ)では、ポンペオ国務長官が南シナ海問題で中国を激しく批判した。

 台湾との関係強化の動きも、この脈略にある。香港の1国2制度は国家安全法により空洞化し、香港が中国に飲み込まれつつある。台湾が同様の姿にならないように、米国は支援強化を見せつけている。

▼デカップリング

 米中関係の行方には、不透明要因も多い。11月の米大統領選で民主党のバイデン候補が当選すれば、対中政策はトランプ時代のやり方とは変わるだろう。それでも、対中警戒感の高まりは、野党民主党も含め米国に広く浸透している。

 1990-2000年代、米国は中国を国際社会に受け入れることが中国の民主化や世界の安定に繋がるという見方を取り、関与政策を推進した。この考え方はいまや完全に後退している。

 米中の分断ともいえる「デカップリング」が、経済のみならず科学技術、人的交流など様々な分野で進んだ。全世界的なサプライチェーンは、中国外しの動きが広がる。ハイテク分野では、米中それぞれが相手企業の活動を制限し、締め出す動きが加速する。新型コロナの流行は、心理的に経済的効率優先主義より製品供給の確保や安全性が重要という流れを強めた。

 新冷戦という言葉もすっかり定着した。今後の米中関係を見るうえで、対立の拡大や深まりはすでに所与の事実となっている。

◎ Tick Tockと紛争刻む時の音
◎ 戦争は「貿易」だけだった2年前
◎ 「冷戦」に違和感消えるコロナの夏

2020.9.20

 

 

2020年8月 2日 (日)

◆李登輝死亡と中台関係 2020.8.2

 台湾の李登輝元総統が死亡した。1996年に初の総統選の直接選挙を実施して、民主化を推進した人物。その後中国との2国論を展開し、中国からは敵対視された。死亡に際しても国際社会や中国から様々な反響があり、影響力を示した。

▼国民党独裁の打破

 李登輝氏は1996年の民主化の前、国民党の要職を経て1988年から台湾の総統に就任していた。しかし、国民党の利益とは一線を画していたところが、重要なポイントだ。

 国民党は元々中国本土の政権を担っていた政党。第2次大戦後に共産党との内戦に敗れ、台湾に逃れて政権を樹立した。同党政権下の支配層の中核は中国から逃れてきた外省人が中心で、元々台湾にいた本省人は差別を受けていた。

 国民党の支配は独裁的で、1947年には政権による本省人の大規模な弾圧・虐殺事件が起きている(2.28事件、犠牲者は数万人と推計される)。国民党政権は、その腐敗も指摘された。

 元々本省人だった李氏は、農業の専門家からスカウトされる形で政治の世界に入った。そして国民党内で本心を隠す形で出世し、1988年に総統に就任。その後は、巧みな人事などで国民党独裁を徐々に解消した。

▼民主化と2国論

 そして1996年の直接選挙につなげる。直接選挙の前には、中国が台湾に圧力をかける台湾海峡危機が発生したが、計画通りに選挙を実現した。

 危機には米国の協力をはじめとする、国際社会の支援を獲得して乘り切った。選挙では圧勝した。

 その後1999年には、中国と台湾の関係を「特殊な国と国の関係」とする2国論を表明。中国の反発を受け、中台対話は中断した。 

 2000年の総統退陣後は出身の国民党ではなく、対立する民進党系の政治家に肩入れした。

▼民主化台湾がなければ

 台湾の民主化は、中華圏では初めてのものと言ってもいい。

 歴史にifはないが、仮に李登輝氏が登場せず、国民党による独裁、腐敗態勢が続いていたら台湾はどうなっていたか。台湾の魅力は、今より小さかったに違いない。中国による台湾統一が進み、中国共産党と国民党(国共)による1国2制ができていたとしてもおかしくない。

▼世界に反響

 李登輝氏の死亡に際し、ダライラマなど世界の要人が弔意を伝えた。これに対し、中国の外務省の副報道官は「国の統一は阻止できない」と李登輝氏を批判する声明を発表。中国共産党系メディアの環球時報は「中華民族の罪人」と主張した。

 台湾の蔡英文総統は、ツイッターで中国語のほか英語、日本語のメッセージを発信。日本語版には7月31日、「李元総統の遺志を継ぎ『台湾に生まれた幸福』を追求し続けます」と書いた。

