カテゴリー「中国」の47件の記事

2021年4月11日 (日)

◆アリババへの罰金と中国の情報管理 2021.4.11

 中国当局がアリババに巨額の罰金(182億元)を科した。同社がネット通販で独占的な地位を乱用したという理由で、中国独禁法による罰金としては過去最大だ。

 中国当局の狙いや今回の罰金の位置づけは不明な部分が多い。しかし、中国のIT戦略や情報管理政策が曲がり角を迎えていることは認識しておく必要があるだろう。

▼独禁法違反

 中国当局は制裁の理由について、同社がネット通販で、取引先に対し競合相手と取引をしないように求めるなど、独占的な地位を乱用したためとする。これが同国独禁法に違反するという説明だ。

 アリババは決定に従うという声明を発表。社会的な責任を果たしていくとも表明し、恭順の意を表した格好だ。

▼政策の舵切り

 中国当局の、大手ITに対する姿勢の変化が目立ち始めたのは昨年後半。大手IT各社への規制を強め、中でも電子商取引最大手のアリババへの動きが際立つ。昨年11月には、アリババ傘下の金融会社アントが上場を予定していたが、延期(中止)を余儀なくされた。当局の意向が働いたとの見方がもっぱらだ。当局はその後アリババ本体への調査に着手。半年に満たない調査で今回の決定だ。

 テンセントなど他のIT大手に対する調査も始め、罰金も科している。ただ、金額などはアリババがけた違いに多い。

 中国はこれまでIT企業の育成を重視。電子商取引ではアマゾンなど米大手を中国市場から占め出し、その恩恵でアリババなどが育った。中国当局が自国のIT企業を応援した形だ。ここに来て、支援から規制に舵を切ったようにも見える。

▼様々な憶測

 事実関係や中国当局の真意には、分からない部分も多い。

 大手ITに対する規制強化は世界的な流れ。EUは数年前から様々な試みをしている。米国も昨年後半、司法省がグーグル、FTCがフェイスブックをそれぞれ提訴するなど、基本スタンスを規制強化の方向に変えた。

 ただ、中国の規制強化を欧米と同じ脈略(論理)で捉えるのは、打倒でないように見える。

 アントの場合、Fintechの分野で急成長し、当局の金融規制が及ばなくなる恐れがある。アリババ本体にしても、あまり影響力を拡大すると、当局の思うがままに動かなくなるーーこんな警戒が、規制強化につながったとの見方がある。アリババやアントの株主に、党長老につながる人脈が含まれており、政治的な警戒を呼んだという情報も流れる。真偽のほどはいずれも不確かだ。

▼国家による情報管理

 真相がつかめない中でも、注意すべき点がある。中国の国家・党による情報管理や情報独占の動きだ。

 中国はかねてネットを使った国民の情報収集や管理を強めている。TVカメラを通じた国民の行動監視やデータ収集、SNSの発信内容の把握など様々だ。

 一方、アリババなど大手IT企業は、国民の買い物情報、個人の健康情報など膨大なデータを蓄積している。これが国家にが取り込まれたらどうなるのか。管理社会は一段レベルが高まる。

▼情報化・監視社会の行方

 高度管理社会や情報独占の懸念は、コロナ後の世界で益々重要なテーマになる。そしてこの問題を論じるき、焦点になるのは中国だ。

 アリババの罰金には、分からない部分が多く残る。「社会のIT化」や「高度監視社会化」の潮流をしっかり押さえて、個々の動きやニュースを追って行く必要があるだろう。

◎ 党の声、アリババ「凄い」が「大丈夫?」
◎ また一つ監視社会が進む春

2021.4.11

 

 

2021年3月29日 (月)

◆米欧の対中制裁と中国の対抗 2021.3.28

 米EU英カナダがウイグル問題で対中制裁を発動した。前週に米中外交協議で激しくやり合ったのに続く動きだ。米国を中心として西側の陣営と、中国(およびその陣営)の対立は、様々な外交戦を繰り返しながら深まっているように見える。

▼ウイグル問題で人権侵害を批判

 ウイグル問題での制裁は、EU、英国、米国、カナダが22日に相次ぎ発表した。中国のウイグル人の扱いが、人権侵害に当たるという理由だ。

 今年に入り、ウイグル問題は相次ぐ動きを見せた。

 米国は1月に中国によるウイグル人弾圧がジェノサイドと認定。新疆ウイグル自治区で生産された綿製品の輸入を禁止した。

 2月には中国が、ウイグル問題を報じた英BBCインターナショナルの放映を禁止。カナダやオランダの議会が、中国によるウイグルの扱いをジェノサイドとする決議をした。

 そして今回の制裁だ。制裁の対象はウイグル問題の関係者など。実際の効力は限定的だ。それよりも、中国に対する「強い姿勢」を示す意味合いが大きい。

▼米中対立

 米国はトランプ政権下で中国に対する強硬姿勢を強め、高率関税の導入やハイテクでの締め出しを図った。南シナ海問題で中国の主張を違法と断じるなど安全保障面でも対決姿勢を強めた。

