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2020年3月 1日 (日)

◆アフガン和平合意の見方 2020.3.1

 米国とアフガニスタンの武装勢力タリバンが和平合意に調印した。2001年のアフガン戦争勃発以来初めての合意で、歴史的な節目ではある。

 ただし、合意で平和や同国の安定が見えて来るかは定かでない。合意の背景に、大統領選での得点を狙う米トランプ政権の思惑もちらつく。評価は簡単ではない。

▼半世紀に渡る混乱

 アフガン混乱の1つのきっかけは1970年代末のソ連による侵攻。ソ連を後ろ盾とする政府への抵抗が広がった。1989年にソ連が撤退した後も、武装集団が各地に残った。

 各派が対立する中から1990年代にタリバン政権が成立。北部など一部を除き国土を支配した。このタリバン政権時代に、ウサマ・ビンラディンを指導者とするアルカイダが拠点を構え、全世界に向けテロを展開した。

 2001年の米同時テロの後、米国は国際社会の同意を取り付けてタリバン政権を攻撃(アフガン戦争)。同政権を崩壊させた。

▼アフガン戦争後の動きと国際支援

 アフガン戦争の後に、2004年に初の大統領選が実施され、カルザイ政権が成立した時期には国の再建や治安改善への期待が高まった。

 国際社会はアフガンの安定と復興のために支援を強化。国連治安支援部隊(ISAF)は一時最大14万人の治安維持部隊を駐留させた。ISAFから2003年に指揮権を受け継いだNATO軍や米軍が駐在した。経済面の支援も拡大した。

▼治安安定せず

 しかしその後も国家の再建が進んだとは言い難い。混乱は継続し、治安も安定しなかった。

 タリバンは地方などから徐々に勢力を回復。中央政権と地方勢力の対立も顕在化した。中央政府の支配が及ぶのは首都カブールやその周辺に限られる。

 同国の治安権限は2014年末にNATO軍からアフガン政府軍に移された。しかし政府軍だけで治安を維持できるような状況ではない。米軍は現在1万2000人規模の駐在を続け、NATOはアフガン政府軍支援の名目で駐留を継続する。

 首都カブールを含む各地ではテロが絶えない。昨年12月には同国東部で緑化事業などに取り組んでいた中村医師が殺害されたが、これも治安の状況を物語る。

▼米軍は撤退模索

 米国は何度も駐留軍の規模縮小や撤退を目指したが、実現しないばかりか、一時的にはむしろ増派を迫られた。

 トランプ大統領は選挙戦でアフガンからの撤退を公約に掲げた。しかしこれまで目立った成果はなかった。今回の合意発表は、そうした状況下で行われた。

▼見えない詳細

 合意によると、米国は今後段階的に撤退し、最終的に2021年春に完全撤退する。タリバンはアフガン政府の対話を促進し、国際テロ組織に拠点を提供しないことなどが盛り込まれる。

 しかし詳細は不明なところが多い。約束を実現できるかどうかも不透明だ。

 特に気にかかるのが治安の維持。タリバンは未だにテロを実施している。加えて、アフガンにはアルカイダなど約20のテロ組織が活動を続けるといわれる。合意の紙一枚で治安が安定すると考えたら楽観的過ぎる。

▼戦略不在のリスク

 タリバンと米国(およびアフガン政府)の対話は、数年前から断続的に続けられてきた。トランプ政権下でも2019年秋など、合意間近と言われた時期もある。今回の合意には様々な狙いがあるのだろうが、米トランプ政権が大統領選をにらみ、とにかくまとめたという印象も消えない。

 昨年明らかになった米政府の内部報告書(いわゆるアフガン・ペーパー)は、米政府高官の証言として、米国がアフガンの事情を何も理解しないまま場当たり的に対応してきた実態を物語っている。その後、米国のアフガン理解が深まったとは推測しがたい。理解不在、戦略不在の政策決定がまた行われる危険性はないのか?気になるところである。

 アフガン情勢は不明な点が多く、入手できる情報も限られる。思い込みは禁物である。言葉に踊らされることなく、一つ一つの動きをきちんと見極めていく必要がある。

 

◎ 半世紀の戦乱の鬼子 乱立す
◎ 銃弾とテロとの生活3世代
◎ 「和平」の報 マユツバに聞く土漠の民
◎ 大国の身勝手十分に慣れたけど

 

2020.3.1

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