カテゴリー「経済」の76件の記事

2020年11月29日 (日)

◆NY株3万ドル超が映す風景ーーカネ余り、IT、コロナ 2020.11.29

 米国はじめ世界の株式市場で価格上昇が進んだ。NYダウは24日、3万ドルを突破。2017年1月に2万ドルを超えてから4年弱で大台超えした。1万ドル→2万ドルに17年かかったのと比べると、極めて急ピッチだ。

▼コロナで再び金融緩和

 株高の背景にあるのがカネ余りである。トランプ政権は景気優先の経済政策を進め、株価上昇を後押しした。FRBは2018年までは金融正常化(リーマン・ショック後の緩和→引き締め)を模索したが、2019年から緩和に転じた。米中貿易摩擦激化などに伴う経済失速への対応を優先したためだ。

 そこに加わったのがコロナ。2020年に入ると先進各国はコロナ対策のため、金融緩和や財政出動を加速した。大量の資金が、株式や不動産などに流入している。

▼IT企業への資金集中
 
 株式市場では銘柄の選定が進んだ。特に上昇が顕著だったのが大手IT企業。GAFAにマイクロソフトを加えた大手5社の時価総額は、4年間で3倍に拡大(市場全体は1.5倍)し、時価総額の合計は7.1兆ドルと日本株全体の時価総額を上回る。

 コロナ流行でテレワークなどが普及。経済全体が縮小する中でITは拡大している。米国ビッグ5の他に、中国のアリババ、テンセントなどの株価も上昇した。

 IT以外でも、新技術などを背景に急成長する企業に資金が集まる。電気自動車のテスラの時価総額は5000億ドルを超え、自動車業界2位のトヨタの2.5倍以上だ。

▼実体経済との乖離

 株高にはリスクも潜む。世界の実体経済はコロナの影響で大幅なマイナス成長に陥っている。そんな中、株価だけは急上昇し、乖離は嫌でも目に付く。バブルの懸念は消えない。

 過去を振り返っても、世界経済は約10年ごとに危機を経験している。リスクは膨らんでいる。

 市場の危うさを感じながらも、コロナ対応で益々金融緩和や財政支出を進めざるを得ない。世界経済はそんな状況下にある。

▼時価総額ランキング

 ちなみに、2020年11月29日現在の世界の主要企業の時価総額は以下の通りだ(出所https://companiesmarketcap.com/、国名なしは米国企業)

1.アラムコ(サウジ)21(単位1000億ドル)
2.アップル 19.8
3.マイクロソフト 16
4.アマゾン 16
5.アルファベット(グーグル) 12
6.フェイスブック 7.9
7.アリババ 7.4
8. テンセント 7.1
9.テスラ 5.5
10.バークシャー 5.4
11.ビザ 4.6
12.TSMC(台湾) 4.4
13.ウォルマート 4.2
14.サムスン(韓国) 4.0
15.ジョンソン&ジョンソン 3.7
16.JPモルガン・チェース 3.6
17.P&G 3.4
18.マスターカード 3.3
19.エヌビディア 3.2
20. 貴州茅台酒(中国) 3.2
21.ネスレ(スイス) 3.2

◎ 疫病下、未曽有の不況に株ブーム
◎ バブルだろ?怖くて誰も言わないが
◎ まず補助金、ツケは後から考えよう
◎ 持続性!掛け声上げつつお金刷る

2020.12.29

 

2020年10月25日 (日)

◆グーグル提訴の衝撃 2020.10.25

 米司法省がグーグルを反トラスト法(独禁法)で提訴した。IT大手を巡る大型訴訟は約20年ぶり。大手IT企業に対する規制強化の流れを象徴する動きであり、世界のIT業界の地図を変える可能性がある。

▼競争阻害の疑い

 司法省は20日、首都ワシントンの連邦地裁に、テキサス州など11の司法長官と共に提訴した。グーグルがネットの検索・広告市場で競争を妨げる排他的な行為をし、独占を維持しようとしたと主張した。

 具体的には、(1)スマホメーカーに対し、競合の検索サービスの初期搭載を禁じる独占契約を結んだ、(2)アップルに毎年数十億ドル(最大120憶ドル)を払い、自社の検索サービスを標準搭載させたーーなどが反競争的な行為に当たるとしている。

 グーグルはスマホ利用者は他社の検索サービスも利用できるなどとし、司法省の主張に反論する。

▼GAFAの時代

 今回の訴訟は、大手IT企業に対する批判が強まっている中で起きた。

 IT業界ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やマイクロソフトなど大手企業への集中が進む。グーグルの検索やユーチューブ、フェイスブックのSNSなどは世界で10億人単位の利用者を抱える。大手IT企業は膨大な顧客のデータを抱え、それをベースに新たなサービスやビジネスを展開している。

 データの蓄積が少ない中小の企業や新興企業は大手に対抗しにくく、GAFAなどへの集中がさらに進むという流れが加速した。

 大手IT企業は時価総額ランキングで世界の上位を独占し、2020年にコロナ感染が拡大すると世界の資金は益々IT業界に流れ込むようになった。

▼大手IT批判~EUから世界へ

 2018年にファイスブックからの大量の個人情報流出するなど、大手による情報独占の弊害も目立つようになった。将来競合になり得る新興企業が出て来ると、大手IT企業が巨額の資金を活用して買収し、競争の芽を摘んでいるという指摘も多い。

 こうした流れの中で大手IT企業に対する批判が拡大し、規制論も強まっていった。

 いち早く動いたのがEU。欧州委員会は2018年グーグルに対し、EU競争法違反で43億ユーロの制裁を科した。グーグルがスマホのOSアンドロイド端末に自社の検索ソフトを抱き合わせで搭載するように要求してるとの判断だ。欧州委員会はこれ以外にも、EU競争法を根拠にした巨大IT企業規制を強めた。

