カテゴリー「アメリカ」の117件の記事

2020年9月20日 (日)

◆米中対立:戦線拡大・複合化ーTikTok、ファーウエイ、台湾 2020.9.20

 米中対立が激しく揺れた。動画投稿アプリのTikTokの米国での活動を巡り、両国は水面上・水面下で攻防を展開。米国はファーウエイへの禁輸措置を強化した。台湾を巡る駆け引きも動いた。米中対立は領域を広げ、複雑に絡みながら動き、両国関係は分断(デカップリング)が進んでいる。

▼トランプ政権が規制の動き、中国も対抗

 動画投稿サイトのTokTokを巡る情勢が目まぐるしく動いた。

 同サービスは、中国の北京字節跳道科技(バイトダンス)が2017年から提供している。全世界のユーザーは8億人、米国で1億人が利用する。

 トランプ米大統領はTikTok利用者の個人情報が中国政府に流れているとして、7月末にTikTOkの禁止を表明。その後、米企業による買収かサービス禁止を迫り、9月15日までと期限を定めた。こうした中、米マイクロソフト、オラクル、ウォルマートなどが交渉に乗り出していた。

 中国は米国の動きに反発、8月には対抗策として自国の輸出規制を強化した。輸出規制の対象にはAI関係の技術やサービスも含まれ、米社とTikTokの交渉に中国がストップをかける可能性も生じていた。

▼二転三転、今後の展望なお不透明

 トランプ政権の定めた期限が迫る中、マイクロソフトは13日までに交渉中断を表明。オラクルとTikTokは14日までに、買収ではなく提携案をまとめ、米政府に示した。オラクルがTikTokのグローバル事業に資本出資し、サービスのアルゴリズムはTikTokが保有する一方、顧客データの管理はオラクルが実施するという内容。ウィルマートもオラクルと共に出資に加わる。

 提携案を受けて米商務省は18日、TikTokの米国内での新規ダウンロードや更新を20日に禁止すると発表。一方、サービス自体は11月12日まで認めるとした。

 翌19日、トランプ大統領は提携を原則承認すると発表した。商務省は新規配信の禁止を20日から27日に延期した。

 米政府の対応は二転三転している。判断の背後には、もちろん11月野大統領選をにらんだ思惑もある。中国側の反応もはっきりしない点が残る。TikTok問題がどう推移するか、なお流動的だ。

 ちなみに、ピーターパンの人食いワニは、Tick Tockと表記される。

▼テンセントやファーウェーも

 当面の焦点になっているのはTikTokだけではない。米国は中国大手ITのテンセントが提供する微信(ウィ―チャット)の利用も禁止した。

 大手通信機器、スマホのファーウェイに対しては、2018年以降何度かの決定で取引規制を京っかしている。米国から技術を盗んだなどという理由。

 9月15日には、同社に対する禁輸措置を強化。米国の技術が絡んだ半導体の同車への輸出を事実上全面禁止した。同社への直接輸出だけでなく、外国企業による輸出も制限する内容だ(同車に米国技術が絡んだ半導体を輸出した企業は、米国の制裁対象とする)。

▼米中ハイテク摩擦

 米中のハイテク分野での摩擦が強まったのは、トランプ政権2年目の2018年から。米国は中国のハイテク企業が知的所有権や侵害や技術の窃盗などをしていると主張、締め付けを強化した。次世代通信ん5Gの通信機については、ファーウェイからの導入禁止を打ち出し、欧州や日本、豪州などにも同調を求めた。

 米国は今年8月、ファーウェイ以外に通信基地やスマホのZTE、監視カメラのハイクビジョンなどとの取引を制限する法律を施行した。TikTokやテンセントへの規制強化も、同じ戦略上にある。

▼台湾との関係強化

 TikTok問題が揺れた同じ週、台湾を巡っても注目すべき動きがあった。米国のクラック国務次官が台湾を訪問。7月末に死去した李登輝元総統の告別式に参加し、蔡英文総統と会談した。行政院長(首相)や経済部長(経済相)とも会談し、米台関係経済関係の強化などを話し合った。

 米国からは8月厚生長官が訪台したばかり。相次ぐ政府高官の訪問で、米台関係強化の動きを誇示する戦略だ。

 中国は反発し、米国への批判と警告を繰り返す。19日には戦闘機19機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入、圧力をかけた。

▼安全保障の対立

 米中関係はトランプ政権の発足以来、急速に対立を深めた。米国は2018年以降、中国からの輸入品に高率関税を導入。まず貿易戦争が勃発した。次いでハイテク分野で対立を深めた。

 加えてここに来て、安全保障分野でも対立が強まっている。6月末に香港に国家安全法が導入されると、米国は中国を厳しく批判。香港への制裁を強化するなど、警戒の姿勢をあらわにした。7月には南シナ海問題を巡り、中国側の主張は国際法的に見て違法であると初めて明言した。9月の東アジアサミット閣僚会議(ビデオ)では、ポンペオ国務長官が南シナ海問題で中国を激しく批判した。