 李登輝氏は死亡に際しても、世界に影響を投げかけた。

◎ 政治家逝き、民主、統一の議論に火
◎ 中華圏に民主化のサンプル ソフトパワー
◎ 国共の1国2制度冷めた夢
◎ この地球(ほし)で「生まれた幸福」何人か

2020.8.2

 

2020年7月 5日 (日)

◆香港1国2制度の黄昏 2020.7.5

 香港で国家安全維持法が施行された。中国の直接統治が強まり、1国2制度の形骸化の懸念が強まる。自由な自治を前提としてきた香港は、重大な曲がり角を迎えた。政治体制や価値観を巡る米欧と中国の対立にとっても、重要な節目になる。

▼中国が直接関与

 国家安全法は6月30日に中国が交付し、同日午後11時に香港で施行された。主な内容は、(1)国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託を犯罪を規定、(2)中国政府は香港に治安維持期間を新設する、(3)香港の他の法律と国家安全法が矛盾する場合は、国家安全法を優先する、などだ。

 (1)の犯罪の規定は、反中的な抗議活動や民主化デモなどを念頭にしているとみられる。(2)は、これまでの香港政府を介した間接的な関与ではなく、中国が香港に直接関与することを意味
する。(3)は、香港法が中国法の下に置かれことを鮮明にする

 

▼1国2制度の骨抜き

 

 香港は1997年の返還から50年間、「1国2制度」を約束されてきた。香港は中国の領土でありながら、法律や司法などは香港独自の制度を維持する仕組みだ。香港のビジネスは英国法の影響下に作られた香港法の下で運営され、金融業などは返還前と変わらず繁栄を維持してきた。

 国家安全法は、香港法が中国法の下に位置づけられると明確化した。1国2制度が骨抜きされると言ってもいい。

▼中国と同じ状況に

 安全法は外国人にも適用される。外国人であっても、「国家分裂」をみなされる発言は許されないし、違反を理由に逮捕されることもある。

 いわば、中国国内に居るのと同じ状況になる。これまで香港は、「言論や通信の自由がある地域」だったが、中国と同じようになる、と考えるのが分かりやすい。

▼中国は民主化に危機感

 中国が国家安全法制定に動いたきっかけの1つが、昨年の抗議デモと言われる。香港の議会が、香港で犯罪を犯した犯人を中国に送ることを可能にする「逃亡犯条例」の制定に動いたことに、民主派の住民らが反発。昨年6月以降、100万人、200万人以上が集まる大規模抗議活動が続いた。

 抗議活動の要求は民主化拡大の要求にもつながり、11月の区議会選(権限は小さいが、民意のバロメータと位置付けられる)でが民主派が圧勝した。

 この間、香港政府は有効な対抗策を打ち出せず、中国政府は危機感を強めた。結果、直接統治に繋がる香港安全法制定に動いた、という見方だ。

▼「香港の自由の死」

 香港の民主派住民らは7月1日以降、安全法に対し反対活動を展開。これに対し香港警察は取締りを強化し、安全法に対する逮捕者を出した。報道機関やネットに対する監督も強化している。香港の民主派団体も解散を余儀なくされるなど、統制が強まっている。

 元々香港の社会から自由が失われていくという見方は、幅広くあった。例えば2015年に政策された映画「十年」は、自由が失われてた10年後の香港の日常を淡々と描いている。

 しかし、今回は、1国2制度が急激に覆される展開。民主派からは(例えば蘋果日報=アップルデイリー=代表など)は、「香港の自由は死んだ」などの発言も出る。

▼経済にはダメージ、中国は想定済み

 米欧など国際社会は安全法制定に反発。米国は香港や中国に対する制裁措置を発表した。香港に進出している企業は、香港法による財産の保護などが保証されなければビジネスも展開しにくい。事業の撤退などの動きもでてくるだろう。実際、ヘッジファンドなど金融機関には、拠点を香港からシンガポールに移す事例もある。

 経済的なダメージは避けられないだろう。しかし、中国政府もその辺は十分に理解した上での決断だろう。香港が中国経済に占める割合が、返還時とは比べ物にならないほど縮小した(1997年には香港のGDPは中国の7%程度、現在は2%程度)。これも、中国が思いきった決断ができる理由の1つだろう。

