« ◆2020年の世界10大ニュース 2020.12.31 | トップページ | 2021年01号 (1.1-9 通算1069号)国際ニュース・カウントダウン »

2020年12月31日 (木)

◆Brexit後の欧州の課題――英国の完全離脱後の展望 2020.12.31

 英国のEU離脱後の移行期間が12月31日で終了し、英国はEUから完全離脱する。FTAを巡る交渉は期限ギリギリで妥結。貿易関税はゼロに保たれ、懸念された混乱は回避される。しかし通関手続きは復活し、両者の距離は広がる。

 折しもコロナ禍で世界も欧州も様々な困難を抱える。英国の完全離脱後のEUや欧州はどんな課題に直面し、どんな動きを見せるのか。節目の動向を整理する。

▼ギリギリのFTA合意

 英国がEUから離脱したのは2020年1月末。しかし2020年中は移行期間で、従来通り関税ゼロや通関手続きなしが保たれていた。移行期間終了後の通商関係を巡り両者は協議を続け、難航の末に12月24日に合意に達した。英国、EU双方における議会や加盟国の承認などの手続きもスピード処理され、合意なしの移行期間終了という事態は回避した。

 合意により、EUと英国はFTAを締結。貿易の関税ゼロを維持し、優遇関税で取引できる量を制限する関税割当枠も設けない。航空や鉄道、陸路、海上交通などは現状を維持する。

 一方、英国はEU単一市場から抜けるため、通関手続きなどは復活する。金融のサービスや許認可、監督なども原則分断される。人の移動や移住も厳しくなる。英国はEUのルールやEU司法裁判所の定めから外れる。

▼問題先送りの側面も

 交渉で対立が続いたのは、(1)英海域でのEU漁船の漁業権(2)公正な競争や環境規制の確保(3)紛争解決手段、の3分野だ。このうち漁業は、経済的な利害勘定の面が大きく、段階的に漁獲量を減らすなどで妥協した。

 公正な競争条件は、例えば英国が環境や労働規制を緩めたら公正な競争が維持できなくなる。そうした事態を避けるための措置だ。英国がEUのルールを尊重するとの立場を書き込むことで妥結した。

 英国がEU司法裁の影響下から離れた後は、新たな紛争解決手段が必要になる。EU側は当初、EU司法裁が最終判断をすることを求めたが、最終的には必要に応じ専門委員会を設置することなどで決着した模様だ。

 公正な競争条件や紛争解決については曖昧な点も指摘される。合意文書の詳細が公表されるまではっきりしない点が残るが、両者が合意を優先するため一部問題を先送りした面もあるようだ。

▼英国に見えぬ将来戦略

 合意なき離脱による混乱は避けられるものの、Brexitの影響は今のところ英国、EU双方においてマイナス面ばかりが目立つ。特に離脱という決断とした英国にとっては、そのメリットが見えてこない状況だ。

 そもそも英国が2016年の国民投票で離脱を決めたのは、主権を取り戻したいという意識、EUに対する不信、移民増加への不満、エスタブリッシュメントに対する批判などいくつもの要因が重なり合った結果である。EUから離脱すれば多額の拠出金が戻るなどという誤った情報に基づく判断もあった。

 保守派政治家は主権の回復にこだわり、英国の栄光を強調する。一方で実際に離脱投票を投じた多数の普通の人々は、格差拡大への不満や移民拡大への批判などをEU離脱に託した。内向きの色彩が強い人も多かった。離脱派内部でも利害が一致していないという奇妙な構図の上にBrexitは起きた。

 EU離脱に伴い、関税はゼロに保たれても通関手続きなどは復活する。金融サービスも、英国の拠点からEU諸国を直接カバーすることはできなくなる。経済的にマイナスの影響が出るのは明白だ。

 一方、EU残留を望んだ、スコットランドや北アイルランドの独立運動などが出て来る可能性もある。

 こうしたマイナスの影響や懸念を補って余りあるメリットはあるのか。ジョンソンン首相はアジアとの関係強化などを主張するが、具体的な政策を示せているわけではない。現時点で、EU統合路線に代わる未来戦略を打ち出せているとは言えないのが現状だ。

▼EU:不明瞭な統合戦略立て直し

 一方のEUに取っても、初の加盟国減少の影響は小さくない。そもそもEU統合のメリットの1つが、規模の効果による国際的な影響力の拡大だった。EUが環境や巨大IT企業規制のルール作りなどで世界的な影響力を保持しているのも、規模の力が大きい。英国の離脱でEUの規模は縮小し、その分国際的影響力が低下しかねない。

 英国民投票が事前予測に反し「まさかの離脱」になった理由の1つに、EU統合の恩恵が目に見える形で示せなかったことが指摘される。EUの求心力回復は、Brexitに突き付けられた課題の一つだった。

 EUはその後、統合戦略の再構築を協議し、いくつかの未来図を示した。しかし、EU住民に強いインパクトを与えるには至っていない。統合戦略の立て直しが改めて問われる。

▼コロナで変わる世界

 欧州と世界を取り巻く環境は、英国がEUを離脱し、通商交渉が始まった1月から大きく変わった。新型コロナの感染が拡大し、経済は大きな打撃を受けた。人の移動は大幅な制限されるようになった一方、オンライン化は急速に進んだ。世界の枠組みはすっかり変わった。

 英離脱による経済への影響も、コロナによる経済的打撃の陰で見えにくくなっている面もある。足元の課題が、Brexit対応よりコロナ対応に移っているのも事実だ。

 しかし長期的には、EUにしても英国にしてもBrexit後の将来戦略は欠かせない。時代を読んだ大きな構想力が問われる。それは世界の枠組みの行方にも影響する。

2020.12.31

 

 

 

 

 

 

 

 

« ◆2020年の世界10大ニュース 2020.12.31 | トップページ | 2021年01号 (1.1-9 通算1069号)国際ニュース・カウントダウン »

欧州・EU」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ◆2020年の世界10大ニュース 2020.12.31 | トップページ | 2021年01号 (1.1-9 通算1069号)国際ニュース・カウントダウン »

2021年2月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            
無料ブログはココログ

ウェブページ