 2020年に中国が香港国家安全法を導入し、香港の直接統治を強めると、米港は「香港自治法」を採択。当局者への制裁などを実施した。

 バイデン政権はトランプ政権時代と異なり、欧州など同盟国との協調を強調する。また、地球温暖化問題などでは中国に協力を呼びかけている。しかし、中国に対し強い姿勢で臨むことは変わらない。

 今回の制裁で、米国および欧州同盟国と中国の緊張が一層高まった。

▼中国外相の中東訪問
 
 一方中国は前週、王毅外相がトルコ、サウジアラビア、イランを訪問した。イランとは通商や安保協力で25年間の協定を結んだ。

 イランも核問題などを巡り、米国との対決が続く。協定には、中国とイランが協力して、共に米国に対抗する姿勢を示す狙いがあるとみられる。

 外相はトルコでは新型コロナのワクチン協力などを協議し、サウジとも経済などの協力を協議した。

▼マスク・ワクチン外交

 中国は昨年以降、マスクやワクチン外交で東南アジアやアフリカとの関係強化に努めてきた。今回の中東外交も、この脈略で捉えるべきだろう。

 中国はロシアとの関係強化にも余念がない。世界が米国を中心とした陣営と、中国を中心とした陣営に分かれいがみ合うーーこんな冷戦時代のような関係も、荒唐無稽ではない状況だ。

▼中国の存在感

 一連の動きからは、中国の存在感の拡大も改めて感じる。そもそも米国がこれだけ対中警戒を強めるのは、中国の経済力、国際的影響力が急速に拡大しているからだ。

 今回の中東外交も、中国の国際的な地位向上を感じさせる。王毅外相は楊チエチー中国共産党政治局員に次ぐ中国外交のナンバー2だが、25人いる政治局員でもなく中国内の序列は高くない。

 しかし今回の訪問で、トルコではエルドアン大統領、サウジではムハンマド皇太子、イランではロウハニ大統領と、いずれも国のトップと会った。米国務長官級の扱いと言っていいだろう。

 既存の外交秩序が変わっていることは、明らかに見て取れる。

◎ 中国をキーワードにして地球(よ)は回る
◎ 外相と元首の会談が大見出し

 

2021.3.28

 

 

2020年11月15日 (日)

◆香港・アント・習近平 2020.11.15

 香港立法会の民主派議員が資格を剥奪され、民主派議員が抗議の辞任をした。立法会はほぼ全体が親中派と欠員になり、民主派は拠点を失う。1国2制度の形骸化は一段と進んだ格好だ。

▼香港の締め付け強化

 6月末に香港安全法が施行されて以来、中国の締め付けは厳しさを増している。今回の民主派議員の資格はく奪は、平和的な方法での抗議活動も当局が認めない姿勢を示したと受け止められている。民主派の活動は行き詰まり状況にある。

 民主派の活動家が海外に逃れる事にも困難が待ち構える。当局は出国を規制。中国は亡命受け入れ姿勢を示すカナダや豪州、欧州諸国などに圧力をかける。

 欧米主要国は香港当局中国を批判するが、その動きは限定的だ。バイデン米次期政権の下に欧米が協調体制を取り、対中戦略で新しい戦略を打ち出せるか。それとも口先の批判に留まるのか。世界の枠組みや民主主義の行方の観点からも目を離せない。

▼中国当局の民間企業支配

 アリババ傘下のアント・グループが上場を延期。この問題の余波が広がる。習近平国家主席が上場延期を直接指示したとの情報が流れ、世界は中国政府による企業支配が一段と強化されていると受け止めた。

 アントは世界で10億人のユーザーを持つスマホ決済の大手。香港、上海市場への上場(新規小株式公開=IPO)を決めていたが、予定日直前の3日に突然延期を決めた。

 延期の理由として、中国政府が同社の際限ないビジネス拡大に警戒を抱いたとか、同社創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が中国の金融監督体制を批判するかのような発言をしたため、などと理解された。米誌WSJは12日になり、延期の指示を習近平主席が直接下したと報道した。

 中国は最近、民間企業を政府・共産党の支配下に置く動きを強めている。大手企業に対し、定款に共産党の指導に沿うことを明記するよう要求。多くの企業が従っている。政府や国有企業が民間企業を支配下に置く事例も増えている。

 中国はIT分野では民間の創意工夫を重視してきた。しかしこの分野でも、政府・党が支配を強める傾向が出ている。アリババなど大手IT企業への独占規制や監視の強化も指摘される。アントの問題は、そうして脈略で起きた。

▼中国の動き

 中国共産党は10月末の5中全会で、党幹部の人事を見送り、習近平体制の3期目入りの可能性が強まった。

 並行して体制安定や経済強化を強調。2035年までにGDPと1人当たりの所得を倍増し、先進国のレベルに到達する目標を掲げた。科学技術は「自力での強化」などをうたった。

