カテゴリー「アメリカ」の123件の記事

2021年1月11日 (月)

◆米議会占拠の衝撃 2021.1.9

 米ワシントンでトランプ支持者が連邦議会を一時占拠した。社会に衝撃を与え、米民主主義に汚点を記したのはもちろんだが、影響はトランプ大統領への批判の急拡大、政治の力関係の変化、SNSによるアカウント停止など様々な方面に及ぶ。事態はなお流動的だが、現時点での情報を整理しておく。

▼約200年ぶりの議会攻撃

 連邦議会への乱入があったのは1月6日。議会では昨年11月の大統領選を受け、バイデン氏当選の最終確認を行うための審議が行われていた。

 数千人規模と言われるトランプ支持派が付近に集まり、抗議活動を展開した。トランプ氏も集会で演説し、議事堂に向かってデモ行進をするよう呼び掛けた。これが昼ごろの出来事だ。

 支持者は議会周辺に集まり、2時ごろに一部の過激派が突入。3時間以上にわたり居座り、破壊活動を行った。上下両院は一時休会。警察官がトランプ支持者を排除する過程で衝突。少なくとも5人が死亡した。混乱は夜まで続いた。

 米議会が攻撃対象となったのは、米英戦争時の1814年以来約200年ぶり。米民主主義に汚点を記す出来事になった。

▼トランプ氏への批判拡大

 事態を受けてトランプ米大統領への批判が野党民主党はもちろn、与党共和党からも高まった。

 トランプ氏は支持者に対し、活動を煽るような発言やSNS発信を繰り返した。SNSで「平和裏に」と呼び掛けたのは議会突入後30分以上たってから。「帰宅を」と呼び掛けたのは、その2時間後だった。ホワイトハウスは州兵の派遣を発表したが、トランプ氏は反対。ペンス副大統領が決断したと、米メディアは報じる。

 民主党はトランプ氏の罷免や弾劾を求める動きを示している。各国首脳も議会突入を厳しく非難、間接的にトランプ氏への批判をにじませた。

▼影響力に打撃か

 事件は政治力学のバランスにも影響している。共和党のトランプ支持派は議会の審議で、バイデン氏の当選に疑義を呈する発言を繰り返していた。しかし議会乱入を機にそうした議論は全く止まった。バイデン氏を次期大統領に選ぶ手続きが円滑に終了した。

 トランプ氏は7日の動画メッセージで、バイデン次期大統領への政権移行に協力することを表明した。事件を巡る批判が集中したのを受け、態度を軟化せざるを得なかった可能性がある。

 チャオ運輸長官など政権の幹部が相次いで辞任を表明。トランプ政権は最終盤にきて、求心力が一気に低下した。

 トランプ氏は退任後も共和党内に強い影響力を残し、2024年の大統領選出馬を探るとの見方もあった。その影響力が、急速に衰える可能性がある。

▼SNS・メディアとの関係にも一石

 事件を受けて、ツイッターとファイスブックはトランプ氏のアカウントを永久に凍結すると発表した。暴力を煽る内容があり、規約に違反したとの理由だ。

 ツイッターはトランプ氏が大統領選出馬時から情報発信のツールとして活用し、8000万人以上のフォロアーを持つ。トランプ氏は決定を、言論の自由に反すると批判。別のSNSなどを使って情報発信していく姿勢を示した。

 ツイッターなどの決定は、SNSのあり方やメディアと政治権力との関係についても物議を醸す。

 SNSや他のネットサービスは、ユーザーが発信する情報の内容に責任を持たないでいいという制度(米通信品位法230条)の下に発展してきた。情報の(取捨選択などの)編集権を放棄する立場は、ビジネスモデルの土台だった。

 しかしフェイクニュースやヘイトスピーチなどを見逃すような運営に世論の批判が高まり、規制の見直し議論が活発になっている。表現の自由と不適正情報の規制のバランスをどう取るかという問題と、プラットフォーマー(SNSやネットサービス運営者)の責任という問題が絡み、議論の行方は難しい。

 そこにトランプ氏のアカウント停止。議論がさらに広がりを持ち、国や民主主義の根底に関わる点に無縁ではいられない。それは、世界の表現の自由や、政治とメディアの関係にも関係してくる。

▼トランプ時代の終わり方

 トランプ氏が2016年に大統領選に当選した一因は、白人貧困層などの支持を得たため。その背景には、米社会の格差拡大や分断があったと指摘される。

 今回の事件で、トランプ支持層そのものへの批判が強まる可能性もある。トランプ現象があぶりだした社会の問題点が注目を失うとすれば、取り残された人々は別の扇動者や不満のはけ口を求めてさまようのか。

 トランプ時代の終わり方も、米社会の行方に影響する。

 

 

 

 

 

2020年11月29日 (日)

◆NY株3万ドル超が映す風景ーーカネ余り、IT、コロナ 2020.11.29

 米国はじめ世界の株式市場で価格上昇が進んだ。NYダウは24日、3万ドルを突破。2017年1月に2万ドルを超えてから4年弱で大台超えした。1万ドル→2万ドルに17年かかったのと比べると、極めて急ピッチだ。

▼コロナで再び金融緩和

 株高の背景にあるのがカネ余りである。トランプ政権は景気優先の経済政策を進め、株価上昇を後押しした。FRBは2018年までは金融正常化(リーマン・ショック後の緩和→引き締め)を模索したが、2019年から緩和に転じた。米中貿易摩擦激化などに伴う経済失速への対応を優先したためだ。

 そこに加わったのがコロナ。2020年に入ると先進各国はコロナ対策のため、金融緩和や財政出動を加速した。大量の資金が、株式や不動産などに流入している。

▼IT企業への資金集中
 
 株式市場では銘柄の選定が進んだ。特に上昇が顕著だったのが大手IT企業。GAFAにマイクロソフトを加えた大手5社の時価総額は、4年間で3倍に拡大(市場全体は1.5倍)し、時価総額の合計は7.1兆ドルと日本株全体の時価総額を上回る。