▼香港住民の受入れ

 民主派の住民らが、香港から海外に流出する動きもある。旧宗主国の英国や豪州、台湾などは、香港住民を受け入れる姿勢を表明している。

 ただし、百万人単位の流出になれば、簡単に対応できるものではない(香港の人口は750万人)。欧米などの中国批判・民主派支持が、単なる言葉だけのものか。それ以上のものになるかも問われる。

▼欧米vs中国の最前線

 香港問題は、香港個別の問題であるほか、国家体制や価値観などを巡る米欧と中国の対立(競合)の最前線でもある。欧米は自由や民主主義、法の支配を尊重する体制が、人々の幸福や経済発展という観点から見て相対的に優れていると主張してきた。香港のあり方でも、中国が「1国2制度」を尊重する方が利益になる、という読みがあった。

 ただ中国は、欧米のモデルにとらわれない国家のあり方や経済発展を志向する傾向を強めている。2008年の世界金融危機以降は特にそうだ。そして、経済成長の持続や人々が豊かになるという面では、結果を出している。

 国際社会における存在感を拡大し、中国式モデルが新興国などから支持を拡大しているのも事実だ。

 香港問題は、自由や民主主義、国家のあり方に関わるこうした問題に改めて問いを突き付ける。香港住民受入れなど、個別問題についても総論では答えにならない疑問を投げかける。

 

◎ コロナの夏1国2制度黄昏時
◎ 「自由の死」を呆然と見つめ盛夏来る
◎ 嫌われても中国伸長この事実
◎ 「頑張れよ」声だけ声援空虚なり

2020.7.5

 

 

2020年5月31日 (日)

◆米中対立・新ステージに 2020.5.31

 中国が香港国家安全法制定を決めたことに対し、米国は対中国・香港制裁措置を発表した。新型コロナの感染拡大を巡っても、対立がエスカレートする。米中対立は、新ステージに入った。

▼香港国家安全法

 中国の全人代は28日、「香港国家安全法」の制定を決議して閉幕した。香港の反体制活動を禁じる内容で、中国が直接取り締まるようにする点がこれまでと異なる。

 香港は1997年の中国への返還以来、「1国2制度」の下に運営されてきた。香港の法律は、基本的に中国の法律と別のものだった。その下に、企業の自由な活動や言論の自由(程度については色々な議論がある)が維持されてきた。

 今回の決定について、香港の民主派や欧米各国は、1国2制度を骨抜きにすると懸念する。

▼米国が制裁措置

 米国は中国の決定を批判。トランプ大統領は29日、一連の制裁措置を発表した。内容は、(1)米国が香港に対して認めてきた関税やビザ発給の優遇措置を廃止、(2)中国や香港の当局者への制裁、(2)中国からの大学院生の一部の入国停止、などである。

 同時にトランプ大統領は、かねて中国寄りと批判してきたWHO(世界保健機関)からの脱退を表明した。

 コロナ問題で米国は、中国が初期の段階で情報公開を十分に行ってこなかったなどと批判。さらには、新型コロナウイルスが武漢の中国の研究所から流出したなどの批判もしている。これに対しては中国が根拠のない批判などと反論する。

▼ハイテク、企業上場、人権でも

 ここに来て米国が対中批判を強めているのは、香港問題だけではない。ハイテクや金融、人権など様々な分野で措置を打ち出している。

 ハイテクでは5月、通信大手のファーウェイに対する禁輸措置を一段と強化した。米国製の半導体装置を使った製品は、たとえ外国製でも輸出を認めないようにする内容。これにより、台湾のTSMCはファーウェーからの新規受注を停止した。

 ナスダックは新規上場企業のルール厳格化を決めた。中国企業の新規上場のハードルを高くする。米上院は、米国に上場する外国企業の透明性強化を求める法案を可決した。

 米上下院は中国がウイグル人の人権侵害批判するウイグル人権法を採決した。

▼コロナと大統領選

 2017年の米トランプ政権の発足以来、米中関係は緊張が高まった。トランプ氏は「米国第1」を掲げ、自国産業保護を優先させる姿勢を鮮明にし、2018年以降中国からの輸入品に高率の関税を課た。米中貿易戦争が勃発した。

 その後中国のハイテク産業が米国の技術を不当に盗んだり、知財権を侵害しているなどとして制裁などの措置を導入した。

 米中の貿易・ハイテク摩擦は、今年1月に第1段階の合意を締結し、一時休戦したかに見えた。

 そこにコロナの感染拡大で、状況が変わった。米政権はコロナを巡り中国への不信を強めた。トランプ大統領が秋の大統領選をにらみ、対中強硬姿勢を強めるのが得策と判断したとの見方も強い。

