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2018年1月

2018年1月28日 (日)

◆2018ダボス発のメッセージ 2018.1.28

 ダボス会議が23-26日開催された。世界の政治やビジネス界のリーダーが参加したが、今年の注目は何といってもトランプ米大統領。大統領と政権幹部から通商や通貨政策について様々な発言があった。その内容には必ずしも統一性がなく、その度に世界や市場は揺れた。

▼トランプ演説

 ダボス会議へのトランプ大統領の参加は、様々な観点から注目された。就任から1年の間に、トランプ大統領はTPPやパリ協定からの離脱、イスラエルの首都としてエルサレム承認など、既存の国際秩序を覆す決定を相次ぎ下した。一方、大統領が自身の政策や戦略を世界に向かってまとめて話した機会は多くなかった。

 大統領の移民規制などの政策には世界各地で反対運動が発生。開催地スイスではダボス会議参加に抗議するデモが繰り広げられた。そんな中での演説だ。

 トランプ氏は、減税や規制緩和で米経済が活況を呈していると自賛した。そのうえで通商政策について、米国は自由貿易を支えると強調。ただし、相手国は公正な貿易を行う必要があると条件を付けた。TPPについては、現在の協定案が「ひどいものだ」としたうえで、内容が改善されるのであれば再加盟を検討する可能性があると示唆した。

 トランプ氏の通商政策には、保護主義的との批判が多い。演説内容を見ると、そうした従来の姿勢より多国間主義を尊重するかのような姿勢もうかがえる。米政治メディアのPoliticoは、"Elites get a dose of the Trump First message"(エリートは演説をひとまず落ち着いて受け止め)と報じた。しかし演説に具体的内容は十分でなく、政策を十分に練った上での内容にも見えない。不透明感はついて回る。

▼America first, not America alone

 大統領選以来のトランプ氏の一枚看板がAmerica First(米国第一)。演説の中でトランプ氏は米国第一を強調する一方で、「米国第一は米国だけを意味するのではない」(America first does not mean America alone)と述べた。エイBBCは「これが演説の基調であり、ホワイトハウスの主要メンバーからのメッセージ」(It was the key line of the speech, and a message echoed by other leading members of the White House power pack here)と解説した。

▼通貨安戦争?

 通商以外で物議を醸したのが通貨政策。ムニューシン財務長官は24日、記者団に対し「短期的に見ればドル安は貿易面で米国にとって良い」とドル安容認と受け止められる発言をした。これを受けて市場ではユーロ、円など主要通貨に対しドル安が進んだ。

 各国が通貨安競争に走れば、保護貿易の高まりやブロック経済化をもたらしかねない。2008年の世界金融危機の後にも、通貨安競争に対する懸念はたびたび主要国間で共有されてきた。

 そもそも通貨政策の責任者である財務相や中銀総裁が為替相場に関連する発言をすること自体が異例だ。ドラギ欧州中央総裁は25日の会見で、財務長官発言を取り上げ、異例ともいえる批判をした。

 トランプ米大統領は25日TV局とのインタビューで、強いドル政策を強調。財務長官発言を軌道修正した格好だ。しかし、政権からのメッセージの混乱が目立った。

▼エルサレム承認、より具体的に

 ダボス会議の直前、ペンス米副大統領が中東を訪問。イスラエルでは議会演説し、現在テルアビブにある米大使館のエルサレム移転を2019年中に実現すると述べた。米トランプ政権は昨年末、エルサレムをイスラエルの首都として認める政策を発表したが、より具体的な日程を示した。

 トランプ大統領も25日 ダボスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談。副大統領発言と同じ趣旨の内容を伝えた。パレスチナ問題で米国のイスラエル寄りの姿勢が一層鮮明になった。

 エルサレムの首都承認で、国際社会の大半は反対している。国連総会も昨年末に反対決議を採択。欧州諸国もこぞって反対を公式に表明している。米トランプ政権vs国際社会の見解の相違が際立った。

▼エスタブリッシュメントのダボス会議

 会議にはトランプ氏以外にも多数の世界の政治、経済の指導者が参加した。ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は自由貿易の擁護を強調した。インドのモディ首相は、保護主義への警戒を訴えた。アリババのジャック・マー会長は技術革新が社会に及ぼすメリットについて話した。

 ダボス会議はもともと世界のリーダーが集まり、世界の課題や必要な政策について話し合い、情報発信をする場。1990年以降はグローバル化の先導役を果たした。世界金融危機以降は、第4次産業革命(Industry4.0)など技術革新を強調する。

 参加者は基本的にエスタブリッシュメント。既存秩序の抜本的見直しというより改革によって進歩を目指す傾向が強い。議論も技術革新やマクロ経済政策などでは具体性のある内容が多いが、世界的な格差是正や貧困問題などのように社会構造的な問題ではインパクトに欠くことも少なくない。

 昨年は中国の習近平国家主席が参加。自由貿易擁護などの発言をした。今年のモディ・インド首相の発言も同様だ。いずれもダボスの予定調和に沿うような、模範解答的な演説と言ってもいい。

▼メッセージ

 トランプ大統領は反エスタブリッシュメントの支持を背景に当選し、言動では既存秩序を否定してきた。ダボス演説にもその傾向維持しつつ、一部変化の兆しのような部分もあった。受け止め方は難しい。

 明確だったのは、米国が世界のリーダーとして国際秩序を維持するのではなく、うしろ従来秩序の変化を模索していること。米国と世界の間には、なお対立・相違が目立ったことだ。

 演説からは、トランプ政権の具体性の欠如や一貫性のなさがうかがえた。一方で存在感においては、トランプ氏が他のリーダーを圧倒した。

 未来展望のある明るい話は、技術革新の分野で多かった。格差、貧困など世界が抱える問題には、あまり具体的な情報発信はなかった。 

 ダボスのメッセージは、米国の変貌、世界の既存秩序の変化、先行きの不透明感の拡大などを映しているように見える。

◎ 世の中の半分が見えるダボスから
◎ アメリカ対世界を感じる冬の山

トランプ米大統領演説
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-world-economic-forum/
ダボス会議HP
https://www.weforum.org/events/world-economic-forum-annual-meeting-2018