 コロナ流行でテレワークなどが普及。経済全体が縮小する中でITは拡大している。米国ビッグ5の他に、中国のアリババ、テンセントなどの株価も上昇した。

 IT以外でも、新技術などを背景に急成長する企業に資金が集まる。電気自動車のテスラの時価総額は5000億ドルを超え、自動車業界2位のトヨタの2.5倍以上だ。

▼実体経済との乖離

 株高にはリスクも潜む。世界の実体経済はコロナの影響で大幅なマイナス成長に陥っている。そんな中、株価だけは急上昇し、乖離は嫌でも目に付く。バブルの懸念は消えない。

 過去を振り返っても、世界経済は約10年ごとに危機を経験している。リスクは膨らんでいる。

 市場の危うさを感じながらも、コロナ対応で益々金融緩和や財政支出を進めざるを得ない。世界経済はそんな状況下にある。

▼時価総額ランキング

 ちなみに、2020年11月29日現在の世界の主要企業の時価総額は以下の通りだ(出所https://companiesmarketcap.com/、国名なしは米国企業)

1.アラムコ(サウジ)21(単位1000億ドル)
2.アップル 19.8
3.マイクロソフト 16
4.アマゾン 16
5.アルファベット(グーグル) 12
6.フェイスブック 7.9
7.アリババ 7.4
8. テンセント 7.1
9.テスラ 5.5
10.バークシャー 5.4
11.ビザ 4.6
12.TSMC(台湾) 4.4
13.ウォルマート 4.2
14.サムスン(韓国) 4.0
15.ジョンソン&ジョンソン 3.7
16.JPモルガン・チェース 3.6
17.P&G 3.4
18.マスターカード 3.3
19.エヌビディア 3.2
20. 貴州茅台酒(中国) 3.2
21.ネスレ(スイス) 3.2

◎ 疫病下、未曽有の不況に株ブーム
◎ バブルだろ?怖くて誰も言わないが
◎ まず補助金、ツケは後から考えよう
◎ 持続性!掛け声上げつつお金刷る

2020.12.29

 

2020年11月15日 (日)

◆米大統領選後の風景――混乱と対立続く 2020.11.15

 米大統領選で勝利宣言したバイデン氏が次期政権に向けた準備を始動した。しかし、トランプ大統領が依然敗北を認めないなど、混乱と対立は続き、異例の風景になっている。

▼次期政権の準備
 バイデン氏は11月7日に勝利宣言を行った後、欧州各国首脳などから祝辞を受けた。コロナ対策の専門家チームを立ち上げたほか、首席補佐官など人事を発表。英独仏など世界各国との電話会談を実施している。

 移行チームのHPを立ち上げ、優先課題としてコロナ対策、経済対策、人種問題、地球温暖化対策の4つを挙げた。ここでコロナや外交問題で相次ぎ情報を発信している。

 政権問題で期待を抱かせる面は少なくない。外交では米欧関係の改善を期待できるし、米国のパリ協定復帰は地球温暖化委問題の前進を期待させる。人種問題では、少なくともトランプ時代のように対立を煽ることは減るだろう。

 ただ、コロナ対策に加え、対中関係の行方、米社会の分断や格差問題への対応など、重要問題の行方・方向性は不透明だ。

▼米社会の分断一層鮮明に

 選挙で鮮明になった米社会の分断は、選挙の後に一層鮮明になった感がある。トランプ大統領は依然敗北を認めず、選挙結果に異議を申し立てる。14日には首都ワシントンでトランプ支持派の大規模な集会も開かれた。

 現政権からバイデン次期政権への政権移行の作業は全くない。予想したこととはいえ、嘆息ものだ。

 大統領選と同時に行われた議会選では、ジョージア州で上院の決着がつかず、来年1月の再投票に持ち込まれることになった。下院では民主党が過半数を維持したものの、議席を減らした。新政権の議会運営の行方も流動的だ。

▼混乱と対立の印象

 米大統領選は米国の様々な面を表面化させ、それぞれの時代の印象を残す。それが民主主義のこともあれば、社会の進歩のこともあった。混乱もあれば(2000年のブッシュvsゴアの法廷闘争など)、変化(1980年、1992年、2008年など)が印象的だったこともある。米国の若さやエネルギーが際立つこともあった。

 今回の大統領選のイメージは、民主主義や米国の底力とは言い難い。それよりも混乱と対立が際立つ。この印象が「今のところは」となれば世界のためにも好ましいが、客観情勢は楽観を許さない感じがする。

2020.11.15

 

 

2020年11月 8日 (日)

◆米大統領選をどう読む――トランプ時代の4年間と世界の今後 2020.11.8

 米大統領選は民主党のバイデン元副大統領の当選が確実になった。ただ開票を巡る混乱はなお続いている。選挙結果から読み取るべきものは何か。トランプ大統領時代の4年間で米国と世界はどのように変わり、今後どうなっていくのか。

▼バイデン氏当選の見通し、混乱は続く

 11月3日投票の大統領選は、まれに見る大接戦になった。勝敗の行方を左右するペンシルベニア、ジョージアなどの激戦区は、いずれも得票率の差が1%未満。投票から4日後の11月7日になって主要メディアは一斉にバイデン氏当確を打ち、同氏は勝利宣言をした。ドイツのメルケル首相や英国のジョンソン首相など海外の首脳はバイデン氏に祝電を送った。しかしトランプ氏は開票に不正があったとして裁判に訴える姿勢で、混乱はなお続く見通しだ。