▼中国は勢力拡大の動き

 中国側は、コロナでは「マスク外交」とも呼ばれる感染国支援などで影響力を拡大。一方で領土問題を抱える南シナ海で実効支配を強化するなど、勢力の拡大に余念がない。香港国家安全法の制定決定も、コロナ問題で国際社会の香港への関心が弱まった機を利用したとの見方がある。

▼覇権を巡る対立

 米中の対立は、背景には覇権を巡る争いがあるとの分析も多い。中国経済の規模はすでに米国の3分の2に達し、購買力平価で比較すれば米国より大きい。数年前から一帯一路などの世界戦略を打ち出し、21世紀半ばには米国と並ぶ世界の強国になるとの目標も打ち出した。

 2000年代までの米国は、中国が経済発展を実現すれば民主化するとの見方にも届いていた。今や、そうした観測は後退している。共産党1党独裁の異形の国家が、米国の覇権国の地位を脅かそうとしているとの警戒は、トランプ政権のみならず野党民主党でも強まっている。

◆デカップリング

 トランプ政権が打ち出した自国優先、対中警戒の政策は、米国と中国の経済を分断するdecoupling(デカップリング)につながるとの見方が、以前からあった。振り返れば、東西冷戦時代の世界は2つに分断していた。コロナの流行拡大は、そうした傾向に拍車をかける可能性がある。

 コロナ感染が生み出す新常態は、経済システム、生活、政治の枠組みなど様々な分野に及ぶ。新常態への移行の多くは、スムースに行われるわけではないだろう。様々な軋轢や混乱があると考えるのが自然だ。

 その中でも、米中関係の変化は規模の大きいものの一つだろうし、覇権を巡る争いとなれば地球規模の地殻変動になるだろう。

 

◎ 新常態 やわらか表現中身は混乱
◎ そういえば 世界は割れてた世代前
◎ 疫病下の戦線拡大、またですか

 

2020年5月24日 (日)

◆コロナ禍と中国全人代・香港 2020.5.24

 中国の全人代が22日始まった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、当初予定から2カ月半遅れの開催。コロナ後の新風景や動向が見られた。

 全人代は中国の政策の基本方針などを決定(承認)するもので、毎年3月初旬に開催される。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、延期された。北京の人民大会堂に集まった全国の代表はマスク着用。雛段の指導部らはマスクを外していた。

▼経済成長の目標なし

 注目点の第1は経済。毎年、全人代冒頭での経済成長目標が注目されるが、今年は目標設定を見送った。先行き不透明要因が多いのが理由とみられるが、異例だ。

 中国の成長率は過去40年10%近い成長を実現してきたが、2019年は6.1%にとどまった。米中貿易摩擦の影響などを受けたため。

 そこに加わったコロナ禍。1-3月のGDPは、前年同期比▲6.8%と落ち込んんだ。4月以降は回復の兆しがあるものの、IMFなどの予測は通年でも1-2%程度の低成長を見込んでいる。

 コロナの今後は見通しがたい。そうした中で、中国指導部は最も重要な指標の1つだった成長目標を外すという新たな決断をした。コロナがこれまでの常識、枠組みを変えていることの表れの1つだ。

▼1国2制度の終焉?

 注目の第2は香港問題だ。李克強首相は年次経済報告で、「香港国家安全法」を制定する考えを明示した。

 香港は1997年の返還以来、50年間は1つの国の下に2つのシステムが並存する「1国2制度」を維持することになっており、法律制度も中国本土とは別だった。このため、香港の治安についても一義的には香港政府が責任を持ち、必要な法律も香港政府や香港議会が制定する仕組みだった。

 中国はこれまで、「1国2制度」の下で香港政府を支援する立場を取ってきた。香港の治安を維持する法律についても、昨年の全人代では香港政府を支援すると表明していた。この方針を転換し、中国が直接関与する姿勢を明確にした。

 こうした動きが続けば、香港は法律の上でも中国の法律の下に統合され、「1国2制度」でなく「1国1制度」になりかねない。香港の民主派などは懸念する。

 香港では2019年に、特定犯罪の犯人を中国に引き渡すことを可能にする「犯罪者引渡し条例」制定を巡り民主化運動が拡大。世界の注目を浴びた。コロナ問題の発生後は国際的に香港の動向が報道されることはめっきり減った。