 また、2018年には一般データ保護規則(GDPR)を施行。個人情報の保護などを強化した。EUと取引をする世界中の企業がGDPRへの対応迫られた。

▼米国でも規制強化へ

 米国は従来、大手IT規制より育成を重視してきた。しかし2018年頃から徐々に流れが変わった。

 2019年7月には、司法省が巨大IT企業が独禁法の調査に着手。1年の調査を経て、今回のグーグル提訴につながった。

 2020年7月には、議会下院の司法委員会がGAFAのトップの出席を求めて公聴会を実施。10月には下院が報告書をまとめ、大手IT企業規制の必要性を強調した(ただし、報告書は民主党中心に纏められ、共和党議員は別の報告書を発表した。両者は規制強化で一致するものの、その内容については意見が異なる)。

▼20年ぶりの大型訴訟

 今回のグーグル提訴は、米産業界では約20年ぶりの大型訴訟となる。歴史的に重要な訴訟を振り返れば、以下の通りだ。

・1906年:スタンダード石油(1911年に34の会社に分割)
・1969年:IBM(司法省は分割を要求、1982年に和解)
・1974年:ATT(1984年に長距離会社と7つの地域会社などに分割)
・1998年:マイクロソフト(2004年に和解、技術情報開示など)
・2020年:グーグル

 1998年のマイクロソフト提訴では、企業分割の可能性なども指摘されたが、結局6年後にマイクロソフトが技術情報の開示を拡大することなどで和解した。

 しかし、訴訟の期間中マイクロソフトは競争力の強さを前面に出すような行動を取りにくく、グーグルはじめ他社の台頭を招くようになった。PCやソフトの分野でマイクロソフトが突出する状況が変わり、競合する新興企業が育った。その意味で、訴訟の影響は大きかった。

▼グーグル:技術革新の象徴

 過去約20年間、グーグルはIT産業の発展やダイナミズムを象徴する企業だった。革新的な技術力を武器に、検索からスマホのOSであるアンドロイド、TouTubeなどで次々新市場を育てた。自動車の自動運転など次世代の技術でも世界をリードする。

 「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです」(Our mission is to organize the world’s information and make it universally accessible and useful)という分かりやすいメッセージを始め、様々なIT文化を発信。IT革命を先導する存在だった。

 そのグーグルが巨大なり、競争の阻害を糾弾されるようになった。時代の変化を物語る。

▼訴訟の行方

 訴訟の行方がどうなるかは分からない。司法省とグーグルの主張は真っ向から対立しており、専門家の見方もまちまちだ。ただ、決着までに数年はかかるという見方が多い。また、和解や罰金による決着の可能性も指摘される。

 ただ結果がどうなるにせよ、訴訟の期間中グーグルが活動に制約を受ける可能性が大きい。競合する新興企業の買収がしにくくなるなど、M&A戦略に影響が出て来るという見方がある。

▼規制はさらに拡大の可能性

 規制がグーグルだけに留まるとは限らない。ファイスブックなど他のIT大手も、ユーザー情報の囲い込みや競合企業の買収などをテコに成長している。同様の提訴があるとの予測もある。

 SNSに対する規制論も浮上してきた。プラットフォーマーと呼ばれるSNS運営会社(巨大IT企業も含まれる)は、利用者が投稿した内容に法的責任を負わないでいい、という条件の下で急成長してきた(米通信品位法230条)。投稿に虚偽の情報や差別用語が含まれていても、直接責任を負わなくていい内容で、メディアなどが掲載責任を負うのと対照的だ。

 しかし、巨大プラットフォーマーの社会的な影響力とが増加するのに伴い、世間の目は変わって来た。投稿内容への責任を問われるようになれば、今までのビジネスモデルは通用しない。

▼変わる業界地図

 IT業界はただでさえ急速に変化している。新型コロナの流行以降、Zoomなど新興企業が急成長している。通信やスマホは5G時代に入り、これまでにない新サービスが登場してくるだろう。中国は国が情報管理を強める一方、アリババなど巨大企業が世界的な影響を強めている。

 ATT分割やマイクロソフト訴訟の時代に比べ、IT業界の変化は遥かに速度を増し、大胆になっている。その変化の要因になるのは、技術、国家覇権、そして規制体系などだ。

 司法省によるグーグル提訴は、巨大IT企業規制という時代の潮流の象徴的事例であるし、米産業史という脈略でも特記される出来事となる。

◎ ベンチャーの成功、権威化 世のならい
◎ 産業史、流れの節目に規則の目
◎ 技術革新(イノベーション)時々規制の資本主義

2020.10.25

 

 

 

 

 

 

 

2020年3月15日 (日)

◆コロナ:パンデミック宣言と広がる衝撃波 2020.3.15

 新型コロナウイルスの感染拡大が、引き続き世界を揺るがしている。今週は節目となる重要な出来事が連続した。

▼欧州が新しい震源地に

 WHOは11日パンデミックを宣言した。発表時で感染者は12万人を超え、死者は4600人を上回った。感染国は世界5大陸全てに及ぶ。パンデミック宣言は2011年の新型インフルエンザ以来である。

 死者数は13日に5000人を突破。感染者はイタリアやスペイン、フランスなど欧州で拡大している。感染者の数は発症国の中国以外が約4割に達した。記者会見したWHOのテドロス事務局長は、「今や欧州がパンデミックの震源地」と語った。

▼欧州各国で移動制限・レストラン営業停止

 イタリアが全国で移動を制限、レストランやバーの閉店を命じた。

 スペインはサンチェス首相が非常事態宣言を発令。外出も制限した。

 フランスは学校の休校を命じ、レストランやバー、映画館などの営業を禁止した。

 ドイツのメルケル首相は国民の6-7割が感染する恐れがあると、警戒を呼び掛けた。

 各地でまるで戦争時のような、非常態勢がとられている。

▼米欧の往来禁止

 米国のトランプ大統領は11日、欧州からの渡航を禁止すると発表した(当初は英国、アイルランドは除いたが、その後対象に加えた)。事前に欧州側に説明等もなく、いきなりTV会見で発表だった。いかにもトランプ流といえばその通りだが、事態を深刻に受け止めている表れともいえる。13日には連邦レベルで非常事態宣言を出した。