 中国の動向は、今後の世界の枠組みを左右する重要な要素の1つ。このところ目立つのはコロナ対策、香港問題での強硬な姿勢、強権化などの動きだ。アントの上場延期の動きも、こうした脈略の中に置くとより深く見えて来るものがある。

 

◎ 年初には1国2制度あったけど
◎ ビジネスも党が上だと念を押す

 

2020.11.15

 

2020年9月20日 (日)

◆米中対立:戦線拡大・複合化ーTikTok、ファーウエイ、台湾 2020.9.20

 米中対立が激しく揺れた。動画投稿アプリのTikTokの米国での活動を巡り、両国は水面上・水面下で攻防を展開。米国はファーウエイへの禁輸措置を強化した。台湾を巡る駆け引きも動いた。米中対立は領域を広げ、複雑に絡みながら動き、両国関係は分断(デカップリング)が進んでいる。

▼トランプ政権が規制の動き、中国も対抗

 動画投稿サイトのTokTokを巡る情勢が目まぐるしく動いた。

 同サービスは、中国の北京字節跳道科技(バイトダンス)が2017年から提供している。全世界のユーザーは8億人、米国で1億人が利用する。

 トランプ米大統領はTikTok利用者の個人情報が中国政府に流れているとして、7月末にTikTOkの禁止を表明。その後、米企業による買収かサービス禁止を迫り、9月15日までと期限を定めた。こうした中、米マイクロソフト、オラクル、ウォルマートなどが交渉に乗り出していた。

 中国は米国の動きに反発、8月には対抗策として自国の輸出規制を強化した。輸出規制の対象にはAI関係の技術やサービスも含まれ、米社とTikTokの交渉に中国がストップをかける可能性も生じていた。

▼二転三転、今後の展望なお不透明

 トランプ政権の定めた期限が迫る中、マイクロソフトは13日までに交渉中断を表明。オラクルとTikTokは14日までに、買収ではなく提携案をまとめ、米政府に示した。オラクルがTikTokのグローバル事業に資本出資し、サービスのアルゴリズムはTikTokが保有する一方、顧客データの管理はオラクルが実施するという内容。ウィルマートもオラクルと共に出資に加わる。

 提携案を受けて米商務省は18日、TikTokの米国内での新規ダウンロードや更新を20日に禁止すると発表。一方、サービス自体は11月12日まで認めるとした。

 翌19日、トランプ大統領は提携を原則承認すると発表した。商務省は新規配信の禁止を20日から27日に延期した。

 米政府の対応は二転三転している。判断の背後には、もちろん11月野大統領選をにらんだ思惑もある。中国側の反応もはっきりしない点が残る。TikTok問題がどう推移するか、なお流動的だ。

 ちなみに、ピーターパンの人食いワニは、Tick Tockと表記される。

▼テンセントやファーウェーも

 当面の焦点になっているのはTikTokだけではない。米国は中国大手ITのテンセントが提供する微信(ウィ―チャット)の利用も禁止した。

 大手通信機器、スマホのファーウェイに対しては、2018年以降何度かの決定で取引規制を京っかしている。米国から技術を盗んだなどという理由。

 9月15日には、同社に対する禁輸措置を強化。米国の技術が絡んだ半導体の同車への輸出を事実上全面禁止した。同社への直接輸出だけでなく、外国企業による輸出も制限する内容だ(同車に米国技術が絡んだ半導体を輸出した企業は、米国の制裁対象とする)。

▼米中ハイテク摩擦

 米中のハイテク分野での摩擦が強まったのは、トランプ政権2年目の2018年から。米国は中国のハイテク企業が知的所有権や侵害や技術の窃盗などをしていると主張、締め付けを強化した。次世代通信ん5Gの通信機については、ファーウェイからの導入禁止を打ち出し、欧州や日本、豪州などにも同調を求めた。

 米国は今年8月、ファーウェイ以外に通信基地やスマホのZTE、監視カメラのハイクビジョンなどとの取引を制限する法律を施行した。TikTokやテンセントへの規制強化も、同じ戦略上にある。

▼台湾との関係強化

 TikTok問題が揺れた同じ週、台湾を巡っても注目すべき動きがあった。米国のクラック国務次官が台湾を訪問。7月末に死去した李登輝元総統の告別式に参加し、蔡英文総統と会談した。行政院長(首相)や経済部長(経済相)とも会談し、米台関係経済関係の強化などを話し合った。

 米国からは8月厚生長官が訪台したばかり。相次ぐ政府高官の訪問で、米台関係強化の動きを誇示する戦略だ。

 中国は反発し、米国への批判と警告を繰り返す。19日には戦闘機19機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入、圧力をかけた。

▼安全保障の対立

 米中関係はトランプ政権の発足以来、急速に対立を深めた。米国は2018年以降、中国からの輸入品に高率関税を導入。まず貿易戦争が勃発した。次いでハイテク分野で対立を深めた。