 台湾との関係強化の動きも、この脈略にある。香港の1国2制度は国家安全法により空洞化し、香港が中国に飲み込まれつつある。台湾が同様の姿にならないように、米国は支援強化を見せつけている。

▼デカップリング

 米中関係の行方には、不透明要因も多い。11月の米大統領選で民主党のバイデン候補が当選すれば、対中政策はトランプ時代のやり方とは変わるだろう。それでも、対中警戒感の高まりは、野党民主党も含め米国に広く浸透している。

 1990-2000年代、米国は中国を国際社会に受け入れることが中国の民主化や世界の安定に繋がるという見方を取り、関与政策を推進した。この考え方はいまや完全に後退している。

 米中の分断ともいえる「デカップリング」が、経済のみならず科学技術、人的交流など様々な分野で進んだ。全世界的なサプライチェーンは、中国外しの動きが広がる。ハイテク分野では、米中それぞれが相手企業の活動を制限し、締め出す動きが加速する。新型コロナの流行は、心理的に経済的効率優先主義より製品供給の確保や安全性が重要という流れを強めた。

 新冷戦という言葉もすっかり定着した。今後の米中関係を見るうえで、対立の拡大や深まりはすでに所与の事実となっている。

◎ Tick Tockと紛争刻む時の音
◎ 戦争は「貿易」だけだった2年前
◎ 「冷戦」に違和感消えるコロナの夏

2020.9.20

 

 

2020年8月24日 (月)

◆民主党大会から読む「バイデン政権」の行方:方向性はなお不透明 2020.8.23

 米民主党が党大会を開催し、バイデン前副大統領を大統領候補に正式指名した。現在の選挙情勢では、バイデン氏が当選する可能性はかなりある。そんな背景もありバイデン氏の演説が注目されたが、「バイデン政権」の行方を読むには不十分という印象を受ける。

▼トランプ政権を批判


 演説は選挙戦対策の色彩が強かった。トランプ大統領個人の名前を出すことは控えつつ、トランプ政権の批判を前面に出した。具体的に、コロナ対策、欧州など同盟国との関係悪化、人種問題などを挙げた。また、トランプ政権が国民の分断を進めたとし、結束を呼び掛けた。

 外交面では同盟国との協調を力説した。一方で、米国の産業や雇用の保護を重視する姿勢も見せた。通商面の「内向き」の傾向は、トランプ現政権と変わらない印象を与えた。

▼4つの危機と語らなかったもの

 バイデン氏は「4つを危機」を力説した。コロナ、経済、人種差別、気候変動の4つで、この分野でトランプ政権の政策からの転換を強調した。

 しかし、言及しなかった問題も多い。世界が最も気にする対中関係は多くを語らなかった。格差や米国の産業競争力についても同様だ(この2つは複雑に関連する)。バイデン氏は富裕層への増税などに言及したものの、貧しい白人労働者の対策などへの言及はなし。格差や貧困は4つの危機に含めず、問題を正面から取り上げる事はないような印象を与えた。

 全体的に、バイデン氏自身あるいは民主党の政策を強く訴えるというより、トランプ氏の失策を突く面が目立った。

▼バイデン氏有利の選挙戦

 米大統領選は27日から共和党が党大会を開催し、トランプ氏を正式に大統領候補に指名する。その後、TV討論などを経て、11月3日の投票日を迎える。

 コロナ感染という特殊な状況下での選挙。従来の大統領選と異なり、大規模集会などを開きにくく、オンラインでのキャンペーンが中心になる。郵便による投票など、これまでにない要素も加わる。

 国際情勢など不測の事態、TV討論の結果などによっては、事態が急変することもあり得る。ただ、現在の情勢が続けばバイデン勝利の公算が大きいと言われる。

▼見えるものと見えてこないもの

 バイデン大統領となれば、米欧関係の軋みの是正、国際協調路線の復活、パリ協定への復帰などいくつかの変化は予想される。

 しかし、コロナ感染がどうなるかは全く不透明だし、世界の枠組みを左右する米中関係へのスタンスは見えない。格差、産業競争力、大手IT規制など重要課題の方向性も不透明だ。

 演説は選挙対策上、無難にまとめたとの評価も多い。しかし「バイデン政権」の行方や期待となると、まだあまり見えてこないというのが実感だ。

20200823

2020年8月 2日 (日)

◆GAFA公聴会が語る潮流と課題 2020.8.2

 

 米下院がGAFAの首脳を呼んで7月29日に公聴会を行った。米国では巨大IT企業が公正な競争を阻害しているとの見方が広がり、規制論が強まっている。議会は反トラスト法の調査を行っている。公聴会では応酬が繰り広げられた。

▼世界が注目

 公聴会はビデオで行われた。出席したのはアップルのクック、アマゾンのベゾス、グーグルのピチャイ、フェイスブックのザッカーバーグの各CEO。

 巨大IT企業の独占や規制は世界的な問題であるだけに、公聴会は米国に留まらず世界の注目を集めた。 

▼立場の違い

 議会側からは、反トラスト法を所管する超委員会のメンバーなどが出席。GAFAの戦略が他社の活動の制約になっているなどと指摘した。小委員会のシシリン委員長は、「いくつかは分割は必要」と踏み込んだ。