 そうした中で、今回の「香港国家安全法」制定の動きが出て来た。香港問題においても、コロナが動向を左右する1つの要因になっている。

▼コロナ後の新世界

 コロナ後の世界は枠組みが従来から変わると指摘される。経済システムの変化、強権国家の増加、民主主義の危機など、様々な変化が指摘される。

 中国全人代や香港情勢からも、そうした世界の変化の予兆が見て取れる。

◎ コロナ後の世界をチラリ全人代
◎ 「緊急時」と力の支配が踊りだす
◎ 疫病がゲームのルールを変える年
◎ 非常時の反骨精神どこにある

 

2020.5.24

 

 

2020年1月26日 (日)

◆中国・武漢発新型ウイルスの衝撃と問いかけ 2020.1.26

 

 中国・武漢から新型のコロナウイルスによる肺炎が拡散。世界を揺るがしている。

▼武漢封鎖、中国団体旅行禁止

 感染は2019年末から始まった模様で、今年に入り感染に拍車がかかった。1月25日までに中国国内で1300人が感染、死者は41人に達した。

 武漢市は23日から主要公共交通の運行を停止。人口1000万人を超える同市は封鎖された格好になった。あたかもSF映画の世界のようだ。

 中国は24日から春節の休暇に入ったが、各地でチェックを強化。中国ではこの時期、延べ30億人の移動が予想されていた。万里の長城や故宮は休業となった。中国国内の団体旅行は24日から停止された。

▼SARSの教訓

 WHOは新型ウイルスが人から人に感染していると指摘。一方で23日、緊急事態宣言は見送った。感染がまだ中国国内中心であるためだ。

 アジアでは2003年にSARSが香港中心で流行。1000人近い死者を出した。その際に、香港や中国が情報開示を渋ったとして、国際社会から強い批判を浴びた。SARSの場合、感染者の致死率は10%程度だった。

 中国政府は今回、その時の経験も踏まえて情報公開と対応を急いでいる模様だ。

 中国による武漢封鎖、団体旅行の停止などは、ある意味強権国家でなければ取りにくい。中国はいったん方針が決まれは動きは速いとの指摘もある。

▼世界に課題を突き付ける

 現時点では情報も限られ、今後事態がどう進展するかは予断を許さない。肺炎の感染拡大の速度はもちろん、経済や社会・生活への影響も予測しがたい。

 確実なことは、今後しばらく世界の関心の中心一つとなり続けること。そして世界を揺り動かすことだ。

 中国のみならず、国際機関や国際社会の対策、情報管理や情報規制の是非なども関心事。国家や政治のあり方も重要だ。

 パンデミックという危機の突然の顕在化は、世界が潜在的に抱えるリスクと課題を意図せずに突き付ける。

 

◎ 春節や世界に飛び出すコロナかな
◎ 千万人の都市封鎖され春が来る  
◎ 危機管理強権国家の光と影

 

2020.1.26

2019年10月 6日 (日)

◆中国建国70周年が映す現状 2019.10.6

 

 中国が10月1日に建国70周年を迎え、北京の天安門広場で盛大な式典が行われた。

 式典では雛段上に習近平国家主席以下幹部が並び、軍事パレードでは最新兵器を誇示した。習主席は中国が強国を目指す姿勢を改めて強調した。

▼大国の誇示

 会場の天安門広場は、1949年に建国が宣言され、1989年には天安門事件で民主派の弾圧が行われた場所だ。

 中国は1949年の建国の後、1970年代まで文化大革命やその後の政治闘争など混乱が続いた。しかし、鄧小平の指導の下に1978年の開放改革路線が始まってから、急速な経済成長を実現。その後約40年間の高成長を続け、今や世界の経済大国に成長した。

 影響力の拡大は経済にとどまらない。安全保障面では南シナ海などで軍事的な存在感を強めている。アフリカでは存在感と影響を拡大。一帯一路構想では中央アジアや中東などとの関係を強化する。

 式典ではこうした大国の誇示が随所に表れた。

▼中国型モデル

 10年ほど前までは、中国が経済成長すれば政治的な民主化も進むとの希望的観測が強かった。1党独裁の政治体制下で、経済成長がいつまで続くわけがないとの見方もあった。しかし、そうした見方は外れ続けた。

