カテゴリー「アメリカ」の107件の記事

2019年12月 8日 (日)

◆NATO首脳会談と冷戦後30年 2019.12.8

 NATO首脳会談が3-4日、ロンドンで開催。NATOと世界の置かれた現状を映した。

▼米欧の軋轢

 今回の首脳会議は、創設70年と冷戦終了30年を記念するもの。節目を機に、加盟国の結束や新時代に向けた戦略を示すのが本来の目的だった。

 実態は、全く異なる。米トランプ政権の誕生をきっかけに米欧の亀裂が安全保障、通商など様々な分野で拡大している。今回の首脳会議でも、結束よりも軋みばかりが目立った。 

 カナダのトルドー首相はトランプ米大統領のメディア対応などを揶揄。これを知ったトランプ氏がツイッターでトルドー氏を「2枚舌」と攻撃するなど、同盟国の外交舞台と思えないような軋轢が表面化した。

▼中国、ロシア、サイバー

 会議に先立ち、マクロン仏大統領は英Economist誌とのインタビューでNATOは「脳死状態」と表現。問題の深刻さを際立たせた(マクロン発言の背景には、NATOに頼らない欧州の安保機能強化の狙いもある)。

 首脳会議が採択した宣言は、ロシアの脅威や中国台頭への対応を重視。サイバー攻撃対応を強調した。テロや拡散などへの備えや、アフガニスタンなど地域問題にも言及した。しかし、米欧間で姿勢の違いが目立つイラン核問題やパレスチナ問題は触れなかった。

 宣言は、欧州諸国が軍事費拡大に努める旨を記述した。米国の意向を受けたものだ。これが第2項目に記述され、上記の世界的な課題や戦略より前に来た。印象的な構成だ。

▼存立基盤の揺らぎ

 1949年創設のNATOは、冷戦を勝利に導いた。冷戦後は機能を地域紛争対応などに転換し、西側同盟の安全保障の基盤として存在価値を維持してきた。

 しかし、近年米欧の対立が激しくなり、その存立基盤の揺らぎも指摘される。

 首脳会議は、世界の行方の不確実性を改めて映したようにも見える。

2019.12.08

 

 

2019年11月18日 (月)

◆ウクライナ疑惑、政治ショー化が加速 2019.11.17

 トランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る下院の公聴会が13日始まった。高官らが証言に立ち、過去の経緯などを説明した。米メディアは連日派手に取り上げ、公聴会はさしずめ劇場のよう。2020年の大統領選をにらんだ政治ショーの色彩が強まる。

▼大統領弾劾調査

 ウクライナ疑惑はトランプ政権が、ウクライナ支援の条件としてバイデン前副大統領の息子に関する疑惑の調査を求めたという内容。バイデン氏は2020年大統領選の民主朝の有力候補の1人だ。大統領が外交に特定の政治的利益を結び付ければ、法律違反になる。

 疑惑は夏に内部告発で表面化した。野党民主党多数の下院は9月、弾劾調査の開始を決定した。公聴会もその流れで実現した。

 大統領が直接支持を出したかなど、核心部分はそう簡単に判明するものでもない。実際、公聴会でも間接情報が証言された。それを巡り与党共和党と野党民主党が別の解釈を展開、論争が続いた。

▼大統領選にらみ

 上院では共和党が多数を占めており、弾劾が実現すると見る向きは今のところ少ない。それでも民主党が弾劾調査にこだわるのは、来年の大統領選をにらんでのこと。公聴会でウクライナ疑惑に対する世間の関心を高め、トランプ大統領攻撃を高めようという狙いだ。

 ただし、この疑惑は民主党の有力候補であるバイデン氏に跳ね返ってくる可能性もあり、事態はそう単純ではない。そもそも民主党は大統領候補選びで呼名が続いている。

▼世論は2分

 米世論は2分したままだ。大統領弾劾調査への見方でも、賛否が2分している。ウクライナ疑惑の中身についても、与野党が勝手に言い分を語り、議論がかみ合わない。「米国の分断」に疑惑が影響を与えるのにはに至っていない。

 調査を巡る情勢がどうであろうと、ウクライナ疑惑が米政治をにぎわせ、大統領選の争点の一つになっている事実は変わらない。弾劾調査は政治ショー的な性格を益々強めていく可能性がある。

▼世界に影響

 そんな米国政治の現実に、世界は大きな影響を受ける。ウクライナ疑惑にどうせ注視しなければならないのならば、存分に楽しみたいと考えるのが自然。ただ、話の筋としてあまりに不毛な気もする。