 米国ではプロバスケットやアイスホッケーがレギュラーシーズンの残り試合を中止。野球の大リーグもオープン戦を中止し、公式戦の開幕を延期した。NY州やカリフォルニア州は非常事態を宣言。ここ1-2週間で、急速に「巣ごもり」状況になった。

▼世界が分断

 世界各国が渡航制限や禁止、移動の制限、イベントの禁止などを発表し、人の移動が大幅に制限されている。これまで自由移動だった世界が、分断されている状況だ。

 経済活動も当然のことながら深刻な打撃を受けている。市場ではリスクからの逃避が起こり、株や新興国通貨などが下落している。急激な金融収縮である。「リーマン・ショック以来」という表現が連発される。

▼経済対策、新たなバブルの芽にも

   観光業やレストラン、スポーツ産業などが受ける影響は深刻だ。特に中小企業は資金繰りにも窮するようになり、悲鳴が上がる。

 各国政府や金融当局は、減税、財政支援、金融緩和などあらゆる手を使った支援を約束する。トランプ米大統領は11日、中小企業支援などに500億ドルの措置を提案。給与税の免除にも意欲を示した。

 財政出動や金融緩和は、経済の底抜けを防ぎ、社会不安を抑えるためには必要だろう。しかし財政赤字はさらに拡大し、金あまりはますます膨れ上がる。新たなバブルを生んでいるようにも見えるが、目をつぶらざるを得ない状況なのだろう。

▼昨日までと異なる常識

 前週の寸評で、「1か月半で、世界の風景は一変した」と書いたが、この1週間で風景はまた一変した。

 とにかく先行き不透明。昨日までの常識が通用しない局面に入っていることは、心すべきだろう。

◎ 感染の震源転々パンデミック
◎「米欧の行き来禁止」とさりげなく
◎ 支援策未来の懸念も今は無視

2020.3.15

2019年8月 5日 (月)

◆米10年ぶり利下げの意味 2019.8.4

 米FRBが利下げに踏み切った。リーマン・ショック後の2008年10年以来10年半ぶり。2014年からの超緩和是正にも終止符を打つ。米中貿易戦争に伴う世界経済減速リスクへの備えの意味があるが、新たにバブル膨張の懸念もはらむ。

▼世界経済の下振れに警戒

 FRBは31日、FF金利の誘導目標を従来の2.25-2.5%→2-2.25%に0.25%引き下げた。会見したパウエル議長は、世界経済の成長の弱まりと貿易戦争による下振れリスクに対応する決定であると説明した。

 米経済の足元の数字は強い。景気は10年にわたり拡大しており、失業率は4月に3.6%と49年ぶりの低水準を記録した。

 しかし、米中貿易戦争の影響で先行き不透明感は増している。物価上昇率も目標とする2%を下回る。

 世界経済の不透明感は米国以上。IMFや世銀などは世界経済の成長見通しを相次いで下方修正した。中国の4-6月の成長率は6.2%と、4半期の数字としては1992年以来27年ぶりの低い水準になった。アジアの経済も減速している。

 こうした米経済の先行き不透明感や世界経済の先行き不安に対する「予防的な利下げ」の色彩がある。

▼超緩和是正の終了

 FRBはリーマン・ショックの後、異例ともいえる金融緩和策を実施した。2008年には利下げを繰り返しゼロ金利政策を採用。その後3回に渡る量的緩和政策を実施し(Q1-Q3)、米国債などの資産を大量に保有した。

 その超緩和政策の修正に動き出したのが2014年。量的緩和を停止し、翌2015年には金利の引き上げに踏み切った。2017年には膨れ上がった資産の縮小(FRBは正常化という言葉を使用)を開始。2018年には4回の利上げを実施し、昨年12月時点では、2019年にも2回の利上げ実施するとの見通しを示し、さらなる正常化を進める予定だった。

 2019年に入り状況は変わった。年初の株価が下落すると、FRBは1月利上げの停止を決定。資産縮小も年内で打ち止める姿勢を打ち出した。貿易戦争の影響などで米経済の先行きに不安が増してくると、3月には景気重視に政策スタンスを変換し、資産縮小の終了時期を9月に前倒した。

 今回の利下げは、2014年からの超緩和の修正(正常化)の終了を意味する。米金融政策の流れは一変した。

▼世界的に利下げ競争の様相

 米金融政策の転換を見込んで、世界各国はすでに動き出している。欧州中銀はさらなる金融緩和の姿勢を打ち出した。

 インドは今年に入り3回連続で利下げを実施。マレーシアやフィリピン、豪州なども5-6月に利下げに踏み切った。世界経済減速に利下げで対応しようとする動きで、世界規模での「利下げ競争」の様相を見せている。

 ただ、国際的な金融政策の動きが激しくなり不確実性が高まると、新興国の市場は大幅な変動のリスクに直面する。警戒の目は離せない。

▼新たなバブルの懸念

 もう一つ警戒すべきは、超緩和の是正先送り→新たなバブル発生の懸念が強まることだ。米国の実体経済は足元では完全雇用の状態。株価は変動が激しいものの、1年前、2年前に比べれば上昇している。トランプ政権は1兆ドル規模の大型減税を実施。財政出動による大型投資計画を打ち出している。そんな状況の下でさらなる金融緩和を実施すれば、実体経済が改善するより、むしろバブルの発生を助長する懸念がある。

 国際的には、民間企業などの債務がかつてない水準に膨れ上がっている。そこにさらなる金融緩和が加わるとどうなるか。リスクが高まる可能性がある。

▼トランプ政権のFRB批判

 トランプ政権は、さらなる金融緩和を求めている。今回の利下げについて、パウエルFRB議長は利下げが長期的な利下げサイクルの開始ではなく、「サイクルの半ばでの調整」であると説明した。これに対しトランプ大統領はさっそくツイッターで「長期的で積極的な利下げの始まりを聞きたかった」とパウエル議長を批判した。