2018.1.28

2018年04号(1.22-28 通算918号)国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2018年1月22-28日
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◆ダボス会議、トランプ米大統領演説(26日)☆
・ダボス会議が23-26日開催。トランプ米大統領が最終日に演説した。
・通商問題について2国間に加え多国間協議の用意があると表明した。
・自由貿易を支持するが、公正なものでなければならないと強調した。
・条件付きで、TPPの再交渉や再加盟の可能を示した。
・"America first does not mean America alone”と語った。
・米通商政策の今後については、政権内でも調整が取れていない模様。
・トランプ演説には、かつてないほど世界の注目が集まった。

◆米、エルサレムへの大使館移転2019にも(22日)☆
・ペンス米副大統領はイスラエル国会で演説した。
・米大使館のテルアビブ→エルサレムへの移転を2019年中に行うと述べた。
・トランプ大統領は25日ダボスでネタニヤフ首相と会い、同趣旨を発言。
・米国は昨年エルサレムを同国首都と認定。同国寄り姿勢を鮮明にした。
・アラブ諸国は反発するが、抗議以上の行動はとれないのが現状だ。
・国連総会がエルサレム首都に反対するなど、国際社会も米国には批判的。
・パレスチナ和平は仲介役を失い、遠望は一層不透明になっている。

◆ルラ元大統領に2審有罪、大統領選出馬資格失う(24日)☆
・ブラジル連邦地方裁(2審)はルラ元大統領に禁固12年余の有罪判決を下した。
・収賄やマネーロンダリングの容疑。
・この結果、ルラ氏は10月の大統領選への出馬資格を失った。
・同氏は左派労働者党から2002年大統領選に当選。03年から8年務めた。
・世論調査でも、次期大統領候補として最高の支持を得ていた。
・判決後、ルラ氏は不当裁判と訴え。異議申し立てをする姿勢だ。
・しかし判決が変わる可能性は小さく、出馬は消えたとの見方が多い。
・同国法律では2審有罪の判決を受けると大統領選に出馬できない。
・大統領選は有力候補が消え不透明感を増した。特に左派に打撃だ。

◆米財務長官がドル安容認発言、通貨安競争の懸念再燃(24日)☆
・ムニューシン米財務長官がドル安容認と受け取れる発言した。
・ダボス会議で記者団に語った。
・市場ではユーロ、円など主要通貨に対し、ドル安が進んだ。
・ドラギ欧州中央総裁は25日の会見で、財務長官発言を強く批判した。
・自国通貨安の誘導は、通貨安競争→保護主義への警戒が強い。
・財務長官発言で懸念が再燃した格好だ。
・トランプ大統領は25日の会見で強いドルを強調。軌道修正した格好。

◆タイ民政復帰の選挙、再び先送り(25日)
・暫定議会は、下院選実施に必要な法の施行日を官報公示から90日後に決めた。
・この結果、選挙はこれまで見込まれていた11月から最長3か月延びる見通しだ。
・同国では2014年にクーデターで軍事政権が発足。
・民政復帰の時期は、当初約束より繰り返し先延ばしされた。
・2016年には政治安定の象徴となってきたプミポン前国王が死去した。
・同国は2017年に新憲法案を国民投票で承認した。当面軍事政権の影響を認める内容。

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◎寸評:of the Week
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 【ダボス会議】 ダボス会議が23-26日開催された。(→「国際ニュースを切る」参照)

 【ロシア疑惑】 トランプ政権の「ロシア疑惑」に関係し、モラー特別検察官がセッションズ司法長官から聴取をした。閣僚に対する聴取は初。特別検察官は近く、バノン前首席戦略官・上級顧問にも事情を聴く見通し。トランプ大統領自身への聴取の可能性もささやかれ、トランプ氏は「喜んで受ける」と強気の姿勢を示した。様々な問題が形を変えて浮かび上がるロシア疑惑だが、また節目を迎えている。

 【インド・ASEAN首脳会議】 インドとASEAN10カ国は25日、ニューデリーで首脳会議を開催した。経済、安保面での協力強化を協議した。アジアで中国、インド、ASEANと日本を中心に外交、経済の関係づくりが多様な形で進む。中国の一帯一路など積極的な動きが目立つが、インドなどの動きも活発だ。

◎今週の注目(2018年1月29日-2月4日 &当面の注目)
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・トランプ米大統領が30日、一般教書演説を行う。
・イエレン米FRB議長の任期が2月3日に終了。後任にはパウエル氏が就く。同氏は23日、米上院で正式に承認された。

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2018年1月21日 (日)

2018年03号(1.15-21 通算917号)国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2018年1月15-21日
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◆トランプ政権1年(20日)☆
・トランプ米大統領が就任して1年が経過した。
・米国第1を前面に出し、入国規制の強化、パリ協定脱退などを決めた。
・外交は一貫性を欠き、国際社会を揺るがす事例が相次いだ。
・国内的にはロシア疑惑で揺れ、政権内のごたごたも後を絶たない。
・一方経済は大型減税を実現。株価は上昇している。
・米ギャラップによると、1年目時点の支持率は38%で戦後の歴代大統領で最低。
・今後米政治は11月の中間選挙をにらんで動く見通し。
・世論調査では野党民主党がリードしている。