 混乱の理由の1つが郵便投票。今回の選挙は新型コロナ流行拡大の影響で事前投票が多く、郵便投票は相当の割合を占める。しかし郵便投票のルールは、州により規程が異なり、例えば選挙当日の消印があれば選挙後でも受領する州がある。トランプ大統領は選挙前から郵便投票が不正の温床と主張し、実際不正があったなどと主張する。ちなみに、今回選挙は約1億6000万人が投票し、投票率は66%。事前投票は1億を超え、うち6500万が郵便投票だった模様だ。

▼トランプ氏の予想外の健闘

 事前予想ではバイデン氏が圧倒的にリードしていた。全米平均の世論調査では一時約10%、投票直前でも5%を大きく上回ってリードしており、民主党内には地滑り的な圧勝を期待する声もあった。

 しかし蓋を開ければトランプ氏が健闘。バイデン氏は民主党支持者が多く投じたと言われる郵便投票の上積みで、ようやく得票をひっくり返した格好だ。英FT紙は”Biden landslide hopes turn to nail-biting finish"(地滑り的勝利の期待は、ハラハラの結果になった)と描写した。議会選でも元々過半数を得ていた下院は制したものの、上院は困難だ(一部再決戦投票になるため、最終結果は現時点では未定)。

▼国民の分断

 バイデン氏勝利の理由を分析すれば、「反トランプ」の言葉に尽きる。中でもコロナ対策の失敗と、人種間の対立は批判の対象になった。しかし、それでも有権者の約半分はトランプ氏に投票した。米有権者はバイデン氏支持とトランプ氏支持に2分されたと言っていい。

 トランプ支持者は選挙後も、開票を巡り不正があったというトランプ氏の主張を支持し、抗議活動を展開する。衝突の懸念も消えない。米国では過去数十年間、社会の分断が指摘されてきたが、トランプ時代に亀裂が一層深まり、今回の大統領選でさらに深刻化したという分析が多い。

▼トランプ時代の4年間

 トランプ氏の4年間の政策やその影響を振り返ると、以下のような点を指摘できるだろう。

(1)米国社会の分断が加速
(2)米中対立が激化
(3)国際協調→自国利害優先への転換、世界のリーダーとして役割低下
(4)コロナへの不十分な対応(統治能力やリーダーシップの欠如)
(5)世界的に、民主主義が危機に直面

 トランプ大統領は就任時から「米国第1」を掲げ、自らの支持基盤である白人の保守層や貧困層らの利益を重視する政策を進めた。雇用確保の名の下に、移民規制の強化や関税の引き上げなどを実施した。一方で、人種差別問題への対応などには後ろ向きだった。結果、社会の内向き化傾向に拍車がかかり、米社会の分断が進んだ。

▼米中対立

 国際的には、米中対立激化のインパクトが最も大きいだろう。米国は1990年代-2000年代にかけて、中国を国際社会に受け入れることが世界の利益になるという「関与政策」を取ってきた。しかし、2010年代に入ると中国とを競争相手として捉える見方が強まってきた。トランプ氏はそうした変化を政策として具体化し、対中強硬策を相次ぎ打ち出した。

 2018年には中国からの輸入品に相次ぎ高率関税を導入し、貿易戦争を仕掛けた。その後ハイテク分野でも強硬策を強め、ファーウェイとの取引禁止などの措置に踏み切った。さらに南シナ海問題で中国の主張を違法と非難したり、欧州諸国に対中同盟を呼び掛けるなど、安保やイデオロギー面でも対中対立姿勢を明確にした。

 米中の対立が、経済面での分断を拡大していくという「デカップリング」の見方も強まってきた。米中の新たな対立を「新冷戦」と見る分析もある。

▼国際協調→自国利益、欧州、中東政策の変化

 米国は従来、国際協調や多国間主義を外交の基本にしてきたが、トランプ政権は自国利害優先に軸足を移した。イランとの核合意やパリ協定から離脱。欧州との関係は、第2次大戦後最悪とも言われるまでに冷え込んだ。

 中東では反イラン、親イスラエルの姿勢を強め、イスラエルの首都としてのエルサレム認定、イスラエルとUAE、バーレーンなどの国交樹立なども演出した。中東で築いた既成事実は、バイデン大統領になっても元に戻すのは困難だろう。
 
▼コロナが投げかけた問題ーー統治能力やリーダーシップ

 新型コロナの流行拡大は、トランプ政権と米国の問題を図らずも浮かび上がらせた。米国の感染確認者は間もなく100万に達し、死者は20万人を超えるなどいずれも世界最大。世界最高の医療技術を持ちながら、被害も最大という矛盾をさらけ出す。

 背景には、先進国でもまれな国民皆保険でない医療体制、特定の仕事に就く一部の人々に感染のリスクがのしかかる社会構造の矛盾、連邦政府と州政府の思惑の違い、国民の意識など様々な要因がある。しかし、トランプ政権の政策に問題があったのは否定できない。

 トランプ政権は、発足以来人事を巡りいざこざが絶えず、統治上の問題点が指摘された。またコロナ感染など非常時に最も問われるのは、トップのリーダーシップだ。コロナは統治能力やリーダーシップの問題点を露呈したと言っていいだろう。

▼「民主主義の危機」と「世界の枠組み変化」--トランプ時代の世界

 米国が世界のリーダーとして民主主義や開かれた経済などの価値観を守っていこうという姿勢は、トランプ時代に大きく後退した。内向き志向は世界的にも顕著になっている。

 コロナ流行という状況もあり、中国、ロシア、トルコなど強権国家の増加も指摘される。世界中で、民主主義の危機が叫ばれる。これに対し米国が歯止めになるのでなく、トランプ政権がむしろ民主主義の混乱を助長したとの批判が噴出する。

 米中関係の変化。世界の分断。米国のリーダーシップの後退。民主主義の危機ーー世界の枠組みは大きく変わろうとしている。第2次大戦後の世界の秩序がの変更と言ってもいいかも知れない。