 加えてここに来て、安全保障分野でも対立が強まっている。6月末に香港に国家安全法が導入されると、米国は中国を厳しく批判。香港への制裁を強化するなど、警戒の姿勢をあらわにした。7月には南シナ海問題を巡り、中国側の主張は国際法的に見て違法であると初めて明言した。9月の東アジアサミット閣僚会議(ビデオ)では、ポンペオ国務長官が南シナ海問題で中国を激しく批判した。

 台湾との関係強化の動きも、この脈略にある。香港の1国2制度は国家安全法により空洞化し、香港が中国に飲み込まれつつある。台湾が同様の姿にならないように、米国は支援強化を見せつけている。

▼デカップリング

 米中関係の行方には、不透明要因も多い。11月の米大統領選で民主党のバイデン候補が当選すれば、対中政策はトランプ時代のやり方とは変わるだろう。それでも、対中警戒感の高まりは、野党民主党も含め米国に広く浸透している。

 1990-2000年代、米国は中国を国際社会に受け入れることが中国の民主化や世界の安定に繋がるという見方を取り、関与政策を推進した。この考え方はいまや完全に後退している。

 米中の分断ともいえる「デカップリング」が、経済のみならず科学技術、人的交流など様々な分野で進んだ。全世界的なサプライチェーンは、中国外しの動きが広がる。ハイテク分野では、米中それぞれが相手企業の活動を制限し、締め出す動きが加速する。新型コロナの流行は、心理的に経済的効率優先主義より製品供給の確保や安全性が重要という流れを強めた。

 新冷戦という言葉もすっかり定着した。今後の米中関係を見るうえで、対立の拡大や深まりはすでに所与の事実となっている。

◎ Tick Tockと紛争刻む時の音
◎ 戦争は「貿易」だけだった2年前
◎ 「冷戦」に違和感消えるコロナの夏

2020.9.20

 

 

2020年8月 2日 (日)

◆李登輝死亡と中台関係 2020.8.2

 台湾の李登輝元総統が死亡した。1996年に初の総統選の直接選挙を実施して、民主化を推進した人物。その後中国との2国論を展開し、中国からは敵対視された。死亡に際しても国際社会や中国から様々な反響があり、影響力を示した。

▼国民党独裁の打破

 李登輝氏は1996年の民主化の前、国民党の要職を経て1988年から台湾の総統に就任していた。しかし、国民党の利益とは一線を画していたところが、重要なポイントだ。

 国民党は元々中国本土の政権を担っていた政党。第2次大戦後に共産党との内戦に敗れ、台湾に逃れて政権を樹立した。同党政権下の支配層の中核は中国から逃れてきた外省人が中心で、元々台湾にいた本省人は差別を受けていた。

 国民党の支配は独裁的で、1947年には政権による本省人の大規模な弾圧・虐殺事件が起きている(2.28事件、犠牲者は数万人と推計される)。国民党政権は、その腐敗も指摘された。

 元々本省人だった李氏は、農業の専門家からスカウトされる形で政治の世界に入った。そして国民党内で本心を隠す形で出世し、1988年に総統に就任。その後は、巧みな人事などで国民党独裁を徐々に解消した。

▼民主化と2国論

 そして1996年の直接選挙につなげる。直接選挙の前には、中国が台湾に圧力をかける台湾海峡危機が発生したが、計画通りに選挙を実現した。

 危機には米国の協力をはじめとする、国際社会の支援を獲得して乘り切った。選挙では圧勝した。

 その後1999年には、中国と台湾の関係を「特殊な国と国の関係」とする2国論を表明。中国の反発を受け、中台対話は中断した。 

 2000年の総統退陣後は出身の国民党ではなく、対立する民進党系の政治家に肩入れした。

▼民主化台湾がなければ

 台湾の民主化は、中華圏では初めてのものと言ってもいい。

 歴史にifはないが、仮に李登輝氏が登場せず、国民党による独裁、腐敗態勢が続いていたら台湾はどうなっていたか。台湾の魅力は、今より小さかったに違いない。中国による台湾統一が進み、中国共産党と国民党(国共)による1国2制ができていたとしてもおかしくない。

▼世界に反響

 李登輝氏の死亡に際し、ダライラマなど世界の要人が弔意を伝えた。これに対し、中国の外務省の副報道官は「国の統一は阻止できない」と李登輝氏を批判する声明を発表。中国共産党系メディアの環球時報は「中華民族の罪人」と主張した。

 台湾の蔡英文総統は、ツイッターで中国語のほか英語、日本語のメッセージを発信。日本語版には7月31日、「李元総統の遺志を継ぎ『台湾に生まれた幸福』を追求し続けます」と書いた。

 李登輝氏は死亡に際しても、世界に影響を投げかけた。

◎ 政治家逝き、民主、統一の議論に火
◎ 中華圏に民主化のサンプル ソフトパワー
◎ 国共の1国2制度冷めた夢
◎ この地球(ほし)で「生まれた幸福」何人か

2020.8.2

 

2020年7月 5日 (日)