◆南北朝鮮が合同チーム、平昌五輪で(20日) ☆
・韓国と北朝鮮は2月の平昌五輪に合同チームを結成すること合意した。
・開会式では朝鮮半島を描く統一旗を使用。女子ホッケーの合同チームを結成する。
・IOCは20日提案を承認した。
・文在寅韓国大統領は南北融和を目指す。北朝鮮は国際孤立に楔を打つ狙いを含む。
・国際社会からは、対北朝鮮経済制裁を骨抜きにしかねないとの懸念が上がる。
・韓国内でも保守層や若者から批判がある。
・合同チームは、すでに様々な方面に波紋を広げている。

◆チュニジアでデモ拡大 ☆
・チュニジアで増税や緊縮財政に抗議するデモが拡大している。
・物価上昇や高失業が続き、国民の生活は苦しくなっている。
・デモは1月上旬から各地で発生。政府は治安部隊を展開し、衝突も起きている。
・チュニジアは2011年のアラブの春で民主化が進んだ唯一の国。
・しかし生活への不満からイスラム過激派も浸透。2015年以降テロが続発する。
・観光客の落ち込みなどから経済悪化が進む。
・英FTは”Keeping the Arab spring's last hope alive”と訴える。

◆中国の2017年成長6.9%(18日)☆
・2017年のGDPは前年比6.9%伸びた。国家統計局が発表した。
・2016年の6.7%から上昇した。前年を上回るのは7年ぶり。
・輸出拡大とインフラ投資が成長を支えた。
・輸出が世界経済好調の恩恵で7.9%増と3年ぶりに前年を上回った。
・設備投資は民間が大幅減。これを政府のインフラ投資で補い7%減にとどめた。
・経済は成長を続けるが、民間負債拡大、国有企業の経営難など問題を抱える。

◆米政府機関が一部閉鎖、4年ぶり(20日)
・米連邦予算が失効。政府機関の一部が閉鎖された。
・与野党が移民政策を巡り対立。つなぎ予算の手当てが出来なかった。
・20日は週末で、国立公園や博物館閉鎖など一部で影響が出た。
・政府機関の閉鎖はオバマ政権時以来4年ぶり。

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◎寸評:of the Week
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 【トランプ政権1年】 いつの間にかトランプ政権が発足して1年が経過した。大統領の舌禍事件は後を絶たないし、移民規制など看板政策は迷走する。ツイッターで重要政策やどうでもいい話を連発し、マスコミとの対立は増幅する。ロシア疑惑が政権を揺るがし、政権内はゴタゴタ続きだ。
 発足当時から混乱は予測されたし、「いつまで持つのか」という声はあった。実際、政権不安定は予想以上だ。それでも何とか1年を経過した。
 TPPやパリ協定からの離脱など、通商や環境分野で既存の合意をあっさり否定した。外交政策は一貫性を欠き、国際社会を揺るがしている。世界最高の権力者が世界安定の錨ではなく、むしろ混乱要因になっている感じだ。それでも世界は動いている。
 プラスの面がないわけではない。トランプ減税で米経済は少なくとも短期的には活況を呈し、世界に恩恵が及んでいる。アップルなど米企業は米国内に拠点設立や雇用拡大を相次いで発表している。NYアウは就任直後の2017年1月に初めて2万ドルを超え、1年後には2万6000ドルを超えた。ただ株価上昇にはバブルの要素も少なからずある、と見るのが妥当だろう。
 この間米国の分断は一層進んだ。世界はより先行き不透明になり、その中で中国の影響力が拡大している。世界のガバナンスが揺るぐ中でも、ITを中心とした情報化革命が進み、世界を急速に変えている。こんなところが「新しい現実」なのかもしれない。
 今後の米政治は、11月の中間選挙をにらんで動く。現在の世論調査に従えば、与党共和党の後退は必至。上下院で勢力逆転となれば、トランプ政権はこれまで以上に「何も決められない」状況に陥る。共和党主流派のトランプ離れもさらに進むだろう。そんな時、政権や米国はどうなるか。
 世界の安定と発展のためには心配の種が増えることになりそうだ。しかしドタバタ劇を見るつもりなら一層面白い。そんな車に構えた見方も思わずしたくなる。

エルサレム首都承認とトランプ大統領の1年 2017.12.10
  http://incdclub.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/1-20171210-66b0.html

◎ 壊し屋がトップの地球 四季過ぎる
◎ つぶやきに世界が揺れたり怒ったり
◎ 司令官 錨下ろさず迷走す
◎ 劇ならば面白いばかり新時代

 【チュニジアの混乱】 チュニジアで経済悪化や政府の政策に対する抗議デモが拡大。一部で衝突も起きている。
 同国は2011年のジャスミン革命でアラブの春の先駆けとなった。その後アラブの春は各国で挫折。シリアやイエメンは内戦に陥り、エジプトではクーデターで選挙によって選ばれた政権が倒された。チュニジアは曲りなりとも民主化を維持している唯一の国だ。
 しかし経済の再建はままならない。人々の不満を背景にイスラム過激派も浸透。テロはたびたび発生している。「イスラム国」に渡った若者は数千人に上る。
 2015年のノーベル平和賞は同国の民市民運動家ら「国民対話カルテット」に贈られた。同年の政治危機の際に、民主化維持に貢献した功績に対するもの。国際社会はチュニジア民主化を「アラブの春最後の希望」として期待している。
 ただ、言葉や精神的な支援以上に何が出来ているかとなると、限定的と言わざるを得ない。同国が春から冬に逆戻りするようなことがあれば、世界的な意味はは1カ国や周辺地域に留まるものではない。問われているのはチュニジアだけではなく、国際社会もだ。

◎ ジャスミンが枯れぬか憂う8年目
◎ 晩春を ただ懸念するだけ遠方で

◎今週の注目(2018年1月22-28日 &当面の注目)
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・ダボス会議が23日開幕。トランプ米大統領が出席し26日講演する。

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2018年1月15日 (月)