◎ ウクライナ疑惑に安保も忘れがち
◎ 無駄と知り TV付ける 政治ショー

 

2019年11月 4日 (月)

◆IS指導者殺害と中東情勢を眺める姿勢 2019.11.3

 米国が「イスラム国」(IS)指導者のバクダディ容疑者を殺害した。トランプ大統領が27日発表した。

▼世界を震撼

 ISはシリア、イラクの混乱の中から生まれてきたテロ組織。バクダディ容疑者は元々アルカイダ出身で、ISの指導者となりカリフを自称した。2014年にはイラクのモスルを制圧。バクダッドまで迫るかという勢いを見せた。一時はシリアからイラクに広大な地域を支配した。

 中東や世界各地から志願兵を募り組織を維持した。残虐な行為を繰り返し、捕虜を斬首する映像など拡散。世界を震撼させた。

▼IS後も消えないテロの温床

 中東情勢で利害対立を続けてきた国際社会も、まずはIS打倒で一致。シリア、イラク政府軍や米国など国際社会の反攻で、2017年までにISの主要拠点を奪還した。容疑者の死亡でISの活動は一つの転機を迎える。

 ただし、中東の混乱が続き、テロを生む構造は変わらない。ISは新しい指導者の下で活動をPRする。各地でテロ組織が活動を続ける状況は変わりがないし、第2、第3のIS登場の可能性も消えない。

▼米国のクルド人への裏切り

 IS打倒ではシリアの反政府勢力のクルド人組織(SDF)が大来な役割を果たした。米国はSDFをを支援してきた。しかし、ここにきてSDFと敵対するトルコがシリア北部で軍事行動に出てSDFを国境地帯から排除。米国はトルコの行動を黙認する姿勢をとった。

 トランプ米大統領は中東からの撤退、配備縮小を優先させる。しかしクルド人勢力からすれば米国の裏切りにしか映らない。中東における米国への不信は募る。

▼敵味方の構図が変化

 米国やイスラエル、サウジとイランの対立は激化する。ロシアは中東での影響力拡大を狙う。サウジの石油施設への攻撃など新たな脅威も現実のものとなった。敵味方の構図がくるくる変わり、偶発的な紛争のリスクも増えているように見える。

▼少ない正面からの議論

 トランプ米大統領はバクダディ容疑者殺害の様子を自慢げに米国民に報告した。あたかも「悪い奴をやっつけた」という西部劇風の感じだ。それに対し米国の少なからぬ国民が喝采を叫んだのも事実だ。

 民族や宗教、歴史が複雑に絡み合う中東問題。その問題点や対応策を真剣に論じるより、バクダディ殺害のような出来事をお祭り騒ぎのように取り上げる現実。米国や世界の現状を映す風刺画風の縮図にも見える。

◎ 中東も西部劇と見る超大国  
◎ 「悪者を殺った(やった)」の喝采に「ちょっと待て」

2019.11.3

 

2019年8月27日 (火)

◆G7首脳会議が映した世界の変化 2019.8.26

 G7首脳会議が24-26日、仏南西部ビアリッツで開かれた。会議は米トランプ大統領に掻き回され、通商や環境など多くの問題で意見の違いが際立った。40年以上に渡る会議で初めて包括的な首脳宣言の採択を見送るなど、世界の変化を映した。

▼包括的首脳宣言なし

 今年の会議は包括的首脳宣言の採択を見送った。採択見送りは前身のG5首脳会議が1975年に始まって以来初めてだ。

 首脳宣言は世界が直面する経済・政治問題全体をカバーし、G7首脳の共通認識や、協力して取り組むべき政策などを示してきた。向こう1年の世界の針路を示すものともいえた。内容は詳細で、2016年の伊勢志摩サミットの場合32ページだった。

 これに対して今年のサミットの「宣言」(G7 Leaders’ Declaration)は1枚。内容は、通商、イラン、ウクライナ、リビア、香港情勢の5項目で、いずれも1-4行のとどまる。宣言というよりメモのような形だ。

▼トランプ時代のサミット

 トランプ米大統領が2017年に登場してから3年。大統領はそれまで米欧など先進国の共通認識だった保護主義反対や多国間主義重視に異を唱え、自国利益第一(米国第一)の立場を鮮明にした。米国は地球温高防止のパリ条約や、イラン核合意からも脱退した。