◆香港1国2制度の黄昏 2020.7.5

 香港で国家安全維持法が施行された。中国の直接統治が強まり、1国2制度の形骸化の懸念が強まる。自由な自治を前提としてきた香港は、重大な曲がり角を迎えた。政治体制や価値観を巡る米欧と中国の対立にとっても、重要な節目になる。

▼中国が直接関与

 国家安全法は6月30日に中国が交付し、同日午後11時に香港で施行された。主な内容は、(1)国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託を犯罪を規定、(2)中国政府は香港に治安維持期間を新設する、(3)香港の他の法律と国家安全法が矛盾する場合は、国家安全法を優先する、などだ。

 (1)の犯罪の規定は、反中的な抗議活動や民主化デモなどを念頭にしているとみられる。(2)は、これまでの香港政府を介した間接的な関与ではなく、中国が香港に直接関与することを意味
する。(3)は、香港法が中国法の下に置かれことを鮮明にする

 

▼1国2制度の骨抜き

 

 香港は1997年の返還から50年間、「1国2制度」を約束されてきた。香港は中国の領土でありながら、法律や司法などは香港独自の制度を維持する仕組みだ。香港のビジネスは英国法の影響下に作られた香港法の下で運営され、金融業などは返還前と変わらず繁栄を維持してきた。

 国家安全法は、香港法が中国法の下に位置づけられると明確化した。1国2制度が骨抜きされると言ってもいい。

▼中国と同じ状況に

 安全法は外国人にも適用される。外国人であっても、「国家分裂」をみなされる発言は許されないし、違反を理由に逮捕されることもある。

 いわば、中国国内に居るのと同じ状況になる。これまで香港は、「言論や通信の自由がある地域」だったが、中国と同じようになる、と考えるのが分かりやすい。

▼中国は民主化に危機感

 中国が国家安全法制定に動いたきっかけの1つが、昨年の抗議デモと言われる。香港の議会が、香港で犯罪を犯した犯人を中国に送ることを可能にする「逃亡犯条例」の制定に動いたことに、民主派の住民らが反発。昨年6月以降、100万人、200万人以上が集まる大規模抗議活動が続いた。

 抗議活動の要求は民主化拡大の要求にもつながり、11月の区議会選(権限は小さいが、民意のバロメータと位置付けられる)でが民主派が圧勝した。

 この間、香港政府は有効な対抗策を打ち出せず、中国政府は危機感を強めた。結果、直接統治に繋がる香港安全法制定に動いた、という見方だ。

▼「香港の自由の死」

 香港の民主派住民らは7月1日以降、安全法に対し反対活動を展開。これに対し香港警察は取締りを強化し、安全法に対する逮捕者を出した。報道機関やネットに対する監督も強化している。香港の民主派団体も解散を余儀なくされるなど、統制が強まっている。

 元々香港の社会から自由が失われていくという見方は、幅広くあった。例えば2015年に政策された映画「十年」は、自由が失われてた10年後の香港の日常を淡々と描いている。

 しかし、今回は、1国2制度が急激に覆される展開。民主派からは(例えば蘋果日報=アップルデイリー=代表など)は、「香港の自由は死んだ」などの発言も出る。

▼経済にはダメージ、中国は想定済み

 米欧など国際社会は安全法制定に反発。米国は香港や中国に対する制裁措置を発表した。香港に進出している企業は、香港法による財産の保護などが保証されなければビジネスも展開しにくい。事業の撤退などの動きもでてくるだろう。実際、ヘッジファンドなど金融機関には、拠点を香港からシンガポールに移す事例もある。

 経済的なダメージは避けられないだろう。しかし、中国政府もその辺は十分に理解した上での決断だろう。香港が中国経済に占める割合が、返還時とは比べ物にならないほど縮小した(1997年には香港のGDPは中国の7%程度、現在は2%程度)。これも、中国が思いきった決断ができる理由の1つだろう。

▼香港住民の受入れ

 民主派の住民らが、香港から海外に流出する動きもある。旧宗主国の英国や豪州、台湾などは、香港住民を受け入れる姿勢を表明している。

 ただし、百万人単位の流出になれば、簡単に対応できるものではない(香港の人口は750万人)。欧米などの中国批判・民主派支持が、単なる言葉だけのものか。それ以上のものになるかも問われる。

▼欧米vs中国の最前線

 香港問題は、香港個別の問題であるほか、国家体制や価値観などを巡る米欧と中国の対立(競合)の最前線でもある。欧米は自由や民主主義、法の支配を尊重する体制が、人々の幸福や経済発展という観点から見て相対的に優れていると主張してきた。香港のあり方でも、中国が「1国2制度」を尊重する方が利益になる、という読みがあった。

 ただ中国は、欧米のモデルにとらわれない国家のあり方や経済発展を志向する傾向を強めている。2008年の世界金融危機以降は特にそうだ。そして、経済成長の持続や人々が豊かになるという面では、結果を出している。