 そうした点があらわになったのが、トランプ時代の4年間だった。

▼バイデン時代の課題ーー国際協調の姿勢

 こうした状況の中で、バイデン大統領が誕生する。

 国際的にはトランプ時代の米国第1主義から国際協調主義に軸足を戻し、対欧州関係の改善、パリ協定への復帰などを推進しそうだ。しかし対中関係を以前のような融和姿勢に戻すことはあり得ない。ハイテク摩擦など譲れない部分を守りながら、トランプ氏の強硬姿勢より有効な政策を打ち出せるのか。スタンスは難しい。

 国内的には分断の修復が大きな課題の1つ。バイデン氏は7日の勝利宣言でも国民に団結を訴えた。しかし、今回の大統領選派むしろ亀裂の深さを印象付けた。バイデン氏はトランプ氏と異なり、人種差別問題で人々を煽るような発言はしないだろう。しかし、それが逆に、白人の権利を重視する人などの不満を招可能性すらある。

▼問われるリスク管理能力

 目先、何より重要なのはコロナ対応。そしてコロナで悪化した経済対策だ。コロナについては、マスクの着用強化など簡単にできることもある。しかし、対応はその程度のレベルにとどまらない。

 今後、予測できないリスクが顕在化する可能性もある。感染の再拡大、医療崩壊、金融や経済危機の発生など様々だ。コロナが切っ掛けになって、国際的な紛争が起きる事態もあるかも知れない。そんな非常時にどうするのか。問題は、政策遂行やリスク管理の能力、そしてリーダーシップにかかる。

 大統領選で、国際情勢や非常時のリスク管理が議論されることはほとんどなかった。就任時に78歳となるバイデン氏に問われる責任の重い。そしてそれが、世界の枠組みや民主主義の行方にも直結する。

◎ 型破りと予測不能の4年過ぎる
◎ コロナ禍でもファンが離れぬポピュリスト
◎ 分断の時代が生んだか異端の士
◎ 「民主主義の戦線後退」「放置せよ」
◎ 米中が号砲なしに開戦す
◎ 地球儀の上塗り部分はもう消えぬ
◎ 政治的正しさ(political correctness)戻るか、ふと笑う

2020.11.8

2020年10月25日 (日)

◆グーグル提訴の衝撃 2020.10.25

 米司法省がグーグルを反トラスト法(独禁法)で提訴した。IT大手を巡る大型訴訟は約20年ぶり。大手IT企業に対する規制強化の流れを象徴する動きであり、世界のIT業界の地図を変える可能性がある。

▼競争阻害の疑い

 司法省は20日、首都ワシントンの連邦地裁に、テキサス州など11の司法長官と共に提訴した。グーグルがネットの検索・広告市場で競争を妨げる排他的な行為をし、独占を維持しようとしたと主張した。

 具体的には、(1)スマホメーカーに対し、競合の検索サービスの初期搭載を禁じる独占契約を結んだ、(2)アップルに毎年数十億ドル(最大120憶ドル)を払い、自社の検索サービスを標準搭載させたーーなどが反競争的な行為に当たるとしている。

 グーグルはスマホ利用者は他社の検索サービスも利用できるなどとし、司法省の主張に反論する。

▼GAFAの時代

 今回の訴訟は、大手IT企業に対する批判が強まっている中で起きた。

 IT業界ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やマイクロソフトなど大手企業への集中が進む。グーグルの検索やユーチューブ、フェイスブックのSNSなどは世界で10億人単位の利用者を抱える。大手IT企業は膨大な顧客のデータを抱え、それをベースに新たなサービスやビジネスを展開している。

 データの蓄積が少ない中小の企業や新興企業は大手に対抗しにくく、GAFAなどへの集中がさらに進むという流れが加速した。

 大手IT企業は時価総額ランキングで世界の上位を独占し、2020年にコロナ感染が拡大すると世界の資金は益々IT業界に流れ込むようになった。

▼大手IT批判~EUから世界へ

 2018年にファイスブックからの大量の個人情報流出するなど、大手による情報独占の弊害も目立つようになった。将来競合になり得る新興企業が出て来ると、大手IT企業が巨額の資金を活用して買収し、競争の芽を摘んでいるという指摘も多い。

 こうした流れの中で大手IT企業に対する批判が拡大し、規制論も強まっていった。

 いち早く動いたのがEU。欧州委員会は2018年グーグルに対し、EU競争法違反で43億ユーロの制裁を科した。グーグルがスマホのOSアンドロイド端末に自社の検索ソフトを抱き合わせで搭載するように要求してるとの判断だ。欧州委員会はこれ以外にも、EU競争法を根拠にした巨大IT企業規制を強めた。

 また、2018年には一般データ保護規則(GDPR)を施行。個人情報の保護などを強化した。EUと取引をする世界中の企業がGDPRへの対応迫られた。

▼米国でも規制強化へ

 米国は従来、大手IT規制より育成を重視してきた。しかし2018年頃から徐々に流れが変わった。

 2019年7月には、司法省が巨大IT企業が独禁法の調査に着手。1年の調査を経て、今回のグーグル提訴につながった。

 2020年7月には、議会下院の司法委員会がGAFAのトップの出席を求めて公聴会を実施。10月には下院が報告書をまとめ、大手IT企業規制の必要性を強調した(ただし、報告書は民主党中心に纏められ、共和党議員は別の報告書を発表した。両者は規制強化で一致するものの、その内容については意見が異なる)。

▼20年ぶりの大型訴訟

 今回のグーグル提訴は、米産業界では約20年ぶりの大型訴訟となる。歴史的に重要な訴訟を振り返れば、以下の通りだ。

・1906年:スタンダード石油(1911年に34の会社に分割)
・1969年:IBM(司法省は分割を要求、1982年に和解)
・1974年:ATT(1984年に長距離会社と7つの地域会社などに分割)
・1998年:マイクロソフト(2004年に和解、技術情報開示など)
・2020年:グーグル