 G7首脳会議に対しても懐疑的な姿勢を取り、不要論を公然を唱える場面もあった。昨年(2018年)のカナダでのサミットは首脳宣言にいったん合意したが、終了後に署名を拒否、混乱に陥らせた。

 こうした「トランプ時代の現実」を踏まえ、議長国フランスは最初から包括的首脳宣言の採択を前提としないで準備を進めた。その結果が包括的首脳宣言なしだ。

▼「保護主義反対」を言わない世界

 G7首脳会議は元々、世界経済を議論するために始まった会議。その世界経済を揺り動かすのが米中貿易戦争だ。会議で各首脳は米中貿易戦争に懸念を示したが、それ以上の具体的な議論は進まなかった。

 宣言には世界経済の安定希望など常識論を盛り込んだ。また米国の立場に配慮してWTOの抜本的な改革の必要性を指摘した。一方、トランプ大統領の登場以降、主要な国際会議の宣言から消えた「保護主義反対」の表現は今回もなかった。それどころか議論も行われなかった。

▼地球温暖化問題とアマゾン火災

 地球温暖化問題も米国と仏独などが対立したままだった。議長国フランスのマクロン大統領は温暖化問題を正面から取り上げて、トランプ米大統領と衝突するのを避け、からめ手で環境問題の議論を進めた。

 焦点を当てたのがアマゾンの火災。アマゾンは地球全体の酸素の5分の1を生み出していると推測されるが、今年に入り火災が急増している。ブラジルのボルソナーロ大統領が自然保護より開発優先の政策を打ち出し、その結果、農地開発や牧畜のため森林焼却が増えているためとされる。

 G7で取り上げたことから、この問題を巡る国際的な報道が急増。ブラジルに対する国際世論の批判が高まった。G7としても2000慢ドルの緊急支援など支援策を表明した。ボルソナーロ氏は支援を拒否したものの、国際世論に配慮し、軍隊を派遣し消火活動に動き出した。

▼イラン外相の電撃訪問

 マクロン氏はイラン問題でも独自色を出した。会議の場所にイランのザリフ外相を招き同氏の電撃訪問を実現。イラン核問題に新たな議論を引き起こした。訪問は、米国との事前調整などなしに進めたと報じられる。

 首脳会議にはアジアや中東、アフリカの首脳も招き、G7の枠組みの会合のほか、拡大版の会合も多数開催した。

▼首脳間の相性

 G7サミットの中継からは、首脳間の関係の良し悪しや相性も伝わってきた。夫人とともに各国首脳を迎えたマクロン氏は、メルケル独首相、トルドー・カナダ首相らとは親密に抱き合った上で話をし、良好な関係を示した。

 トランプ米大統領とはぎこちない握手の一方、会話に努めているように見えた。ジョンソン英首相とは、冷めた感じの握手ばかりが目立った。日本の安倍首相は緊密に迎えたが、直接の会話が難しいせいか共にいた時間は少なかった。

▼変化を映す場面

 米CNNは首脳会議について、"Trump's Chaos on full display at G7" (トランプが引っ掻き回したG7)と論じた。トランプ時代の現実をよく表現する。一方で、中国やロシアが不在であるのもG7の現実だ。

 今年のG7首脳会議は例年以上に話題が多く、見えてくるものも多かった。

◎ G7昔は世界を仕切ってた
◎ トランプで会議ゴタゴタ織り込み済み
◎ 「価値観を共有」と言った4年前
◎ アマゾンの火災に唸る10億人

2019.8.26

 

 

2019年8月 5日 (月)

◆米10年ぶり利下げの意味 2019.8.4

 米FRBが利下げに踏み切った。リーマン・ショック後の2008年10年以来10年半ぶり。2014年からの超緩和是正にも終止符を打つ。米中貿易戦争に伴う世界経済減速リスクへの備えの意味があるが、新たにバブル膨張の懸念もはらむ。

▼世界経済の下振れに警戒

 FRBは31日、FF金利の誘導目標を従来の2.25-2.5%→2-2.25%に0.25%引き下げた。会見したパウエル議長は、世界経済の成長の弱まりと貿易戦争による下振れリスクに対応する決定であると説明した。

 米経済の足元の数字は強い。景気は10年にわたり拡大しており、失業率は4月に3.6%と49年ぶりの低水準を記録した。

 しかし、米中貿易戦争の影響で先行き不透明感は増している。物価上昇率も目標とする2%を下回る。

 世界経済の不透明感は米国以上。IMFや世銀などは世界経済の成長見通しを相次いで下方修正した。中国の4-6月の成長率は6.2%と、4半期の数字としては1992年以来27年ぶりの低い水準になった。アジアの経済も減速している。

