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2020年10月25日 (日)

◆グーグル提訴の衝撃 2020.10.25

 米司法省がグーグルを反トラスト法(独禁法)で提訴した。IT大手を巡る大型訴訟は約20年ぶり。大手IT企業に対する規制強化の流れを象徴する動きであり、世界のIT業界の地図を変える可能性がある。

▼競争阻害の疑い

 司法省は20日、首都ワシントンの連邦地裁に、テキサス州など11の司法長官と共に提訴した。グーグルがネットの検索・広告市場で競争を妨げる排他的な行為をし、独占を維持しようとしたと主張した。

 具体的には、(1)スマホメーカーに対し、競合の検索サービスの初期搭載を禁じる独占契約を結んだ、(2)アップルに毎年数十億ドル(最大120憶ドル)を払い、自社の検索サービスを標準搭載させたーーなどが反競争的な行為に当たるとしている。

 グーグルはスマホ利用者は他社の検索サービスも利用できるなどとし、司法省の主張に反論する。

▼GAFAの時代

 今回の訴訟は、大手IT企業に対する批判が強まっている中で起きた。

 IT業界ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やマイクロソフトなど大手企業への集中が進む。グーグルの検索やユーチューブ、フェイスブックのSNSなどは世界で10億人単位の利用者を抱える。大手IT企業は膨大な顧客のデータを抱え、それをベースに新たなサービスやビジネスを展開している。

 データの蓄積が少ない中小の企業や新興企業は大手に対抗しにくく、GAFAなどへの集中がさらに進むという流れが加速した。

 大手IT企業は時価総額ランキングで世界の上位を独占し、2020年にコロナ感染が拡大すると世界の資金は益々IT業界に流れ込むようになった。

▼大手IT批判~EUから世界へ

 2018年にファイスブックからの大量の個人情報流出するなど、大手による情報独占の弊害も目立つようになった。将来競合になり得る新興企業が出て来ると、大手IT企業が巨額の資金を活用して買収し、競争の芽を摘んでいるという指摘も多い。

 こうした流れの中で大手IT企業に対する批判が拡大し、規制論も強まっていった。

 いち早く動いたのがEU。欧州委員会は2018年グーグルに対し、EU競争法違反で43億ユーロの制裁を科した。グーグルがスマホのOSアンドロイド端末に自社の検索ソフトを抱き合わせで搭載するように要求してるとの判断だ。欧州委員会はこれ以外にも、EU競争法を根拠にした巨大IT企業規制を強めた。

 また、2018年には一般データ保護規則(GDPR)を施行。個人情報の保護などを強化した。EUと取引をする世界中の企業がGDPRへの対応迫られた。

▼米国でも規制強化へ

 米国は従来、大手IT規制より育成を重視してきた。しかし2018年頃から徐々に流れが変わった。

 2019年7月には、司法省が巨大IT企業が独禁法の調査に着手。1年の調査を経て、今回のグーグル提訴につながった。

 2020年7月には、議会下院の司法委員会がGAFAのトップの出席を求めて公聴会を実施。10月には下院が報告書をまとめ、大手IT企業規制の必要性を強調した(ただし、報告書は民主党中心に纏められ、共和党議員は別の報告書を発表した。両者は規制強化で一致するものの、その内容については意見が異なる)。

▼20年ぶりの大型訴訟

 今回のグーグル提訴は、米産業界では約20年ぶりの大型訴訟となる。歴史的に重要な訴訟を振り返れば、以下の通りだ。

・1906年:スタンダード石油(1911年に34の会社に分割)
・1969年:IBM(司法省は分割を要求、1982年に和解)
・1974年:ATT(1984年に長距離会社と7つの地域会社などに分割)
・1998年:マイクロソフト(2004年に和解、技術情報開示など)
・2020年:グーグル

 1998年のマイクロソフト提訴では、企業分割の可能性なども指摘されたが、結局6年後にマイクロソフトが技術情報の開示を拡大することなどで和解した。

 しかし、訴訟の期間中マイクロソフトは競争力の強さを前面に出すような行動を取りにくく、グーグルはじめ他社の台頭を招くようになった。PCやソフトの分野でマイクロソフトが突出する状況が変わり、競合する新興企業が育った。その意味で、訴訟の影響は大きかった。

▼グーグル:技術革新の象徴

 過去約20年間、グーグルはIT産業の発展やダイナミズムを象徴する企業だった。革新的な技術力を武器に、検索からスマホのOSであるアンドロイド、TouTubeなどで次々新市場を育てた。自動車の自動運転など次世代の技術でも世界をリードする。

 「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです」(Our mission is to organize the world’s information and make it universally accessible and useful)という分かりやすいメッセージを始め、様々なIT文化を発信。IT革命を先導する存在だった。

 そのグーグルが巨大なり、競争の阻害を糾弾されるようになった。時代の変化を物語る。

▼訴訟の行方

 訴訟の行方がどうなるかは分からない。司法省とグーグルの主張は真っ向から対立しており、専門家の見方もまちまちだ。ただ、決着までに数年はかかるという見方が多い。また、和解や罰金による決着の可能性も指摘される。

 ただ結果がどうなるにせよ、訴訟の期間中グーグルが活動に制約を受ける可能性が大きい。競合する新興企業の買収がしにくくなるなど、M&A戦略に影響が出て来るという見方がある。

▼規制はさらに拡大の可能性

 規制がグーグルだけに留まるとは限らない。ファイスブックなど他のIT大手も、ユーザー情報の囲い込みや競合企業の買収などをテコに成長している。同様の提訴があるとの予測もある。

 SNSに対する規制論も浮上してきた。プラットフォーマーと呼ばれるSNS運営会社(巨大IT企業も含まれる)は、利用者が投稿した内容に法的責任を負わないでいい、という条件の下で急成長してきた(米通信品位法230条)。投稿に虚偽の情報や差別用語が含まれていても、直接責任を負わなくていい内容で、メディアなどが掲載責任を負うのと対照的だ。

 しかし、巨大プラットフォーマーの社会的な影響力とが増加するのに伴い、世間の目は変わって来た。投稿内容への責任を問われるようになれば、今までのビジネスモデルは通用しない。

▼変わる業界地図

 IT業界はただでさえ急速に変化している。新型コロナの流行以降、Zoomなど新興企業が急成長している。通信やスマホは5G時代に入り、これまでにない新サービスが登場してくるだろう。中国は国が情報管理を強める一方、アリババなど巨大企業が世界的な影響を強めている。

 ATT分割やマイクロソフト訴訟の時代に比べ、IT業界の変化は遥かに速度を増し、大胆になっている。その変化の要因になるのは、技術、国家覇権、そして規制体系などだ。

 司法省によるグーグル提訴は、巨大IT企業規制という時代の潮流の象徴的事例であるし、米産業史という脈略でも特記される出来事となる。

◎ ベンチャーの成功、権威化 世のならい
◎ 産業史、流れの節目に規則の目
◎ 技術革新(イノベーション)時々規制の資本主義

2020.10.25

 

 

 

 

 

 

 

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