 GAFA首脳は、様々な指摘に対し違法行為はないと主張したが、歯切れの悪い場面もあった。一方、イノベーションが社会の役に立っていると強調した。

 議論は平行線をたどった印象を与えた。見解や立場の違いが浮かび上がった。

▼独禁法規制で変わる経済・社会

 米国では過去にも巨大企業が独禁法の規制を受け、社会や経済の仕組みが変わってきた経緯がある。20世紀初頭のスタンダード石油の分割、1980年代のATT分割、マイクロソフトに対する独禁法のけん制などが代表事例だ。

 現在のGAFAは検索、ネット通販、SNS、スマホなどの分野で圧倒的なシェアを誇り、社会的な影響力は絶大だ。ベンチャー企業の買収を重ね、ライバル企業の芽を摘んでいるとの指摘もある。

▼複雑な事情

 ただ、これまでと違うのは、ハイテク分野でも米中の競争が激化している点だ。米国が自国のハイテク企業をたたくようなことになれば、中国との覇権争いにも影響しかねない。事情は単純ではない。

 それでも、米国の大手IT企業はこれまでよりずっと、社会的責任を求められるようになった。大手ITを取り巻く環境が、育成から規制に変わっていることは間違いない。

 今回の公聴会は、巨大IT企業を巡る動きの一里塚。今後何が起きるか予想し難いが、公聴会が様々な論点や視点を投げかけたのは事実だ。

◎ 夢よりも順法語れと公聴会
◎ 改革者、巨大化、弊害 輪廻の輪
◎ 利害複雑、でも「独占は悪」の筋通る
◎ 技術語る歯切れの良さはどこへやら

2020.8.2

 

 

2020年6月30日 (火)

◆コロナ「感染確認者1000万人」の風景 2020.6.28

 新型コロナウイルスの感染確認者が1000万人を超えた。「確認者」の信頼性や意味には議論があるが、節目の数字としては重要だ。

▼大台到達

 新型コロナの感染が本格的に始まったのは1月。同月23日に中国の武漢が都市封鎖されたころから世界的な関心事になった。

 感染はその後、欧州から米国、さらに新興国に広がった。確認感染者数は、2月末に約10万人、3月末100万人、4月末300万人、5月末600万人、そして6月末に1000万人突破だ。

 実は確認の方法は国により異なるし、感染しても確認されない人も多い。実際の感染者は10倍という見方もある。そうだとすれば、現在の感染者は1億人だ。

▼感染拡大の風景~新興国・米国

 現在はブラジルなど新興国で感染拡大しているほか、米国では南部や西部の州を中心に感染の再拡大が始まった。

 ブラジルやインドなど、新興国の様子が映像で流れて来る。その人込みの風景をみると、感染拡大はもっともな感じがする。

 米国からはフロリダなどのビーチがにぎわい、人々が集会にマスクなしで集まる映像が流れる。マスクの共用は自由の侵害という人もいる。お国柄の違いと言えばそれまでだが、ここでも感染再拡大もうなずける。

 感染再拡大を受けて、テキサス州やフロリダ州では経済再開の中断に追い込まれ、逆に一部規制の再導入に踏み切った。

▼スペイン風邪との比較

 当初は新型コロナの感染をSARSや2009年の新型インフルエンザと対比して議論することもあったが、すでに感染規模はケタ違いになった。

 今では1910-20年代のスペイン風邪との比較が参考になる。スペイン風邪は感染者数億人、死者1700-5000万人と推定される。今のところはまだ背中を見ている状況だが、距離は接近している感じがする。

 ちなみにペストとの比較は規模的にも死亡率からみても、まだ遠い。今のところは話のための話で済む。

▼経済に打撃・基本システムは維持

 ワクチンや治療薬開発のニュースはあれこれ入ってくるが、メドは依然立っていない。新興国などでは第1波の拡大、欧米やアジアでは第2波、第3波の懸念が消えない。

 経済活動は打撃を受け、4半期ベースで見れば1-3月の中国のGDPが前年比マイナス6.8%、インドの4-6月GDPの推計は前年比約20%の落ち込みと推定される。ユーロ圏の1-3月は前4半期期比年率(前年比ではない)で10%以上落ち込んだ。

 ただ、少なくとも主要国では物流システムのマヒや食料不足など、経済崩壊をもたらす状況には陥っていない。

 コロナにより各国の政治、経済、社会の仕組みなどに様々な変化が起きている。テレワークやオンラインの活用が拡大し、政府の強権化の動きも目立つ。コロナの影響は始まったばかり、と認識すべきだろう。