 1998年のマイクロソフト提訴では、企業分割の可能性なども指摘されたが、結局6年後にマイクロソフトが技術情報の開示を拡大することなどで和解した。

 しかし、訴訟の期間中マイクロソフトは競争力の強さを前面に出すような行動を取りにくく、グーグルはじめ他社の台頭を招くようになった。PCやソフトの分野でマイクロソフトが突出する状況が変わり、競合する新興企業が育った。その意味で、訴訟の影響は大きかった。

▼グーグル:技術革新の象徴

 過去約20年間、グーグルはIT産業の発展やダイナミズムを象徴する企業だった。革新的な技術力を武器に、検索からスマホのOSであるアンドロイド、TouTubeなどで次々新市場を育てた。自動車の自動運転など次世代の技術でも世界をリードする。

 「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです」(Our mission is to organize the world’s information and make it universally accessible and useful)という分かりやすいメッセージを始め、様々なIT文化を発信。IT革命を先導する存在だった。

 そのグーグルが巨大なり、競争の阻害を糾弾されるようになった。時代の変化を物語る。

▼訴訟の行方

 訴訟の行方がどうなるかは分からない。司法省とグーグルの主張は真っ向から対立しており、専門家の見方もまちまちだ。ただ、決着までに数年はかかるという見方が多い。また、和解や罰金による決着の可能性も指摘される。

 ただ結果がどうなるにせよ、訴訟の期間中グーグルが活動に制約を受ける可能性が大きい。競合する新興企業の買収がしにくくなるなど、M&A戦略に影響が出て来るという見方がある。

▼規制はさらに拡大の可能性

 規制がグーグルだけに留まるとは限らない。ファイスブックなど他のIT大手も、ユーザー情報の囲い込みや競合企業の買収などをテコに成長している。同様の提訴があるとの予測もある。

 SNSに対する規制論も浮上してきた。プラットフォーマーと呼ばれるSNS運営会社(巨大IT企業も含まれる)は、利用者が投稿した内容に法的責任を負わないでいい、という条件の下で急成長してきた(米通信品位法230条)。投稿に虚偽の情報や差別用語が含まれていても、直接責任を負わなくていい内容で、メディアなどが掲載責任を負うのと対照的だ。

 しかし、巨大プラットフォーマーの社会的な影響力とが増加するのに伴い、世間の目は変わって来た。投稿内容への責任を問われるようになれば、今までのビジネスモデルは通用しない。

▼変わる業界地図

 IT業界はただでさえ急速に変化している。新型コロナの流行以降、Zoomなど新興企業が急成長している。通信やスマホは5G時代に入り、これまでにない新サービスが登場してくるだろう。中国は国が情報管理を強める一方、アリババなど巨大企業が世界的な影響を強めている。

 ATT分割やマイクロソフト訴訟の時代に比べ、IT業界の変化は遥かに速度を増し、大胆になっている。その変化の要因になるのは、技術、国家覇権、そして規制体系などだ。

 司法省によるグーグル提訴は、巨大IT企業規制という時代の潮流の象徴的事例であるし、米産業史という脈略でも特記される出来事となる。

◎ ベンチャーの成功、権威化 世のならい
◎ 産業史、流れの節目に規則の目
◎ 技術革新(イノベーション)時々規制の資本主義

2020.10.25

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月 4日 (日)

◆トランプ大統領コロナ感染の衝撃 2020.10.4

 トランプ米大統領が新型コロナに感染。ワシントン近郊の軍の病院に入院した。世界最高の権力者のコロナ罹患は、世界に大きな衝撃を与え、1か月後に迫った大統領選の行方を左右する。

▼容体は不透明

 トランプ大統領の感染が発表されたのは現地時間2日朝。大統領がツイッターで発信し、その後ホワイトハウスなどが説明した。大統領は当初、ホワイトハウスで自主隔離しながら執務を続けるとしたが、同日ワシントン近郊の軍の医療施設に入院した。3日付けで病院からビデオメッセージを発表し、回復ぶりをPRした。医師団も大統領が回復していると強調した。

 ビデオ出演では、回復は順調とPRした。しかし11月の大統領選を控え、不利な情報を流せないのは当然。本当のところの容体は分からない。

▼コロナ軽視のツケ?

 トランプ氏は米国でコロナ感染が拡大し始めた今春から、感染防止よりも経済活動の維持を重視。マスクの着用などにも消極的な姿勢を示してきた。

 自身も大統領選のキャンペーンで大規模集会の開催を重視。支持者などに直接呼びかけ、握手など接触する場面も多かった。本人がマスクを着用することもまれだった。

 今回の感染は、こうしたコロナ軽視のツケという指摘もある。ただし、米国内で700万人以上の感染が確認されている中、こうした見方を受け入れない人も当然いる。

▼ホワイトハウスで感染拡大、統治危機のリスク

 メラニア夫人も同時に感染。またホワイトハウスの高官や、大統領と接触する機会が多い与党共和党の国会議員らも感染が報告された。「ホワイトハウスでクラスターが発生」と報じたメディアもある。

 世界の最高権力機構である米政府の中核での感染拡大は、由々しき事態という他はない。統治機構のリスク管理に問題があったという見方も当然だ。

 ただし、ペンス副大統領やポンペオ国務長官などは陰性が発表され、当面統治危機が表面化するような事態は回避されている。

▼世界に多大な影響

 世界の最高権力者である米大統領の感染は、国際情勢にも多大な影響を与える。入院先から執務を行うと言っても、処理案件は通常より絞らざるを得ない。ポンペオ国務長官は、モンゴルや韓国訪問をキャンセルした。