 国際社会における存在感を拡大し、中国式モデルが新興国などから支持を拡大しているのも事実だ。

 香港問題は、自由や民主主義、国家のあり方に関わるこうした問題に改めて問いを突き付ける。香港住民受入れなど、個別問題についても総論では答えにならない疑問を投げかける。

 

◎ コロナの夏1国2制度黄昏時
◎ 「自由の死」を呆然と見つめ盛夏来る
◎ 嫌われても中国伸長この事実
◎ 「頑張れよ」声だけ声援空虚なり

2020.7.5

 

 

2020年5月31日 (日)

◆米中対立・新ステージに 2020.5.31

 中国が香港国家安全法制定を決めたことに対し、米国は対中国・香港制裁措置を発表した。新型コロナの感染拡大を巡っても、対立がエスカレートする。米中対立は、新ステージに入った。

▼香港国家安全法

 中国の全人代は28日、「香港国家安全法」の制定を決議して閉幕した。香港の反体制活動を禁じる内容で、中国が直接取り締まるようにする点がこれまでと異なる。

 香港は1997年の中国への返還以来、「1国2制度」の下に運営されてきた。香港の法律は、基本的に中国の法律と別のものだった。その下に、企業の自由な活動や言論の自由(程度については色々な議論がある)が維持されてきた。

 今回の決定について、香港の民主派や欧米各国は、1国2制度を骨抜きにすると懸念する。

▼米国が制裁措置

 米国は中国の決定を批判。トランプ大統領は29日、一連の制裁措置を発表した。内容は、(1)米国が香港に対して認めてきた関税やビザ発給の優遇措置を廃止、(2)中国や香港の当局者への制裁、(2)中国からの大学院生の一部の入国停止、などである。

 同時にトランプ大統領は、かねて中国寄りと批判してきたWHO(世界保健機関)からの脱退を表明した。

 コロナ問題で米国は、中国が初期の段階で情報公開を十分に行ってこなかったなどと批判。さらには、新型コロナウイルスが武漢の中国の研究所から流出したなどの批判もしている。これに対しては中国が根拠のない批判などと反論する。

▼ハイテク、企業上場、人権でも

 ここに来て米国が対中批判を強めているのは、香港問題だけではない。ハイテクや金融、人権など様々な分野で措置を打ち出している。

 ハイテクでは5月、通信大手のファーウェイに対する禁輸措置を一段と強化した。米国製の半導体装置を使った製品は、たとえ外国製でも輸出を認めないようにする内容。これにより、台湾のTSMCはファーウェーからの新規受注を停止した。

 ナスダックは新規上場企業のルール厳格化を決めた。中国企業の新規上場のハードルを高くする。米上院は、米国に上場する外国企業の透明性強化を求める法案を可決した。

 米上下院は中国がウイグル人の人権侵害批判するウイグル人権法を採決した。

▼コロナと大統領選

 2017年の米トランプ政権の発足以来、米中関係は緊張が高まった。トランプ氏は「米国第1」を掲げ、自国産業保護を優先させる姿勢を鮮明にし、2018年以降中国からの輸入品に高率の関税を課た。米中貿易戦争が勃発した。

 その後中国のハイテク産業が米国の技術を不当に盗んだり、知財権を侵害しているなどとして制裁などの措置を導入した。

 米中の貿易・ハイテク摩擦は、今年1月に第1段階の合意を締結し、一時休戦したかに見えた。

 そこにコロナの感染拡大で、状況が変わった。米政権はコロナを巡り中国への不信を強めた。トランプ大統領が秋の大統領選をにらみ、対中強硬姿勢を強めるのが得策と判断したとの見方も強い。

▼中国は勢力拡大の動き

 中国側は、コロナでは「マスク外交」とも呼ばれる感染国支援などで影響力を拡大。一方で領土問題を抱える南シナ海で実効支配を強化するなど、勢力の拡大に余念がない。香港国家安全法の制定決定も、コロナ問題で国際社会の香港への関心が弱まった機を利用したとの見方がある。

▼覇権を巡る対立

 米中の対立は、背景には覇権を巡る争いがあるとの分析も多い。中国経済の規模はすでに米国の3分の2に達し、購買力平価で比較すれば米国より大きい。数年前から一帯一路などの世界戦略を打ち出し、21世紀半ばには米国と並ぶ世界の強国になるとの目標も打ち出した。

 2000年代までの米国は、中国が経済発展を実現すれば民主化するとの見方にも届いていた。今や、そうした観測は後退している。共産党1党独裁の異形の国家が、米国の覇権国の地位を脅かそうとしているとの警戒は、トランプ政権のみならず野党民主党でも強まっている。

◆デカップリング

 トランプ政権が打ち出した自国優先、対中警戒の政策は、米国と中国の経済を分断するdecoupling(デカップリング)につながるとの見方が、以前からあった。振り返れば、東西冷戦時代の世界は2つに分断していた。コロナの流行拡大は、そうした傾向に拍車をかける可能性がある。

 コロナ感染が生み出す新常態は、経済システム、生活、政治の枠組みなど様々な分野に及ぶ。新常態への移行の多くは、スムースに行われるわけではないだろう。様々な軋轢や混乱があると考えるのが自然だ。

