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2016年6月 6日 (月)

◆ムハマド・アリ氏の伝説 2016.6.5

 ムハマド・アリ氏が74歳で死亡した。ボクシングでスポーツ史に残る「キンシャサの軌跡」を演じたのはもちろん、公民権運動や反戦運動にも多大な影響を与えた人物。繰り返される報道は、改めて同氏の偉大さを感じさせる。
▼キンシャサの軌跡
 スポーツ雑誌などが、歴史上の「偉大なボクシング選手」のアンケート調査を実施すると、アリ氏は常に上位1-2位に入る。
 ローマ五輪金メダルからプロ入り。世界ヘビー級チャンピョンに就き19回の防衛した。業績はそうした数字面にとどまらない。巨漢が打ち合うスタイルだったヘビー級の世界に、「蝶のように舞いハチのように刺す」スピード感にあふれた新しいスタイルを持ち込み、新時代に導いた。
 そして1974年の「キンシャサの軌跡」。圧倒的に不利な予測の戦いで、象をも倒すといわれた強豪ジョージ・フォアマンを一発逆転でリングに沈めた。ボクシング史の最高の試合という評価も多い。その興奮と熱狂は、40年を経過した今日でも映像からよく伝わってくる。
 蛇足だが、当時キンシャサがこうした世界的な試合を開催できる状況にあったという事実も興味深い。コンゴ民主共和国は当時モブツ大統領独裁の下でザイールという国名だった。その後90年代に内戦に陥り、モブツ政権は崩壊。多数の難民流出や殺戮が繰り返され、現在も不安定な状況が続いている。
▼公民権運動の象徴
 しかし、アリ氏の存在はスポーツを超えていた。1960年、ローマ五輪直後に五輪の金メダリストになりながら黒人であるがゆえにレストランへの入場を拒否されることを経験。金メダルを川に投げ捨てた。このエピソードは人種差別の状況を今にも伝える。こうした行動で、アリ氏は公民権運動の象徴になっていった。
 1960年代後半にはベトナム戦争従軍を拒否し王座をはく奪され、4年間のブランク経験した。ベトナム反戦運動の事例として有名な話だ。
 アリ氏がキング牧師に次ぐ偉大な黒人と言われることがあったが、これも社会の不正義との闘いを実践したためだろう。
▼生きる姿
 同氏はマルコムXの影響を受けてイスラム教に改宗。カシアス・クレイからアリに改名した。
 1980年代からはパーキンソン病を患い、身体が不自由になった。その姿で1996年アトランタ五輪の聖火を点火するなど公の場に登場した。
 特に宗教をめぐる問題は、米社会でもまだ十分に咀嚼されたとは言い難い。しかし、生きる姿を晒し、人生と闘う姿勢を示し続けたことのインパクトは最後まで大きかった。
▼伝説
 2008年にオバマ氏が米大統領になったのは、アリ氏が金メダルを投げ捨ててから約半世紀後。アリ氏はどう感じたかなどを考えてしまう。トランプ氏が反イスラム的な発言をしたことに対しては、直接的な表現ではないものの開会する情報を発している。
 超一流のスポーツ選手は、言葉でなく行動で人々に感動を与え、思想や問題意識を伝える。アリ氏はそれをリング上ばかりか、社会とのかかわりの中でも示し、伝説になった。
 生ける伝説から歴史上の伝説に変わり、今後人々にどんなメッセージを伝えていくのだろうか。
◎ 蜂のごと世の不条理にパンチ刺す
◎ 動乱の報に想起すアリの奇蹟
◎ 捨てて問うメダルと王座の欺瞞性
2016.6.5

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