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2020年11月 2日 (月)

◆テロに揺れるフランスーー問われる対策、イスラムとの関係 2020.11.1

 フランスがイスラム過激派のテロに揺れる。9月以来テロが続発し、仏政府は取締強化策を打ち出した。しかし社会の分断は一層深まり、海外のイスラム諸国からは反発が強まる。「イスラムとの関係」という根深いにも改めて直面する。

▼相次いだテロ

 9月以降、フランスで起きたイスラム過激派によるテロは以下の通りだ。

・9月25日:パリの風刺週刊紙のシャルリエブドの旧本社前で、男女2人が刃物で襲われ負傷。
・10月16日:パリ郊外で中学教師が斬首される。犯人はチェチェン人の18歳。
      教師は授業で、シャルリエブドが掲載したモハンマドの風刺画を生徒に見せた。
・10月29日:ニースの教会でナイフによる襲撃事件。3人死亡。

▼マクロン政権が対応強化

 テロを受けてマクロン大統領は対策を強化した。

 29日にニースでテロがあると直ちに現地を訪問し、犯行を非難。政権は同日、テロ警戒水準を三段階の最高に引き上げた。

 翌30日には、治安部隊7000人を全国に配置し警備を強化すると発表した。

▼ひるまぬ決意、表現の自由

 マクロン大統領は21日の演説で、「フランスは風刺画をやめない」と表現の自由を重視する立場を強調した。その上で「我々はひるまない」とテロとの戦いの決意を述べた。

 大統領は、イスラムの過激思想がフランスの法体系より優先するとの考え方を「分離主義」と呼び、取締りを強めている。人の尊厳を犯すような宗教団体に対し、当局が解散をしやすくするよう法律改正を計画。モスクの資金源の監督も強化する予定だ。

 先立つ10月2日には、子どもが学校の代わりに家で義務教育を受けることを原則認めない方針を打ち出した。イスラム過激派を念頭に、不適切な教育をする保護者がいるためと指摘した。 

 直接のテロ対策強化だけでなく、表現の自由や教育制度などからも対応策を打ち出したーー一連の対応からこんな特徴が浮かび上がる。

▼イスラム諸国の反発

 こうした対応に、海外のイスラム諸国は反発を強める。フランスの動きが、過激派のみならず一般のイスラム教徒の生活やモスクの活動なども圧迫するという批判だ。

 トルコのエルドアン大統領は、マクロン大統領は「精神治療が必要」などと個人批判を展開。そのうえで、フランス製品の不買を呼び掛けた。インドネシアのジョコ大統領は「世界中のイスラム教徒の精神を逆なでした」と非難した。

 エジプトのシシ大統領、サウジアラビアの外務相なども同様の批判を表明した。レバノンなどでは反フランスの抗議デモが起きた。

▼宗教・文化の相違

 このように動きが人がっているのは、問題が単なるテロに留まらず、背後にある宗教や文化の違いに及んでいるためと見るべきだろう。

 フランスなど欧州諸国には、第2次世界大戦後、旧植民地などから多数のイスラム教徒が移住。フランスやドイツでは全人口の10%近い人口を占めるとみられる。

 こうした人々が、社会にうまく溶け込んでいるとは言い難い。生活スタイルや文化の違いもありなかなか溶け込めない。居住区も異なる場合が多い。社会の分断が一段と大きくなっているのが現状だ。

 宗教的な理由から軋轢が表面する事例もある。フランスは政教分離を基本理念とし、学校でスカーフで顔を隠すは認めない。宗教上の理由からスカーフ着用求める人との問題が、繰り返し表面化してきた。

 表現の自由m対立の材料になる。フランスが基本理念とする表現の自由には、風刺画も含まれる。これに対し、イスラム教は偶像崇拝を禁止しており、ムハンマドの風刺画など冒涜以外の何物でもない。2015年のシャルリエブド襲撃テロや、今年の9-10月のテロもそうした脈略で起きた。

 社会の分断や相互不信は、今回の一連のテロや対策で一層深まったとの指摘がある。

▼文明の衝突

 欧州は2015年、100万人を超える難民が中東から流入し、難民危機を経験した。その後各国で反難民、反イスラムの動きが拡大した。フランスの国民連合、ドイツのAfDなど反イスラムの色彩を帯びる政党は、一定の支持を維持している。2019年の世論調査によると、フランスでは「イスラム教の価値観はフランス社会と相いれない」と考える人が6割を占めた。

 一連のテロとフランス政府の対応、それに対するイスラム諸国の反応は、「イスラム過激派のテロ」という問題の範囲を超えて、欧州社会とイスラムとの関係というより根源的な問題を再び突き付けている。「宗教・価値観や衝突」や「文明の衝突」という切り口で見ることも可能かも知れない。問題の根は幅広く、深い。それは世界の今後の行方に、大きくかかわってくる。

◎ コロナ下にテロのニュースがまた届く
◎ 「過激派の仕業」と蓋しても終わらない
◎ テロの報 宗教戦争の影浮かぶ
 
2020.11.1

 

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