2018年02号(1.8-14 通算914号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2018年1月8-14日
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◆南北朝鮮閣僚会議、北が平昌五輪参加表明、核では前進なし(9日)☆
・南北朝鮮の閣僚級協議が板門店で開催された。約2年ぶり。
・北朝鮮は平昌冬季五輪への参加を表明した。
・しかし核問題での進展はなく、共同報道文には何も盛り込まれなかった。
・韓国が求めた非核化に向けた対話に、北朝鮮は反発した。
・報道文には南北関係のすべての問題は民族が当事者として解決するとも記載。
・北朝鮮が米韓同盟にくさびを打とうとする姿勢が透けて見えた。
・協議は終始北朝鮮側のペースで進んだとの見方が強い。
・トランプ米大統領は10日韓国の文在寅大統領と電話で対談した。
・米国は北朝鮮への圧力強化を維持するが、当面は進展を見守る構えだ。
・15日に実務者会談が開催される予定。

◆ハワイで核攻撃の誤情報、住民混乱(13日)☆
・ハワイで弾道ミサイルが迫っているとの警戒情報がスマホなどで流れた。
・これは訓練ではないとの情報が盛り込まれていた。
・多くの人々がシェルターなどに避難。混乱が生じた。
・当局によれば原因は操作のミス。実際にミサイルなどの飛行はなかった。
・1938年のオーソン・ウェルズの火星人襲来ラジオ番組を思わせる出来事。
・米国の対北朝鮮世論などに影響するかは不明。

◆カナダが米をWTO提訴、NAFTA再交渉に影響も(10日)☆
・カナダは米国をWTOに提訴した。反ダンピング関税などの乱用が理由。
・米国はトランプ政権発足後、反ダンピング措置を82件採用した。
・カナダのボンバルディア社への300%関税も検討している。
・カナダはトランプ政権の保護主義的な政策に対し、物申す構えだ。
・米側の反発は必至だ。
・米加とメキシコなNAFTAの再交渉を進めている最中。
・WTO提訴がNAFTA交渉にも影響する可能性がある。

◆米、イラン核合意を当面維持(12日)☆
・トランプ政権はイランへの制裁解除を継続すると発表した。
・2015年の核合意に基づき、米は制裁を解除していた。
・しかし核合意の履行を巡り、イランと欧米などは意見不一致を残る。
・トランプ大統領は対イランで強硬な発言を繰り返し、制裁再導入もにおわせた。
・米政府は120日ごとに制裁再開の是非を議会に報告する義務がある。
・当面の強硬策は見送られたが、5月には問題が再燃する可能性がある。

◆トランプ米大統領が訪英中止、ダボス会議は出席(12日)☆
・トランプ米大統領は英国訪問を取りやめると表明した。
・2月に訪英し、新しい米国大使館の落成式などに出席の予定だった。
・トランプ政権下で米英関係はぎくしゃくし、英国軽視の表れとの見方がある。
・米大統領は1月下旬にスイスで開かれるダボス会議に出席する。
・現職大統領の出席は2000年のクリントン氏以来18年ぶり。
・スイスではトランプ氏訪問反対のデモが起きた。

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◎寸評:of the Week
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 【北朝鮮核問題と平昌五輪】 北朝鮮核問題は2017年、北朝鮮と米トランプ政権のチキンゲームが続いた。北朝鮮は核実験やミサイル発射を続け、米トランプ政権は脅しと圧力を強化した。2018年に入り、新たな動きが出てきた。金正恩委員長が年頭演説で態度軟化ともとれる発言をし、これに文在寅韓国大統領が呼応する形で、南北朝鮮会談の再開(9日)が実現。北朝鮮は平昌五輪参加を表明した。
 米韓は五輪・パラリンピック中(2-3月)の軍事演習を先延ばしすることを決めた。南北の直通回線も再開した。
 もっとも9日の会談で、北朝鮮は核問題に関してはゼロ回答。柔軟姿勢も、一時的な時間稼ぎという見方がもっぱらだ。韓国が対話に応じることで、米韓や日米間の同盟に亀裂が生じるとの懸念も強い。
 そうした思惑や背景は大事だが、五輪を材料に物事が動いた事実も軽視すべきではない。五輪の持つソフトパワーを改めて考えてみるのも意味がある。
 前回のソチ冬季五輪の最中にはウクライナで親欧米は市民の抗議活動→ヤヌコビッチ政権崩壊の動きがあった。その後ロシアによるクリミアの事実上の併合へを進んでいったのは周知の通り。ソチ五輪はウクライナ危機とのつながりを抜きに語れない。それも五輪の持つ一面だ。
 北朝鮮の核問題と平昌五輪の関係も複雑だ。

◎ 五輪休戦 嘘っぽいけど意味もある
◎ 平昌に核問題の影が差す

 【ハワイの警報】 ハワイで「ミサイル攻撃」の警報が流れ、人々が避難するなど混乱が生じた。原因は誤作動というが、詳細説明など判明していない点も残る。人々はパニックに陥ったとまではいかないものの、かなり慌てた様子が映像を通じて伝わる。1938年のオーソン・ウェルズの「火星人襲来」ラジオ放送事件の、ミニミニ版、といったところか。
 それにしても本当に核搭載のミサイルが飛来するような事態になったら、どんなことが起きるのか。高度なIT技術を使ったアラート(警報)システムが多数導入される時代、誤作動や悪用がもたらす混乱がさらにかっく代したらどうなるのか。誤作動が重なればオオカミ少年にならないのか。様々な事を考えてしまう。

◎今週の注目(2018年1月15-21日 &当面の注目)
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・南北朝鮮の実務者協議が15日に開催する。
・トランプ政権が発足して20日で1年となる。

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2018年1月 8日 (月)

