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2020年7月 5日 (日)

◆香港1国2制度の黄昏 2020.7.5

 香港で国家安全維持法が施行された。中国の直接統治が強まり、1国2制度の形骸化の懸念が強まる。自由な自治を前提としてきた香港は、重大な曲がり角を迎えた。政治体制や価値観を巡る米欧と中国の対立にとっても、重要な節目になる。

▼中国が直接関与

 国家安全法は6月30日に中国が交付し、同日午後11時に香港で施行された。主な内容は、(1)国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託を犯罪を規定、(2)中国政府は香港に治安維持期間を新設する、(3)香港の他の法律と国家安全法が矛盾する場合は、国家安全法を優先する、などだ。

 (1)の犯罪の規定は、反中的な抗議活動や民主化デモなどを念頭にしているとみられる。(2)は、これまでの香港政府を介した間接的な関与ではなく、中国が香港に直接関与することを意味
する。(3)は、香港法が中国法の下に置かれことを鮮明にする

 

▼1国2制度の骨抜き

 

 香港は1997年の返還から50年間、「1国2制度」を約束されてきた。香港は中国の領土でありながら、法律や司法などは香港独自の制度を維持する仕組みだ。香港のビジネスは英国法の影響下に作られた香港法の下で運営され、金融業などは返還前と変わらず繁栄を維持してきた。

 国家安全法は、香港法が中国法の下に位置づけられると明確化した。1国2制度が骨抜きされると言ってもいい。

▼中国と同じ状況に

 安全法は外国人にも適用される。外国人であっても、「国家分裂」をみなされる発言は許されないし、違反を理由に逮捕されることもある。

 いわば、中国国内に居るのと同じ状況になる。これまで香港は、「言論や通信の自由がある地域」だったが、中国と同じようになる、と考えるのが分かりやすい。

▼中国は民主化に危機感

 中国が国家安全法制定に動いたきっかけの1つが、昨年の抗議デモと言われる。香港の議会が、香港で犯罪を犯した犯人を中国に送ることを可能にする「逃亡犯条例」の制定に動いたことに、民主派の住民らが反発。昨年6月以降、100万人、200万人以上が集まる大規模抗議活動が続いた。

 抗議活動の要求は民主化拡大の要求にもつながり、11月の区議会選(権限は小さいが、民意のバロメータと位置付けられる)でが民主派が圧勝した。

 この間、香港政府は有効な対抗策を打ち出せず、中国政府は危機感を強めた。結果、直接統治に繋がる香港安全法制定に動いた、という見方だ。

▼「香港の自由の死」

 香港の民主派住民らは7月1日以降、安全法に対し反対活動を展開。これに対し香港警察は取締りを強化し、安全法に対する逮捕者を出した。報道機関やネットに対する監督も強化している。香港の民主派団体も解散を余儀なくされるなど、統制が強まっている。

 元々香港の社会から自由が失われていくという見方は、幅広くあった。例えば2015年に政策された映画「十年」は、自由が失われてた10年後の香港の日常を淡々と描いている。

 しかし、今回は、1国2制度が急激に覆される展開。民主派からは(例えば蘋果日報=アップルデイリー=代表など)は、「香港の自由は死んだ」などの発言も出る。

▼経済にはダメージ、中国は想定済み

 米欧など国際社会は安全法制定に反発。米国は香港や中国に対する制裁措置を発表した。香港に進出している企業は、香港法による財産の保護などが保証されなければビジネスも展開しにくい。事業の撤退などの動きもでてくるだろう。実際、ヘッジファンドなど金融機関には、拠点を香港からシンガポールに移す事例もある。

 経済的なダメージは避けられないだろう。しかし、中国政府もその辺は十分に理解した上での決断だろう。香港が中国経済に占める割合が、返還時とは比べ物にならないほど縮小した(1997年には香港のGDPは中国の7%程度、現在は2%程度)。これも、中国が思いきった決断ができる理由の1つだろう。

▼香港住民の受入れ

 民主派の住民らが、香港から海外に流出する動きもある。旧宗主国の英国や豪州、台湾などは、香港住民を受け入れる姿勢を表明している。

 ただし、百万人単位の流出になれば、簡単に対応できるものではない(香港の人口は750万人)。欧米などの中国批判・民主派支持が、単なる言葉だけのものか。それ以上のものになるかも問われる。

▼欧米vs中国の最前線

 香港問題は、香港個別の問題であるほか、国家体制や価値観などを巡る米欧と中国の対立(競合)の最前線でもある。欧米は自由や民主主義、法の支配を尊重する体制が、人々の幸福や経済発展という観点から見て相対的に優れていると主張してきた。香港のあり方でも、中国が「1国2制度」を尊重する方が利益になる、という読みがあった。

 ただ中国は、欧米のモデルにとらわれない国家のあり方や経済発展を志向する傾向を強めている。2008年の世界金融危機以降は特にそうだ。そして、経済成長の持続や人々が豊かになるという面では、結果を出している。

 国際社会における存在感を拡大し、中国式モデルが新興国などから支持を拡大しているのも事実だ。

 香港問題は、自由や民主主義、国家のあり方に関わるこうした問題に改めて問いを突き付ける。香港住民受入れなど、個別問題についても総論では答えにならない疑問を投げかける。

 

◎ コロナの夏1国2制度黄昏時
◎ 「自由の死」を呆然と見つめ盛夏来る
◎ 嫌われても中国伸長この事実
◎ 「頑張れよ」声だけ声援空虚なり

2020.7.5

 

 

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