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2017年7月 2日 (日)

◆香港返還・アジア危機・スマホ 2017.7.2

 香港が英国から中国に返還されて1日で20年を迎えた。アジア通貨危機表面化からも20年。6月29日は、アップルがiPhoneを発売し、スマホの時代に入って10年目だった。記念の節目から振り返ると、過去10年、20年の世界の変化がいろいろ見えてくる。

▼中国の拡大

 香港返還の1997年7月、香港は中国のはるかに先を行く存在だった。香港のGDPは中国全体の18%、1人当たりのGDPは中国の35倍だった。香港ドルは人民元に比べ約7%高かった。

 世界と中国の貿易の少なからぬ量が(契約などで)香港を通して行われ、海外から中国への投資は香港経由で行われるものが多かった。海外企業が香港に設立した企業が、中国国内の工場を管理するケースも多かった。文字通り、香港は中国の窓口だった。

 現在(2016年)、香港のGDPは中国の3%以下。1人当たりのGDPも5倍程度に過ぎない。香港ドルの価値は約10年前に人民元より安くなり、現在は約20%低い。

 「中国の高成長はいつか限界が来る」と経済専門家などは指摘した。しかし中国は過去20年間10%近い成長を維持。GDPは2010年に世界2位になり、上海など先進地域の1人当たりGDPは中心国並みだ。アリババやテンセントなど世界的な企業が育った。AIIB設立や一帯一路構想、南アジアへの海洋進出など、中国の拡張は留まるところがない。

 返還後20年で、香港の中国に対する優位性や存在感は、経済規模で見る限り相当縮小した。

▼問われる1国2制度

 香港返還時、中国は香港に対し高度な自治を認める「1国2制度」を向こう50年間維持すると約束した。しかし政治的な動きなどがあるたびに、香港の自由が脅かされる事例が相次いだ。

 代表は2014年の雨傘運動だ。2017年の行政長官線をにらみ、学生ら民主派が自由選挙を要求。中国の意向を受けた当局は、これを力で封じ込めた。

 その後、香港では無力感が高まる一方、中国からの独立を目指す強硬派の台頭も表面化した。

 中国当局は、こうした動きに強硬姿勢を示す。習近平国家主席は1日の記念式典に参加。「中央の権力に対するいかなる挑戦も絶対に許さない」と明言した。中国政府が、「1国」を「2制度」に優先させる立場を改めて示したともいえる。

 香港が中国にない特徴として保持しているのは「法治」を基礎とした経済や社会システム。そして相対的な「自由」だ。今後もこうした特徴を生かし、独自の存在感を示していけるのか。それとも中国の中に埋没してしまうのか。返還20年の節目は、香港が重大な岐路にあることを改めて明示した。

▼通貨危機から成長へ

 タイがバーツのドル連動を断念し、アジア通貨危機が表面化したのは香港変化の翌日の1997年7月2日だった。タイと韓国、インドネシアがIMF監視下に置かれ、フィリピンなどの通貨が混乱した。インドネシア・ルピアは米ドルに対し80%、タイ・バーツや韓国ウォンは50%低下した(その後現在に至るまで、水準は大きく下がったままだ)。インドネシアではスハルト政権が崩壊し、韓国では財閥が解体した。

 通貨危機前、アジア各国は経済成長を追求して海外からの借り入れを急増。金融システムの危機管理はおろそかになった。これが通貨危機の一因だ。

 危機後、各国は金融監視などを強化。アジア国間でも通貨相互融資のチェンマイ・イニシアティブを導入(2005年)するなど危機管理強化に努めた。2008年の世界金融危機の際にもアジアの金融システムが揺らぐことはなかった。

 アジア経済はこの20年、少なくとも数字的には順調な成長を実現している。中国だけでなく、他の地域も高い成長率を維持。近年の成長率はインドが7%以上、中国が6%台、東南アジアが4-5%だ。アジアが世界の経済成長を引っ張る時代が続く。

▼成長を支えた平和、改めて問われる政治

 アジアが成長を実現してきた要因として、平和の維持が大きい。アジアでは1950-70年代のベトナム戦争、その後のカンボジア紛争など1990年代前半まで戦争・紛争が続いた。「紛争のアジア」という言葉が時代を映し、経済の発展は損なわれた。しかし1990年代後半以降大規模な紛争はなく、状況は変わった。

 ただ、現在の平和や政治の安定が危うさを抱えているとの指摘も少なくない。中国は共産党1党独裁の国家。シンガポールやマレーシアも事実上1つの政権が政治を支配する体制が続いている。タイは軍事政権下にある。フィリピンには強権のドゥテルテ大統領が誕生した。

 反グローバリズムの高まり、トランプ米政権の誕生など、世界の枠組みは変わろうとしている。テロの中東からアジアへの拡散の兆候など、新たなリスクも噴出している。

 アジア通貨危機は、経済モデル、金融システムの監視体制のほかに、政治や社会の安定などの問いも突き付けた。それは現在まで引き継がれる。

▼スマホ時代

 iPhone発売から10年の6月29日、アップルのクックCEOはツイッターで「世界を変えた」と発した。iPhoneの累計販売台数は12億台。2016年の世界のスマホの出荷台数は16億台だ。今では世界中の2人に1人以上がインターネットでつながり、フェイスブックの利用者は20億人を超えた。

 世界はICT革命の最中にある。スマホ時代10年目は、時代を考えるのにふさわしい節目だ。

◎ 1国2制度、元々詭弁と知るけれど
◎ 自由より「大中華」響く香港の空
◎ 豊かさは鄧小平の夢に近付くが

2017.7.2

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