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2018年7月 1日 (日)

◆EU首脳会議と欧州の難民問題 2018.7.1

 EU首脳会議が6月28-29日に開催。難民問題を協議したが、亀裂が改めてあらわになった。

▼くすぶり続ける問題

 欧州は2015年に100万人を超える難民が流入。難民危機を迎えた。その後トルコとの難民管理協定締結などで減少したが、いまだに北アフリカや中東から年間数十万人単位で流入が続く。

 EUは難民問題対処のため、加盟国に応分の受け入れを求める案をまとめた。しかしハンガリーなどは受け入れを拒否。十分に機能していない。

 EUのルールでは、難民の審査は最初の受け入れ国が担当することになっている。結果、流入の多いイタリアやギリシャなどの負担が重くなっているのが現状だ。

 イタリアでは6月、ポピュリストと極右の連立政管が誕生。同月には新政権が北アフリカからの難民船の受け入れを拒否し、人道も絡む問題として全欧州の関心事となった。難民問題は形を変えてくすぶり続ける。

▼行き詰まり感
 
 首脳会議でイタリアのコンテ首脳は、他国の負担増を求め、事務局が用意した案を拒否。難民問題での合意がなければ、他のあらゆる合意への拒否権をちらつかせた。

 調整は9時間の徹夜協議に及んだ。その結果、何とか合意文書をまとめたが、内容は玉虫色で具体性を欠く。会議決裂を避けるのが精いっぱいだった。

 何より、首脳会議に及ぶ調整を見ていて、何かブレークスルーがありそうな動きを感じさせなかった。行き詰まり感が否定できなかった。

▼反移民政党の台頭とドイツの政治危機

 難民問題は欧州各国で極右政党や反EU政党の台頭を招き、欧州政治を揺るがしている。

 欧州のリーダーであるメルケル首相のおひざ元でも、連立相手のCDS(キリスト教社会同盟)が規制強化の要求を強め、メルケル首相からの離反も辞さない状況。ドイツの政治危機→メルケル退陣となれば、EUは最大の調整役を失うことになりかねない。アンカーなき欧州に陥る懸念がある。

▼Brexitより大きな問題

 EUは2015年の難民危機以来、様々な検討を重ねてきた。しかし打ち出せた対応はその場しのぎに留まる。根底は、EUや欧州を支える基本理念に関わる問題だからだ。

 野放図な難民流入容認は、社会の安定を崩壊させる。さりとて単純に締め出すことは、欧州が掲げてきた人道主義や、基本的人権の尊重という原則に反する。これは、EUの理念とも根っこの部分で重なる。

 難民にはイスラム教徒が多く、欧州のキリスト教社会との融合が可能かという問題も突き付ける。「文明の衝突」的な問いだ。貧富の格差の問題、過去の植民地支配の責任、旧共産党体制かの人権弾圧といった歴史的な問題にも関係する。

 Brexitは欧州の枠内で対応できる問題だ。それに対し難民問題は、欧州の枠内では対応できない。西洋文明の根本を突く問題と言ってもいい。

▼欧州の基本理念を突く

 移民問題に直面する米国は、トランプ大統領の強引な規制強化という、単純な方向に動いている。しかし強大な1国が対応を考える米国と違い、欧州には政治制度も言葉も異なる30以上の国が集まる。難民の流入源もアフリカ、中東など様々で、問題は米国寄りはるかに複雑だ。

 現在の枠組み内では、決定的な対応は難しいようにも見える。時間稼ぎをしているうちに、2015年に続く次の深刻な難民危機が再来する可能性も小さくない。

 安易な回答はないように見える。難民問題が突き付ける問いは、現在の世界のあり方をも問う。

◎ 難民に人権の歴史が揺らぐ夏
◎ 危機過ぎて虚脱の4年を空費する
◎ 首脳の集い寛容の言葉が消えていく

20180701

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