カテゴリー「経済」の73件の記事

2019年8月 5日 (月)

◆米10年ぶり利下げの意味 2019.8.4

 米FRBが利下げに踏み切った。リーマン・ショック後の2008年10年以来10年半ぶり。2014年からの超緩和是正にも終止符を打つ。米中貿易戦争に伴う世界経済減速リスクへの備えの意味があるが、新たにバブル膨張の懸念もはらむ。

▼世界経済の下振れに警戒

 FRBは31日、FF金利の誘導目標を従来の2.25-2.5%→2-2.25%に0.25%引き下げた。会見したパウエル議長は、世界経済の成長の弱まりと貿易戦争による下振れリスクに対応する決定であると説明した。

 米経済の足元の数字は強い。景気は10年にわたり拡大しており、失業率は4月に3.6%と49年ぶりの低水準を記録した。

 しかし、米中貿易戦争の影響で先行き不透明感は増している。物価上昇率も目標とする2%を下回る。

 世界経済の不透明感は米国以上。IMFや世銀などは世界経済の成長見通しを相次いで下方修正した。中国の4-6月の成長率は6.2%と、4半期の数字としては1992年以来27年ぶりの低い水準になった。アジアの経済も減速している。

 こうした米経済の先行き不透明感や世界経済の先行き不安に対する「予防的な利下げ」の色彩がある。

▼超緩和是正の終了

 FRBはリーマン・ショックの後、異例ともいえる金融緩和策を実施した。2008年には利下げを繰り返しゼロ金利政策を採用。その後3回に渡る量的緩和政策を実施し(Q1-Q3)、米国債などの資産を大量に保有した。

 その超緩和政策の修正に動き出したのが2014年。量的緩和を停止し、翌2015年には金利の引き上げに踏み切った。2017年には膨れ上がった資産の縮小(FRBは正常化という言葉を使用)を開始。2018年には4回の利上げを実施し、昨年12月時点では、2019年にも2回の利上げ実施するとの見通しを示し、さらなる正常化を進める予定だった。

 2019年に入り状況は変わった。年初の株価が下落すると、FRBは1月利上げの停止を決定。資産縮小も年内で打ち止める姿勢を打ち出した。貿易戦争の影響などで米経済の先行きに不安が増してくると、3月には景気重視に政策スタンスを変換し、資産縮小の終了時期を9月に前倒した。

 今回の利下げは、2014年からの超緩和の修正(正常化)の終了を意味する。米金融政策の流れは一変した。

▼世界的に利下げ競争の様相

 米金融政策の転換を見込んで、世界各国はすでに動き出している。欧州中銀はさらなる金融緩和の姿勢を打ち出した。

 インドは今年に入り3回連続で利下げを実施。マレーシアやフィリピン、豪州なども5-6月に利下げに踏み切った。世界経済減速に利下げで対応しようとする動きで、世界規模での「利下げ競争」の様相を見せている。

 ただ、国際的な金融政策の動きが激しくなり不確実性が高まると、新興国の市場は大幅な変動のリスクに直面する。警戒の目は離せない。

▼新たなバブルの懸念

 もう一つ警戒すべきは、超緩和の是正先送り→新たなバブル発生の懸念が強まることだ。米国の実体経済は足元では完全雇用の状態。株価は変動が激しいものの、1年前、2年前に比べれば上昇している。トランプ政権は1兆ドル規模の大型減税を実施。財政出動による大型投資計画を打ち出している。そんな状況の下でさらなる金融緩和を実施すれば、実体経済が改善するより、むしろバブルの発生を助長する懸念がある。

 国際的には、民間企業などの債務がかつてない水準に膨れ上がっている。そこにさらなる金融緩和が加わるとどうなるか。リスクが高まる可能性がある。

▼トランプ政権のFRB批判

 トランプ政権は、さらなる金融緩和を求めている。今回の利下げについて、パウエルFRB議長は利下げが長期的な利下げサイクルの開始ではなく、「サイクルの半ばでの調整」であると説明した。これに対しトランプ大統領はさっそくツイッターで「長期的で積極的な利下げの始まりを聞きたかった」とパウエル議長を批判した。

 トランプ氏は昨年以来、より積極的な緩和を求めてFRB批判を繰り返している。中銀の独立性を軽視する発言はこれまでのコンセンサスを無視する行動で、異例だ。同時に、トランプ氏がバブルの懸念や長期的な財政問題にあまり配慮せず、短期的な景気維持を重視している姿勢を隠すことなく映している。

▼貿易戦争の影響

 そもそも米国経済や世界経済が減速し、先行き下振れリスクが高まっている最大の原因は、米中貿易摩擦だ。中国から米国への輸出に高率の関税がかかるようになり、貿易や投資が落ち込んでいる。貿易戦争の先行きは読めず、先行き不確実性が高まっている。

 それを引き起こしたのはトランプ大統領だ。米中貿易戦争を起点に、世界経済の行方や米金融政策に玉突きのように変化が連鎖している。結果が世界経済の減速にとどまらず、バブルの破裂などに及ぶリスクは、もちろん否定できない。

◎ 高関税、利下げで補えと言われても
◎ 正常化 いともたやすく打ち止まる
◎ またバブル?天仰ぎたくなる10年目

2019.8.4

 

 

 

 

 

 

 

 

2018年9月18日 (火)

