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2018年11月 5日 (月)

◆メルケル時代の終焉?――党首辞任のインパクト 2018.11.4

◆メルケル時代の終焉?――党首辞任のインパクト 2018.11.4

 ドイツのメルケル首相が与党CDU(キリスト教民主同盟)の党首を退任すると表明した。首相は2020年の任期まで続けるというが、求心力の低下は避けられない。欧州の行方への影響も甚大だ。

▼地方議会選敗北の責任

 メルケル氏は29日、12月7-8日に行われるCDU党大会で党首選に出馬しない述べ、党首退任を表明した。首相は2020年5月の任期まで続けるとしている。同氏はかねて、党首と首相は同一人物が務めるべきと述べていたが、言動を覆した。

 辞任決断のきっかけは、10月に行われた地方議会選での与党の敗北だ。14日のバイエルン州議会選で、与党(姉妹党のCSU)が歴史的な大敗を喫した(得票率は2013年の48%→37%)。続く28日のヘッセン州議会選でも、CDUは38%→27%に大幅に議席を落とした。

 メルケル氏がCDU党首になったのは2000年。18年の経歴に幕を閉じる。

▼難民問題で批判

 地方選敗北の重要な理由が難民問題だ。メルケル氏は2015年の欧州難民危機の際に、難民受け入れに寛容な姿勢を示し、前後で100万人を上回る難民を受け入れた。これが難民・移民に反対する勢力の攻撃の的となり、極右や反移民政党の台頭を許すことになる。

 2016年の総選挙で極右のAfDは第3党に躍進。10月のバイエルン州議会選でも10%(前回はゼロ)、ヘッセン数議会選では13%(前回比9%増)と大きく得票を伸ばした。

 与党内でも極右などへの対抗上、より厳しい難民・移民政策を求める声が拡大。メルケル首相を公然と批判する動きも目立ち始めた。6-7月にはCSUのゼーホーファー党首との対立から連立政権(CDUとCSU、社民党の大連立)崩壊の危機に直面した。メルケル首相はこうした動きを押さえ政権の枠組みを維持するため、党首辞任のカードを切った模様だ。

▼欧州のアンカー役

 党首辞任でメルケル氏の求心力低下は避けられないとの見方が多い。欧州のメディアは、「メルケル時代の終わり」と表現するものもあった。

 メルケル氏は過去10年余り、欧州の政治をリードしてきた。同氏が首相に就任したのは2005年。フランスとの「独仏協調」を基本に親EU路線を貫き、重大局面での意思決定に決定的な役割を果たしてきた。

 2008年のリーマン・ショック後の金融危機対応や、2010年からのユーロ危機では、金融機関救済や金融システム安定策の決定に寄与。2008年のジョージア(グルジア)危機や2014年のウクライナ危機では、欧州を代表してロシアのプーチン大統領らとやり合った。2015年のイラン核合意でも大きな役割を果たした。

 EUの政策決定は首脳会議や閣僚理事会で決まるが、重要な案件の場合は独仏の調整などで決まる。特にメルケル氏が認めなければ何も決まらない、というのは欧州ウォッチャーの常識だった。メルケル氏は非常時の政策決定のアンカー役を担った。だからこそ「欧州最強の政治家」や「欧州の女帝」と言われたし、メディアのカメラもメルケル氏に集中した。

▼欧州・EUへの影響甚大

 メルケル氏の政治力を支えるのが、ドイツの経済力であり、国内的な政治基盤の安定だった。党首辞任で政治基盤の安定が揺らぐ。それが深刻なものとなれば、欧州やEUへの影響は甚大だ。

 欧州が抱える問題は多岐で深刻。難民・移民問題は各国の利害が対立し、極右・反移民政党の台頭に歯止めがかからない。英国のEU離脱問題は交渉大詰めの時期に来ても先が見えない。米トランプ政権との関係はギスギスし、関係再構築は喫緊の課題だ。イタリアはバラマキ型の予算案を作成し、EUとの対立が表面化しつつある。ギリシャなどの財政改革は遅れ、ユーロ危機再燃の懸念は常にくすぶる。ロシアとの関係はいつ何があってもおかしくない。中東の混乱は続いたままだ。

 こうした問題に適宜対処するとともに、EUとしての新たな政策や改革を打ち出していくには、強力なリーダーシップが不可欠で、アンカー役が求められた。メルケル氏の影響力低下は、こうした役割を担う政治家が見当たらなくなる懸念がある。

▼新時代

 メルケル氏は旧東独の出身。元々科学者だったが、ベルリンの壁崩壊を受けて政治の世界に身を投じた。政治思想や哲学を積極的に語ることは少なく、世界観は広く知られてなく、未知数の部分がある。難民受け入れに寛容的だったのは、社会主義体制下で生活した経験が影響しているとの見方がある。トランプ米大統領のメルケル氏に対する姿勢は極めて悪い。

 英FT紙は党首辞任のニュースを受けて、「ドイツは新時代に直面する」(Germany confronts new era sa Merkel calls time on leadership)と位置付けた。同紙社説はメルケル氏がドイツと欧州のために良い働きをしてきたと評価したうえで、「ドイツは欧州のために強さを維持するべきだ」(Germany needs to keep strong for Europe's sake)と評した。

 メルケル氏はなお首相の座にはとどまる。しかし従来に比べ不確実性は高まった。新時代への移行=メルケル時代の終わりの始まり=に直面し、同氏の存在感の大きさと力量を改めて認識する。

◎ メルケルに安心した日々早や10年
◎ いつの間にかドイツが決めてるヨーロッパ
◎ 節目のたび 課題に嘆息 欧州の地

2018.11.4

 

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