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2017年8月 9日 (水)

◆ベネズエラ混乱の読み方 2017.8.6

 ベネズエラでマドゥロ大統領の政権が制憲議会(議会とは別)の選挙を強行。与党の与党統一社会党が全議席を獲得した。大統領は制憲議会開催→憲法改正→任期延長・長期政権を目指す構え。野党は反対運動を展開。欧米などは制憲議会選を独裁的と批判し、対ベネズエラ制裁強化に動く。混乱の拡大は必至だ。ベネズエラ情勢をどう見ればいいのか。

▼選挙を強行

 制憲議会選実施はマドゥロ大統領が5月1日に発表した。

 ベネズエラは2015年12月の総選挙で与党が敗北。議会で多数を占めた野党と大統領が激しく対立した。今回の動きの前段として、2017年3月には大統領派の最高裁が議会の立法権を剥奪。国際社会の批判を浴びて撤回した経緯がある。

 制憲議会選実施に野党は激しく反発。選挙をボイコットした。欧米など国際社会の多くも選挙を批判した。しかし、マドゥロ大統領は選挙を強行した。

▼政治混乱拡大

 野党がボイコットしたため、与党が545の全議席を獲得した。投票率は42%、人口約3000万人のうち800万人が投票したという。マドゥロ大統領は直ちに勝利を宣言した。ただし不正があったという指摘が野党や国際社会から出ている。

 制憲議会は4日に始動。国会を廃止し、新憲法制定に動く見通しだ。マドゥロ大統領の任期は2019年までだが、憲法改正すれば長期政権が可能になる。

 野党は制憲議会を認めず、徹底構成の姿勢を崩していない。全国的に抗議活動が拡大し、死者も多数出ている。混乱は加速する。

 欧米など国際社会の多くは大統領の動きを批判。制裁強化などに動いている。ただ、ロシアや中国などは政権への理解を示し、必ずしも一枚岩ではない。

▼国を2分

 ベネズエラの現在の政治対立は、1999年のチャベス政権成立にさかのぼる。同国は石油資源に恵まれながら、富を一部の富裕層や米国資本が独占。貧富の格差が大きかった。チャベス氏は貧民救済と反米を前面にカリスマ性を発揮。反対派に対しては強権的な姿勢で臨み、独裁的な体制を築いた。2013年3月に死亡するまで大統領を続けた。

 同氏の後継者としてチャベス路線を継承したのがマドィロ大統領だ。基本的な姿勢は反米・貧民救済・社会主義的な姿勢だ。

 これに対し野党は経済改革を重視。米国との関係改善など国際協調を打ち出して対立した。

 同国社会はチャベス派と反チャベス派に二分され、混乱は加速度的に拡大している。米国など他の国でも社会の分断が指摘されるが、ベネズエラの程度はその比ではない。
 
▼壊滅的な経済
 
 経済は壊滅的だ。原油価格の低迷もあり、同国経済は2015年以降大幅なマイナス成長に陥った。2016、2017年は2桁のマイナス成長の見通し(統計の正確さも疑問だが)。

 インフレ率は500%に達し、1000%に跳ね上がるとの見方もある。通貨ボリバルは大幅に下落。経済悪化で国債や国営石油会社の債権のデフォルトの懸念が膨らんでいる。

▼崩壊に向かう社会

 社会の混乱は深刻だ。治安が悪化する中、犯罪率は急上昇。殺人率は人口数千万人以上の大国では世界最悪だ。年間の殺人件数は推定3万件以上。人口が3分の2ほどのシリア(約2000万人)の民間人の殺害数(年間1.5万人程度)よりも多い、という見方もできる。

 食料不足から食料不足から飢餓に直面する人も増えている。動物園ではライオンなどに十分にえさを与えることができず、がりがりに痩せた映像が流れている。

 同国からの難民も増加。コロンビアにはすでに15万人以上が流出した。ブラジルなど他の国にも難民流出が続く。医師など専門家は、すでに多くの人が同国に見切りをつけて脱出した。

 このまま政治的な対立が進み、混乱がさらに拡大すれば行きつくところまで行ってしまうリスクもある。社会自体お崩壊の危機、国の失敗国家化も切実な問題として迫っている。
 
▼根深い歴史的・構造的問題 

 それにしても、なぜこんな状況になってしまったのか。

 背景には植民地時代からの支配体制、大土地所有、第2次大戦後の米国支配、膨大な貧富の格差、民主主義の未発達など歴史的・構造的な問題がある(この辺は、中南米職に共通する)。

 ベネズエラは世界有数の産油国で、埋蔵量は世界トップクラス。石油ブームの2014年まではその恩恵にあずかり、経済改革も遅れた。原油価格下落で、そのツケが一気に表面化した。

 チャベス氏-マドゥロ氏と続く現在の政権は、基本的に革命政権だ。革命政権であれば、既存の秩序にはとらわれない。政治・社会的な課題も「革命の貫徹」で解決しようというのだから、既存の法秩序を重視しないのもおかしくない。欧米など先進民主国と同じ尺度では、同国の動きは理解できない。

 常識的にマドィロ氏の狙いが成功しそうには見えない。混乱がさらに拡大し、社会が揺らぐリスクは大きい。

 ベネズエラをはじめとする中南米には、現代の世界が抱える問題が凝縮されて表れている面もある。根の深い問題だ。

◎ 3年前、国も石油もあったのに
◎ 革命の理想の後の生地獄
◎ 世界(よ)はデフレ随所に4桁インフレぞ

2017.8.6

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