◆2018年の世界展望 2018.1.8

 2018年の始まりに際し、「リーマン・ショックから10年の世界」を回顧してみた。これを踏まえて2018年を展望してみる。

▼注目リスト

 まずは2018年の注目点を整理してみたい。

(1)米トランプ政権の行方と中間選挙
(2)世界経済の行方
(3)中東動向:サウジ、イラン、シリア、イラク、パレスチナ、トルコなど
(4)北朝鮮核問題
(5)Brexitの行方
(6)テロ
(7)IT革命の行方、サイバー攻撃などの可能性
(8)中国新政権の動き
(9)欧州・EUの動き(ドイツ政局、カタルーニャ問題、極右政党の動向)
(10)ロシア大統領選とサッカーW杯

▼米トランプ政権と中間選挙

 2017年の世界は米トランプ政権の言動に揺れ動かされた。就任早々にTPP離脱や移民規制を発表。その後パリ協定からの離脱やエルサレムをイスラエルの首都に認める発表などを行い、世界の既存秩序を揺るがした。同時に政権運営の稚拙さもあり、将来に対する不確実性を増した。

 トランプ政権の位置づけを「第2次大戦後の世界秩序の再構築」とする見方がある。2018年も世界がトランプ政権に揺り動かされるのは間違いない。特に2017年には具体化しなかった通商政策などでサプライズがあるかも知れない。

 政権の行方を占う上で大きな意味合いを持つのが11月の中間選挙。野党・民主党が議会で多数を占めるようになれば、政権の運営は進めにくくなる。その場合は与党共和党内での対立も激化しかねず、大統領の行動も影響を受ける。

▼世界経済

 世界経済は目下好調を維持している。実体経済は米欧アジアとも順調。株価は世界的に上昇が続く。しかし好調の背景には、10年来続いた金融の超緩和や米トランプ政権の景気刺激策(税制改革など)に対する過度の期待もある。

 米国や欧州の金融引き締めは、世界の市場に影響を与える可能性がある。2018年はリーマン・ショックから10年目で、予想もしていないリスクが顕在化する可能性も否定できない。経済には要注意だ。

▼中東の不安定とテロ

 中東の混乱は変わらない。シリアでは内戦が続き、イラクは不安定。サウジアラビアは国王と皇太子による急激な改革が社会の軋轢を生み、外交は強硬さを増している。サウジなどとカタールの断交は半年を超えた。イエメン紛争は泥沼化している。イランでは全国的な反政府運動が広がり、外交的にはサウジや米トランプ政権との対立が深まる。トルコはエルドアン大統領の強権的色彩が強まっている。パレスチナ情勢はトランプ米大統領によるエルサレム承認問題で、緊迫を強めている。

 どこでいつ政変が起きても不思議でない状況だ。

 内戦などによる難民問題は重くのしかかり、社会の不安定は過激派拡大の温床となる。「イスラム国」の勢力は世界に拡散し、テロを引き起こす懸念が強まっている。

▼北朝鮮の核問題

 北朝鮮の核・ミサイル問題を巡っては、2017年を通じて金正恩委員長とトランプ米大統領のチキンゲームが続いた。この状況に変化はないだろう。常識的に考えれば、軍事力で圧倒的な差がある米朝の戦争などはあり得ない。しかしボタンの掛け違いによる偶発的な事態を否定することはできない。

▼欧州

 英国のEU離脱交渉は、実質的な期限を迎える(離脱は2019年3月だが、準備期間を考えると2018年秋ごろがリミット)。無秩序な離脱となれば、世界への悪影響も大きい。スペインのカタルーニャ州の独立問題は袋小路に入った状況で、どう動くか不透明だ。どらも、EUと欧州の将来に影響がある。

 独政局も重要。昨年9月の選挙から4カ月を経て、いまだに連立政権が組めない。メルケル首相の指導力にも影響がじわじわ及んでいる。これもEUの行方を差揺する。

 極右やポピュリスト政党台頭のトレンドも根深い。ポーランドやハンガリーでは強権主義的な政権の行方も要注意だ。ロシアでは3月に大統領選が行われる。プーチン大統領再選は確実だが、選挙を巡りどんな動きが出てくるか。

▼ユーラシアグループの10大リスク
 
 ユーラシア・グループは恒例の10大リスクを発表した。内容は以下の通り。米国の存在感が低下する中で、中国がハイテク分野で存在感を拡大すると予測した。第2位の偶発的な事件では、シリアや北朝鮮などを指摘した。 

1. China loves a vacuum
2. Accidents
3. Global tech cold war
4. Mexico
5. US-Iran relations
6. The erosion of institutions
7. Protectionism 2.0
8. United Kingdom
9. Identity politics in southern Asia
10. Africa's security

2018.1.7

◆リーマン・ショックから10年の世界 2018.1.7

 2018年は世界を震撼させたリーマン・ショックから10年目にあたる。この間世界はどう変わったのか。振り返ってみると、変化の大きさを改めて実感する。

▼過去10年の大ニュース

 まず過去10年の重要ニュースを整理してみたい。以下の出来事だけで約30点。技術革新による社会・経済の変化などは、象徴的な動きを取り上げてみた。

・2008 リーマン・ショック(世界金融危機)、米欧金融超緩和へ、米大統領選でオバマ氏勝利
・2009 米オバマ政権発足。主要国経済軒並みマイナス成長
・2010 中国世界2の経済大国に。ユーロ危機始まる。オバマケア、米中間選挙与党敗北
・2011 アラブの春→中東混乱、福島第1原発事故、資源ブーム(-2014)
・2012 中国習近平体制、米大統領オバマ再選、スマホの普及加速
・2013 中東混乱拡大、シリア問題で米国の威信低下、スノーデン事件(情報管理社会)
・2014 ウクライナ危機(欧米・ロシア関係悪化)、「イスラム国」がモスル占領
    中国・周永康逮捕(反腐敗運動)、中国「一帯一路」構想、インド・モデイ政権
・2015 欧州難民危機、パリ同時テロ
・2016 米トランプ大統領当選、Brexit、AIブーム
・2017 米トランプ政権発足、北朝鮮核問題、米IT大手5社が企業価値ランク上位独占、
    世界的なサイバー攻撃「WannaCry」