 それ以上に、テロや紛争、サイバー攻撃などの緊急事態が生じた場合の対応に、制約が出る可能性がある。入院先で、スタッフから十分な情報を受け、適切な判断を下せるのか。世界全体の統治機能や危機管理機能が、一時的に低下しているという見方が適切だろう。

▼大統領選に甚大な影響

 国内的には、大統領選への影響が甚大だ。感染前まで、世論調査では民主党のバイデン候補がトランプ氏をリードしていた。トランプ氏は今後、全国的に大規模集会を繰り返し開き、挽回を狙っていたと伝えられる。

 感染により少なくとも2週間は隔離を余儀なくされる。大規模集会を中心にしたキャンペーンは、白紙に戻さざるを得ない。オンライン中心に戦略立て直しができるか、見通しは立たない。

 大統領候補によるテレビ討論(10月15日2回目、10月22日3回目)もどうなるか不透明だ。オンラインで参加するのか、そもそも開催を変更するのか。今のところ断定できる材料はない。

 バイデン氏がますます有利になったという見方はもちろんある。ただ、大統領の容体を含め本当のところは全く分からない。

 大統領感染を受けて、英国などのブックメーカーは、大統領選の勝者を当てる賭けのサービス提供を停止した。ブックメーカーにして、先が読めない状況だ。

▼オクトーバーサプライズ

 大統領選直前の10月に、予期しなかった出来事が起きて、選挙の行方を変えた例はこれまでにもある。オクトーバーサプライズと呼ばれる。トランプ氏感染はまさにその例だ。

 ただ、これでサプライズが終わりと言う訳ではもちろんない。国際的な紛争、テロ、自然災害、コロナの新展開、サーバー攻撃、経済の急変、候補者の(さらなる)健康問題など、予測不能なことが起きる領域はいくつもある。

 「選挙はバイデン勝利で終わり」と単純に読むのは大きな誤りになる可能性がある。

▼偶然で動く世界

 今回の選挙では、サイバー攻撃やフェイクニュースなどが注目されていた。いずれもしばらく前までの伝統的な枠ではとらえきれない、新しい要因だ。しかし今回、驚きはまずコロナで表面化した。

 選挙は正統な政策論争だけではなく、偶然の出来事で勝敗が決定することも多い。そして世界は偶然で動く面があり、予測不能なことも多い。大統領感染は、そんな現実を改めて見せつけた感じだ。

◎ 人格も議論も脇にコロナかな
◎ トランプ罹患びっくりとやっぱり同居する
◎ 世界史は偶然と必然の積み重ね

2020.10.4

 

 

2020年9月20日 (日)

◆米中対立:戦線拡大・複合化ーTikTok、ファーウエイ、台湾 2020.9.20

 米中対立が激しく揺れた。動画投稿アプリのTikTokの米国での活動を巡り、両国は水面上・水面下で攻防を展開。米国はファーウエイへの禁輸措置を強化した。台湾を巡る駆け引きも動いた。米中対立は領域を広げ、複雑に絡みながら動き、両国関係は分断(デカップリング)が進んでいる。

▼トランプ政権が規制の動き、中国も対抗

 動画投稿サイトのTokTokを巡る情勢が目まぐるしく動いた。

 同サービスは、中国の北京字節跳道科技(バイトダンス)が2017年から提供している。全世界のユーザーは8億人、米国で1億人が利用する。

 トランプ米大統領はTikTok利用者の個人情報が中国政府に流れているとして、7月末にTikTOkの禁止を表明。その後、米企業による買収かサービス禁止を迫り、9月15日までと期限を定めた。こうした中、米マイクロソフト、オラクル、ウォルマートなどが交渉に乗り出していた。

 中国は米国の動きに反発、8月には対抗策として自国の輸出規制を強化した。輸出規制の対象にはAI関係の技術やサービスも含まれ、米社とTikTokの交渉に中国がストップをかける可能性も生じていた。

▼二転三転、今後の展望なお不透明

 トランプ政権の定めた期限が迫る中、マイクロソフトは13日までに交渉中断を表明。オラクルとTikTokは14日までに、買収ではなく提携案をまとめ、米政府に示した。オラクルがTikTokのグローバル事業に資本出資し、サービスのアルゴリズムはTikTokが保有する一方、顧客データの管理はオラクルが実施するという内容。ウィルマートもオラクルと共に出資に加わる。

 提携案を受けて米商務省は18日、TikTokの米国内での新規ダウンロードや更新を20日に禁止すると発表。一方、サービス自体は11月12日まで認めるとした。

 翌19日、トランプ大統領は提携を原則承認すると発表した。商務省は新規配信の禁止を20日から27日に延期した。

 米政府の対応は二転三転している。判断の背後には、もちろん11月野大統領選をにらんだ思惑もある。中国側の反応もはっきりしない点が残る。TikTok問題がどう推移するか、なお流動的だ。

 ちなみに、ピーターパンの人食いワニは、Tick Tockと表記される。

▼テンセントやファーウェーも

 当面の焦点になっているのはTikTokだけではない。米国は中国大手ITのテンセントが提供する微信(ウィ―チャット)の利用も禁止した。

 大手通信機器、スマホのファーウェイに対しては、2018年以降何度かの決定で取引規制を京っかしている。米国から技術を盗んだなどという理由。

 9月15日には、同社に対する禁輸措置を強化。米国の技術が絡んだ半導体の同車への輸出を事実上全面禁止した。同社への直接輸出だけでなく、外国企業による輸出も制限する内容だ(同車に米国技術が絡んだ半導体を輸出した企業は、米国の制裁対象とする)。

▼米中ハイテク摩擦

 米中のハイテク分野での摩擦が強まったのは、トランプ政権2年目の2018年から。米国は中国のハイテク企業が知的所有権や侵害や技術の窃盗などをしていると主張、締め付けを強化した。次世代通信ん5Gの通信機については、ファーウェイからの導入禁止を打ち出し、欧州や日本、豪州などにも同調を求めた。

