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2019年10月13日 (日)

◆トルコのイラク北部攻撃と中東の混乱拡大 2019.10.13

 トルコがシリア北部に攻撃を開始した。クルド人勢力を攻撃するもので、中東の戦火がまた一つ広がった。背後には、米国の中東における存在感が低下し、力の空白が各地に生じている事情もある。

▼クルド人攻撃

 トルコによるシリア北部の攻撃は9日に始まった。この地域にいるクルド人勢力のSDFに対し空爆などを実施。多数の死傷者が出ている。

 トルコは国内に1000万人以上のクルド人を抱え(全人口は8000万人)、国外のクルド人との連携を警戒している。SDFに対しても過激派と決め付け、敵対関係にある。

 シリア内戦によりトルコには約400万人の難民が流入している。トルコはシリア北部に安全地帯を作り、ここに難民を移送する計画を持っている。今回の攻撃も、こうした構想の中で行われた。

▼エルドアン・トランプの電話会談

 攻撃に先立つ6日、米国のトランプ大統領とトルコのエルドアン大統領は電話会談。シリア情勢などを協議した。トランプ米大統領は翌7日、「部隊を帰還させる時が近づいた」とシリア北東部からの撤退を示唆する情報をツイッターで発信した。これに対し米政府高官が、撤退ではなく配置交換と修正するなど、説明は混乱した。

 トルコの攻撃開始後、エスパー米国防長官は10日、トルコ国防相に攻撃中止を要求した。しかし、何より目立ったのは米国の中東政策の混乱だ。

▼米国の迷走

 米国のシリア政策は、2011年に同国で内戦が始まってから迷走し続けてきた。オバマ大統領はシリアのアサド政権が化学兵器を使用すれば攻撃に踏み切ると公約していたのにも関わらず、2013年に介入を見送った。

 2014年以降に「イスラム国」(IS)が台頭した後、米国は対ISでクルド人主体のシリア民主軍(SDF)を支援してきた。しかし、ISが2017年にシリアの拠点を失った後に、支援の姿勢は曖昧になっている。

 トランプ米大統領は基本的に中東からの撤退を実現したい立場。2020年に大統領選をにらんで実績を目に見える形で示したい意欲も強く、撤退に前のめりになりがちだ。今回のトルコによる攻撃に際しても、そうした姿勢が浮き彫りになった。

▼複雑な関係

 攻撃されたシリアのクルド人(シリア民主軍=SDF)は、対IS(イスラム国)で米国が支援してきた組織。SDFにしてみたら、米国に裏切られた感じがしてもおかしくはない。

 シリア情勢は、ロシアやイランがアサド政権を支援。一方の反体制派は寄合所帯で、米国やサウジが支援しているものの、その本気度や距離感は情勢によって変化している。トルコはアサド政権と対立する一方、反体制派陣営の一部のSDFとは敵対してきた。事情は複雑だ。

▼中東の紛争

 中東で現在戦闘や衝突が続いているのは、イエメン内戦、パレスチナ、シリア、リビア、レバノンなど。ここにイランとサウジやイスラエルの対立や各国国内の対立、アルカイダやISなどの過激派の活動などが加わる。敵と味方が複雑に絡み合い、構図がすぐに変化する。

 背後につく外国の立場も流動的だ。ロシアや米国、欧州諸国、中国などが自国利益の拡大を狙い関与する。

 表に出ている情報がすべてを語っているわけではない。知られていないことが多数ある事も常に意識しておく必要があるだろう。それにしても、中東が世界の火薬庫であることを改めて想起させる。

2019.10.13

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