▼IT革命とグローバル化、中国・アジア台頭の10年

 以上の動きをまとめると、以下のような括りが可能になるだろう。

(1)IT革命とグローバル化の急速な進展

 ITを中心とした技術革新(情報化革命)と、経済などのグローバル化は、世界の変化の底流を貫く。

 2008年はスマホが登場したばかりの時代だったが、今では世界人口の半分以上に普及した。これをベースに自動車のライドシェア、民泊、電子決済、eコマースなどの新サービスが急速に普及。人々の生活を一変している。

 国境を越えた電子取引や情報の交換が加速し、全世界的なサプライチェーンが発達した。グーグル検索やユーチューブ、Facebookなどのサービスは利用者が10億人を超え、国境を越えた経済や人的つながりが進化している。

 IT大手のアップル、グーグル(アルファベット)、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトは、企業価値を示す時価総額で世界の上位5社を独占している。世界最大の権力者である米大統領は、既存のメディアを通じでではなくツイッターを通じて情報発信する。

 一方で、サイバー攻撃が世界的な規模で横行。国家による情報管理(スノーデン事件などで露呈)や、巨大IT企業による情報独占などの問題も表面化した。ジョージ・オーウェルの「1984」的な懸念も絵空事ではない。

(2)中国の台頭・アジアの成長

 中国は10年間を通じて6%台-10%の高度成長を維持。GDPは2010年に日本を抜いて世界第2位になり、今では首位米国の3分の2程度にまで拡大した(購買力平価ベースでは断トツの1位)。ミクロベースでもアリババやテンセントなどの先端企業が急成長。深?は米シリコンバレーに次ぐ世界のIT拠点に成長している。

 こうした経済成長を背景に中国は世界各地で存在感を拡大している。政府は一帯一路政策を掲げ、中国経済圏の構築に動く。南シナ海では軍事的な活動を拡大するなど、膨張圧力を強めている。

 中国の拡大は、米国(米欧)中心だった世界秩序に変更を迫っている。

 アジア諸国はこの10年間、おおむね順調に経済成長した。インドは7%以上、東南アジアは5%程度の成長を維持。貧困削減や中間層の拡大は顕著だ。経済成長の背景には、大きな戦争や地域紛争がなかったことが大きい。

▼中東混乱とテロ

(3)アラブの春の挫折と中東の混乱

 紛争が続いたのが中東。2000年代のイラク戦争で混乱が深まっていたところに、2011年のアラブの春の挫折(チュニジア以外の国)が加わった。状況は一層深刻になった。シリアやイエメン、リビアなどは内戦状態に陥り、エジプトなどは民主化が後退した。混乱の間隙を縫って「イスラム国」が台頭。スンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランの対立は先鋭化している。

 中東混乱は大量の難民、国内避難民を生み、2015年には欧州難民危機を生み出した。イスラム過激派のテロリストが育つ温床にもなっている。世界の混乱の震源地である状況が続く。

(4)テロの日常化

 2001年の米同時多発テロ以来、世界はテロと対峙する時代に入ったが、その傾向は過去10年で一層鮮明になった。欧州や米国でも大規模テロが散発。中東や中央アジアではさらに頻繁で、よほどの規模でなければニュースにもならない状況だ。

 実行犯はイスラム過激派が多く、組織だったテロだけでなく個人で実行するケースも増えている。背景には社会に受け入れられない疎外感、貧困格差などが指摘される。さらにその奥には、米欧的価値観とイスラムの価値観の違いがあるとの見方もある。根は深い。

▼Gゼロの時代

(5)格差の拡大→ポピュリズムの台頭

 格差の拡大(inequality)も重要なキーワードの一つだ。先進国では一部の富裕層が益々豊かになる一方、中間層以下の人々が相対的に貧しくなり、格差が広がった。これがポピュリズムや反グローバリズムの台頭につながり、2016年の米トランプ大統領の当選や英国のEU離脱(Brexit)を生み出したと指摘される。欧州各国における極右政党や反移民政党の台頭も同じ脈略で理解すべきだろう。

 先進国と新興国の格差は縮小した。しかし、多くの新興国内では腐敗や汚職が横行し、成長の恩恵が平等に行き渡るケースは少ない。ここでも人々の不満が堆積し、ポピュリズムが育つ土壌がある。

 技術革新や社会の急速な変化は格差拡大を生みがちだ。それを是正し、人々の不満をやわらげ社会の安定を維持するのが本来の政治の役割。しかし、その機能は上手く作用していないように見える。

(6)グローバルガバナンスの弱体化=Gゼロ

 10年間で米国の影響力は明らかに後退した。オバマ前米大統領は米国がもはや世界の警察官でないとの認識を示し、中東からも駐留軍の縮小・撤退を模索した。シリアでは化学兵器使用という「レッドテープ」を設定しながら、それが破られても行動を取らず、信用を傷付けた。トランプ大統領は「米国第一」を前面に掲げ、パリ協定やTPPから離脱した。中東の混乱拡大の原因の一つは米国の関与減少によるところも大きい。

 第2次大戦後の世界の秩序は、超大国である米国を頂点とする構造だった(冷戦期にはソ連が挑戦者として存在していた)。しかし、米国は覇権国としての役割を果たせなくなりつつある。中国は存在感を拡大しているが、世界全体の秩序を仕切れる存在ではない。国連やEUの実験も、世界のモデルとなるには足りない。

 グローバルガバナンスの仕組みが弱体化し、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏が指摘する「Gゼロ」のような状況が訪れつつある。

(7)ワシントン・コンセンサス(民主主義・市場経済の理念)の影響力低下

 リーマン・ショックにより資本主義の危機が叫ばれた。1980年代から一世風靡した市場万能的な新自由主義は支持を失った。しかし、それに代わる新しい理念が示されることはなく、議論はいつの間にか尻すぼみになった。行き過ぎた市場主義の是正も中途半端に終わった。

