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2017年6月 4日 (日)

◆米国のパリ協定離脱が映すもの 2017.6.4

 トランプ米大統領が地球温暖化対策のパリ協定からの離脱を表明した。国際世論を無視する形の「米国第一」の決断。ある程度予想されていた事とはいえ、現実のものになると衝撃は大きい。

▼法王の忠告も無視

 離脱発表のタイミングは、欧州などからの外遊から戻って間もなく。欧州では各国首脳のほか、ローマ法王もパリ協定の重要性を強調。離脱しないよう訴えた。しかしそうした要望も無視された形だ。

 大統領の表明を読むと、「米国第一」や「米国の利益」が頻繁に登場する。一方、地球環境全体について語った部分は少ない。「米国第一主義」が改めて、しかも明確に打ち出された。

 パリ協定離脱はトランプ氏が選挙戦時から公約に掲げていた政策。一部エネルギー業界や炭鉱産業従事者などの要望に応えるものだ。米国内には科学者にも、温暖化に否定的な見方がある。

 しかし産業界を広く見渡せば、多くはむしろパリ協定推進派だ。離脱の決定に多数の企業が遺憾を表明。政府の方針にかかわらず、産業界として温暖化削減に取り組む姿勢を強調した。産業界の大統領助言委員会のメンバーであるテスラなどのイーロン・マスク氏は、辞任を表面した。

 世論調査によれば、共和党支持者であっても半分以上はパリ協定離脱に反対だ。こうした状況の中で大統領は離脱を決めた。

▼石炭増加にはつながらず?

 シェール革命の進展などで、エネルギーの分野では石炭→天然ガスや再生エネルギーなどの動きが加速中だ。米国がパリ協定を離脱したからといって、石炭が消費が拡大に向かう情勢ではない。再生エネルギーの拡大、エネルギー効率の上昇というトレンドは、長期的には変わらないとの見方が多数だ(原発の行方については、先進国における脱原発の動きと新興国での原発利用拡大の動きがあり、複雑だ)。

 パリ協定離脱が石炭産業などの雇用増加に実際につながる可能性はそれほど大きくないと見るのが自然だろう。

 石炭転換が進まないのであれば、米国で今後温暖化ガスがどんどん増えていくという状況ではない。今回の離脱がそうした点まですべて織り込んだ決断だったかは不明だが、政治的な狙いが大きかった可能性がある。不明な点がなお多く残るのは、トランプ流といえばそれまでだ。

▼トランプ政権vs国際世論

 独仏伊首脳は共同で声明を発表。遺憾を表すとともに、協定の再交渉は拒否した。中国の李克強首相、英国のメイ首相なども協定推進を表明した。この問題では、トランプ政権vs世界の大多数、という構図が明確になった。

 国際情勢の観点から見れば、離脱表明によりトランプ大統領の「国際協調より米国第一」の姿勢が改めて明確になった。トランプ大統領が世界の指導者が共有する危機を共有していないこと、世界がこれまで積み上げてきた秩序を(たとえ代替案がなくても)躊躇なく否定することも再度露呈した。

 米国はこれまで世界の警察官として、グローバルガバナンスを総合的な視点でとらえてきた。しかし、最早状況は異なる。世界全体より米国の利益を優先。問題を総合的に関連付けて解決策を探るというより、個々の問題に時にはばらばらに取り組む。そして時には既存秩序の破壊も厭わない。世界は指導者なき時代(G0)に入ったとの感を新たにする。

▼技術革新

 一方で、10年単位で経済や技術革新を見ると技術革新を改めて認識することも多い。全世界的に地球の気候温暖化に関心が高まり、リオで地球サミットが開かれたのが1992年。その後温暖化ガス削減が全地球的な課題として認識され、省エネや再生可能エネルギーの開発が進んだ。シェール革命も起きた。

 電気自動車が本格的に登場したのは約10年前。今日では先進国の各地に電気スタンドが整備され、テスラやグーグルなど先端企業が次世代の自動車開発を加速する。

 パリ協定など温暖化防止の動きが、こうした技術革新を促している面も見逃せない。

◎反環境 協定離脱で名を残す?
◎また一つ、リーダーなき世界を実感す
◎トランプ時代 EVの風景日常に

2017.6.4

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