◆リーマン・ショック後10年の世界 2018.9.17

 リーマン・ショックから10年を経過した。世界経済は恐慌を回避したが、金融緩和によるカネ余りは今に至る。金融暴走防止の対応は決定打を欠き、新たなバブルの発生も指摘される。危機後に焦点が当たった資本主義システムの見直しは、事実上棚上げされた。過去10年の間に、IT革命が加速、中国が伸張し、貧富の格差拡大が進むなど世界経済の構造は大きく変わる。リーマン・ショック後10年の世界経済を整理する。

▼ショックの推移

 2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻。世界金融危機が表面化した。先進国の金融当局はまず、公的資金を使った金融機関の救済、市場への資金供給(金融緩和)、景気対策、監督の強化などの手を繰り出し、金融システムの崩壊→世界恐慌の防止に努めた。

 危機はあっと間に米国から欧州などに波及。欧州ではその後ユーロ危機(ソブリン危機)へとつながっていく。

 金融緩和や財政支出拡大の効果もあり、世界経済は2009年を底に回復に向かい、その後も起伏を繰り返しながらも成長を維持している。一方で金融緩和で供給された巨額の資金はカネ余り現象を生み、新興国や株式市場、先進国の不動産などに流れ込んだ。これが新たなバブルを形成しているとの指摘も多い。

 主な節目の出来事は以下の通りだ。

▼節目の動き
 
・2008.9.15 リーマン破綻。
・9.16   米政府とFRBがAIGを管理下に。
      その後、国家・当局による支援や国有化、民間企業の買収などによる欧米金融機関救済相次ぐ。
・9.18   米欧日6中銀が1800億ドルの資金供給。その後も資金供給措置。
・10.3   米議会が経済対策可決。国による金融救済、景気対策などの枠組みを徐々に打ち出す。
・10.8   米欧日の中銀が協調利下げ。
・10.25   IMFがアイスランドに緊急支援。その後小国などでソブリン危機表面化
・11.9   中国が4兆元の景気対策発表
・11.27   米FEDが量的緩和(QE1、2010年6月まで)。その後QE2(2010-11)、QE3(2012-14)
・12.16   米がゼロ金利、米欧で金融緩和進む
・2009年  先進国経済マイナス成長、世界経済の成長はゼロ前後
・2009.6  GMが破産法申請、破綻
・2009.10  ギリシャの政府債務の粉飾発覚、ユーロ危機の引き金に
・2010   中国が世界第2の経済大国に
・2010-12  ユーロ危機(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインの支援要請など数波に及ぶ)
・2011   アップル時価総額世界1に、スマホ、ネット活用加速
・2013.4  日本QQE(量的・質的緩和)
・2013.5-6 バーナンキ・ショック(世界市場の混乱)
・2014.6  ユーロ圏マイナス金利含む緩和策
・2014   資源ブーム→後半から原油価格下落。
・2014.10  米量的緩和解除(QE3終了)
・2015.1  欧州中銀が量的緩和
・2015.1-7 ギリシャ危機
・2015.12  米ゼロ金利解除、米金融正常化第1歩 
・2016.6  Brexit
・2016.11  米大統領選でトランプ氏当選
・2017   米株高(トランプ相場)、金融規制の緩和へ
・2018.8  トルコ・ショック。アルゼンチンなど新興国の市場動揺。

▼政策

 リーマン・ショック直後、各国はあらゆる政策を総動員して金融システムの崩壊、恐慌突入の回避に努めた。先進各国の協調による資金提供や金利引き下げなどを実施し、G20首脳会議も設定した。各国ベースでも、金融機関の監査強化や国有化の仕組み整備などを進めた。

 危機が一段落した後には、再発防止のために様々な策を検討した。「大きすぎて潰せない」を回避するための金融規制の強化、金融監督の新しい仕組み、各国間の相互協力の枠組み整備などが検討され、一部実施された。ただ、こうした策も将来の危機を完全に回避できるものではもちろんない。

 年月を経過するに従い、危機への意識が薄まり、ビジネス機会拡大を求める声が次第に強まっているのも見逃せない。

▼金融緩和の10年と新たなバブル

 リーマンショック後の金融緩和で、世界ではカネ余りが続いた。世界の政府、企業、金融機関、家計の債務の対GDP比は、2008年末の2.9倍から2018年3月末には3.2倍に拡大(IIF統計)。政府の債務残高は米国で2007年のGDP比65%→2017年108%(IMF統計)、日本は183%→236%、英国は42%→87%などと膨らんでいる。

 溢れた資金の一部は株式や不動産市場に向かい、株価を引上げている。世界の株式時価総額は2008年末の33兆ドル→2018年3月末の85兆ドルに2.6倍増した。別の一部は新興国に流れ込み、米欧の金融政策などを材料にそれが還流すると金融市場の動揺を生んだ。2013年のバーナンキ・ショック、2018年のトルコ・ショックなどはこうした構造の中で起きている。

 カネ余りの中で、新たなバブル形成を懸念する声は各方面から上がる。次の危機があるとすれば、従来の危機と同じ形ではなく、全く新たな分野から発生するだろうとの見方も多い。

▼10年間の世界経済の変化

 金融やマクロ経済面から見ると上記のようにカネ余りや新たな危機の懸念などが注目されるが、過去10年の世界経済を見ると別の分野でもっと重要といってもいい変化が起きている。