 冷戦終了後の世界は、民主主義と市場経済を両輪とする米英中心の理念が世界をリードし、ワシントン・コンセンサスという言葉が使われた。リーマン・ショックでその魅力は褪せた。近年の欧米でのポピュリズムや反グローバリズムの台頭により、民主主義の危機も叫ばれる。

 代わって開発独裁の色彩が強い中国の開発モデル(北京コンセンサス)が、新興国などで魅力を高めている。世界は「理念」を巡っても揺れている。

(8)超緩和(カネ余り)の10年

 リーマン・ショック後に世界恐慌を避けるために、各国は大規模な財政出動を実行するとともに、金融を緩和した。米欧は2014年以降緩和の終了に動いているが、その速度は速くなく、世界的なカネ余り状態が続いている。

 世界経済はリーマン・ショック後を除くと3%以上で成長し、特に足元は順調だ。これも、金融の超緩和に支えられた面がある。

 資本主義経済は、bubble and burst(バブルの発生と崩壊)を繰り返してきた。リーマン・ショックから10年、潜在的なリスクとして潜んでいることは間違いないようにも見える。


◎ リーマンをガラ携メールで知った秋
◎ 資本主義 改革議論もありました
◎ アラブの春 希望の言葉に聞こえた頃
◎ 中国は「眠れる大国」今は昔
◎ 中国を遅れた国と言う年配者

2018.1.7

2018年01号(1.1-7 通算913号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2018年1月-7日 (アジア8日)
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◆南北朝鮮が2年ぶりに会談へ(5日発表)☆
・南北朝鮮は9日に板門店で高位級の会談を開催する。韓国統一省が5日発表した。
・実現すれば2015年12月以来約2年ぶり。
・先立つ1日、北朝鮮の金正恩委員長は「新年の辞」を演説した。
・この中で平昌五輪への選挙派遣に前向き姿勢を示し、南北関係改善に意欲を示した。
・同時に核・ミサイル開発の強硬姿勢も強調した。
・韓国の文在寅大統領は2日発言を歓迎。統一相は南北会談を呼び掛けた。
・3日には板門店の連絡チャネルが約2年ぶりに再会した。
・米韓首脳は4日電話会談。平昌五輪・パラ大会中(2-3月)の合同軍事演習を延期した。
・北朝鮮の核・ミサイル問題の行方は予断を許さないが、ひとまず南北対話が焦点だ。

◆トランプ政権の暴露本発売、大統領はバノン氏批判(5日発売)☆
・トランプ政権の内幕を描いた「炎と怒り」が予定を前倒しし発売された。
・ジャーナリストのマイケル・ウォルフ氏が、2016年の大統領選から17年8月までを描いた。
・この中でバノン前首席戦略官が、トランプ氏長男がロシア人弁護士と会った件に言及。
・反逆的な行為だったと発言した。
・トランプ氏は3日、バノン氏が正気を失ったと批判した。
・書籍は各地で売り切れ。話題性は大きい。

◆NY株2万5000ドル(4日)☆
・2018年年明けの世界の市場で株価は上昇した。
・NYダウは終値で初の2万5000ドルをつけた。
・世界的な経済順調や米税制改革による景気茂樹を期待した。
・世界的なカネ余りの中、株価は昨年を通じて上昇した。
・傾向が今年どこまで続くか、リスクは顕在化しないか、などに関心が集まる。

◆イラン反政府デモ拡大 ☆
・各地で2017年末に始まった市民の反政府デモは、イラン各地に拡大した。
・1週間を経過しても収拾しない。
・デモ参加者からは最高指導者ハネメイ氏への批判も表面化した。
・デモを機にイランが強硬姿勢に傾く懸念も指摘される。
・詳細や真相はなお不明なところが多い。中東の不安定要因だ。

◆インテルなどのCPUにリスク(2日)
・スマホやパソコンのCPUに情報を読み取られるリスクがあることが判明。
・米インテルやグーグルなどのIT大手は対策に乗り出している。
・英技術メディアのザ・レジスターが2日に報道。世界が反応した。
・欠陥はバグではなく、高速処理の仕組みに起因するものという。
・被害は認識されていない。
・専門家以外には分からない部分もあるが、ネット時代の広範なリスクになりかねない。

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◎寸評:of the Week
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 【2018年開始】 2018年が始まった。経済好調を背景に株価は強気な展開で始動。北朝鮮問題で対話に向けた動きが出た。中東はイランで反政府デモが広がったほか、サウジアラビアでは新たな王子の拘束があった模様だ。米国の東部を中心とした地域が大寒波に見舞われ、航空便マヒなどの影響が出た。

◎今週の注目(2018年1月8-14日 &当面の注目)
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・南北朝鮮の高位者による会談が9日板門店で行われる予定。世界が注目。

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2018年1月 1日 (月)

◆FTの2018年見通し 2017.12.31

 2018年が始まる。昨年誕生した米トランプ大統領は、既存秩序を否定するような政策で国際社会を揺るがしたが、今年も傾向は続きそうだ。世界が格差拡大やポピュリズム台頭などの課題に直面する状況も変わらない。中東の不安定とテロの懸念、北朝鮮核問題などの構図も不変だろう。世界経済は好調を維持するが、カネ余りの中でバブルが拡大しているとの指摘もある。

 英FT紙は毎年末、専門記者による翌年の展望を掲載。INCDはポイントを記録している。2018年の見通しも箇条書きする。

▽米国
・米中間選挙で民主党は過半数を得るか
  =得るがぎりぎり
・トランプ大統領に対する弾劾の動きは始まるか
  =始まる。民主党が中間選挙で下院の過半数を得るため。ただし進まない。
・米国は中国との貿易戦争を引き起こすか
  =イエス。知的所有権など。