 こうした米経済の先行き不透明感や世界経済の先行き不安に対する「予防的な利下げ」の色彩がある。

▼超緩和是正の終了

 FRBはリーマン・ショックの後、異例ともいえる金融緩和策を実施した。2008年には利下げを繰り返しゼロ金利政策を採用。その後3回に渡る量的緩和政策を実施し(Q1-Q3)、米国債などの資産を大量に保有した。

 その超緩和政策の修正に動き出したのが2014年。量的緩和を停止し、翌2015年には金利の引き上げに踏み切った。2017年には膨れ上がった資産の縮小(FRBは正常化という言葉を使用)を開始。2018年には4回の利上げを実施し、昨年12月時点では、2019年にも2回の利上げ実施するとの見通しを示し、さらなる正常化を進める予定だった。

 2019年に入り状況は変わった。年初の株価が下落すると、FRBは1月利上げの停止を決定。資産縮小も年内で打ち止める姿勢を打ち出した。貿易戦争の影響などで米経済の先行きに不安が増してくると、3月には景気重視に政策スタンスを変換し、資産縮小の終了時期を9月に前倒した。

 今回の利下げは、2014年からの超緩和の修正(正常化)の終了を意味する。米金融政策の流れは一変した。

▼世界的に利下げ競争の様相

 米金融政策の転換を見込んで、世界各国はすでに動き出している。欧州中銀はさらなる金融緩和の姿勢を打ち出した。

 インドは今年に入り3回連続で利下げを実施。マレーシアやフィリピン、豪州なども5-6月に利下げに踏み切った。世界経済減速に利下げで対応しようとする動きで、世界規模での「利下げ競争」の様相を見せている。

 ただ、国際的な金融政策の動きが激しくなり不確実性が高まると、新興国の市場は大幅な変動のリスクに直面する。警戒の目は離せない。

▼新たなバブルの懸念

 もう一つ警戒すべきは、超緩和の是正先送り→新たなバブル発生の懸念が強まることだ。米国の実体経済は足元では完全雇用の状態。株価は変動が激しいものの、1年前、2年前に比べれば上昇している。トランプ政権は1兆ドル規模の大型減税を実施。財政出動による大型投資計画を打ち出している。そんな状況の下でさらなる金融緩和を実施すれば、実体経済が改善するより、むしろバブルの発生を助長する懸念がある。

 国際的には、民間企業などの債務がかつてない水準に膨れ上がっている。そこにさらなる金融緩和が加わるとどうなるか。リスクが高まる可能性がある。

▼トランプ政権のFRB批判

 トランプ政権は、さらなる金融緩和を求めている。今回の利下げについて、パウエルFRB議長は利下げが長期的な利下げサイクルの開始ではなく、「サイクルの半ばでの調整」であると説明した。これに対しトランプ大統領はさっそくツイッターで「長期的で積極的な利下げの始まりを聞きたかった」とパウエル議長を批判した。

 トランプ氏は昨年以来、より積極的な緩和を求めてFRB批判を繰り返している。中銀の独立性を軽視する発言はこれまでのコンセンサスを無視する行動で、異例だ。同時に、トランプ氏がバブルの懸念や長期的な財政問題にあまり配慮せず、短期的な景気維持を重視している姿勢を隠すことなく映している。

▼貿易戦争の影響

 そもそも米国経済や世界経済が減速し、先行き下振れリスクが高まっている最大の原因は、米中貿易摩擦だ。中国から米国への輸出に高率の関税がかかるようになり、貿易や投資が落ち込んでいる。貿易戦争の先行きは読めず、先行き不確実性が高まっている。

 それを引き起こしたのはトランプ大統領だ。米中貿易戦争を起点に、世界経済の行方や米金融政策に玉突きのように変化が連鎖している。結果が世界経済の減速にとどまらず、バブルの破裂などに及ぶリスクは、もちろん否定できない。

◎ 高関税、利下げで補えと言われても
◎ 正常化 いともたやすく打ち止まる
◎ またバブル?天仰ぎたくなる10年目

2019.8.4

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年7月23日 (火)

◆トランプ氏のGo Back発言の波紋 2019.7.21

 トランプ米大統領が野党民主党急進派の女性議員らに「国に帰ったら」とツイッターで発信。これに内外で批判が高まり、波紋を広げている。ドイツのメルケル首相は公然とトランプ氏を批判、米欧の首脳間で価値観を巡る対立が公然化するなど、事態は尋常ではない。