 一つはIT革命。2008年当時はスマホの普及の初期だったが、その後急速に発展。電子商取引が急速に拡大し、ライドシェアなどの新サービスが普及した。IT大手や中国など国家が個人の動きや財布の中身を(その気になれば)把握し、SNSが世論を形成する時代になっている。世界経済を主導する時価総額上位の企業は、GAFAや中国の大手IT企業だ。

 仮想通貨を初めとしたフィンテック技術も急速に発展している。中国では電子商取引による消費が全体の10%を超える。新しい金融危機は、フィンテックの分野が発生源になるという指摘もある。

 もう一つの重要な変化は中国などアジアの発展だ。米欧先進国や日本がこの10年間横ばいや微増の成長にとどまるのを横目に、中国やインド、東南アジア諸国などは5-10%の成長を実現。存在感を急速に拡大した。

 格差拡大も重要なポイントだ。米国では一部の大金持ちと没落する中間層以下の格差が拡大し、それが2016年のトランプ大統領当選の一因になったいわれる。英国のBrexitも、同様に取り残された人々の反乱という面がある。1990年以降進んだグローバリズムは、格差の拡大という問題を生み、先進各国はそれに対する有効手段を打ち出せなかった。グローバル化は逆流、あるいは見直しの局面にあるといってもいい。

▼ワシントン・コンセンサスvs北京コンセンサス

 金融危機後、金融機関中心の強欲資本主義が強く批判され、1980年代以降の市場原理主義の抜本改革を求める意見が強まった。しかし、その後の議論は思うように進まず、見直しも中途半端なものに終わっている。

 こうした中で磁力を強めたのが中国的な国家資本主義だろう。中国経済はこの10年、様々な問題を抱えながらも高成長を維持した。いまや経済規模は3位の日本の2-3倍に達し、アリババやテンセントなどの先端企業も育っている。アジアやアフリカの新興国には米欧ではなく中国の経済発展モデルをお手本にしようという声が強まる。

 リーマン・ショック10年の米欧のメディア報道では金融システムに焦点を当てるものが多い。しかし、経済体制のあり方や国家運営の価値観を巡るより大きな領域でも、様々な問題を提示している。その論議は、いまだ十分に深まっていない。

◎ 10年目「懲りてないな」と口に出す
◎ 強欲が頼りの経済に薄化粧
◎ 独裁制そろそろ破綻のはずなのに
◎ 世の怒りトランプ生むとは想定外

2018.9.17

  

 

2018年8月19日 (日)

◆トルコ・ショックが意味するもの 2018.8.19

 米国とトルコの対立を引き金に、トルコ経済の混乱が深まりリラが急落。その影響が世界に波及して新興国経済を揺るがしている。 NATO同盟国だったはずの両国の亀裂は、地域安保や中東情勢も揺さぶる。トルコ・ショックは世界が直面する様々な課題を浮かび上がらせる。

▼深まる対立

 米・トルコの対立がのっぴきならぬ状況になったのは7月末から。その後3週間の経緯は以下の通りだ。

・7月末 トルコが拘束している米牧師の解放を巡る交渉が決裂。
・8月1日  米国が制裁第1弾。トルコの閣僚の資産凍結など。
・4日 トルコが対抗措置。
・6日 トルコ・リラが下落。1ドル=5.2リラ水準に。
・10日 トルコが中期経済計画発表。中身は具体性を欠く。
    リラが一時前日比2割下落(1ドル=6.8リラに)。
    エルドアン大統領が国民にリラ買い支え要求。
    トランプ米大統領が制裁の第2弾(鉄鋼・アルミ関税上乗せ)発表
・13日 リラが一時1ドル=7.2リラまで下落。
    中銀・当局が銀行の準備金引き下げ。先物取引規制強化などの措置
    米がF15の売却禁止
・14日 ラブロフ・ロシア外相がトルコ訪問。
・15日 トルコが報復第2弾を発表。米からの自動車、ウィスキー関税強化など
    カタールがトルコに資金支援(150億ドルの投資) 
    エルドアン大統領が独メルケル首相と電話会談
・16日 エルドアン大統領が仏マクロン大統領と電話会談
    ムニューシン米財務長官が追加制裁示唆
    トルコが拘束していたアムネスティの事務局長、ギリシャ兵士解放
・17日 トルコ裁判所が牧師解放申請改めて却下
    S&P、ムーディーズがトルコ国債格下げ(投機的の中で一段下げ)
・18日 トルコ大型連休入り

 さながら報復が報復を呼ぶチキンレースの様相だ。強烈な個性の2人の指導者の争いは、劇ならば面白い。しかし世界の平和と安定をゆるがすようなら、冷笑しているわけにもいかない。。

▼新興国経済への波及

 トルコ・リラ下落の影響は新興国経済に波及した。主な事例は以下の通りだ。

・アルゼンチン ペソが下落。8月13日に40%→45%に利上げ。
・インドネシア ルピアに下落圧力。8月15日に利上げ。今年4回目。
・インド: ルピーが下落。8月1日に利上げ。

 米国は2017年に3回の英上げを実施した後、2018年も3月。6月に利上げを実施。さらに年内に1-2回の利上げが見込まれる。米利上げ加速の観測を背景に、新興国から資本流出の圧力が強まっている。