▽米経済・産業
・ATTとタイムワーナーの合併は大規模な条件なしで認められるか
  =認められる。CNN売却のような大きな条件はない。
・テスラのモデル3sは25万台以上生産されるか
  =されない。
・S&P500 指数は年末2650以上か
  =Yes。2017年末は2673
・米10年国債の利回りは年末3%以上になるか
  =ならない。2017年末は2.405%

▽中国・アジア
・中国のGDP成長(発表)は6.5%を超えるか
  =公式の発表では超える。
・日銀は金融引き締めに転じるか
  =転じない
・インドのモディ首相は通常ではない経済政策を実施するか
  =する。(2016年の高額紙幣禁止ような通常でない政策)

▽世界経済
・新興国の経済成長は5%を上回るか
  =上回る
・原油価格は年末1バレル=70ドル以上になるか
  =なる
・ビットコインの安定的で流動性の高い市場は発達するか
  =しない

▽欧州・英国
・メイ首相は2018年末まで首相の座に留まるか
  =とどまる。Brexit交渉の中で保守党内から引きずり下ろしの動きは出にくい。
・英経済の成長率はG7で最も低くなるか
  =ならない。日本やフランスの方が低い可能性。
・マクロン仏大統領はユーロ圏の共通予算でメルケル独首相から大きな譲歩を引き出せるか
  =できない。投資基金設立など小規模な構想にとどまる。

▽中東・アフリカ・中南米
・サウジのアラムコの上場は実現するか
  =No。遅れる。
・ジンバブエのムナンガグワ新大統領は公正な選挙を実施して勝利するか
  =No。ムガベ前大統領の37年が2017年に終了。
・メキシコ大統領選で与党のミード氏は当選するか
  =Yes。ミード氏は元財務公債相。左派のロペスオブラドール氏との争いの見込み。

▽スポーツ
・サッカーW杯でブラジル、ドイツ、スペイン以外が優勝するか
  =しない。

2017.12.31

2017年52号(12.25-31 通算912号)国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2017年12月25-31日
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◆2017年の世界経済順調に拡大、NY株は25%上昇 ☆
・世界経済は順調に成長。IMFの見通し(10月)で3.6%成長を遂げた。
・成長率は2016年の3.2%から上昇。米欧中がいずれも順調に伸びた。
・2年連続マイナス成長だったロシアとブラジルもプラス成長に転じた。
・株価は世界的に上昇。NYダウは29日、2万4719ドル(25%増)で取引終了した。
・米欧は金融緩和の終了に向けて動いているが、世界的なカネ余りは続く。
・カネ余りの中でも物価上昇は鈍い。一方で資産バブルの懸念もある。
・世界経済は好調を保ちながら、潜在的リスクを抱えて年を越す。

◆イランで広範な反政府デモ(28-29日)☆
・イラン各地で市民らによる反政府デモが起きた。
・北東部のマシャドなどで発生。テヘランやイスファハンにも広がった。
・規模は合計で数千人との情報があるが、詳細は不明。
・イランでの抗議活動は異例。
・穏健派ロウハニ大統領の政治基盤に影響する可能性がある。

◆ペルー、フジモリ元大統領に恩赦(24日)☆
・クチンスキ大統領は、アルベルト・フジモリ元大統領(79)の恩赦を決めた。
・元大統領は人権侵害などの罪で収監中だった。
・元大統領は1990-2000年就任。経済発展や治安回復に成果を残した。
・しかし人権侵害などへの批判が高まる中、2000年日本に亡命。
・その後2007年にペルーに帰国し逮捕された。その後入退院を繰り返していた。
・同国の議会選ではフジモリ派が多数派を形成し、なお影響力を維持する。

◆イタリア議会解散、2018年3月総選挙(28日)
・マッタレッラ大統領は議会解散を宣言。2018年3月4日に総選挙を実施する。
・来年度予算の成立などを受けて、任期の5月の前に解散する。
・世論調査ではポピュリズムの五つ星運動がトップ。
・レンツィ前首相が率いる与党・民主党が続く展開。
・選挙結果次第では多数派が形成できず、混乱する可能性も否定できない。

◆ロシア反体制派の大統領選出馬禁止(25日)
・中央選管は反体制派指導者のナワリニー氏の大統領選出馬を却下した。
・過去に受けた有罪判決を理由に、被選挙権がないとした。
・同市はSNSを使った反政府運動を展開。
・2017年3月と10月にはロシア全土で抗議デモが展開された。
・出馬禁止は予想されたことだが、ロシア政治の現状を如実に物語る。
・2018年3月の大統領選ではプーチン大統領の再選が確実視されている。

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◎寸評:of the Week
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 【2017年終了】 2017年が終わる。前号の「2017年世界10大ニュース」でも振り返ったが、トランプ旋風に揺れた年だった。

 【リーマン・ショック10年】 2018年はリーマン・ショックから10年。世界は政府の膨大な財政支出と金融緩和で何とか恐慌を防いだ。その後10年、世界経済は浮沈を経験しながらも成長を維持している。この間、IT革命は進展。登場したばかりのスマホは世界の半分の人が所有するようになり、配車アプリなど多くの新サービスが発達した。中国は経済大国としての存在感を拡大(2008年はまだ世界3位だった)。自動車はガソリンからEVへの移行が現実のものになってきた。
 足元を見れば、カネ余りが続き、株価は世界的に上昇。バブルの懸念もある。2018年の経済はどうなるか。

◎ カネ余りリーマンの記憶も風化気味

  
◎今週の注目(2018年1月1-7日 &当面の注目)
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・2018年が幕を開ける。中東の混乱は続き、テロも続きそう。北朝鮮の核問題は緊迫した状況が続きそうだ。こうした国際政治の状勢下で、米トランプ政権は2年目に入り、中国は3月の全人代で習近平体制2期目の政府(国務院)人事などを決める。ロシアでは3月に大統領選がある。

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