 ツイッター発信は14日に行われた。Huffington Post日本語版によれば、ツイートは「興味深いことがあります。いわゆる“進歩的“な民主党の女性議員たちはもともと、政府が完全に崩壊していて、最悪で、腐敗していて、世界中のどこにあっても機能しない国の出身です。(もしそれが政府と言えるならの話ですが…)」

 「そんな議員たちが、地球上で最も偉大で最も強力な国家であるアメリカ合衆国の人々に、私たちの政権運営への悪口を吹聴しています。なぜ彼女たちは政府が崩壊して犯罪が蔓延している出身地に戻って、手助けしないのでしょう?」

 「その後戻ってきて、どうやって解決したのか教えて欲しい。そうした国は、あなた方の援助をひどく必要としているから、簡単には戻って来れないがね。(民主党の)ナンシー・ペロシ下院議長が喜んで無料の旅券を手配してくれると確信しています!」

▼民主党4議員

 女性議員の名指しはしなかったが、幼少期にソマリアから移住したイルハン・オマル氏、プエルトリコ系のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏、パレスチナ系のラシダ・タリーブ氏、アフリカ系のアヤンナ・プレスリー氏の4人とみられている。

 ツイートは直ちに世界に拡散。トランプ氏の"Go back to your country"発言として認識された。

 4人は15日会見し白人至上主義の考えであるなどと批判。下院は16日大統領批判の決議を採択した。海外ではメルケル独首相が会見でトランプ発言(発信)を批判、自分は4人の議員側に寄り添うと表明した。

▼白人至上主義の影

 トランプ支持者は集会で発言を歓迎。トランプ氏の"Go back"をさらに強めて"Send back"などと連呼する動きも出た。これにはさすがにトランプ氏も距離を置いた。

 言葉の細かいニュアンスなどについては議論が分かれるところがあるだろう。しかし、米大統領がここまで人種差別に無警戒な発言をし、社会にインパクトを与えた例は少ない。トランプ支持層に、本音では白人至上主義の人々が多く含まれている表れと見ることも可能かもしれない。メルケル独首相が論争に参加するのも異例だ。

 トランプ氏はビジネスマン時代、テレビ番組で"You are fired"の発言で一段と有名になった。私企業(のモデル)ならとにかく、国が”Go Back"と言ったら基本的人権に抵触する問題だ。

 

 トランプ発言の一つとして、歴史的にも記録されるものになるだろう。しかし後味はかなり悪い。

 

◎ 「米国第1」も「国に帰れ」もはや定着
◎ "Go Back" トランプの姿に重なりぬ

2019年7月 1日 (月)

◆米中休戦とプーチン発言―G20周辺発のニュース 2019.6.30

 G20首脳会議が大阪で開かれた。会議には世界の首脳が集合し、会議本体もさることながら、重要な2国間会談多数開催された。世界的なニュースがG20周辺発で流れた。

▼米中貿易協議再開

 世界の注目が集まったのが29日の米中首脳会談だ。貿易やハイテク分野を巡る米中の対立は、過去1年の世界のニュースのヘッドラインを提供し続け、世界経済に多大な影響を与えてきた。

 トランプ大統領は昨年3月、中国が知的財産権を侵害しているとして対中関税を引き上げると発表。その後3段階に分けて、今年5月までに合計2500億ドル分の中国からの輸入品に対する関税を25%に引き上げた。対象は米国の対中輸入総額のほぼ半分に相当する。

 加えて米国は中国のハイテク企業を狙い撃ち。昨年はZTEとの取引を禁止し、同社に対し多額の罰金や経営陣後退などの条件を呑ませた。昨年末からはファーウェイに狙いを定め、G5市場からの締め出しや事実上の取引の禁止などを打ち出してきた。

 米中は昨年12月のアルゼンチンでの首脳会議で、貿易協議に入ることで合意した。しかし協議は今年5月に事実上決裂。それを受けて米国は制裁関税の第4弾計画(2500億ドル=1-4弾合計で米国の中国からの輸入のほぼ全量)を発表するなど、米中摩擦の日は益々激しくなった。

▼見えない先行き

 大阪での首脳会談で米中は協議の再開を決定。米国は第4弾の関税引き上げを見送った。ファーウェイに対する取引も、一部容認する姿勢だ。

 ただ、米中対立を解くのは容易ではない。米国は技術的な優位を維持するために中国に対し知的財産権保護を保証するシステム導入を求める。一方中国は米国流ルールの押し付けに対抗する。その底流には、安全保障や経済での覇権争いがある。問題は構造的だ。

