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2018年6月18日 (月)

◆米朝首脳会談と世界 2018.6.17

 トランプ米大統領と金正恩北朝鮮委員長が12日シンガポールで会談した。首脳会談は1950年代の朝鮮戦争以来初めてで、米朝関係は新たなステージに入った。アジア情勢、世界情勢との脈略でどうとらえたらいいのか。

▼歴史的な会談

 米朝首脳会談は、色々な意味で歴史的だった。両国は1950-53年に朝鮮戦争を戦い、戦争は今なお終結してない。現在は休戦状態だ。両国間の国交はなく、米国は北朝鮮をテロ支援国家に指定している。

 1990年代に北朝鮮の核開発問題が浮上して以来、米国は同国に対し「圧力と対話」の政策を繰り返してきた。1990年代の核合意や2000年代の6カ国協議などが行われたが、合意はいずれも一時的な効果に留まり、北朝鮮の核やミサイル開発を阻止できなかった。

 米国が直接対話を避けてきた背景には、北朝鮮の体制がいずれ崩壊するとの判断もあった。今のところそれは外れている。

 今回の首脳会談は、直接対話なき60年以上を経て、初めて実現したもの。世界の関心も大きく、会談内容は一挙手一投足に至るまでテレビ中継された。メディアはほぼ例外なく「歴史的」という表現を使った。

▼非核化など約束、具体性は欠く

 会談後、両首脳は共同声明に署名した。A4で2枚程度にまとまる内容。主な内容は、(1)金委員長は朝鮮半島の非核化を約束、(2)トランプ大統領は北朝鮮の体制保証を約束、(3)4月末の南北朝鮮の板門店宣言を再確認、(4)共同声明の内容実現のため高官の協議を進める、など。

 非核化の具体的な進め方や目標期限、朝鮮戦争の終結宣言などは盛り込まれなかった。また、米国が求めていたCVID(完全かつ検証可能で非可逆的な非核化)は盛り込まれなかった。その意味では共同宣言は総論に留まる。ただ非核化や体制保証などの原則を約束した意味は軽視すべきでない。

▼不透明な今後

 今後の行方には、多くの不透明要素が残る。当面はポンペオ米国務長官と北朝鮮側による高官協議の開催が焦点になるが、その日程は不明だ。

 非核化には技術的に難しい問題が多数残る。トランプ大統領は首脳会談後の記者会見で、完全な非核化には技術的に時間がかかると指摘した。

 北朝鮮はこれまでも、国際公約を反故にする行動を繰り返してきた。今回の共同声明や4月の板門店宣言が順守される保証もない。今回の米朝首脳会議を、米国の圧力をかわず時間稼ぎという見方もある。

 北朝鮮の真意も、米国の真意も本当のところは分からない。今後の協議の過程で予期せぬことが起きるのも自然だ。行方は不透明であることを、まずは基本認識として抑えておくべきだろう。

▼大きな変化

 一方で、過去6カ月にそれまでの予想をはるかに超える大きな変化が起きた事実も重要だ。

 2017年には北朝鮮が断続的に核実験やミサイル発射を実施。米国は周辺海域に空母を派遣し、経済制裁を強化するなど圧力を強めた。事態は一触即発の状況にあった。それが変わったのは、2018年の年初からだ。

 金正恩委員長は年頭所感で、対話路線への転換をにおわせる発言を発信。これに韓国が応じ、南北対話→2月の平昌五輪への北朝鮮参加、南北合同チームの発足へと進んだ。

 それが11年ぶりの南北朝鮮首脳会談開催と初の米朝首脳会談へと結びついた。

 米朝首脳会談には曲折があった。トランプ大統領がいったん中止を表明する場面もあった。しかし、ポンペオ国務長官の秘密訪朝(3月、5月)や、2度目の南北朝鮮首脳会談(5月末)などを通じ、開催にこぎつけた。

 金正恩書記長は3月末と5月上旬の2度にわたり中国を訪問。冷却していた中朝関係を改善した。ロシアとの交渉も進めた。

 それまで動かなかった様々な回線が通じ、朝鮮半島を巡る事態が動き出した。

▼期待と疑問

 首脳会談後の会見でトランプ大統領は、北朝鮮との対話継続中は米韓軍事演習を中止すると表明した。

 北朝鮮は5月、拘束していた米国人3人を解放。首脳会談では、朝鮮戦争時の捕虜や行方不明者の遺体収容を約束した。

 金委員長は会談に先立ち、核実験を今後行わないと表明。北東部の核実験場を破壊した(どこまで本格的に破壊したかは不明)。

 口先だけでない実体を伴った動きがあるのも事実だ。

 北朝鮮の核問題や米朝関係の動向には、改善を期待できる要素と疑わしい動きがある。予断は禁物だ。

▼アジア巡る米中関係

 北朝鮮問題は核兵器が伴うだけに、単独でも重要だ。しかし、アジア情勢全体を見る場合には、米中関係を基本に据えて考えるのが自然だろう。

 第2次大戦後のアジアの秩序は、米国の覇権の下で保たれてきた。ここに中国が挑戦しているというのが、目下の大きな構図だ。

 米国は中国の対米貿易黒字はもちろん、先端技術での追い上げを警戒。米朝首脳会談の3日後の15日には、総額500億ドルという巨額の対中制裁関税発動を発表した。中国はこれに報復関税で応じ、米中貿易戦争の懸念が高まっている。

 安全保障面で、米国は中国の南シナ海での支配領域拡大を様々な手段でけん制しようとしている。さらに中国によるサイバー攻撃などにも対抗策を強化する。

 北朝鮮問題も、背後には米中の対立や関係が絡む。

▼急変する世界情勢

 世界に目を転じれば、米国は5月にイラン核合意から離脱した。同じ核問題で、北朝鮮と対話を進めようとする一方で、イランには強硬策を強めている。イスラエルでは大使館をエルサレムに移転した。こうした米国の新政策が、中東の混乱を深めている。

 北朝鮮核問題は先行き読みにくく、何が起きてもおかしくない。確実なのは、従来にない変化が起きつつあり、しかもそれが国際情勢に波及していく事だ。月並みだが、冷静に見つめていく必要がある。

◎ 首傾げ個性派役者の握手見る
◎ 予期できぬ2人が会って世が動く
◎ アジアの地パイプの修理はやや進む

2016.6.17

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