 トランプ氏は昨年以来、より積極的な緩和を求めてFRB批判を繰り返している。中銀の独立性を軽視する発言はこれまでのコンセンサスを無視する行動で、異例だ。同時に、トランプ氏がバブルの懸念や長期的な財政問題にあまり配慮せず、短期的な景気維持を重視している姿勢を隠すことなく映している。

▼貿易戦争の影響

 そもそも米国経済や世界経済が減速し、先行き下振れリスクが高まっている最大の原因は、米中貿易摩擦だ。中国から米国への輸出に高率の関税がかかるようになり、貿易や投資が落ち込んでいる。貿易戦争の先行きは読めず、先行き不確実性が高まっている。

 それを引き起こしたのはトランプ大統領だ。米中貿易戦争を起点に、世界経済の行方や米金融政策に玉突きのように変化が連鎖している。結果が世界経済の減速にとどまらず、バブルの破裂などに及ぶリスクは、もちろん否定できない。

◎ 高関税、利下げで補えと言われても
◎ 正常化 いともたやすく打ち止まる
◎ またバブル?天仰ぎたくなる10年目

2019.8.4

 

 

 

 

 

 

 

 

2018年9月18日 (火)

◆リーマン・ショック後10年の世界 2018.9.17

 リーマン・ショックから10年を経過した。世界経済は恐慌を回避したが、金融緩和によるカネ余りは今に至る。金融暴走防止の対応は決定打を欠き、新たなバブルの発生も指摘される。危機後に焦点が当たった資本主義システムの見直しは、事実上棚上げされた。過去10年の間に、IT革命が加速、中国が伸張し、貧富の格差拡大が進むなど世界経済の構造は大きく変わる。リーマン・ショック後10年の世界経済を整理する。

▼ショックの推移

 2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻。世界金融危機が表面化した。先進国の金融当局はまず、公的資金を使った金融機関の救済、市場への資金供給(金融緩和)、景気対策、監督の強化などの手を繰り出し、金融システムの崩壊→世界恐慌の防止に努めた。

 危機はあっと間に米国から欧州などに波及。欧州ではその後ユーロ危機(ソブリン危機)へとつながっていく。

 金融緩和や財政支出拡大の効果もあり、世界経済は2009年を底に回復に向かい、その後も起伏を繰り返しながらも成長を維持している。一方で金融緩和で供給された巨額の資金はカネ余り現象を生み、新興国や株式市場、先進国の不動産などに流れ込んだ。これが新たなバブルを形成しているとの指摘も多い。

 主な節目の出来事は以下の通りだ。

▼節目の動き
 
・2008.9.15 リーマン破綻。
・9.16   米政府とFRBがAIGを管理下に。
      その後、国家・当局による支援や国有化、民間企業の買収などによる欧米金融機関救済相次ぐ。
・9.18   米欧日6中銀が1800億ドルの資金供給。その後も資金供給措置。
・10.3   米議会が経済対策可決。国による金融救済、景気対策などの枠組みを徐々に打ち出す。
・10.8   米欧日の中銀が協調利下げ。
・10.25   IMFがアイスランドに緊急支援。その後小国などでソブリン危機表面化
・11.9   中国が4兆元の景気対策発表
・11.27   米FEDが量的緩和(QE1、2010年6月まで)。その後QE2(2010-11)、QE3(2012-14)
・12.16   米がゼロ金利、米欧で金融緩和進む
・2009年  先進国経済マイナス成長、世界経済の成長はゼロ前後
・2009.6  GMが破産法申請、破綻
・2009.10  ギリシャの政府債務の粉飾発覚、ユーロ危機の引き金に
・2010   中国が世界第2の経済大国に
・2010-12  ユーロ危機(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインの支援要請など数波に及ぶ)
・2011   アップル時価総額世界1に、スマホ、ネット活用加速
・2013.4  日本QQE(量的・質的緩和)
・2013.5-6 バーナンキ・ショック(世界市場の混乱)
・2014.6  ユーロ圏マイナス金利含む緩和策
・2014   資源ブーム→後半から原油価格下落。
・2014.10  米量的緩和解除(QE3終了)
・2015.1  欧州中銀が量的緩和
・2015.1-7 ギリシャ危機
・2015.12  米ゼロ金利解除、米金融正常化第1歩 
・2016.6  Brexit
・2016.11  米大統領選でトランプ氏当選
・2017   米株高(トランプ相場)、金融規制の緩和へ
・2018.8  トルコ・ショック。アルゼンチンなど新興国の市場動揺。

▼政策

 リーマン・ショック直後、各国はあらゆる政策を総動員して金融システムの崩壊、恐慌突入の回避に努めた。先進各国の協調による資金提供や金利引き下げなどを実施し、G20首脳会議も設定した。各国ベースでも、金融機関の監査強化や国有化の仕組み整備などを進めた。

 危機が一段落した後には、再発防止のために様々な策を検討した。「大きすぎて潰せない」を回避するための金融規制の強化、金融監督の新しい仕組み、各国間の相互協力の枠組み整備などが検討され、一部実施された。ただ、こうした策も将来の危機を完全に回避できるものではもちろんない。

 年月を経過するに従い、危機への意識が薄まり、ビジネス機会拡大を求める声が次第に強まっているのも見逃せない。

▼金融緩和の10年と新たなバブル

 リーマンショック後の金融緩和で、世界ではカネ余りが続いた。世界の政府、企業、金融機関、家計の債務の対GDP比は、2008年末の2.9倍から2018年3月末には3.2倍に拡大(IIF統計)。政府の債務残高は米国で2007年のGDP比65%→2017年108%(IMF統計)、日本は183%→236%、英国は42%→87%などと膨らんでいる。

 溢れた資金の一部は株式や不動産市場に向かい、株価を引上げている。世界の株式時価総額は2008年末の33兆ドル→2018年3月末の85兆ドルに2.6倍増した。別の一部は新興国に流れ込み、米欧の金融政策などを材料にそれが還流すると金融市場の動揺を生んだ。2013年のバーナンキ・ショック、2018年のトルコ・ショックなどはこうした構造の中で起きている。

