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2019年2月11日 (月)

◆王女擁立劇とタイ政治の現状 2019.2.11

 3月24日投票のタイ総選挙を巡り、首相候補への王女擁立劇があった。騒動は1日で終息したが、擁立劇はタイ政治の様々な面を映し出した。

▼突然の擁立

 擁立劇は突然だった。タクシン元首相派の国家維持党は8日、次期首相候補にワチラロンコン国王の姉のウボンラット王女(67)を擁立した。

 王女は米国人と結婚(のち離婚)し、1972年に王室を離脱している。法律的には一般人だ。しかし離婚・帰国後はタイでは王室関係者と同じように注目され、公的場面への登場も多い。政治的にはタクシン派に近いと言われ、昨年のロシアでのサッカーW杯では亡命中のタクシン元首相らと同席する姿が目撃された。

 国王が8日夜に擁立への反対声明を発表。これを受けて同党は9日、擁立を断念した。

▼タクシン派・反タクシン派の対立

 タイは2001年にタクシン元首相が率いる政党が選挙で勝利した。新政権は北部など地方の貧しい人々を支援する政策を積極的に推進。一方で、バラマキや汚職が進んだと言われる。

 軍は2006年にクーデターを実施。反タクシン派の政権を樹立させた。その後同国は、タクシン派(赤シャツ隊)と反タクシン派(黄シャツ隊)が対立する構図が続く。

 タクシン派は2007年12月の選挙で勝利した。しかし裁判所の解党命令で2008年2月-2011年は民主党(反タクシン派)のアピシット政権が発足した。

 その後2011年7月の選挙でもタクシン派が勝利、インラック政権が発足した。しかしタクシン派と反タクシン派の対立は続き、政治が不安定な状況が続いた。

▼クーデターと王室の影響

 そうした中2014年5月、軍がクーデターを実施。以後、プラユット暫定首相の政権が続いている。

 同国の政治を特徴づけるのは、まずタクシン派と反タクシン派の対立。社会に深い分断をもたらしている。第2に軍の関与。過去にも政治危機になると、軍によるクーデターが来る返された。第3に国王・王室の影響力。プミポン前国王(ラーマ9世)は、政治危機に仲介者としての役割を示し、タイ式民主主義に欠かせない存在だった。

 昨年即位したワチラロンコン国王に前国王ほどの威厳と存在感はないとされる。しかし今回の騒動は、王室や王族、元王族が持つ影響力を改めて見せつけた。

▼総選挙の行方

 総選挙は軍事政権寄り「国民国家の力」党(首相候補はプラユット暫定首相)と保守系の民主党(首相候補はアピシット元首相)、タクシン派の中核であるタイ貢献党(首相候補はスダラット元保険相)を中心に、今回話題になったタクシン派の国家維持等などが絡む。

 選挙後の首相の指名は、下院500議席に上院250議席を加えた投票で決める。上院は事実上軍の指名なので、軍事政権寄りの国民国家の力党が圧倒的に有利だ。

 ただし、下院ではタクシン派が多数を占め、ねじれになる可能性もある。

 選挙は5年ぶりの民政復帰のあり方を決め、同国の民主主義の行方を決定する重要な節目だ。そこに王女(元王族)の首相候補擁立という予想外の出来事が絡み、国王の声明で一夜で解決した。いかにもタイ的とも言える。

 関係者の狙いがどこにあったかは定かでないが、世界からの選挙への関心を一気に高めたことは間違いない。話題性は十分だ。

◎ 20年、混乱分断の日常化
◎ 赤黄シャツ、軍に王室バンコク流
◎ 王女兼首相を見たい気もしたが

2019.2.11
 

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