◎ 月ごとに桁数繰り上げ感染者
◎ SARS並みからスペイン風邪級視野に入り
◎ 海水浴一時(いっとき)の歓声コロナの夏
◎ 「自由か死か」民主化ならば響くけど

2020.6.28

2020年26号 (6.22-28 通算1042号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2020年6月22-28日
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◆コロナ感染確認者1000万人、新興国で拡大、米再拡大(28日)☆
・世界の新型コロナウイルスの感染確認者が1000万人を超えた。
・米ジョンズ・ホプキンス大のまとめによる。死者は約50万人。
・感染確認者の数は、米国、ブラジル、ロシア、インドの順。
・ブラジルなど新興国で感染者が拡大している。
・米国も南部や西部の州で感染が再拡大。新規感染者は過去最多を更新した。
・テキサスやフロリダは26日、飲食店などの営業規制を再強化した。
・サウジアラビアは今年の大巡礼(ハッジ)に海外からの巡礼者受入れを中止する。
・コロナ発生から半年以上を経過。感染拡大は止まらない。

◆米国がIT技術者ビザ規制(22日)☆
・米国はIT技術者が利用するH1Bビザの新規発給を年末まで停止する。
・トランプ大統領が大統領令に署名した。米国民の雇用を確保するためとしている。
・大統領の決断は11月の大統領選をにらみ、米国人優先をアピールする狙い。
・一方で、ビザ規制は海外から優秀な人材の確保などが難しくなる。
・米国はH1Bビザにより世界中から優秀なIT技術者を集めてきた。
・アマゾンやグーグルなどIT大手が積極活用してきた。各社は今回の決定を批判する。
・H1Bビザの発給は2019年で18.8万だった。

◆欧米で相次ぎ像撤去の決定 ☆
・欧米の人種差別を連想させる像の撤去の決定が相次ぐ。
・NY市のデブラシオ市長は22日、セオドア・ルーズベルト元大統領の像撤去に同意した。
・米自然史博物館の入口に立つもので、博物館が所有者の市に撤去を求めた。
・像は馬に乗る大統領に黒人と先住民の男性が従うデザイン。
・英オックスフォード大のオリオル・カレッジはセシル・ローズの像撤去を決めた。
・19世紀に英植民地支配拡大などに活躍した政治家。
・先月末下旬以降、反人種差別の抗議活動が米国から欧州など世界に広がった。
・こうした中で、人種差別政策にかかわった人物の像撤去を求める声が強まった。

◆アイルランドに新政権、南北統一のシン・フェイン党は不参加(27日)
・中道右派・共和党のマーティン党首を新首相とする連立政権が発足した。
・同党と中道右派の統一アイルランド党、緑の政党の連立。
・注目された議会第2党のシン・フェイン党の政権入りは実現しなかった。
・シン・フェインは南北アイルランド統一の国民投票実施を訴えていた。
・2月の総選挙では過半数を取る政党がなく、政権空白が続いていた。

◆独ワイヤーカードが破産申告(25日)
・独フィンテック大手のワイヤーカードが破産手続き申請を発表した。
・同社は1999年設立。電子決済のシステムやアプリ開発で成長。
・アップルペイなどの開発にも関わり、欧州を代表するFintech企業と呼ばれた。
・2019年に英FT紙が不正会計疑惑を報道。6月に入りCEOの辞任、逮捕と進んだ。
・先端分野の注目企業の事件だけに、世界の関心も大きい。

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 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
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 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │  (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない
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◎寸評:of the Week
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 【コロナ感染者1000万人】 新型コロナウイルスの感染確認者が1000万人を超えた。「確認者」の信頼性や意味には議論があるが、節目の数字としては重要だ。(→国際ニュースを切る)

 

◎今週の注目(2020年6月29日-7月5日 &当面の注目)
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・引き続き新型コロナの動きに関心。
・ロシア憲法改正の全国投票が7月1日に行われる。プーチン大統領の任期延長に道を開く内容。政権の信任投票の色彩も帯びる。
・ポーランドの大統領選6月28日に行われた。
・フランス地方選も28日に実施された。
・中国全人代が国家安全法の制定作業を進める。
・シンガポールの総選挙が7月10日に行われる。

 

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2020年6月21日 (日)

◆トランプ政権:逆風と逆襲? 20200621

 米トランプ政権に逆風が強まっている。コロナ感染拡大で経済が停滞しているところに、反差別抗議活動拡大への対応に批判が拡大した。大統領選での再選に黄信号が点滅し、トランプ氏は支持固めになりふり構わぬ動きに出ているように見える。

▼コロナ、差別抗議デモの打撃

 逆風はここ数週間で一層強まった感じだ。コロナの感染拡大で米失業率は4月に14.7%に拡大。その後も高止まりする。

 米国各州は5月以降、経済活動の再開を段階的に進めている。しかしその結果、西部や南部の一部州では感染者が再び拡大している。

 2020年の米国経済は、10%近いマイナスになりそう。これだけの不況下で、大統領選に勝利した現職はほとんどいない。

 5月下旬にミネアポリスで白人警察官による黒人男性の死亡事件が発生。これをきっかけに全米に人種差別に抗議する運動が広まった。トランプ氏は差別是正より治安維持を重視する発言をし、融和より分断をあおるかのような対応を示した。