 米国は今年8月、ファーウェイ以外に通信基地やスマホのZTE、監視カメラのハイクビジョンなどとの取引を制限する法律を施行した。TikTokやテンセントへの規制強化も、同じ戦略上にある。

▼台湾との関係強化

 TikTok問題が揺れた同じ週、台湾を巡っても注目すべき動きがあった。米国のクラック国務次官が台湾を訪問。7月末に死去した李登輝元総統の告別式に参加し、蔡英文総統と会談した。行政院長(首相)や経済部長(経済相)とも会談し、米台関係経済関係の強化などを話し合った。

 米国からは8月厚生長官が訪台したばかり。相次ぐ政府高官の訪問で、米台関係強化の動きを誇示する戦略だ。

 中国は反発し、米国への批判と警告を繰り返す。19日には戦闘機19機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入、圧力をかけた。

▼安全保障の対立

 米中関係はトランプ政権の発足以来、急速に対立を深めた。米国は2018年以降、中国からの輸入品に高率関税を導入。まず貿易戦争が勃発した。次いでハイテク分野で対立を深めた。

 加えてここに来て、安全保障分野でも対立が強まっている。6月末に香港に国家安全法が導入されると、米国は中国を厳しく批判。香港への制裁を強化するなど、警戒の姿勢をあらわにした。7月には南シナ海問題を巡り、中国側の主張は国際法的に見て違法であると初めて明言した。9月の東アジアサミット閣僚会議(ビデオ)では、ポンペオ国務長官が南シナ海問題で中国を激しく批判した。

 台湾との関係強化の動きも、この脈略にある。香港の1国2制度は国家安全法により空洞化し、香港が中国に飲み込まれつつある。台湾が同様の姿にならないように、米国は支援強化を見せつけている。

▼デカップリング

 米中関係の行方には、不透明要因も多い。11月の米大統領選で民主党のバイデン候補が当選すれば、対中政策はトランプ時代のやり方とは変わるだろう。それでも、対中警戒感の高まりは、野党民主党も含め米国に広く浸透している。

 1990-2000年代、米国は中国を国際社会に受け入れることが中国の民主化や世界の安定に繋がるという見方を取り、関与政策を推進した。この考え方はいまや完全に後退している。

 米中の分断ともいえる「デカップリング」が、経済のみならず科学技術、人的交流など様々な分野で進んだ。全世界的なサプライチェーンは、中国外しの動きが広がる。ハイテク分野では、米中それぞれが相手企業の活動を制限し、締め出す動きが加速する。新型コロナの流行は、心理的に経済的効率優先主義より製品供給の確保や安全性が重要という流れを強めた。

 新冷戦という言葉もすっかり定着した。今後の米中関係を見るうえで、対立の拡大や深まりはすでに所与の事実となっている。

◎ Tick Tockと紛争刻む時の音
◎ 戦争は「貿易」だけだった2年前
◎ 「冷戦」に違和感消えるコロナの夏

2020.9.20

 

 

2020年8月24日 (月)

◆民主党大会から読む「バイデン政権」の行方:方向性はなお不透明 2020.8.23

 米民主党が党大会を開催し、バイデン前副大統領を大統領候補に正式指名した。現在の選挙情勢では、バイデン氏が当選する可能性はかなりある。そんな背景もありバイデン氏の演説が注目されたが、「バイデン政権」の行方を読むには不十分という印象を受ける。

▼トランプ政権を批判


 演説は選挙戦対策の色彩が強かった。トランプ大統領個人の名前を出すことは控えつつ、トランプ政権の批判を前面に出した。具体的に、コロナ対策、欧州など同盟国との関係悪化、人種問題などを挙げた。また、トランプ政権が国民の分断を進めたとし、結束を呼び掛けた。

 外交面では同盟国との協調を力説した。一方で、米国の産業や雇用の保護を重視する姿勢も見せた。通商面の「内向き」の傾向は、トランプ現政権と変わらない印象を与えた。

▼4つの危機と語らなかったもの

 バイデン氏は「4つを危機」を力説した。コロナ、経済、人種差別、気候変動の4つで、この分野でトランプ政権の政策からの転換を強調した。

 しかし、言及しなかった問題も多い。世界が最も気にする対中関係は多くを語らなかった。格差や米国の産業競争力についても同様だ(この2つは複雑に関連する)。バイデン氏は富裕層への増税などに言及したものの、貧しい白人労働者の対策などへの言及はなし。格差や貧困は4つの危機に含めず、問題を正面から取り上げる事はないような印象を与えた。

 全体的に、バイデン氏自身あるいは民主党の政策を強く訴えるというより、トランプ氏の失策を突く面が目立った。

▼バイデン氏有利の選挙戦

 米大統領選は27日から共和党が党大会を開催し、トランプ氏を正式に大統領候補に指名する。その後、TV討論などを経て、11月3日の投票日を迎える。

 コロナ感染という特殊な状況下での選挙。従来の大統領選と異なり、大規模集会などを開きにくく、オンラインでのキャンペーンが中心になる。郵便による投票など、これまでにない要素も加わる。

 国際情勢など不測の事態、TV討論の結果などによっては、事態が急変することもあり得る。ただ、現在の情勢が続けばバイデン勝利の公算が大きいと言われる。

▼見えるものと見えてこないもの

 バイデン大統領となれば、米欧関係の軋みの是正、国際協調路線の復活、パリ協定への復帰などいくつかの変化は予想される。

 しかし、コロナ感染がどうなるかは全く不透明だし、世界の枠組みを左右する米中関係へのスタンスは見えない。格差、産業競争力、大手IT規制など重要課題の方向性も不透明だ。