 世界経済はすでに、米中摩擦激化の深刻な影響を受け始めている。アジアからは輸出が減退。景況感も低下している。世銀やIMFなどは経済見通しを相次ぎ下方修正した。経済減速は金融市場の不確実性拡大にも繋がりかねない。

 米中首脳会談の結果はそうした懸念を一服させた。しかし先行きが見えてきたわけでは全くない。

▼波紋広げるプーチン会見

 G20首脳会議に先駆けて、ロシアのプーチン大統領が英FT紙と行ったインタビューが物議を醸している。プーチン氏は自由主義が時代遅れになっている(obsolete)と指摘。トランプ米大統領の一方的な政策を批判した。

 また2015年の欧州難民危機の際に独メルケル首相が判断した寛容な移民政策が間違いであり、後に問題を大きくしたなどと批判。リベラル派は影響を及ぼせなくなったと語った。

 インタビューは多くのメディアが引用。EUのトィスク大統領(首脳会議議長)は強く反発した。

 プーチン大統領の発言は意図的に刺激的な部分がある。しかし、ここ数年の難民危機やトランプ米大統領の誕生、英国のEU離脱決定(Brexit)など、寛容な精神に裏付けされた自由民主主義(リベラル・デモクラシー)の存在価値と力が問われているのは間違いない。そんな環境だからこそ、プーチン大統領の発言が波紋を広げているのだろう。

▼驚きの米朝首脳会談

 トランプ米大統領は大阪で北朝鮮の金正恩委員長との会談の可能性に言及。2日後には板門店で会談を実現した。米大統領が軍事境界線を越えて北朝鮮領に入ったのは初めてだ。

 トランプ大統領の予期しがたい行動が、ここでも現れた。同時に、周到な準備よりスピードを重視する同氏の特性が現れた格好だ。

 G20会議本体は、公正貿易などの理念や海洋プラスチックごみの2050年までの廃止などを盛り込んだ大阪宣言を採択して閉幕した。ただ、貿易については昨年に続き保護主義に反対する文言はなく、環境でも地球温暖化問題への言及はなかった(議長国日本が米国に配慮したためと、英FTなどは批判的に報じた)。

 G20が始まった2008年は、リーマンショックの直後。最初のうちは世界恐慌防止と金融危機の拡散防止に、各国が必至で取り組む姿勢が伝わってきた。その後、会議は「集まること」が重要になり、周辺の2国間協議にむしろ注目が集まる。

◎ ボス集う 何かが動くこともある
◎ 先は不明 それでも安堵の米中休戦
◎ 自由批判 饒舌を許す 辛い時世
◎ 自由主義「古い」に「それなら」と質したい

2019.6.30

 

 

2019年5月12日 (日)

◆米中貿易戦争再燃 2019.5.12

 

 休戦状況にあった米中の貿易戦争が再燃した。米中の貿易協議は難航し、米国は10日、中国からの輸入品2000億ドル相当に対し、関税を10%→25%に引き上げた。米国はさらに、対象を中国からの輸入品全品に拡大する制裁関税の「第4弾」を導入する方針を示した。中国は対抗措置を講じると表明した。

 貿易戦争には経済的利害はもちろん、ハイテク分野の競争や国家の覇権争いが絡む。行方は世界経済の行方にも大きく影響する。

▼広範な課税

 米中の貿易戦争が始まったのは2018年。トランプ米大統領は、中国が知的財産権保護に違反しているなどとして制裁関税の発動を表明。同年中に3段階にわたって追加関税を導入した。第1弾は340億ドルに25%(7月)、第2弾は160億ドルに25%(8月)、第3弾は2000億ドル分に10%(9月)だった。

 関税を引き上げた合計2500万ドルは、米国の中国からの輸入のほぼ半分に当たる。

 米国はさらに2000億ドル分の関税を10%→25%に引き上げる方針を打ち出し、12月から中国と貿易協議に入った。

▼産業補助金などで対立解けず 

 協議では中国側が外国企業に対して課してきた技術移転義務をなくすなど、歩み寄りもあった。しかし、米国は中国の産業補助金廃止や、知財保護の強化などを要求。対立が解けなかった模様だ。