 これに対し、野党民主党だけでなく、与党共和党からも批判が噴出した。マティス前国防長官や、共和党の重鎮のパウエル元国務長官らがあからさまに大統領批判をした。

▼最高裁判決、暴露本

 最高裁の判断も逆風となった。最高裁は前週、職場でのLGTB差別や、DACA(幼少時に両親と共に米国にきた不法滞在者に対する強制送還猶予)でリベラル寄りの判決を下した。最高裁判事の構成は保守派5人、リベラル派4人で保守派有利のはず。しかし、今回のケースでは保守派の長官らがリベラル的なな判断を下した。トランプ氏にとっては打撃だ。

 ボルトン元補佐官は暴露本を準備。出版前から話題になっている。大統領選の世論調査では、野党民主党のバイデン氏がリードを広げている。

▼感染リスク下で選挙集会

 そんな逆境を打開する狙いもあるのか、トランプ氏は20日にオクラホマ州で大統領選の大規模集会を開いた。約3か月ぶりだ。コロナの感染拡大防止から集会中止を求める声も多かったが、大統領は強行した。

 会場は約2万人が入場できる競技場。実際の入場者はそれよりずっと少なかったが、かなりの人数が集まった。入口ではマスクが配られたが、着用する人はわずかだった。もしここから感染が拡大したら――選挙戦でも打撃になるはずだが、そんなリスクを抱えても開催したと見るべきだろう。

▼「強硬」打ち出す政策

 強硬な姿勢を前面に打ち出す新政策も目につく。

 トランプ氏は先月以来、SNSのツイッターやFBとの対立をあらわにした。ツイッターがトランプ氏の情報発信に、「事実関係注意」などの注記をしたのがきっかけだ。大統領は5月末、SNS規制強化の大統領令に署名した。

 さらに司法省は17日、SNSなどネット起業への法規制を強化する改正案を発表した。企業に利用者の投稿内容の管理責任を一段と求める。1996年に成立した通信品位法230条の修正を求めるものだ。規制が強化されれば、大手IT企業の経営への影響は甚大だ。

 トランプ大統領は15日には、駐ドイツの米軍を約3.5万人→2.5万人に3割減らす計画を表明した。欧州側の負担が少ないというのが理由。NATO内の米国と欧州の亀裂は一層深まりそうだ。

 こうした決断は、政策面で強硬な姿勢を打ち出し、選挙戦での支持者つなぎ止めに役立てようという狙いが透けて見える。

▼米国のキーワード

 米国は4年ごとに、大統領選を中心に動く年を迎える。今年の場合、ここにコロナ、経済などのキーワードが加わる。トランプ氏の「想外の政策」も別のキーワードになっている。

 11月までには、さらに予想外のキーワードが加わってもおかしくない。今年の大統領選と米国の動きは、従来以上に見通しにくい。

◎ 読み難しコロナ・トランプ・選挙戦
◎ 逆風下ばん回策に潜む危うさよ

2020.6.21

2020年6月 8日 (月)

◆米抗議デモ拡大の問いかけ 2020.6.7

 白人警官による黒人男性暴行致死をきっかけにした抗議デモが全米に広がった。デモは全米50州で行われ、6日まで12日間続く。一部過激派による暴徒化も見られ、40以上の都市で夜間外出禁止令が出た。1960年代の公民権運動や反ベトナム戦争の時期以来の抗議の広がりという指摘もある。

▼人種差別、格差が背景

 背景にあるのは、なお消えぬ黒人への人種差別や、格差拡大などに対する不満だろう。米国では1960年代の公民権運動により黒人への形式的な差別はなくなり、一部黒人や有色人種の社会奈進出も進んであ。しかし全体的に見れば、いまだ経済や教育などの格差は小さくない。目に見えにくい人種差別も残る。

 新型コロナの流行は、そうした差別や格差を改めてあらわにした。感染者や死亡者は、白人より黒人に多い。これは、黒人に仕事を休めない人や、労働環境の悪い職場で働く人が多いため、などと説明されている。くすぶっている不満が爆発する条件は整っていた。

▼大統領発言が助長

 トランプ米大統領は黒人差別や格差是正よりも治安の維持を優先。ツイッターやファイスブックなどのSNS、会見ではことさら一部過激な抗議活動を批判し、治安当局による鎮圧を求めた。表現の中には暴力を礼賛すると受け止められかねないものもあった(ツイッターは皇室発言に注記を付けた)。

 これが、参加者の怒りに火をつけ、抗議活動の拡大につながったという見方も少なくない。

 大統領の発言は社会の融合より、分裂をあおっているという批判も強い。

 重要なのは野党民主党の支持者だけでなく、与党共和党の支持者からも大統領批判が少なくないこと。現職エスパー国防長官は、連邦軍の出動の可能性を巡り大統領と異なる見解を表明した。マティス前国防長官は、トランプ氏の対応を公然と批判した。

▼社会の分断はさらに拡大

 大統領は、11月の大統領選をにらんで支持基盤を固めることを優先し、不支持者は鼻から無視し、全国民の融和などは重視していないとの見方も強い。

 問題は、大統領のこうした姿勢が社会の分断を一層深めていること。米国政治の分断は1980年頃から指摘され続けたが、それでも大統領は「融和の重視」を訴えた。トランプ時代になり、それが消えた感がある。