 1989年の天安門事件で、中国は政治的な民主化を徹底的に弾圧した。それにも関わらず、経済成長はむしろ加速した。「社会主義的資本主義」「国家資本主義」など、矛盾したような概念がまかり通る状況になった。

 アジアやアフリカの途上国などでは、中国的な開発独裁的経済発展モデルへの支持や受け入れが広がった。背後には、リーマン・ショックとその後の政治・経済の混乱により、欧米が誇示してきた「民主主義・自由経済」のモデルの魅力が減退したこともある。「北京コンセンサスvsワシントン・コンセンサス」の論争でも、必ずしも劣位ばかりでなくなった。

▼高度監視社会

 10年前と違うもう一つの面が、高度監視社会の実現だ。SNSやコンピューター・データの規制、監視カメラによるモニターなどを通じ、中国は世界でも先端を行く高度監視社会の一つになった。それが政治的な自由や民主化活動を妨げている面がある。

 SFに表現されるディストピア的な世界ともいえる図式。世界全体がその方向に向かう中で、中国は先頭を走る。

▼米中新冷戦

 もちろん、中国にとって都合の良い話ばかりではない。米国はトランプ政権の成立後、中国に対する警戒をむき出しにし、経済戦争を仕掛けた。ハイテク分野での規制も強化している。米中は新冷戦の時代に入ったとの指摘もある。

 貿易戦争の影響で中国経済は減速を強め、債務膨張などのリスクも拡大している。生産拠点の中国から東南アジアなどへの移転加速する。それでも中国経済が6%前後の成長を続けている点は、留意しておく必要がある。

▼香港問題の問い

 70周年式典に直接問いを投げかけたのが香港問題だ。同地では6月に始まった抵抗運動が続き、1日にもデモ隊と警官が衝突し、18歳の高校生が実弾で撃たれる事件が起きた。香港の混乱は長引き、収束の展望は見えない。

 1997年の香港返還の時には、その後50年間の1国2制度が約束された。しかし中国の支配強化が進み、1国2制度は有名無実化が進む。抵抗運動は、中国式の政治システムに対し香港の人々の懸念がいかに強いかを改めて示した。

 中国はその気になれば香港の抗議活動を力ずくで抑え込むことも容易だろう。しかしその場合、世界で中国への批判が強まり、中国型モデルの魅力が傷付く可能性が高い。

▼歴史の一幕

 ソ連は72年で崩壊した。それに比べ中国の体制が強固であることは間違いない。しかし、より長期的な将来がどうなるかは、分からないとしか言いようがない。

 2029年の建国80周年に、中国と世界がどんな姿になっているのか。そして建国70周年の映像はどのように見られることになるのか。世界にとって大きな命題だ。

◎ 祝賀の広場(ば)、建国、弾圧去来する。
◎ 自由なき発展に世界がまた唸る
◎ 香港の声押さえ込む記念の日

2019.10.6

 

2019年9月 1日 (日)

◆緊迫度増す香港情勢 2019.9.1

 

 香港情勢が緊迫度を増している。

 29-30日には警察当局が民主派指導者や議員を逮捕、31日に予定していたデモを不許可とした。これに対し市民が反発。31日には香港島中心部などで抗議活動を展開し、治安当局と衝突が発生した。9月1日にはデモ隊が空港バスターミナルを一時占拠するなど混乱が続いた。

▼デモ3か月

 逃亡犯条例をきっかけに6月に抗議活動が始まったのが6月。3か月(13週間)を経過するが、毎週末になると抗議活動が続く。事態は収束の兆しを見せるどころか、混乱を深めている。

 香港当局は民主派の求める条例の撤回などの要求を拒否し続ける。これに対し住民は8月18日のデモに170万人(香港人民は750万人)が参加するなど抗議活動を続けるが、落とし所が見えている訳ではない。一部のデモ参加者が過激派→警察との衝突も繰り返される。

▼1国2制度の実態

 香港政府は、中国の指示なしには何もできないように見える。林鄭月娥行政長官が先頭に立ってメッセージを発する機会も減った。これが返還から22年目の1国2制度の実態なのだろう。

 香港経済への影響は深刻だ。観光客は減少し、外資は他の地域に機能を移し始めている。香港がの地盤低下が決定的になるとの見方も強い。

▼あと1か月の勝負?

