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2019年5月26日 (日)

◆インド総選挙とモディ政権2期目の展望 2019.5.26

 

 インド総選挙の結果が発表され、モディ首相率いるBJPが圧勝した。過去5年間7%以上の成長を実現してきた経済運営などが評価された格好だ。2期目のモディ政権は、地方の振興や格差是正などの課題に取り組む。経済成長著しく存在感を高める同国の行方には、世界の関心も大きい。

▼地滑り的勝利

 インド総選挙は4月11日から7回に分けて投票が行われた。有権者は9億人。世界最大の選挙だ。開票は5月23日から一斉に始まり、24日に結果が発表された。

 BJPは下院545議席中、過半数を大きく上回る303議席を獲得。前回より21議席増やした。英FT紙は地滑り的(landslide)な勝利と報じた。最大野党の国民会議派は8議席増の52議席にとどまった。ラフル・ガンジー党首は敗北を宣言。曾祖父のネルー元首相から続く"ネルー・ガンジー王朝”の黄昏を報じるメディアもあった。

 BJPはモディ首相人気を維持していたとはいえ、昨年の地方選で野党に相次ぎ敗北した。このため総選挙での勝利を危ぶむ見方もあった。圧勝は事前の予想を覆す結果だ。

▼モディノミクスの5年

 モディ首相は2014年に就任した。前職は東部グジャラート州の首相。民間活力の採用、スピード重視、改革推進などの経済運営で成果を残し、CEO型のリーダーとして注目された。

 インドの首相就任後も、モディノミクスと銘打ったそうした経済政策で、年平均で7%を上回る成長を実現した。

 改革の中でも重視されるのが、破産法の改正(2016年末以来施行)、高額紙幣の廃止(2016年11月発表)、税制改革(2017年7月)などだ。

 このうち税制改革は、従来州ごとにバラバラだった税制を全国レベルで統一した。歴代政権も実現を目指してきたが、反対が多く実施できなかった政策だ。「インドの市場が初めて統一された」などというメディアの解説もあった。 

 高額紙幣の廃止は、マネーロンダリングや脱税防止を目的に突如発表され、実行に移されたもの。発表日は2016年11月8日。米大統領選でトランプ氏が当選した日だった。

 その経済的影響には様々な見方がある。しかしこれだけの改革を極秘裏に準備し、断行した首相の行動力は改めて印象付けられた。

▼対テロで強い姿勢

 2018年の地方選でBJPが苦戦したのは、野党国民会議派が農村救済などの計画を掲げたことなどによる。そうした劣勢ムードを変えたのが、今年2月にカシミール地方で起きたテロ事件だ。パキスタンに拠点を置くイスラム過激派が、インド軍の基地を襲撃した。

 モディ政権はこの問題で強硬な姿勢を誇示。インド・パキスタン国境を越えて過激派の基地を空爆した。こうした「強いリーダー」のイメージが、選挙での勝利に結びついたとの見方が多い。

▼勝利の5つの理由

 英BBCは予想外の圧勝の理由を、選挙戦上の戦術も合わせて次のようにまとめた。(1)モディ首相の個人の力、(2)ナショナリズム、(3)地方政党との協力関係がうまくいったこと、(4)東部の州に選挙戦の資源を振り向けたこと、(5)メディア活用戦略での勝利――の5つだ。

▼2期目の課題

 経済の高成長が続く中で、課題も浮かび上がる。インドは依然、全人口の6割が農村に住む構成。その農村の発展は、都市部に比べて遅れている。都市との格差は拡大する。

 インド経済ではITソフトなど、サービス分野の拡大が目立つ。しかし輸出産業(製造業)育成の遅れ、インフラ整備など課題は山積する。銀行の不良債権問題、ビジネスの不透明性の払しょくなど構造的な問題も多く残る。

▼ヒンズー至上主義?

 政治的にはモディ首相の母体であるBJPの体質が常に問われる。BJP支持者の中には、ヒンズー至上主義者が少なくない。過去にもイスラム教徒迫害を引き起こすなど、政治・社会上の問題を引き起こしてきた。国際社会からの批判も折に触れて浮上する。

 BJP政権が2期続くのは1947年の独立以来初めて。思わぬ圧勝で、ヒンズー至上主義の動きに火をつけないかとの懸念がある。

▼混沌の社会

 インドの人口は2020年代には中国を抜き世界1になる見込みだ。すでに購買力平価でみたGDP(経済力)では世界3位。ITソフト開発など一部では世界先端を置く。世界における存在感は年々大きくなっている。

 しかしドルベースで見た1人当たりのGDPは約2000ドルと、まだ貧しい。農村にはカースト制度の伝統も残り、絶対的な貧困も残り、教育も十分に行き届かない。古いものと新しいもの、進んだ部分と遅れた部分が混在し、混沌の社会ともいえる。

▼インドの行方の世界的意味

 インドは世界最大の民主国家。経済の高成長は今後も続く可能性が大きく、国際社会における政治的な影響力をさらに拡大しそうだ。中国とのバランスを踏まえた地政学的な存在意味も大きい。インドの行方は国内や南アジアのみならず、世界に影響する。

 特に発展途上にある国において、政治リーダーの果たす役割は大きい。モディ首相の2期目の手腕を世界が注視するゆえんだ。

 

◎ 10億人混沌の地の民主主義
◎ 不条理も夢も飛び交う総選挙
◎ 王朝を凌いで目立つかCEO

 

2019.5.26
  

 

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