 対立の背後には構造的な問題が横たわる。中国の産業補助金は、国有企業の存続に直結し、「国家資本主義」の経済モデル根幹にも関わる。中国としても簡単には譲れなかったとみられる。

 トランプ大統領はさらに、報復関税の対象を中国からの輸入品全品目に広げる方針を示した。追加分は3000億ドル。詳細は13日にも発表する。

 米大統領は同時に、今後も中国と協議を続ける点を強調した。同時に、交渉は急がずゆっくり進む姿勢を示した。先行きは予断を許さない。

▼風景様変わりの1年

 トランプ米大統領が対中制裁関税や、世界各国からの鉄鋼・アルミ製品への課税を打ち出したのが2018年3月。それから1年強で、関税引き上げは対象・金額とも急速に広がった。この現実の前に、「自由貿易に反する」などという(まっとうな)批判は埋没しがちだ。

 米国が中国に対して仕掛けている貿易戦争は、単なる経済上の利益を巡る紛争ではない。ハイテク分野での主導権争いや、国家の覇権争いが背後に控える。この点は最も重要なポイントだ。

 米中貿易関係や世界の通商体制は、すでに1年前に比べて全く異なる光景になった。交渉の行方がどうなるか不透明だが、さらに大きな変化が予期されることだけは確実だ。

 良きにせよ悪しきにせよ、トランプ米大統領が「ゲーム・チェンジャー」(ルールを変える人)。その認識を改めて想起させる。

◎ 自由貿易 つい昨日まで「いいね!」だった
◎ 関税に練り込む覇権と面子かな

2019.5.12

 

2019年3月31日 (日)

◆ロシア疑惑:モラー報告の衝撃 2019.3.31

 米トランプ政権のロシア疑惑を巡るモラー特別検察官の調査が終了。報告書をまとめてバー司法長官に提出し、長官は24日概要を公表した。内容をひとことで言えば「クロではない」。トランプ氏は意気を高め、議会での大統領弾劾の動きはしぼんだとの見方が多い。影響は大きい。

▼2年近くの捜査

 ロシア疑惑の争点は、(1)2016年の大統領選時にロシアが行ったとされる選挙妨害や世論誘導にトランプ陣営が共謀したか、(2)トランプ大統領による捜査妨害があったか、の2点が中心。

 モラー氏は2017年5月に特別捜査官に就任。捜査を続けてきた。捜査の過程では2800を超える召喚状を発行し、約500人の証人にインタビューしたという。また、捜査に関連し30人以上の個人や団体(ロシア人も含む)が訴追された。

▼トランプ氏勝利の内容

 モラー氏は報告書をバー司法長官に提出。バー氏がその概要を公表した。それによると、報告書は共謀について確認ができなかったとした。また、捜査妨害については「大統領が罪を犯したと結論付けるものではないが、彼の無実を証明したものでもない」と判断を保留した。

 事前の予想では、モラー氏の報告書はトランプ大統領にとってさらに厳しい内容になるとの見方が多かった。それもあり米メディアは、政権に批判的なNYタイムズなども含め、多くがトランプ大統領の勝利と評した。

▼弾劾に向けた動き、勢い削がれる

 民主党は疑惑が解明されたわけではないとし、モラー報告の全文公開を求めるとともに、議会に舞台を移して追及を続ける構え。ただし、大統領弾劾を目指す動きは勢いを削がれた。

 トランプ氏は「無罪が証明された」とし、野党民主党に対する攻撃を強めるなど政治的に攻勢に出る構え。2020年大統領選に向けたキャンペーンを始動させた。

▼米政治、新しい局面

 ロシア疑惑はトランプ政権発足以来、政権にとってのアキレス腱となり、米政治を揺らす材料になってきた。メディアは関係するニュースを連日のように大々的に報じ、民主党は政権の攻撃材料として表に出してきた。醜聞スキャンダルは絶好の話題となった。

 ただ、関心は大統領との共謀に向き、そもそもロシアによる選挙妨害疑惑にどう対応すべきかという問題が深く論じられたことは少ない。この問題は専門家の関心事にとどまり一般国民に共有されたとは言い難い。
 
 モラー報告で疑惑が片付くわけではない。しかし一つの節目を超えたことは間違いない。米政治は一つの節目を超え、新しい局面に入っていくとみていいかもしれない。

▼トランプ氏へのけん制材料減少?
 