 手詰まり状況がどう動くのか。中国は香港との境界付近に治安部隊を送り、圧力をかける。中国は10月1日に建国70周年を迎え、それまでに事態収拾を狙うとの見方が強い。ただし、直接の派兵は国際世論上のマイナスの影響もあり、できれば避けたいとみられる。

 米国や欧州は中国の動きをけん制するが、口先の言動に留まる。台湾では中国に対する警戒が一層強まるが、アジア諸国の発言は少ない。

 今後1か月。流血事態を含め、何があってもおかしくない。

◎ 毎週末デモに100万 暑い夏
◎ 民主化は抑圧 都市は沈下する
◎ 正体がよく見えて来る1国2制度

2019.9.1

 

 

2019年7月 1日 (月)

◆米中休戦とプーチン発言―G20周辺発のニュース 2019.6.30

 G20首脳会議が大阪で開かれた。会議には世界の首脳が集合し、会議本体もさることながら、重要な2国間会談多数開催された。世界的なニュースがG20周辺発で流れた。

▼米中貿易協議再開

 世界の注目が集まったのが29日の米中首脳会談だ。貿易やハイテク分野を巡る米中の対立は、過去1年の世界のニュースのヘッドラインを提供し続け、世界経済に多大な影響を与えてきた。

 トランプ大統領は昨年3月、中国が知的財産権を侵害しているとして対中関税を引き上げると発表。その後3段階に分けて、今年5月までに合計2500億ドル分の中国からの輸入品に対する関税を25%に引き上げた。対象は米国の対中輸入総額のほぼ半分に相当する。

 加えて米国は中国のハイテク企業を狙い撃ち。昨年はZTEとの取引を禁止し、同社に対し多額の罰金や経営陣後退などの条件を呑ませた。昨年末からはファーウェイに狙いを定め、G5市場からの締め出しや事実上の取引の禁止などを打ち出してきた。

 米中は昨年12月のアルゼンチンでの首脳会議で、貿易協議に入ることで合意した。しかし協議は今年5月に事実上決裂。それを受けて米国は制裁関税の第4弾計画(2500億ドル=1-4弾合計で米国の中国からの輸入のほぼ全量)を発表するなど、米中摩擦の日は益々激しくなった。

▼見えない先行き

 大阪での首脳会談で米中は協議の再開を決定。米国は第4弾の関税引き上げを見送った。ファーウェイに対する取引も、一部容認する姿勢だ。

 ただ、米中対立を解くのは容易ではない。米国は技術的な優位を維持するために中国に対し知的財産権保護を保証するシステム導入を求める。一方中国は米国流ルールの押し付けに対抗する。その底流には、安全保障や経済での覇権争いがある。問題は構造的だ。

 世界経済はすでに、米中摩擦激化の深刻な影響を受け始めている。アジアからは輸出が減退。景況感も低下している。世銀やIMFなどは経済見通しを相次ぎ下方修正した。経済減速は金融市場の不確実性拡大にも繋がりかねない。

 米中首脳会談の結果はそうした懸念を一服させた。しかし先行きが見えてきたわけでは全くない。

▼波紋広げるプーチン会見

 G20首脳会議に先駆けて、ロシアのプーチン大統領が英FT紙と行ったインタビューが物議を醸している。プーチン氏は自由主義が時代遅れになっている(obsolete)と指摘。トランプ米大統領の一方的な政策を批判した。

 また2015年の欧州難民危機の際に独メルケル首相が判断した寛容な移民政策が間違いであり、後に問題を大きくしたなどと批判。リベラル派は影響を及ぼせなくなったと語った。

 インタビューは多くのメディアが引用。EUのトィスク大統領(首脳会議議長)は強く反発した。

 プーチン大統領の発言は意図的に刺激的な部分がある。しかし、ここ数年の難民危機やトランプ米大統領の誕生、英国のEU離脱決定(Brexit)など、寛容な精神に裏付けされた自由民主主義(リベラル・デモクラシー)の存在価値と力が問われているのは間違いない。そんな環境だからこそ、プーチン大統領の発言が波紋を広げているのだろう。