 その中でも、米中関係の変化は規模の大きいものの一つだろうし、覇権を巡る争いとなれば地球規模の地殻変動になるだろう。

 

◎ 新常態 やわらか表現中身は混乱
◎ そういえば 世界は割れてた世代前
◎ 疫病下の戦線拡大、またですか

 

2020年5月24日 (日)

◆コロナ禍と中国全人代・香港 2020.5.24

 中国の全人代が22日始まった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、当初予定から2カ月半遅れの開催。コロナ後の新風景や動向が見られた。

 全人代は中国の政策の基本方針などを決定(承認)するもので、毎年3月初旬に開催される。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、延期された。北京の人民大会堂に集まった全国の代表はマスク着用。雛段の指導部らはマスクを外していた。

▼経済成長の目標なし

 注目点の第1は経済。毎年、全人代冒頭での経済成長目標が注目されるが、今年は目標設定を見送った。先行き不透明要因が多いのが理由とみられるが、異例だ。

 中国の成長率は過去40年10%近い成長を実現してきたが、2019年は6.1%にとどまった。米中貿易摩擦の影響などを受けたため。

 そこに加わったコロナ禍。1-3月のGDPは、前年同期比▲6.8%と落ち込んんだ。4月以降は回復の兆しがあるものの、IMFなどの予測は通年でも1-2%程度の低成長を見込んでいる。

 コロナの今後は見通しがたい。そうした中で、中国指導部は最も重要な指標の1つだった成長目標を外すという新たな決断をした。コロナがこれまでの常識、枠組みを変えていることの表れの1つだ。

▼1国2制度の終焉?

 注目の第2は香港問題だ。李克強首相は年次経済報告で、「香港国家安全法」を制定する考えを明示した。

 香港は1997年の返還以来、50年間は1つの国の下に2つのシステムが並存する「1国2制度」を維持することになっており、法律制度も中国本土とは別だった。このため、香港の治安についても一義的には香港政府が責任を持ち、必要な法律も香港政府や香港議会が制定する仕組みだった。

 中国はこれまで、「1国2制度」の下で香港政府を支援する立場を取ってきた。香港の治安を維持する法律についても、昨年の全人代では香港政府を支援すると表明していた。この方針を転換し、中国が直接関与する姿勢を明確にした。

 こうした動きが続けば、香港は法律の上でも中国の法律の下に統合され、「1国2制度」でなく「1国1制度」になりかねない。香港の民主派などは懸念する。

 香港では2019年に、特定犯罪の犯人を中国に引き渡すことを可能にする「犯罪者引渡し条例」制定を巡り民主化運動が拡大。世界の注目を浴びた。コロナ問題の発生後は国際的に香港の動向が報道されることはめっきり減った。

 そうした中で、今回の「香港国家安全法」制定の動きが出て来た。香港問題においても、コロナが動向を左右する1つの要因になっている。

▼コロナ後の新世界

 コロナ後の世界は枠組みが従来から変わると指摘される。経済システムの変化、強権国家の増加、民主主義の危機など、様々な変化が指摘される。

 中国全人代や香港情勢からも、そうした世界の変化の予兆が見て取れる。

◎ コロナ後の世界をチラリ全人代
◎ 「緊急時」と力の支配が踊りだす
◎ 疫病がゲームのルールを変える年
◎ 非常時の反骨精神どこにある

 

2020.5.24

 

 

2020年1月26日 (日)

◆中国・武漢発新型ウイルスの衝撃と問いかけ 2020.1.26

 

 中国・武漢から新型のコロナウイルスによる肺炎が拡散。世界を揺るがしている。

▼武漢封鎖、中国団体旅行禁止

 感染は2019年末から始まった模様で、今年に入り感染に拍車がかかった。1月25日までに中国国内で1300人が感染、死者は41人に達した。

 武漢市は23日から主要公共交通の運行を停止。人口1000万人を超える同市は封鎖された格好になった。あたかもSF映画の世界のようだ。

 中国は24日から春節の休暇に入ったが、各地でチェックを強化。中国ではこの時期、延べ30億人の移動が予想されていた。万里の長城や故宮は休業となった。中国国内の団体旅行は24日から停止された。

▼SARSの教訓

 WHOは新型ウイルスが人から人に感染していると指摘。一方で23日、緊急事態宣言は見送った。感染がまだ中国国内中心であるためだ。

 アジアでは2003年にSARSが香港中心で流行。1000人近い死者を出した。その際に、香港や中国が情報開示を渋ったとして、国際社会から強い批判を浴びた。SARSの場合、感染者の致死率は10%程度だった。