 カネ余りの中で、新たなバブル形成を懸念する声は各方面から上がる。次の危機があるとすれば、従来の危機と同じ形ではなく、全く新たな分野から発生するだろうとの見方も多い。

▼10年間の世界経済の変化

 金融やマクロ経済面から見ると上記のようにカネ余りや新たな危機の懸念などが注目されるが、過去10年の世界経済を見ると別の分野でもっと重要といってもいい変化が起きている。

 一つはIT革命。2008年当時はスマホの普及の初期だったが、その後急速に発展。電子商取引が急速に拡大し、ライドシェアなどの新サービスが普及した。IT大手や中国など国家が個人の動きや財布の中身を(その気になれば)把握し、SNSが世論を形成する時代になっている。世界経済を主導する時価総額上位の企業は、GAFAや中国の大手IT企業だ。

 仮想通貨を初めとしたフィンテック技術も急速に発展している。中国では電子商取引による消費が全体の10%を超える。新しい金融危機は、フィンテックの分野が発生源になるという指摘もある。

 もう一つの重要な変化は中国などアジアの発展だ。米欧先進国や日本がこの10年間横ばいや微増の成長にとどまるのを横目に、中国やインド、東南アジア諸国などは5-10%の成長を実現。存在感を急速に拡大した。

 格差拡大も重要なポイントだ。米国では一部の大金持ちと没落する中間層以下の格差が拡大し、それが2016年のトランプ大統領当選の一因になったいわれる。英国のBrexitも、同様に取り残された人々の反乱という面がある。1990年以降進んだグローバリズムは、格差の拡大という問題を生み、先進各国はそれに対する有効手段を打ち出せなかった。グローバル化は逆流、あるいは見直しの局面にあるといってもいい。

▼ワシントン・コンセンサスvs北京コンセンサス

 金融危機後、金融機関中心の強欲資本主義が強く批判され、1980年代以降の市場原理主義の抜本改革を求める意見が強まった。しかし、その後の議論は思うように進まず、見直しも中途半端なものに終わっている。

 こうした中で磁力を強めたのが中国的な国家資本主義だろう。中国経済はこの10年、様々な問題を抱えながらも高成長を維持した。いまや経済規模は3位の日本の2-3倍に達し、アリババやテンセントなどの先端企業も育っている。アジアやアフリカの新興国には米欧ではなく中国の経済発展モデルをお手本にしようという声が強まる。

 リーマン・ショック10年の米欧のメディア報道では金融システムに焦点を当てるものが多い。しかし、経済体制のあり方や国家運営の価値観を巡るより大きな領域でも、様々な問題を提示している。その論議は、いまだ十分に深まっていない。

◎ 10年目「懲りてないな」と口に出す
◎ 強欲が頼りの経済に薄化粧
◎ 独裁制そろそろ破綻のはずなのに
◎ 世の怒りトランプ生むとは想定外

2018.9.17

  

 

2018年8月19日 (日)

◆トルコ・ショックが意味するもの 2018.8.19

 米国とトルコの対立を引き金に、トルコ経済の混乱が深まりリラが急落。その影響が世界に波及して新興国経済を揺るがしている。 NATO同盟国だったはずの両国の亀裂は、地域安保や中東情勢も揺さぶる。トルコ・ショックは世界が直面する様々な課題を浮かび上がらせる。

▼深まる対立

 米・トルコの対立がのっぴきならぬ状況になったのは7月末から。その後3週間の経緯は以下の通りだ。

・7月末 トルコが拘束している米牧師の解放を巡る交渉が決裂。
・8月1日  米国が制裁第1弾。トルコの閣僚の資産凍結など。
・4日 トルコが対抗措置。
・6日 トルコ・リラが下落。1ドル=5.2リラ水準に。
・10日 トルコが中期経済計画発表。中身は具体性を欠く。
    リラが一時前日比2割下落(1ドル=6.8リラに)。
    エルドアン大統領が国民にリラ買い支え要求。
    トランプ米大統領が制裁の第2弾(鉄鋼・アルミ関税上乗せ)発表
・13日 リラが一時1ドル=7.2リラまで下落。
    中銀・当局が銀行の準備金引き下げ。先物取引規制強化などの措置
    米がF15の売却禁止
・14日 ラブロフ・ロシア外相がトルコ訪問。
・15日 トルコが報復第2弾を発表。米からの自動車、ウィスキー関税強化など
    カタールがトルコに資金支援(150億ドルの投資) 
    エルドアン大統領が独メルケル首相と電話会談
・16日 エルドアン大統領が仏マクロン大統領と電話会談
    ムニューシン米財務長官が追加制裁示唆
    トルコが拘束していたアムネスティの事務局長、ギリシャ兵士解放
・17日 トルコ裁判所が牧師解放申請改めて却下
    S&P、ムーディーズがトルコ国債格下げ(投機的の中で一段下げ)
・18日 トルコ大型連休入り

 さながら報復が報復を呼ぶチキンレースの様相だ。強烈な個性の2人の指導者の争いは、劇ならば面白い。しかし世界の平和と安定をゆるがすようなら、冷笑しているわけにもいかない。。

▼新興国経済への波及

 トルコ・リラ下落の影響は新興国経済に波及した。主な事例は以下の通りだ。

・アルゼンチン ペソが下落。8月13日に40%→45%に利上げ。
・インドネシア ルピアに下落圧力。8月15日に利上げ。今年4回目。
・インド: ルピーが下落。8月1日に利上げ。

 米国は2017年に3回の英上げを実施した後、2018年も3月。6月に利上げを実施。さらに年内に1-2回の利上げが見込まれる。米利上げ加速の観測を背景に、新興国から資本流出の圧力が強まっている。