▼驚きの米朝首脳会談

 トランプ米大統領は大阪で北朝鮮の金正恩委員長との会談の可能性に言及。2日後には板門店で会談を実現した。米大統領が軍事境界線を越えて北朝鮮領に入ったのは初めてだ。

 トランプ大統領の予期しがたい行動が、ここでも現れた。同時に、周到な準備よりスピードを重視する同氏の特性が現れた格好だ。

 G20会議本体は、公正貿易などの理念や海洋プラスチックごみの2050年までの廃止などを盛り込んだ大阪宣言を採択して閉幕した。ただ、貿易については昨年に続き保護主義に反対する文言はなく、環境でも地球温暖化問題への言及はなかった(議長国日本が米国に配慮したためと、英FTなどは批判的に報じた)。

 G20が始まった2008年は、リーマンショックの直後。最初のうちは世界恐慌防止と金融危機の拡散防止に、各国が必至で取り組む姿勢が伝わってきた。その後、会議は「集まること」が重要になり、周辺の2国間協議にむしろ注目が集まる。

◎ ボス集う 何かが動くこともある
◎ 先は不明 それでも安堵の米中休戦
◎ 自由批判 饒舌を許す 辛い時世
◎ 自由主義「古い」に「それなら」と質したい

2019.6.30

 

 

2019年6月17日 (月)

◆香港の抗議デモと世界への問いかけ 2019.6.16

 香港で「逃亡犯条例」改正を巡り市民らの抗議活動が拡大。行政長官は改正の延期を表明した。しかし今後事態がどう展開するか、予断を許さない。香港の事態は、民主主義体制の経つを米欧などが中国とどう付き合っていくかなど、世界への問いも投げかける。

▼100万人の抗議デモ

 条例改正は、香港で逮捕した容疑者などを中国本土に送れるようにする内容。英語ではExtradition lawと表記されることが多い。親中派が多数の立法会は、20日ごろまでに採決の構えを見せていた。

 民主派は条例が改正されれば、中国にとって都合の悪い人物が不当逮捕され大陸に送られると懸念。同派が呼び掛けた9日のデモには、主催者発表で103万が参加した。この規模は、2003年の固化安全条例反対(50万人)や、2014年の雨傘運動(10万人)をはるかに上回る。

▼揺らぐ1国2制度

 香港は1997年の返還後、50年間は1国2制度を認められるはずだった。しかし現実には中国の支配が次第に強まり、自由な言論や政治活動が抑制されている。今回条例改正が実現すれば、司法や警察でも中国による支配がさらに強まりかねない。

 そうなれば、香港の法律体系の上に回っている経済活動にも影響が出てくる。実際、外資系企業の撤退や拠点縮小がささやかれる。

 こうした心配があるから、抗議活動には民主派だけでなく、一般市民が加わり、経営者も理解を示した。

▼延期表明後→200万人デモ

 林鄭月娥行政長官は15日、対立緩和のために規制の延期を発表した。しかしあくまで撤回ではないと主張した。

 これに対し民主派は撤回を求め、16日も抗議集会を継続。参加者は主催者側発表で約200万人に達した。行政長官の辞任を求める声も上がった。

▼雨傘運動の記憶

 今回の抗議活動の舞台は、香港島の立法院前とその周辺の道路。2014年に雨傘運動の中心になった地と同じだ。雨傘運動は2017年の香港行政長官選挙に事実上親中派のみしか立候補できず、自由選挙でなくなることに抗議する学生らが始めた。同年9月26日から12月15日まで80日あまり続いたが、結局要求を聞き入れられることなく終結した。

 今回は雨傘運動に比べ、市民の参加者も多く、とりあえず条例改正の延期を勝ち得た。しかし、香港当局屋中国がこのまま撤回に応じると見るのは楽観すぎる。今後の行方は全く不透明だ。

▼天安門事件30年の年

 抗議活動は、天安門事件30周年に起きた。6月4日、香港や台北などでは追悼式典や様々な行事が行われたが、北京は全くの平穏だった。中国では、事件について何も語られなくなった。これが香港の未来図か、と不安を抱く人も多い。

▼世界への問い

 実際大きな流れとしては、中国による香港支配の強化が進んでいるのが現実だ。この先、再び強硬策が導入されても不思議ではない。

 条例改正は、1国2制度の行方(まやかし)、中国による自由社会支配のあり様、住民の生き方など様々な問題に問いを突き付ける。それは、世界が中国とどう付き合うかという問題にも関係する。奥は深い。

◎ 雨傘の記憶再生 もう5年
◎ 自由なき大国の膨張どう生きる
◎ 怖いけどただ飲み込まれてなるものか

2019.6.16

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