 演説は選挙対策上、無難にまとめたとの評価も多い。しかし「バイデン政権」の行方や期待となると、まだあまり見えてこないというのが実感だ。

20200823

2020年8月 2日 (日)

◆GAFA公聴会が語る潮流と課題 2020.8.2

 

 米下院がGAFAの首脳を呼んで7月29日に公聴会を行った。米国では巨大IT企業が公正な競争を阻害しているとの見方が広がり、規制論が強まっている。議会は反トラスト法の調査を行っている。公聴会では応酬が繰り広げられた。

▼世界が注目

 公聴会はビデオで行われた。出席したのはアップルのクック、アマゾンのベゾス、グーグルのピチャイ、フェイスブックのザッカーバーグの各CEO。

 巨大IT企業の独占や規制は世界的な問題であるだけに、公聴会は米国に留まらず世界の注目を集めた。 

▼立場の違い

 議会側からは、反トラスト法を所管する超委員会のメンバーなどが出席。GAFAの戦略が他社の活動の制約になっているなどと指摘した。小委員会のシシリン委員長は、「いくつかは分割は必要」と踏み込んだ。

 GAFA首脳は、様々な指摘に対し違法行為はないと主張したが、歯切れの悪い場面もあった。一方、イノベーションが社会の役に立っていると強調した。

 議論は平行線をたどった印象を与えた。見解や立場の違いが浮かび上がった。

▼独禁法規制で変わる経済・社会

 米国では過去にも巨大企業が独禁法の規制を受け、社会や経済の仕組みが変わってきた経緯がある。20世紀初頭のスタンダード石油の分割、1980年代のATT分割、マイクロソフトに対する独禁法のけん制などが代表事例だ。

 現在のGAFAは検索、ネット通販、SNS、スマホなどの分野で圧倒的なシェアを誇り、社会的な影響力は絶大だ。ベンチャー企業の買収を重ね、ライバル企業の芽を摘んでいるとの指摘もある。

▼複雑な事情

 ただ、これまでと違うのは、ハイテク分野でも米中の競争が激化している点だ。米国が自国のハイテク企業をたたくようなことになれば、中国との覇権争いにも影響しかねない。事情は単純ではない。

 それでも、米国の大手IT企業はこれまでよりずっと、社会的責任を求められるようになった。大手ITを取り巻く環境が、育成から規制に変わっていることは間違いない。

 今回の公聴会は、巨大IT企業を巡る動きの一里塚。今後何が起きるか予想し難いが、公聴会が様々な論点や視点を投げかけたのは事実だ。

◎ 夢よりも順法語れと公聴会
◎ 改革者、巨大化、弊害 輪廻の輪
◎ 利害複雑、でも「独占は悪」の筋通る
◎ 技術語る歯切れの良さはどこへやら

2020.8.2

 

 

2020年6月30日 (火)

◆コロナ「感染確認者1000万人」の風景 2020.6.28

 新型コロナウイルスの感染確認者が1000万人を超えた。「確認者」の信頼性や意味には議論があるが、節目の数字としては重要だ。

▼大台到達

 新型コロナの感染が本格的に始まったのは1月。同月23日に中国の武漢が都市封鎖されたころから世界的な関心事になった。

 感染はその後、欧州から米国、さらに新興国に広がった。確認感染者数は、2月末に約10万人、3月末100万人、4月末300万人、5月末600万人、そして6月末に1000万人突破だ。

 実は確認の方法は国により異なるし、感染しても確認されない人も多い。実際の感染者は10倍という見方もある。そうだとすれば、現在の感染者は1億人だ。

▼感染拡大の風景~新興国・米国

 現在はブラジルなど新興国で感染拡大しているほか、米国では南部や西部の州を中心に感染の再拡大が始まった。

 ブラジルやインドなど、新興国の様子が映像で流れて来る。その人込みの風景をみると、感染拡大はもっともな感じがする。

 米国からはフロリダなどのビーチがにぎわい、人々が集会にマスクなしで集まる映像が流れる。マスクの共用は自由の侵害という人もいる。お国柄の違いと言えばそれまでだが、ここでも感染再拡大もうなずける。

 感染再拡大を受けて、テキサス州やフロリダ州では経済再開の中断に追い込まれ、逆に一部規制の再導入に踏み切った。

▼スペイン風邪との比較

 当初は新型コロナの感染をSARSや2009年の新型インフルエンザと対比して議論することもあったが、すでに感染規模はケタ違いになった。

 今では1910-20年代のスペイン風邪との比較が参考になる。スペイン風邪は感染者数億人、死者1700-5000万人と推定される。今のところはまだ背中を見ている状況だが、距離は接近している感じがする。

 ちなみにペストとの比較は規模的にも死亡率からみても、まだ遠い。今のところは話のための話で済む。

▼経済に打撃・基本システムは維持

 ワクチンや治療薬開発のニュースはあれこれ入ってくるが、メドは依然立っていない。新興国などでは第1波の拡大、欧米やアジアでは第2波、第3波の懸念が消えない。

 経済活動は打撃を受け、4半期ベースで見れば1-3月の中国のGDPが前年比マイナス6.8%、インドの4-6月GDPの推計は前年比約20%の落ち込みと推定される。ユーロ圏の1-3月は前4半期期比年率(前年比ではない)で10%以上落ち込んだ。

 ただ、少なくとも主要国では物流システムのマヒや食料不足など、経済崩壊をもたらす状況には陥っていない。

 コロナにより各国の政治、経済、社会の仕組みなどに様々な変化が起きている。テレワークやオンラインの活用が拡大し、政府の強権化の動きも目立つ。コロナの影響は始まったばかり、と認識すべきだろう。

◎ 月ごとに桁数繰り上げ感染者
◎ SARS並みからスペイン風邪級視野に入り
◎ 海水浴一時(いっとき)の歓声コロナの夏
◎ 「自由か死か」民主化ならば響くけど

2020.6.28

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