 そんな地合いのなかでトルコ・ショックが起きた。影響はまず、経常赤字が多額であるなど経済条件の弱い国を直撃。アルゼンチンやインドネシア、インドの通貨が下落した。

 中国の人民元は、米中貿易戦争激化への懸念もあり下落基調が続いている。世界経済への影響とおいう面では、この動きも不気味だ。

 世界経済はここ数年、3%台の成長を実現。「適温経済」とも呼ばれてきた。このバランスを崩すシナリオとして懸念されてきたひとつが市場の混乱だ。貿易戦争激化による経済減速も懸念される。

 混乱は今のところ、一部新興国に限定されている。しかし、トルコ・ショックは、世界経済がそうしたリスクを抱えている現実を改めて浮かび上がらせた。

▼安全保障への影響

 トルコ・ショックの影響は経済にとどまらない。地域の安全保障や中東の枠組みへの影響も重要だ。

 米トランプ政権が今回、トルコに対して強硬姿勢を崩さないのは、中東戦略全体の一環というより、11月の中間選挙をにらんだ面が大きい。拘束(自宅軟禁)されている牧師は、米福音派。選挙で支援を求めるためには、強い姿勢が必要との判断だ。しかし、その影響は(多分)意図に反して広範囲に拡散する。
 
 2011年のアラブの春以降の中東情勢は複雑に動いた。シリア内戦、「イスラム国」の台頭、イラク戦争後の同国情勢の変化、イラクやシリア、トルコのクルド人の自治拡大の動きなどがあり、それぞれが微妙に川見合う。こうした中で米国はイラクからの戦闘部隊撤退など関与の縮小を進めた。

 トランプ政権の発足後はイスラエル寄りへの傾斜、対イラン強硬姿勢などを鮮明にした。しかし、中東への関与縮小の流れは変わらない。

 トルコとは対「イスラム国」では共闘したが、クルド人への姿勢などでは立場が異にする。ただ米国とトルコがNATO加盟国である事実は重いはずえだ。

 そうした微妙なバランスだったところに、今回の亀裂の表面化。今後の手打ちの行方も見えない。中東情勢は今後どんな方向に転んでもおかしくなく、不確実性は一段と高まった。

▼中ロの中東戦略とトルコ・欧州関係

 行方は読みがたいが、注目すべきポイントはいくつかある。

 一つはロシアや中国だ。ロシアはシリア内戦の仲介などを通じ中東への影響力を拡大する姿勢を見せている。シリア問題ではトルコやイランと一部で協力している。今回もラブロフ外相をトルコに派遣し、米国の姿勢を批判した。トルコに接近する姿勢を隠さない。

 中国は中東各国と経済面でのつながりを強化し、影響力の拡大を狙っている。今後トルコと米国の関係が冷えれば、その隙間を狙いトルコとの関係強化に動くのは自然だ。

 もうひとつは欧州との関係だ。トルコのエルドアン政権が2010年代以降強権色を強めたのに対し、EUは人権侵害を批判。EUとトルコの関係は冷却化した。トルコのEU加盟交渉も完全にストップした。

 しかし2015年の欧州難民危機以降、状況に変化が生じている。EUはこの問題でトルコの協力を仰がざるを得ず、事実2016年に難民問題で合意をまとめた。人権問題などでトルコ批判をしつつ、水面下では手を握る複雑な関係だ。

 今回もメルケル独首相やマクロン仏大統領がエルドアン大統領と電話協議して協力を確認。関係維持の姿勢を見せつける。トルコ側も、スパイ容疑で拘束していたギリシャ兵を解放したり、アムネスティ・インターナショナルの事務局長を釈放するなど欧州への配慮を示した。

 米牧師の釈放という一つの問題から、各方面に展開を見せてる今回の動き。中東情勢、世界経済、難民危機、米国と中ロ、欧州の国際戦略など、大きな課題が複雑に絡み合う構図を示す。

◎ 通貨危機? 牧師の話だったのに
◎ 個性派のケンカといつまで笑えるか

2018.8.19

2018年1月 1日 (月)

◆FTの2018年見通し 2017.12.31

 2018年が始まる。昨年誕生した米トランプ大統領は、既存秩序を否定するような政策で国際社会を揺るがしたが、今年も傾向は続きそうだ。世界が格差拡大やポピュリズム台頭などの課題に直面する状況も変わらない。中東の不安定とテロの懸念、北朝鮮核問題などの構図も不変だろう。世界経済は好調を維持するが、カネ余りの中でバブルが拡大しているとの指摘もある。

 英FT紙は毎年末、専門記者による翌年の展望を掲載。INCDはポイントを記録している。2018年の見通しも箇条書きする。

▽米国
・米中間選挙で民主党は過半数を得るか
  =得るがぎりぎり
・トランプ大統領に対する弾劾の動きは始まるか
  =始まる。民主党が中間選挙で下院の過半数を得るため。ただし進まない。
・米国は中国との貿易戦争を引き起こすか
  =イエス。知的所有権など。

▽米経済・産業
・ATTとタイムワーナーの合併は大規模な条件なしで認められるか
  =認められる。CNN売却のような大きな条件はない。
・テスラのモデル3sは25万台以上生産されるか
  =されない。
・S&P500 指数は年末2650以上か
  =Yes。2017年末は2673
・米10年国債の利回りは年末3%以上になるか
  =ならない。2017年末は2.405%

▽中国・アジア
・中国のGDP成長(発表)は6.5%を超えるか
  =公式の発表では超える。
・日銀は金融引き締めに転じるか
  =転じない
・インドのモディ首相は通常ではない経済政策を実施するか
  =する。(2016年の高額紙幣禁止ような通常でない政策)