 今回の出来事は、米国社会に分断だけでなく甚大な混乱をもたらした。政治・社会の混乱はコロナ対策など優先すべき課題に滞りが出かねない。何より、多くの人が集まるデモは、コロナの感染拡大の場になりかねない。

 議論よりも力による制圧が先に立ち、米国の民主主義そのものが弱体化しかねない。こんな不安も拡大する。

▼コロナ時代の政治の現実

 1960年代の公民権運動時代、キング牧師はワシントンで有名な「I have a dream」演説をした。その運動は公民権法などに結びついた。ベトナム戦争への抗議活動は、終戦(実質米国の配線)に結びついたが、米国はその後、社会の安定を取り戻すのに10年以上の年月を要した。社会的混乱のツケは、軽いものではない。

 新型コロナの流行で世界は危機にある時。そんな時に世界最大の権力を持つ政治家が、上手く収めるべき混乱をむしろ拡大している。米国はそうした人物を4年前に大統領に選び、いまだに40%以上の支持率がある。

 喜劇のような感じすらしてくるが、コロナ時代の世界の現実である。米国政治が世界の安定要因でなく、不安定要因として働いているという認識が必要だろう。

◎ 「融和」という言葉が消えてるこの4年
◎ コロナから目をそらすかのよう強硬策
◎ 超大国 分断がカオスに変わった夜 

2020.6.7

2020年5月31日 (日)

◆米中対立・新ステージに 2020.5.31

 中国が香港国家安全法制定を決めたことに対し、米国は対中国・香港制裁措置を発表した。新型コロナの感染拡大を巡っても、対立がエスカレートする。米中対立は、新ステージに入った。

▼香港国家安全法

 中国の全人代は28日、「香港国家安全法」の制定を決議して閉幕した。香港の反体制活動を禁じる内容で、中国が直接取り締まるようにする点がこれまでと異なる。

 香港は1997年の中国への返還以来、「1国2制度」の下に運営されてきた。香港の法律は、基本的に中国の法律と別のものだった。その下に、企業の自由な活動や言論の自由(程度については色々な議論がある)が維持されてきた。

 今回の決定について、香港の民主派や欧米各国は、1国2制度を骨抜きにすると懸念する。

▼米国が制裁措置

 米国は中国の決定を批判。トランプ大統領は29日、一連の制裁措置を発表した。内容は、(1)米国が香港に対して認めてきた関税やビザ発給の優遇措置を廃止、(2)中国や香港の当局者への制裁、(2)中国からの大学院生の一部の入国停止、などである。

 同時にトランプ大統領は、かねて中国寄りと批判してきたWHO(世界保健機関)からの脱退を表明した。

 コロナ問題で米国は、中国が初期の段階で情報公開を十分に行ってこなかったなどと批判。さらには、新型コロナウイルスが武漢の中国の研究所から流出したなどの批判もしている。これに対しては中国が根拠のない批判などと反論する。

▼ハイテク、企業上場、人権でも

 ここに来て米国が対中批判を強めているのは、香港問題だけではない。ハイテクや金融、人権など様々な分野で措置を打ち出している。

 ハイテクでは5月、通信大手のファーウェイに対する禁輸措置を一段と強化した。米国製の半導体装置を使った製品は、たとえ外国製でも輸出を認めないようにする内容。これにより、台湾のTSMCはファーウェーからの新規受注を停止した。

 ナスダックは新規上場企業のルール厳格化を決めた。中国企業の新規上場のハードルを高くする。米上院は、米国に上場する外国企業の透明性強化を求める法案を可決した。

 米上下院は中国がウイグル人の人権侵害批判するウイグル人権法を採決した。

▼コロナと大統領選

 2017年の米トランプ政権の発足以来、米中関係は緊張が高まった。トランプ氏は「米国第1」を掲げ、自国産業保護を優先させる姿勢を鮮明にし、2018年以降中国からの輸入品に高率の関税を課た。米中貿易戦争が勃発した。

 その後中国のハイテク産業が米国の技術を不当に盗んだり、知財権を侵害しているなどとして制裁などの措置を導入した。

 米中の貿易・ハイテク摩擦は、今年1月に第1段階の合意を締結し、一時休戦したかに見えた。

 そこにコロナの感染拡大で、状況が変わった。米政権はコロナを巡り中国への不信を強めた。トランプ大統領が秋の大統領選をにらみ、対中強硬姿勢を強めるのが得策と判断したとの見方も強い。

▼中国は勢力拡大の動き

 中国側は、コロナでは「マスク外交」とも呼ばれる感染国支援などで影響力を拡大。一方で領土問題を抱える南シナ海で実効支配を強化するなど、勢力の拡大に余念がない。香港国家安全法の制定決定も、コロナ問題で国際社会の香港への関心が弱まった機を利用したとの見方がある。

▼覇権を巡る対立

 米中の対立は、背景には覇権を巡る争いがあるとの分析も多い。中国経済の規模はすでに米国の3分の2に達し、購買力平価で比較すれば米国より大きい。数年前から一帯一路などの世界戦略を打ち出し、21世紀半ばには米国と並ぶ世界の強国になるとの目標も打ち出した。