 そんな地合いのなかでトルコ・ショックが起きた。影響はまず、経常赤字が多額であるなど経済条件の弱い国を直撃。アルゼンチンやインドネシア、インドの通貨が下落した。

 中国の人民元は、米中貿易戦争激化への懸念もあり下落基調が続いている。世界経済への影響とおいう面では、この動きも不気味だ。

 世界経済はここ数年、3%台の成長を実現。「適温経済」とも呼ばれてきた。このバランスを崩すシナリオとして懸念されてきたひとつが市場の混乱だ。貿易戦争激化による経済減速も懸念される。

 混乱は今のところ、一部新興国に限定されている。しかし、トルコ・ショックは、世界経済がそうしたリスクを抱えている現実を改めて浮かび上がらせた。

▼安全保障への影響

 トルコ・ショックの影響は経済にとどまらない。地域の安全保障や中東の枠組みへの影響も重要だ。

 米トランプ政権が今回、トルコに対して強硬姿勢を崩さないのは、中東戦略全体の一環というより、11月の中間選挙をにらんだ面が大きい。拘束(自宅軟禁)されている牧師は、米福音派。選挙で支援を求めるためには、強い姿勢が必要との判断だ。しかし、その影響は(多分)意図に反して広範囲に拡散する。
 
 2011年のアラブの春以降の中東情勢は複雑に動いた。シリア内戦、「イスラム国」の台頭、イラク戦争後の同国情勢の変化、イラクやシリア、トルコのクルド人の自治拡大の動きなどがあり、それぞれが微妙に川見合う。こうした中で米国はイラクからの戦闘部隊撤退など関与の縮小を進めた。

 トランプ政権の発足後はイスラエル寄りへの傾斜、対イラン強硬姿勢などを鮮明にした。しかし、中東への関与縮小の流れは変わらない。

 トルコとは対「イスラム国」では共闘したが、クルド人への姿勢などでは立場が異にする。ただ米国とトルコがNATO加盟国である事実は重いはずえだ。

 そうした微妙なバランスだったところに、今回の亀裂の表面化。今後の手打ちの行方も見えない。中東情勢は今後どんな方向に転んでもおかしくなく、不確実性は一段と高まった。

▼中ロの中東戦略とトルコ・欧州関係

 行方は読みがたいが、注目すべきポイントはいくつかある。

 一つはロシアや中国だ。ロシアはシリア内戦の仲介などを通じ中東への影響力を拡大する姿勢を見せている。シリア問題ではトルコやイランと一部で協力している。今回もラブロフ外相をトルコに派遣し、米国の姿勢を批判した。トルコに接近する姿勢を隠さない。

 中国は中東各国と経済面でのつながりを強化し、影響力の拡大を狙っている。今後トルコと米国の関係が冷えれば、その隙間を狙いトルコとの関係強化に動くのは自然だ。

 もうひとつは欧州との関係だ。トルコのエルドアン政権が2010年代以降強権色を強めたのに対し、EUは人権侵害を批判。EUとトルコの関係は冷却化した。トルコのEU加盟交渉も完全にストップした。

 しかし2015年の欧州難民危機以降、状況に変化が生じている。EUはこの問題でトルコの協力を仰がざるを得ず、事実2016年に難民問題で合意をまとめた。人権問題などでトルコ批判をしつつ、水面下では手を握る複雑な関係だ。

 今回もメルケル独首相やマクロン仏大統領がエルドアン大統領と電話協議して協力を確認。関係維持の姿勢を見せつける。トルコ側も、スパイ容疑で拘束していたギリシャ兵を解放したり、アムネスティ・インターナショナルの事務局長を釈放するなど欧州への配慮を示した。

 米牧師の釈放という一つの問題から、各方面に展開を見せてる今回の動き。中東情勢、世界経済、難民危機、米国と中ロ、欧州の国際戦略など、大きな課題が複雑に絡み合う構図を示す。

◎ 通貨危機? 牧師の話だったのに
◎ 個性派のケンカといつまで笑えるか

2018.8.19

2018年1月 1日 (月)

◆FTの2018年見通し 2017.12.31

 2018年が始まる。昨年誕生した米トランプ大統領は、既存秩序を否定するような政策で国際社会を揺るがしたが、今年も傾向は続きそうだ。世界が格差拡大やポピュリズム台頭などの課題に直面する状況も変わらない。中東の不安定とテロの懸念、北朝鮮核問題などの構図も不変だろう。世界経済は好調を維持するが、カネ余りの中でバブルが拡大しているとの指摘もある。

 英FT紙は毎年末、専門記者による翌年の展望を掲載。INCDはポイントを記録している。2018年の見通しも箇条書きする。

▽米国
・米中間選挙で民主党は過半数を得るか
  =得るがぎりぎり
・トランプ大統領に対する弾劾の動きは始まるか
  =始まる。民主党が中間選挙で下院の過半数を得るため。ただし進まない。
・米国は中国との貿易戦争を引き起こすか
  =イエス。知的所有権など。

▽米経済・産業
・ATTとタイムワーナーの合併は大規模な条件なしで認められるか
  =認められる。CNN売却のような大きな条件はない。
・テスラのモデル3sは25万台以上生産されるか
  =されない。
・S&P500 指数は年末2650以上か
  =Yes。2017年末は2673
・米10年国債の利回りは年末3%以上になるか
  =ならない。2017年末は2.405%

▽中国・アジア
・中国のGDP成長(発表)は6.5%を超えるか
  =公式の発表では超える。
・日銀は金融引き締めに転じるか
  =転じない
・インドのモディ首相は通常ではない経済政策を実施するか
  =する。(2016年の高額紙幣禁止ような通常でない政策)

▽世界経済
・新興国の経済成長は5%を上回るか
  =上回る
・原油価格は年末1バレル=70ドル以上になるか
  =なる
・ビットコインの安定的で流動性の高い市場は発達するか
  =しない