▽世界経済
・新興国の経済成長は5%を上回るか
  =上回る
・原油価格は年末1バレル=70ドル以上になるか
  =なる
・ビットコインの安定的で流動性の高い市場は発達するか
  =しない

▽欧州・英国
・メイ首相は2018年末まで首相の座に留まるか
  =とどまる。Brexit交渉の中で保守党内から引きずり下ろしの動きは出にくい。
・英経済の成長率はG7で最も低くなるか
  =ならない。日本やフランスの方が低い可能性。
・マクロン仏大統領はユーロ圏の共通予算でメルケル独首相から大きな譲歩を引き出せるか
  =できない。投資基金設立など小規模な構想にとどまる。

▽中東・アフリカ・中南米
・サウジのアラムコの上場は実現するか
  =No。遅れる。
・ジンバブエのムナンガグワ新大統領は公正な選挙を実施して勝利するか
  =No。ムガベ前大統領の37年が2017年に終了。
・メキシコ大統領選で与党のミード氏は当選するか
  =Yes。ミード氏は元財務公債相。左派のロペスオブラドール氏との争いの見込み。

▽スポーツ
・サッカーW杯でブラジル、ドイツ、スペイン以外が優勝するか
  =しない。

2017.12.31

2017年9月19日 (火)

◆自動車・スマホの革命と世界 2017.9.18

 中国がガソリン・ディーゼル車禁止の方向を打ち出した。英国やフランスが2040年禁止を打ち出したのに続く動き。自動車は20世紀初頭以来のガソリン、ディーゼル車中心で発展してきたが、大転換点を迎える。

 一方、スマホは発売から10年を経過し、「次の10年」が始まる。アップルは新製品「iPhoneX」を出した。行方から目を離せない。

▼相次ぐガソリン禁止

 現在世界の自動車保有台数は12.6億台強(2015年)。生産・販売台数は年間9400万台程度だ。ガソリン車やディーゼル車が主体で、EVなどエコカーは年間260万台と全体の3%以下だ(ハイブリッドカーは除く。カリフォルニア州は2018年モデルからハイブリッド車をエコカーの対象外にする予定)。

 しかし英仏や中国の政策もあり、今後急速にEVや他のエコカー化が進むと見るのが妥当だろう。

 主役も変わる。現在の自動車産業は、独VW(フォルクスワーゲン)、トヨタ、GMとルノー・日産連合が1000万台前後を生産。約300万台以上生産しているグループが10以上ある。

 しかしEVとなれば、主役が劇的に変化する可能性がある。EVで躍進するテスラや、グーグル、アマゾンなどのIT大手が絡んでくるのは確実だ。

 EVが本格的に登場してきたのは10年ほど前。欧州などで、半分試験的にプラグインEVの利用が始まり、徐々に普及した。テスラがEV車を投入し本格的に市場に参入したのは2008年。その後販売を拡大し、いまやそれほど珍しい存在ではなくなった。

▼自動運転とカー・シェリング

 自動車業界のパラダイム変化をもたらす動きは、他にもある。一つは自動運転、そしてもう一つはシェアリングエコノミーの動向だ。

 自動運転技術は各国、各社で実験が進み、高速道路などで実現するのはそう遠い将来の話ではない。

 カーシェアリング今や世界の新たな潮流になっている。ウーバーはもちろん、各社が新しいサービスを提供、普及に弾みをかけている。国により状況は異なるが、自動車を考えるキーワードがが「保有」から「利用」に変わっているのは外せないポイントだ。

▼スマホ10年

 9月12日にアップルがiPhoneの新機種「X」(テン)を発表した。誕生から10年を経過したスマホの、今後の発展を期した製品だ。

 アップルⅡが発売され、パソコンの時代が始まったのが40年前の1977年。1995年にはWindows95が登場しインターネットの時代に入った。その後の変化は加速度的だ。主なものを掲げれば以下の通りだ。

1998 グーグル創業
2001 アップルがiPod発売。音楽配信の革命
2004 グーグル上場、Web2.0の時代
2005 ユーチューブがサービス開始
2006 FBがサービス一般公開
2007 スマホ(iPhone)発売、アマゾンがキンドル発売、世界の携帯普及50%超
2010 iPad発売(タブロイド普及)
2011 アップル時価総額世界1に
2014 FB10年、Gメール10年、アリババ上場

▼社会に大きな変化

 スマホの出荷は2011年には通常の携帯(ガラ携)を抜き、2016年の出荷は15億台弱。現在世界では半数近い人がスマホを持ち、「携帯コンピューター」として検索やEコマース、決済などで使っている。
 2015年夏の欧州難民危機の際には、荒れ海をボートで渡る難民にドイツのNGOがスマホで安全航行の情報を提供していた。NYやロンドンの地下鉄で、乗客はスマホでニュースやメールチェックを行っている。ジャカルタやマニラの青空市場では、売り子がシマホを眺め時間を潰す。スマホ所有者は常にネットで世界とつながり、スマホに依存した生活を送るようになっている。

 今日では、「スマホのない生活」を想像するのは困難。スマホは社会の必要欠くべかざるインフラの一部となった。わずか10年前の「スマホのない世界」を想像するのは、だんだん難しくなっていく。

 過去20-30年あまりのIT革命の主役を(一時的に)演じたPCや携帯電話は、販売数字から見ればすでにピークアウトした。スマホの行方も明確ではない(たとえば衣服や身体組み入れの機器などができるかもしれない)。行方には要注意マークを外せない。