 2000年代までの米国は、中国が経済発展を実現すれば民主化するとの見方にも届いていた。今や、そうした観測は後退している。共産党1党独裁の異形の国家が、米国の覇権国の地位を脅かそうとしているとの警戒は、トランプ政権のみならず野党民主党でも強まっている。

◆デカップリング

 トランプ政権が打ち出した自国優先、対中警戒の政策は、米国と中国の経済を分断するdecoupling(デカップリング)につながるとの見方が、以前からあった。振り返れば、東西冷戦時代の世界は2つに分断していた。コロナの流行拡大は、そうした傾向に拍車をかける可能性がある。

 コロナ感染が生み出す新常態は、経済システム、生活、政治の枠組みなど様々な分野に及ぶ。新常態への移行の多くは、スムースに行われるわけではないだろう。様々な軋轢や混乱があると考えるのが自然だ。

 その中でも、米中関係の変化は規模の大きいものの一つだろうし、覇権を巡る争いとなれば地球規模の地殻変動になるだろう。

 

◎ 新常態 やわらか表現中身は混乱
◎ そういえば 世界は割れてた世代前
◎ 疫病下の戦線拡大、またですか

 

2020年3月 1日 (日)

◆アフガン和平合意の見方 2020.3.1

 米国とアフガニスタンの武装勢力タリバンが和平合意に調印した。2001年のアフガン戦争勃発以来初めての合意で、歴史的な節目ではある。

 ただし、合意で平和や同国の安定が見えて来るかは定かでない。合意の背景に、大統領選での得点を狙う米トランプ政権の思惑もちらつく。評価は簡単ではない。

▼半世紀に渡る混乱

 アフガン混乱の1つのきっかけは1970年代末のソ連による侵攻。ソ連を後ろ盾とする政府への抵抗が広がった。1989年にソ連が撤退した後も、武装集団が各地に残った。

 各派が対立する中から1990年代にタリバン政権が成立。北部など一部を除き国土を支配した。このタリバン政権時代に、ウサマ・ビンラディンを指導者とするアルカイダが拠点を構え、全世界に向けテロを展開した。

 2001年の米同時テロの後、米国は国際社会の同意を取り付けてタリバン政権を攻撃(アフガン戦争)。同政権を崩壊させた。

▼アフガン戦争後の動きと国際支援

 アフガン戦争の後に、2004年に初の大統領選が実施され、カルザイ政権が成立した時期には国の再建や治安改善への期待が高まった。

 国際社会はアフガンの安定と復興のために支援を強化。国連治安支援部隊(ISAF)は一時最大14万人の治安維持部隊を駐留させた。ISAFから2003年に指揮権を受け継いだNATO軍や米軍が駐在した。経済面の支援も拡大した。

▼治安安定せず

 しかしその後も国家の再建が進んだとは言い難い。混乱は継続し、治安も安定しなかった。

 タリバンは地方などから徐々に勢力を回復。中央政権と地方勢力の対立も顕在化した。中央政府の支配が及ぶのは首都カブールやその周辺に限られる。

 同国の治安権限は2014年末にNATO軍からアフガン政府軍に移された。しかし政府軍だけで治安を維持できるような状況ではない。米軍は現在1万2000人規模の駐在を続け、NATOはアフガン政府軍支援の名目で駐留を継続する。

 首都カブールを含む各地ではテロが絶えない。昨年12月には同国東部で緑化事業などに取り組んでいた中村医師が殺害されたが、これも治安の状況を物語る。

▼米軍は撤退模索

 米国は何度も駐留軍の規模縮小や撤退を目指したが、実現しないばかりか、一時的にはむしろ増派を迫られた。

 トランプ大統領は選挙戦でアフガンからの撤退を公約に掲げた。しかしこれまで目立った成果はなかった。今回の合意発表は、そうした状況下で行われた。

▼見えない詳細

 合意によると、米国は今後段階的に撤退し、最終的に2021年春に完全撤退する。タリバンはアフガン政府の対話を促進し、国際テロ組織に拠点を提供しないことなどが盛り込まれる。

 しかし詳細は不明なところが多い。約束を実現できるかどうかも不透明だ。

 特に気にかかるのが治安の維持。タリバンは未だにテロを実施している。加えて、アフガンにはアルカイダなど約20のテロ組織が活動を続けるといわれる。合意の紙一枚で治安が安定すると考えたら楽観的過ぎる。

▼戦略不在のリスク

 タリバンと米国(およびアフガン政府)の対話は、数年前から断続的に続けられてきた。トランプ政権下でも2019年秋など、合意間近と言われた時期もある。今回の合意には様々な狙いがあるのだろうが、米トランプ政権が大統領選をにらみ、とにかくまとめたという印象も消えない。