▽欧州・英国
・メイ首相は2018年末まで首相の座に留まるか
  =とどまる。Brexit交渉の中で保守党内から引きずり下ろしの動きは出にくい。
・英経済の成長率はG7で最も低くなるか
  =ならない。日本やフランスの方が低い可能性。
・マクロン仏大統領はユーロ圏の共通予算でメルケル独首相から大きな譲歩を引き出せるか
  =できない。投資基金設立など小規模な構想にとどまる。

▽中東・アフリカ・中南米
・サウジのアラムコの上場は実現するか
  =No。遅れる。
・ジンバブエのムナンガグワ新大統領は公正な選挙を実施して勝利するか
  =No。ムガベ前大統領の37年が2017年に終了。
・メキシコ大統領選で与党のミード氏は当選するか
  =Yes。ミード氏は元財務公債相。左派のロペスオブラドール氏との争いの見込み。

▽スポーツ
・サッカーW杯でブラジル、ドイツ、スペイン以外が優勝するか
  =しない。

2017.12.31

2017年9月19日 (火)

◆自動車・スマホの革命と世界 2017.9.18

 中国がガソリン・ディーゼル車禁止の方向を打ち出した。英国やフランスが2040年禁止を打ち出したのに続く動き。自動車は20世紀初頭以来のガソリン、ディーゼル車中心で発展してきたが、大転換点を迎える。

 一方、スマホは発売から10年を経過し、「次の10年」が始まる。アップルは新製品「iPhoneX」を出した。行方から目を離せない。

▼相次ぐガソリン禁止

 現在世界の自動車保有台数は12.6億台強(2015年)。生産・販売台数は年間9400万台程度だ。ガソリン車やディーゼル車が主体で、EVなどエコカーは年間260万台と全体の3%以下だ(ハイブリッドカーは除く。カリフォルニア州は2018年モデルからハイブリッド車をエコカーの対象外にする予定)。

 しかし英仏や中国の政策もあり、今後急速にEVや他のエコカー化が進むと見るのが妥当だろう。

 主役も変わる。現在の自動車産業は、独VW(フォルクスワーゲン)、トヨタ、GMとルノー・日産連合が1000万台前後を生産。約300万台以上生産しているグループが10以上ある。

 しかしEVとなれば、主役が劇的に変化する可能性がある。EVで躍進するテスラや、グーグル、アマゾンなどのIT大手が絡んでくるのは確実だ。

 EVが本格的に登場してきたのは10年ほど前。欧州などで、半分試験的にプラグインEVの利用が始まり、徐々に普及した。テスラがEV車を投入し本格的に市場に参入したのは2008年。その後販売を拡大し、いまやそれほど珍しい存在ではなくなった。

▼自動運転とカー・シェリング

 自動車業界のパラダイム変化をもたらす動きは、他にもある。一つは自動運転、そしてもう一つはシェアリングエコノミーの動向だ。

 自動運転技術は各国、各社で実験が進み、高速道路などで実現するのはそう遠い将来の話ではない。

 カーシェアリング今や世界の新たな潮流になっている。ウーバーはもちろん、各社が新しいサービスを提供、普及に弾みをかけている。国により状況は異なるが、自動車を考えるキーワードがが「保有」から「利用」に変わっているのは外せないポイントだ。

▼スマホ10年

 9月12日にアップルがiPhoneの新機種「X」(テン)を発表した。誕生から10年を経過したスマホの、今後の発展を期した製品だ。

 アップルⅡが発売され、パソコンの時代が始まったのが40年前の1977年。1995年にはWindows95が登場しインターネットの時代に入った。その後の変化は加速度的だ。主なものを掲げれば以下の通りだ。

1998 グーグル創業
2001 アップルがiPod発売。音楽配信の革命
2004 グーグル上場、Web2.0の時代
2005 ユーチューブがサービス開始
2006 FBがサービス一般公開
2007 スマホ(iPhone)発売、アマゾンがキンドル発売、世界の携帯普及50%超
2010 iPad発売(タブロイド普及)
2011 アップル時価総額世界1に
2014 FB10年、Gメール10年、アリババ上場

▼社会に大きな変化

 スマホの出荷は2011年には通常の携帯(ガラ携)を抜き、2016年の出荷は15億台弱。現在世界では半数近い人がスマホを持ち、「携帯コンピューター」として検索やEコマース、決済などで使っている。
 2015年夏の欧州難民危機の際には、荒れ海をボートで渡る難民にドイツのNGOがスマホで安全航行の情報を提供していた。NYやロンドンの地下鉄で、乗客はスマホでニュースやメールチェックを行っている。ジャカルタやマニラの青空市場では、売り子がシマホを眺め時間を潰す。スマホ所有者は常にネットで世界とつながり、スマホに依存した生活を送るようになっている。

 今日では、「スマホのない生活」を想像するのは困難。スマホは社会の必要欠くべかざるインフラの一部となった。わずか10年前の「スマホのない世界」を想像するのは、だんだん難しくなっていく。

 過去20-30年あまりのIT革命の主役を(一時的に)演じたPCや携帯電話は、販売数字から見ればすでにピークアウトした。スマホの行方も明確ではない(たとえば衣服や身体組み入れの機器などができるかもしれない)。行方には要注意マークを外せない。

 技術革新が経済、社会に大きな変化をもたらす時代。自動車、スマホのニュースに、そうした流れを再度実感する。

◎ ガレージに車を入れてた時代あり
◎ SFに確かになかったガソリン車
◎ 10年でスマホの虜 便利だが

2017.9.18

2015年12月21日 (月)

◆米ゼロ金利解除の影響 2015.12.20

 

 米FRBがゼロ金利を解除した。米金融政策は、2008年のリーマンショック後から超緩和政策が続いていた。昨年の量的緩和終了に続く今回の決定で、超緩和政策は出口に来た。金利が機能する「正常」な状態にようやくこぎ着けた。

▼多様な影響

 利上げはFRBが事前に何度も市場にメッセージを送り、市場も織り込み済みだった。このため、短期的に市場の驚きはない。為替、株式など世界の市場に大きな混乱はなかった。