 技術革新が経済、社会に大きな変化をもたらす時代。自動車、スマホのニュースに、そうした流れを再度実感する。

◎ ガレージに車を入れてた時代あり
◎ SFに確かになかったガソリン車
◎ 10年でスマホの虜 便利だが

2017.9.18

2015年12月21日 (月)

◆米ゼロ金利解除の影響 2015.12.20

 

 米FRBがゼロ金利を解除した。米金融政策は、2008年のリーマンショック後から超緩和政策が続いていた。昨年の量的緩和終了に続く今回の決定で、超緩和政策は出口に来た。金利が機能する「正常」な状態にようやくこぎ着けた。

▼多様な影響

 利上げはFRBが事前に何度も市場にメッセージを送り、市場も織り込み済みだった。このため、短期的に市場の驚きはない。為替、株式など世界の市場に大きな混乱はなかった。

 しかし、今後様々な形で利上げが影響してくることは必至だ。
 メキシコ、チリ、サウジアラビアなどは米利上げの直後、追随利上げを決めた。自国通貨の下落防止などのためだ。一方、すでに通貨安が進んだインドネシアなどは金利を据え置き、当面様子眺めだ。

 時間軸が伸びれば、さらに色々な影響が出てくる。新興国の利上げが経済の減速を招くのは避けられない。ドルは先高の観測が強い。

▼マネー逆流

 欧州中銀は今春、量的緩和政策を導入した。今後さらに緩和の姿勢を示している。日本も追加緩和のスタンスだ。引き締めに転じた米国と、欧州、日本の金融政策の方向が逆になる。世界の金融政策は、先進国が一致して緩和→ねじれた状況になる。

 リーマン・ショック後、先進国は世界の金融システムの維持や自国経済下支えのため金融緩和を進めた。この資金は新興国に流れ込み、インフラ投資など新興国の経済成長を支えた。

 リーマン・ショック後の世界経済は新興国が牽引する形で成長が続いたが、それを支えた一因が先進国の金融緩和=世界的な金あまり状況だった。

 米利上げで資金の流れが逆転し、新興国→米国へと「マネー逆流」する可能性がある(実際ある程度起こっている)。

 いずれにしろ、ゼロ金利の解除により世界の資金の流れが変化し、実物経済にも影響が出てくるのは確実だ。

▼財政悪化とバブル

 「動き回るマネー」による経済不安定以外にも問題点はある。

 世界的金融緩和がリーマンショック後の金融システム崩壊防止や世界的な恐慌回避に役立ったことは事実だ。潤沢な資金が新興企業の発展などプラスの効果をもたらしたことも重要だ。

 しかし、7年に及ぶ緩和政策は新たな課題を生んだ。先進各国の財政悪化はその一例だし、新興国では安易なインフラ投資など新たなバブルの発生も指摘される。

 利上げの影響は短期、中長期的に様々な形で世界に及ぶ。多様な目配りが必要だ。

2015.12.20

2015年10月12日 (月)

◆TPP合意の意味  2015.10.11

 日米やカナダ、豪州など12か国が参加するTPPが合意に達した。モノの関税のみならず、サービス、電子商取引、知財、環境など31分野をカバーする大型の多国間協定で、21世紀型のルールとの期待もある。その意味と影響は大きい。

▼5年半越しの合意

 TPPの交渉が始まったのは2010年。米豪など8カ国による協議だった。その後日本などが加わり12か国に拡大(米国、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、日本、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、豪州、ニュージーランド)。

 今回のアトランタでの閣僚会議は、新薬データの保護期間を巡る米豪の対立などがギリギリまで続いたが、期限を2度延長した結果ようやく合意にこぎ着けた。

▼中国を意識

 今回合意できたのは、米国がこれまで以上に取りまとめに前向きだったことが大きい。背景には、政権の遺産を残したい米オバマ政権の思惑がある。しかし、それ以上に重要なのは、中国の経済成長と国際社会における影響力の拡大だ。

 国際的な経済体制やルール作りはこれまで米国主導で動きてきた。しかし、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に象徴されるように、中国はこの分野でも影響力を増している。米国としては、新時代の貿易や投資のルール作りの主導権を中国に譲るわけにはいかない。

 そうした事情もあり、協定は法による支配、透明性だけでなく、民主主義や基本的人権などの普遍的価値共有などを書き込んだ。その辺にも、米国の戦略が出ている(ただし、下記のような事情で合意文書の全文は公開されないため、部妙な表現のニュアンスは不明なところがある)。

▼画期的

 英ガーディアンは今回の合意を画期的(landmark)と報じた。そうした報道に表れるように、TPPには大きな意味がある。合意がカバーするのは物の関税引き下げだけでなく、サービス、投資保護、地財、電子商取引、環境、国営企業の規律、政府調達、電気通信など新しい分野に及ぶ。WTO交渉がまとめようとして失敗した領域だ。

 WTO交渉の不調を見て、世界では2000年ごろからFTA(自由貿易協定)が増えている。しかしFTAは2国間あるいは少数の国の間の取り決めにとどまり、多国間のルールになっていない。

 その点TPPは、モノの貿易を越えた分野をカバーしているのみならず、多国間の協定だ。そうした点で、21世紀のルールになる要件を備えている。

 TPPの意義を説明するときに、バリュー・チェインという言葉もよく出て来る。グローバル経済の下では、モノやサービスは国境を越えて動き、その輪が円滑につながっていないと機能しない。それを支えるルールは、多国間の協定であるのが望ましい。ここにも、時代のニーズがある。