 昨年明らかになった米政府の内部報告書(いわゆるアフガン・ペーパー)は、米政府高官の証言として、米国がアフガンの事情を何も理解しないまま場当たり的に対応してきた実態を物語っている。その後、米国のアフガン理解が深まったとは推測しがたい。理解不在、戦略不在の政策決定がまた行われる危険性はないのか?気になるところである。

 アフガン情勢は不明な点が多く、入手できる情報も限られる。思い込みは禁物である。言葉に踊らされることなく、一つ一つの動きをきちんと見極めていく必要がある。

 

◎ 半世紀の戦乱の鬼子 乱立す
◎ 銃弾とテロとの生活3世代
◎ 「和平」の報 マユツバに聞く土漠の民
◎ 大国の身勝手十分に慣れたけど

 

2020.3.1

2020年2月10日 (月)

◆弾劾裁判・一般教書・ブティジェッジ旋風 2020.2.9

 
 米上院は5日、トランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾裁判で無罪の評決を下した。前日4日の一般教書演説は、ペロシ下院議長が演説後に原稿を破り捨て、米国の分断をあらわにした。3日の民主党のアイオワ州党員集会ではブティジェッジ旋風が起きた。

▼弾劾無罪、党派対立が前面

 米上院は弾劾裁判で無罪の評決を下した。与党共和党は、野党民主党が求めていたボルトン元大統領補佐官の証言などを否決。スピード裁判で弾劾問題を終結させた。権力乱用では有罪48対無罪52(共和党からロムニー上院議員が造反)、議会妨害では有罪47対無罪53(共和党の造反はなし)だった。

 ウクライナ疑惑は昨年9月以降、民主党多数の下院で審議を進めた。トランプ氏周辺に怪しい点は幾つもあるが、決定的証拠は見つからない。事態はそんな状況で推移した。結局、下院は昨年末に大統領の弾劾を追訴した。この時も、「民主党=弾劾、共和党=反対」で真っ二つに割れた。

 上院に場を移した弾劾裁判では、証人の招致や議論の時期などを巡り互いに言い分を譲らなかった。議論がかみ合うこともなく、結局共和党が数で押し切った格好だ。

 元々共和党多数の上院で有罪となる可能性も少なかった。それでも民主党が弾劾に踏み切ったのは、政治的キャンペーンの狙いも濃い。党派対立が前面に出る展開だった。

▼米政治の「健全性」:ウォーターゲート事件の時代と違い

 米国史上で3回の大統領弾劾裁判のうち、1回目は1868年のアンドリュー・ジョンソン大統領。背後には南北戦争絡みの党派対立があった。

 ニクソン大統領のウィーターゲート事件では与党共和党から造反が続出。弾劾手続きが進む前に、1974年に大統領を辞任した。この時は、民主主義や権力チェックの健全性が印象付けられた。

 1998年のクリントン大統領が不倫疑惑による弾劾裁判は、トホホという感じか。

 それに対し今回のトランプ大統領の弾劾は、トランプ氏周辺にうさん臭さが消えなかった。これに加え、党派対立や米社会の分断が印象付けられた。弾劾劇から、米政治の健全な機能を嗅ぎ取ることは困難だ。

▼一般教書:自画自賛と米国の分断

 上院の弾劾裁判評決の前日の4日、米議会でトランプ大統領が一般教書演説を行った。一般教書は通常、今後1年の米国の外交や内政政策の方針を示す拡張高いもの。しかし今年の演説は、雇用創出や米中貿易戦争での断固たる姿勢、移民規制強化など、政策を自画自賛する内容がばかリが目立った。

 演説内容より印象的だったのが、演説終了後にペロシ下院議長(民主)が原稿を破り捨てたシーン。党派対立の場面としては絵になった。

▼アイオワ発の新旋風

 2月3日にはアイオワ州で民主党の党員集会が開催。大統領候補選びの予備選が始まった。
 話題になったのが、ブティジェッジ旋風。開票の混乱で最終確定はしていないものの、暫定的に首位と発表された。

 同氏は前インディアナ州サウスベンド市長で38歳。同性愛者を公表している。政治的なスタンスは中道に属する。全国的にはこれまで知名度は低かったが、一気に存在感を高めた。

 民主党の有力候補(バイデン前副大統領、サンダース上院議員、ブルームバーグ元NY市長)が70歳代後半の高齢(ウォーレン上院議員も70歳と若くない)なだけに、ブティジェッジ氏の若さは際立つ。高学歴のエリートで弁舌さわやか、しかも社会のマイノリティー(性的)に属するところから、オバマ大統領の登場時(2008年)を彷彿させる、との声もある。

 同氏はアイオワに資金などを集中投入してきただけに、今後勢いが続くかとの懸念もある。しかし、高齢世代の有力候補者ばかりの選挙戦が一転し、わくわく感のする候補が出てきた感じはある。

 2016年の民主党予備選では、若い挑戦者が不在で、ヒラリー・クリントン元国務長官とサンダース上院議員が争った。若い、「分断」以外で注目される有力候補が表れたのは面白い。

◎ 監視より中傷が目につく弾劾劇
◎ 「分断」が状況読み解く米政治
◎ アイオワ発、若さの旋風12年ぶり

2020.2.9

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