 トランプ大統領は就任後、「米国第1」の政策を前面に掲げ、米国内政治、経済政策、外交各面で旧来のルールにとらわれないGame Changerとなってきた。移民規制の強化、メキシコ国境への壁建設のための非常事態宣言、中国に対する高率関税、中東でのイラン核合意からの離脱やエルサレムへの駐イスラエル米大使館の移転などが典型だ。

 こうした政策は、米国内の分断を一層拡大させた。そして、世界は大統領に振り回されている。

 ロシア疑惑は政治的には、トランプ大統領に対するけん制材料の一つになっていた。この意味合いが縮小すれば、世界への影響も出て来かねない。

▼疑惑の位置付け

 大統領弾劾につながる動きが終了するならば、疑惑としては尻すぼみになっていくかも知れない。ニクソン大統領のウォーターゲート事件はもとより、クリントン大統領の不倫疑惑と対比しても、後世話題になることは少なくなる可能性がある。

 ただし、Game Changerであるトランプ政権の歴史的役割や、大統領と議会の関係、大統領の機能などを考える場合、疑惑は欠かせない材料になる。含むところは多いだろうが、全貌はまだ全く総括されていない。
 
◎ 灰色に高笑いする大統領
◎ 「証拠なし」大国の政治を思う夜

2019.3.31

2019年3月24日 (日)

◆ゴラン高原、イスラエルの主権容認のインパクト 2019.3.24

 中東情勢の争点の一つであるゴラン根源について、米国がイスラエルの主権を容認した。既存の国際秩序を一方的に覆す決定。地域に新たな不安定の材料を生み、グローバルガバナンスの基本をも揺るがす恐れがある。

▼第3次中東戦争で占領

 イスラエルの主権容認は、トランプ大統領が21日ツイッターで表明した。ボルトン大統領補佐官もツイッターで「イスラエルの立場を支持する」と応答。イスラエルのネタニヤフ首相は謝意を返した。

 ゴラン高原はイスラエルとシリアの国境にある地域で、レバノンとも接する。1973年の第3次中東戦争でイスラエルがシリアから奪い、占領を続けている。

 国連は1967年の決議でイスラエルに対し占領地からの撤退を求め、イスラエルの主権を認めていない。しかしイスラエルは1981年に一方的に併合を宣言していた。

▼新イスラエル・反イラン

 この時期に主権容認を表明した背景には、いくつかの理由が考えられる。

 一つは現地情勢。ゴラン高原周辺では、シリアのアサド政権と近いイランが勢力を拡大していると(主に米メディアなどにより)伝えられる。また、アサド政権やイランに近いイスラム原理集団のヒズボラも活動を活発化しているという。

 トランプ政権の中東政策の基本は、親イスラエル(とサウジアラビア)で、対イラン強硬スタンスだ。今回も親イスラエル・反イランを鮮明にした。

▼国内支持基盤強化

 イスラエルが4月9日に総選挙を予定していることも影響した可能性がある。ネタニヤフ首相は汚職疑惑を抱え、逆風が吹いている。ゴラン高原の主権容認は、協力関係にあるネタニヤフ政権を側面支援になる。

 さらに米国内の事情だ。対イスラエル支援強化は、支持基盤であるキリスト教福音派の支持確保につながる。ロシア疑惑などの問題を抱える大統領にとって、支持基盤の再強化は優先課題だ。

▼既存国際秩序を無視

 既存の国際秩序を無視する形で、突然、一方的に重要政策を変更するのは、いかにもトランプ流だ。2017年末に突然、駐イスラエル米大使館のテルアビブからエルサレムへの移転を決定した時もそうだった。この時は、国連総会による批判決議を全く無視する形で、翌年、実際に大使館を移した。

 イランの核合意離脱、パリ協定離脱なども突然かつ一方的な判断。トランプ大統領の行動パターンに従来の常識が通用しないことは改めて明確になった。

▼世界の基本理念揺さぶる

 問題はその影響だ。ゴラン高原についてイスラエルの主権を容認するのは、武力による国境の変更を認めるのに等しい。しかし、国連の決議に反しての決定だ。

 2014年のロシアによるクリミア併合などを、国際社会は容認せずに非難してきた。背後にあるのは、武力による国境変更を認めないという基本認識だ。これは現代の世界秩序の基本理念だ。

 超大国米国の大統領であるトランプ大統領は、こうした理念をいともあっさり捨てているようにも見える。それは中東情勢など地域の問題にとどまらず、世界の在り方そのものに問いを投げかける。

◎ 覇権国 作ったルールを「チャラにする」
◎ 呟き(ツイート)が 何万の民をもてあそぶ

2019.3.24

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