▼他の協定に波及も

 世界には200以上のFTAが結ばれている。また、多数の2国・地域間や多国間の交渉中だ。日本を例に取れば、日中韓自由貿易協定や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの交渉を始めている。TPPがこうした協定の雛型になる可能性も十分にある。

▼批准は不透明

 ただし、TPPがすんなりと発効するかどうかは不透明。発効には域内GDPの85%以上で、かつ6か国以上の批准が必要。実際には日米を含む6か国の批准が求められる。

 米国ではオバマ政権与党の民主党内に反対が多く、次期大統領有力候補のクリントン元国務長官も閣僚時代の賛成から「現時点では」としながら反対に転じた。野党共和党は比較的自由貿易に前向きとされるが、今回の合意には譲歩し過ぎとの批判もある。批准の見通しは現時点では見えない。

 国内の抵抗が大きいのは他の国でも同じ。政治指導者には、そうした国内調整を乗り越える力量が求められる。

▼透明性は不十分

 そうした国内抵抗への配慮もあってか、TPP交渉は原則非公開の下で進められた。今回の合意文書も、向こう4年間は公表されない。

 このため、新ルールの詳細は不明なところが残る。上記のように、「民主主義」など原則の位置づけも完全にははっきりしない。

 日本では官邸HPも含め「大筋合意」となっているが、英語の発表はagreeed, final agreementなどが多い。この辺も分かりにくい。

2015.10.11

2015年7月 3日 (金)

◆ギリシャ問題重大局面 2015.6.28

 ギリシャ問題が重要局面を迎えた。支援を巡る同国とEUの交渉は、期限切れを目前にしても難航。ギリシャのチプラス首相は国民投票の実施(+数日間の支払い猶予要求)という奇策に出た。しかし、EUは支払期限の延長を拒否。この先どう転ぶか見通しがつかない。今後、どんなどんでん返しがあってもおかしくない。

▼チキンゲーム

 ギリシャ支援を巡る交渉は、さながらチキンゲームのような様相を呈してきた(いる)。EUはギリシャ支援の条件として、年金改革を含む財政改革を要求。ギリシャはこれを拒否し、代わりに実効性が不明な企業増税案などを示した。ギリシャのIMFへの15億ユーロの債務返済期間が30日に迫る中、25-26日にはEU首脳会議が開催。市場などでは「最後には双方が歩み寄る」という見方もあったが、ここでもまとまらなかった。

 27日の未明、チプラス首相は突然、EUの突きつけた条件を受け入れるかどうかを問う国民投票を7月5日に実施すると表明。債権団に国民投票終了まで数日の猶予を求めた。これに対しEUのユーロ圏財務相会議は、6月末の支払期限の延長を拒否。「国民投票の結果を待って」というギリシャ側の主張を退けた。

▼先行き不明

 今後の動きは不透明だ。情勢急変を受けて、週明け29日以降の市場が荒れるのは必至。欧州中銀が欧州時間28日中に何らかの対策を表明するとの情報も流れている。

 ギリシャ国内では、預金の引上げや国外への送金が急増している。EUとの交渉決裂・ユーロ離脱が決まれば、預金引きおろしや海外送金凍結が懸念されるためだ。

 30日の期限まであと2日。この間、様々な動きがあるのは間違いない。数時間どころか、分単位で情勢が急変する可能性も大きい。

▼デフォルト懸念 

 そもそも今回のギリシャ問題の再燃は、1月の総選挙がきっかけだった。ギリシャはEUやIMFの支援で財政再建を進めてきたが、緊縮財政の下で経済は疲弊。6年連続でマイナス成長を記録していた。こうした中で、チプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)が反緊縮、EUとの再交渉というポピュリズム的な政策を訴えて選挙に勝利した。

 EUはいったん数カ月の猶予を与えてギリシャとの再交渉を受け入れたが、協議は最初から難航。ギリシャ側は具体的な計画も示さないまま時間が浪費した。EUが支援を延長した期限の6月末に近づいても対立が続き、このままではEUからの支援延長なし→IMFなどへの返済が滞る可能性が大きくなった。デフォルトである。そうなれば、ギリシャのユーロからの離脱も現実味を帯びる。

 同時に、年金や公務員への給与支払いにも支障をきたすようになる。そんなことになれば、国内の混乱は一層深まる。

▼問題の広がり
 
 ギリシャの財政粉飾が発覚し、ユーロ危機の引き金になったのが2009年10月。危機の当初は、ギリシャなどの破綻が欧州の金融機関の経営危機につながり、ひいては欧州の金融システムを揺るがしかねない状況にあった。

 その後EUは金融システム安定の機関やルールなどを定め、今では仮にギリシャ財政が破たんしても経済・金融的な影響は限定的とされる。

 しかし、読み切れないのが政治的な影響だ。ユーロはEU統合のシンボル。そこからギリシャが離脱ということになれば、EU統合へのダメージは必至だ。EUの求心力が弱まり、加盟各国の反EUの動きを助長しかねない。

 欧州は米国や台頭するアジアに伍し、中東不安定などの難しい課題に対応するために統合に将来を見出したはずだ。そのEU統合の理念が傷つくとすれば、問題はギリシャの財政などで済む問題ではない。未来の世界戦略にも関わる。