 中国政府は今回、その時の経験も踏まえて情報公開と対応を急いでいる模様だ。

 中国による武漢封鎖、団体旅行の停止などは、ある意味強権国家でなければ取りにくい。中国はいったん方針が決まれは動きは速いとの指摘もある。

▼世界に課題を突き付ける

 現時点では情報も限られ、今後事態がどう進展するかは予断を許さない。肺炎の感染拡大の速度はもちろん、経済や社会・生活への影響も予測しがたい。

 確実なことは、今後しばらく世界の関心の中心一つとなり続けること。そして世界を揺り動かすことだ。

 中国のみならず、国際機関や国際社会の対策、情報管理や情報規制の是非なども関心事。国家や政治のあり方も重要だ。

 パンデミックという危機の突然の顕在化は、世界が潜在的に抱えるリスクと課題を意図せずに突き付ける。

 

◎ 春節や世界に飛び出すコロナかな
◎ 千万人の都市封鎖され春が来る  
◎ 危機管理強権国家の光と影

 

2020.1.26

2019年10月 6日 (日)

◆中国建国70周年が映す現状 2019.10.6

 

 中国が10月1日に建国70周年を迎え、北京の天安門広場で盛大な式典が行われた。

 式典では雛段上に習近平国家主席以下幹部が並び、軍事パレードでは最新兵器を誇示した。習主席は中国が強国を目指す姿勢を改めて強調した。

▼大国の誇示

 会場の天安門広場は、1949年に建国が宣言され、1989年には天安門事件で民主派の弾圧が行われた場所だ。

 中国は1949年の建国の後、1970年代まで文化大革命やその後の政治闘争など混乱が続いた。しかし、鄧小平の指導の下に1978年の開放改革路線が始まってから、急速な経済成長を実現。その後約40年間の高成長を続け、今や世界の経済大国に成長した。

 影響力の拡大は経済にとどまらない。安全保障面では南シナ海などで軍事的な存在感を強めている。アフリカでは存在感と影響を拡大。一帯一路構想では中央アジアや中東などとの関係を強化する。

 式典ではこうした大国の誇示が随所に表れた。

▼中国型モデル

 10年ほど前までは、中国が経済成長すれば政治的な民主化も進むとの希望的観測が強かった。1党独裁の政治体制下で、経済成長がいつまで続くわけがないとの見方もあった。しかし、そうした見方は外れ続けた。

 1989年の天安門事件で、中国は政治的な民主化を徹底的に弾圧した。それにも関わらず、経済成長はむしろ加速した。「社会主義的資本主義」「国家資本主義」など、矛盾したような概念がまかり通る状況になった。

 アジアやアフリカの途上国などでは、中国的な開発独裁的経済発展モデルへの支持や受け入れが広がった。背後には、リーマン・ショックとその後の政治・経済の混乱により、欧米が誇示してきた「民主主義・自由経済」のモデルの魅力が減退したこともある。「北京コンセンサスvsワシントン・コンセンサス」の論争でも、必ずしも劣位ばかりでなくなった。

▼高度監視社会

 10年前と違うもう一つの面が、高度監視社会の実現だ。SNSやコンピューター・データの規制、監視カメラによるモニターなどを通じ、中国は世界でも先端を行く高度監視社会の一つになった。それが政治的な自由や民主化活動を妨げている面がある。

 SFに表現されるディストピア的な世界ともいえる図式。世界全体がその方向に向かう中で、中国は先頭を走る。

▼米中新冷戦

 もちろん、中国にとって都合の良い話ばかりではない。米国はトランプ政権の成立後、中国に対する警戒をむき出しにし、経済戦争を仕掛けた。ハイテク分野での規制も強化している。米中は新冷戦の時代に入ったとの指摘もある。

 貿易戦争の影響で中国経済は減速を強め、債務膨張などのリスクも拡大している。生産拠点の中国から東南アジアなどへの移転加速する。それでも中国経済が6%前後の成長を続けている点は、留意しておく必要がある。

▼香港問題の問い

 70周年式典に直接問いを投げかけたのが香港問題だ。同地では6月に始まった抵抗運動が続き、1日にもデモ隊と警官が衝突し、18歳の高校生が実弾で撃たれる事件が起きた。香港の混乱は長引き、収束の展望は見えない。

 1997年の香港返還の時には、その後50年間の1国2制度が約束された。しかし中国の支配強化が進み、1国2制度は有名無実化が進む。抵抗運動は、中国式の政治システムに対し香港の人々の懸念がいかに強いかを改めて示した。

 中国はその気になれば香港の抗議活動を力ずくで抑え込むことも容易だろう。しかしその場合、世界で中国への批判が強まり、中国型モデルの魅力が傷付く可能性が高い。

▼歴史の一幕

 ソ連は72年で崩壊した。それに比べ中国の体制が強固であることは間違いない。しかし、より長期的な将来がどうなるかは、分からないとしか言いようがない。

 2029年の建国80周年に、中国と世界がどんな姿になっているのか。そして建国70周年の映像はどのように見られることになるのか。世界にとって大きな命題だ。

◎ 祝賀の広場(ば)、建国、弾圧去来する。
◎ 自由なき発展に世界がまた唸る
◎ 香港の声押さえ込む記念の日

2019.10.6

 

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