 しかし、今後様々な形で利上げが影響してくることは必至だ。
 メキシコ、チリ、サウジアラビアなどは米利上げの直後、追随利上げを決めた。自国通貨の下落防止などのためだ。一方、すでに通貨安が進んだインドネシアなどは金利を据え置き、当面様子眺めだ。

 時間軸が伸びれば、さらに色々な影響が出てくる。新興国の利上げが経済の減速を招くのは避けられない。ドルは先高の観測が強い。

▼マネー逆流

 欧州中銀は今春、量的緩和政策を導入した。今後さらに緩和の姿勢を示している。日本も追加緩和のスタンスだ。引き締めに転じた米国と、欧州、日本の金融政策の方向が逆になる。世界の金融政策は、先進国が一致して緩和→ねじれた状況になる。

 リーマン・ショック後、先進国は世界の金融システムの維持や自国経済下支えのため金融緩和を進めた。この資金は新興国に流れ込み、インフラ投資など新興国の経済成長を支えた。

 リーマン・ショック後の世界経済は新興国が牽引する形で成長が続いたが、それを支えた一因が先進国の金融緩和=世界的な金あまり状況だった。

 米利上げで資金の流れが逆転し、新興国→米国へと「マネー逆流」する可能性がある(実際ある程度起こっている)。

 いずれにしろ、ゼロ金利の解除により世界の資金の流れが変化し、実物経済にも影響が出てくるのは確実だ。

▼財政悪化とバブル

 「動き回るマネー」による経済不安定以外にも問題点はある。

 世界的金融緩和がリーマンショック後の金融システム崩壊防止や世界的な恐慌回避に役立ったことは事実だ。潤沢な資金が新興企業の発展などプラスの効果をもたらしたことも重要だ。

 しかし、7年に及ぶ緩和政策は新たな課題を生んだ。先進各国の財政悪化はその一例だし、新興国では安易なインフラ投資など新たなバブルの発生も指摘される。

 利上げの影響は短期、中長期的に様々な形で世界に及ぶ。多様な目配りが必要だ。

2015.12.20

2015年10月12日 (月)

◆TPP合意の意味  2015.10.11

 日米やカナダ、豪州など12か国が参加するTPPが合意に達した。モノの関税のみならず、サービス、電子商取引、知財、環境など31分野をカバーする大型の多国間協定で、21世紀型のルールとの期待もある。その意味と影響は大きい。

▼5年半越しの合意

 TPPの交渉が始まったのは2010年。米豪など8カ国による協議だった。その後日本などが加わり12か国に拡大(米国、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、日本、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、豪州、ニュージーランド)。

 今回のアトランタでの閣僚会議は、新薬データの保護期間を巡る米豪の対立などがギリギリまで続いたが、期限を2度延長した結果ようやく合意にこぎ着けた。

▼中国を意識

 今回合意できたのは、米国がこれまで以上に取りまとめに前向きだったことが大きい。背景には、政権の遺産を残したい米オバマ政権の思惑がある。しかし、それ以上に重要なのは、中国の経済成長と国際社会における影響力の拡大だ。

 国際的な経済体制やルール作りはこれまで米国主導で動きてきた。しかし、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に象徴されるように、中国はこの分野でも影響力を増している。米国としては、新時代の貿易や投資のルール作りの主導権を中国に譲るわけにはいかない。

 そうした事情もあり、協定は法による支配、透明性だけでなく、民主主義や基本的人権などの普遍的価値共有などを書き込んだ。その辺にも、米国の戦略が出ている(ただし、下記のような事情で合意文書の全文は公開されないため、部妙な表現のニュアンスは不明なところがある)。

▼画期的

 英ガーディアンは今回の合意を画期的(landmark)と報じた。そうした報道に表れるように、TPPには大きな意味がある。合意がカバーするのは物の関税引き下げだけでなく、サービス、投資保護、地財、電子商取引、環境、国営企業の規律、政府調達、電気通信など新しい分野に及ぶ。WTO交渉がまとめようとして失敗した領域だ。

 WTO交渉の不調を見て、世界では2000年ごろからFTA(自由貿易協定)が増えている。しかしFTAは2国間あるいは少数の国の間の取り決めにとどまり、多国間のルールになっていない。

 その点TPPは、モノの貿易を越えた分野をカバーしているのみならず、多国間の協定だ。そうした点で、21世紀のルールになる要件を備えている。

 TPPの意義を説明するときに、バリュー・チェインという言葉もよく出て来る。グローバル経済の下では、モノやサービスは国境を越えて動き、その輪が円滑につながっていないと機能しない。それを支えるルールは、多国間の協定であるのが望ましい。ここにも、時代のニーズがある。

▼他の協定に波及も

 世界には200以上のFTAが結ばれている。また、多数の2国・地域間や多国間の交渉中だ。日本を例に取れば、日中韓自由貿易協定や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの交渉を始めている。TPPがこうした協定の雛型になる可能性も十分にある。

▼批准は不透明

 ただし、TPPがすんなりと発効するかどうかは不透明。発効には域内GDPの85%以上で、かつ6か国以上の批准が必要。実際には日米を含む6か国の批准が求められる。

 米国ではオバマ政権与党の民主党内に反対が多く、次期大統領有力候補のクリントン元国務長官も閣僚時代の賛成から「現時点では」としながら反対に転じた。野党共和党は比較的自由貿易に前向きとされるが、今回の合意には譲歩し過ぎとの批判もある。批准の見通しは現時点では見えない。

 国内の抵抗が大きいのは他の国でも同じ。政治指導者には、そうした国内調整を乗り越える力量が求められる。

▼透明性は不十分

 そうした国内抵抗への配慮もあってか、TPP交渉は原則非公開の下で進められた。今回の合意文書も、向こう4年間は公表されない。

 このため、新ルールの詳細は不明なところが残る。上記のように、「民主主義」など原則の位置づけも完全にははっきりしない。

 日本では官邸HPも含め「大筋合意」となっているが、英語の発表はagreeed, final agreementなどが多い。この辺も分かりにくい。

2015.10.11

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