▼刻一刻

 この記事はアジア時間6月28日まで(欧州時間28日午前まで)の情報に基づいて書いている。情勢は数時間、数分単位で変わり得る。6月30日の返済期限切れ、あるいは7月5日のギリシャ国民投票まで、いつ予想外のドラマが起きても不思議でない状況が続くだろう。その一つ一つの動きが、EUの将来を左右しかねない。

20150628

2013年9月15日 (日)

◆9.11から12年と9.15から5年の世界 2013.9.15

 世界の安全保障を揺るがした9.11から12年。世界経済のあり方を根本から揺るがした9.15のリーマンショックから5年。世界と米国について、考えることが多い週となった。

▼米国の威信低下

 シリア情勢は米国による武力行使がいったん遠のき、当面の焦点は外交努力による調整に移っている。外交工作は、シリアの化学兵器を国際監視下に置くロシア提案中心で進む。1週間前まで武力行使を前面に出してきた米国の威信低下は隠しようがない。

 11日は2001年の同時多発テロから12年。その後2003年のイラク戦争で、開戦理由とされた大量破壊兵器が発見されなかったこともあり、米国の信頼は揺らいだ。米国内では嫌戦感情が高まり、紛争への不介入の傾向が強まった。

 アラブの春が起きリビアやエジプト、シリア情勢が混乱しても、米国は深入りを避けた。これが地域の混迷を深めたとの指摘がある(英IISSの戦略概観など)。

▼警察官なき世界

 シリア問題ではオバマ大統領が早期に「化学兵器使用は越えてはならない一線」と明言したことが自縄自縛となり、選択肢を狭めた可能性がある。その背景には、地域情報の収集能力の低下がある。

 オバマ大統領は「当面外交努力優先」と述べた10日のテレビ演説で、米国は世界の警察官ではないとの認識を強調した。それは事実だし、米国が世界の現状や自国の力を勘違いするともっと困る。しかし、警察官がいない世界の安全保障は脆弱で、世界は多くのリスクに直面する。シリア情勢を巡る動きは、そうした現実を突き付ける。

▼実体経済は回復

 リーマンショックからはや5年が過ぎた。世界は恐慌のリスクは回避し、実体経済に限れば5年前に比べ成長を実現。新興国経済は急速な発展を遂げた。

 当時は、「100年に1度のショック」と懸念された。恐慌の回避で、いまやそのような表現が使われることはまずない。

▼先送り

 しかし、当時指摘された金融システムの見直しや新自由主義経済のモデルの問い直しは十分に行われていない。財政赤字は拡大し、金融分野では新たなバブルが膨らんでいる可能性が大きい。

 「喉元過ぎれば」ではないが、構造的問題は先送りされいる。それを克服する政治指導力も十分でない。リーマンショックから5年の現実だ。

2013.9.15

2013年4月 8日 (月)

◆日銀の新金融緩和策 2013.4.7

 日銀が黒田新総裁下の初の政策決定会合で、新金融緩和策を打ち出した。マネタリー(通貨供給量)の2年で倍増など、従来とは「次元の異なる」金融緩和。2年内に2%の物価上昇を実現し、デフレ脱却を目指すとしている。

▼期待とリスク

 決定は市場の予想を上回るサプライズを与えた。内容は市場が期待したメニューをほぼ盛り込んだもの。決定を受けて株価は上昇し、長期金利は低下(乱高下を伴った)。為替市場では円安が進んだ。

 もちろん、課題も指摘される。通貨供給量を増やしても、実体経済の活性化に結び付くかは分からない(日銀は国債などの買い入れを通じて民間金融機関に通貨供給するのであって、実体経済に回るかどうかは民間金融機関や民間企業野の活動に関わる)。

 日銀券発行以上に国債買い入れを実施することは、資産インフレなどに結びつかないかとの懸念もある。政府が適切な財政再策や競争力強化策を行わなければ、金融緩和の効果もゆがんだ形でしか表れないとの意見も強い。

 ともあれ、今回の決定が市場や世界の金融当局から「従来とは変わった」と受け止められたことは事実。世界の中銀が進めている新局面の金融緩和で、日銀が先頭を行く面もある。大いに注目だ。

▼新政策の内容

 金融政策は正確な認識が何より重要。今回の決定の内容を整理する。

>物価2%上昇の2年程度内達成を目指す=従来の「なるべく早く」より一層明確に。
>量・質ともに次元の違う金融緩和=白川総裁時代からの転換を宣言。
>マネタリーベースを2年で2倍=現金と金融機関の当座預金。
・2012年末の138兆円→14年末270兆円。
・年60-70兆円増加するように調整。
>長期国債の増額
・保有額を2年で倍増=12年末89兆円→14年末190兆円。
・年50兆円増加するよう買い入れ。月額グロス7兆円。
・長期国債の買い入れ対象拡大(40年物を含む全ゾーンに)。平均残高3年→7年。
>金融市場兆節の目標を無担保コールレート→マネタリーベースに
>ETF、J-REITの買い入れ拡大
>資産買入基金廃止=買い入れを一本化
>銀行券ルール(国債買い入れ額<銀行券発行残高)の一時停止
・ただし、従来も基金買入れを含めると国債買い入れが銀行券発行を上回っており、事実上守られていなかった。
>財政ファイナンスではないと強調。
>市場との対話の強化。 

2013.4.7

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