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2018年1月28日 (日)

◆2018ダボス発のメッセージ 2018.1.28

 ダボス会議が23-26日開催された。世界の政治やビジネス界のリーダーが参加したが、今年の注目は何といってもトランプ米大統領。大統領と政権幹部から通商や通貨政策について様々な発言があった。その内容には必ずしも統一性がなく、その度に世界や市場は揺れた。

▼トランプ演説

 ダボス会議へのトランプ大統領の参加は、様々な観点から注目された。就任から1年の間に、トランプ大統領はTPPやパリ協定からの離脱、イスラエルの首都としてエルサレム承認など、既存の国際秩序を覆す決定を相次ぎ下した。一方、大統領が自身の政策や戦略を世界に向かってまとめて話した機会は多くなかった。

 大統領の移民規制などの政策には世界各地で反対運動が発生。開催地スイスではダボス会議参加に抗議するデモが繰り広げられた。そんな中での演説だ。

 トランプ氏は、減税や規制緩和で米経済が活況を呈していると自賛した。そのうえで通商政策について、米国は自由貿易を支えると強調。ただし、相手国は公正な貿易を行う必要があると条件を付けた。TPPについては、現在の協定案が「ひどいものだ」としたうえで、内容が改善されるのであれば再加盟を検討する可能性があると示唆した。

 トランプ氏の通商政策には、保護主義的との批判が多い。演説内容を見ると、そうした従来の姿勢より多国間主義を尊重するかのような姿勢もうかがえる。米政治メディアのPoliticoは、"Elites get a dose of the Trump First message"(エリートは演説をひとまず落ち着いて受け止め)と報じた。しかし演説に具体的内容は十分でなく、政策を十分に練った上での内容にも見えない。不透明感はついて回る。

▼America first, not America alone

 大統領選以来のトランプ氏の一枚看板がAmerica First(米国第一)。演説の中でトランプ氏は米国第一を強調する一方で、「米国第一は米国だけを意味するのではない」(America first does not mean America alone)と述べた。エイBBCは「これが演説の基調であり、ホワイトハウスの主要メンバーからのメッセージ」(It was the key line of the speech, and a message echoed by other leading members of the White House power pack here)と解説した。

▼通貨安戦争?

 通商以外で物議を醸したのが通貨政策。ムニューシン財務長官は24日、記者団に対し「短期的に見ればドル安は貿易面で米国にとって良い」とドル安容認と受け止められる発言をした。これを受けて市場ではユーロ、円など主要通貨に対しドル安が進んだ。

 各国が通貨安競争に走れば、保護貿易の高まりやブロック経済化をもたらしかねない。2008年の世界金融危機の後にも、通貨安競争に対する懸念はたびたび主要国間で共有されてきた。

 そもそも通貨政策の責任者である財務相や中銀総裁が為替相場に関連する発言をすること自体が異例だ。ドラギ欧州中央総裁は25日の会見で、財務長官発言を取り上げ、異例ともいえる批判をした。

 トランプ米大統領は25日TV局とのインタビューで、強いドル政策を強調。財務長官発言を軌道修正した格好だ。しかし、政権からのメッセージの混乱が目立った。

▼エルサレム承認、より具体的に

 ダボス会議の直前、ペンス米副大統領が中東を訪問。イスラエルでは議会演説し、現在テルアビブにある米大使館のエルサレム移転を2019年中に実現すると述べた。米トランプ政権は昨年末、エルサレムをイスラエルの首都として認める政策を発表したが、より具体的な日程を示した。

 トランプ大統領も25日 ダボスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談。副大統領発言と同じ趣旨の内容を伝えた。パレスチナ問題で米国のイスラエル寄りの姿勢が一層鮮明になった。

 エルサレムの首都承認で、国際社会の大半は反対している。国連総会も昨年末に反対決議を採択。欧州諸国もこぞって反対を公式に表明している。米トランプ政権vs国際社会の見解の相違が際立った。

▼エスタブリッシュメントのダボス会議

 会議にはトランプ氏以外にも多数の世界の政治、経済の指導者が参加した。ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は自由貿易の擁護を強調した。インドのモディ首相は、保護主義への警戒を訴えた。アリババのジャック・マー会長は技術革新が社会に及ぼすメリットについて話した。

 ダボス会議はもともと世界のリーダーが集まり、世界の課題や必要な政策について話し合い、情報発信をする場。1990年以降はグローバル化の先導役を果たした。世界金融危機以降は、第4次産業革命(Industry4.0)など技術革新を強調する。

 参加者は基本的にエスタブリッシュメント。既存秩序の抜本的見直しというより改革によって進歩を目指す傾向が強い。議論も技術革新やマクロ経済政策などでは具体性のある内容が多いが、世界的な格差是正や貧困問題などのように社会構造的な問題ではインパクトに欠くことも少なくない。

 昨年は中国の習近平国家主席が参加。自由貿易擁護などの発言をした。今年のモディ・インド首相の発言も同様だ。いずれもダボスの予定調和に沿うような、模範解答的な演説と言ってもいい。

▼メッセージ

 トランプ大統領は反エスタブリッシュメントの支持を背景に当選し、言動では既存秩序を否定してきた。ダボス演説にもその傾向維持しつつ、一部変化の兆しのような部分もあった。受け止め方は難しい。

 明確だったのは、米国が世界のリーダーとして国際秩序を維持するのではなく、うしろ従来秩序の変化を模索していること。米国と世界の間には、なお対立・相違が目立ったことだ。

 演説からは、トランプ政権の具体性の欠如や一貫性のなさがうかがえた。一方で存在感においては、トランプ氏が他のリーダーを圧倒した。

 未来展望のある明るい話は、技術革新の分野で多かった。格差、貧困など世界が抱える問題には、あまり具体的な情報発信はなかった。 

 ダボスのメッセージは、米国の変貌、世界の既存秩序の変化、先行きの不透明感の拡大などを映しているように見える。

◎ 世の中の半分が見えるダボスから
◎ アメリカ対世界を感じる冬の山

トランプ米大統領演説
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-world-economic-forum/
ダボス会議HP
https://www.weforum.org/events/world-economic-forum-annual-meeting-2018

2018.1.28

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