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2015年4月 5日 (日)

◆「中東混乱」の整理 2015.4.5

 中東・北アフリカの混乱が拡大している。先月半ば以降だけでもチュニジアのテロ、サウジによるイエメン空爆、イラク軍による「イスラム国」からのティクリート奪回、イスラエル総選挙、イラン核問題枠組み合意など、国際社会を揺るがす大ニュースがずらりと並ぶ。
 各ニュースの深層はなお不明な点も多い。しかも底流で相互に結びついて動く。実態は複雑だ。世に溢れる「中東の簡単な理解」という解説本が描くように、現実は単純でない。
 2015年の最初の3か月の動きを、とりあえず事実関係中心に整理しておく。

▼中東・イスラム過激派・テロ関連の動き

・1.7  パリで連続テロ(シャルリエブド襲撃など)。
・1.10 ナイジェリア北東部のボルノ州でボコ・ハラムのテロ相次ぐ。
・1.15 ベルギーでテロ拠点一斉摘発
・1.20 「イスラム国」が日本人の人質画像(2.1までに殺害)
・1.22 イエメンでシーア派系過激派が首都サヌア制圧。
・1.23 サウジのアブドラ国王死亡。サルマン新国王。
・1.27 リビアのトリポリで高級ホテル襲撃テロ。
・2.3  「イスラム国」がヨルダン人パイロット殺害映像。ヨルダンは報復空爆
・2.6  イエメンでシーア派系過激派が議会解散。政権掌握。ハディ政権首都脱出。
・2.12 米大統領が対「イスラム国」方針転換。軍事派遣強化の新決議案
・2.14 デンマークで連続銃撃テロ(表現の自由に関する集会)
・2.15 リビアで「イスラム国」がエジプト人動労者21人を殺害。エジプトが拠点空爆。
・2.17 ワシントンでテロ対策閣僚級会合、60か国超から参加 
・3.2  イラク軍がティクルートの奪還作戦開始
・3.3  イスラエル首相が米議会演説。米大統領と亀裂。イラン核交渉反対。
・3.5  「イスラム国」がモスル近郊のニムルド遺跡、ハトラ遺跡を破壊
・3.17 イスラエル総選挙。リクードが勝利
・3.18 チュニジアでチュニスで博物館襲撃テロ、外国人観光客ら19人死亡
・3.24 米がアフガン撤退警戒見直し。年内半減を先送り。
・3.25 米などがティクリートに空爆開始
・3.26 サウジがイエメンに軍事介入。シーア派系「フーシ」を空爆
・3.28 ナイジェリア大統領選。野党のブハリ氏当選
・3.38 アラブ連盟首脳会議(エジプト)。イエメン介入支持、合同軍設置など合意。
・3.31 イラク軍、シーア派民兵が「イスラム国」からティクリート奪還 
・4.1  パレスチナが国際刑事裁判所に正式加盟
・4.1  イスラム国がシリア・ダマスカス郊外の難民キャンプ襲撃
・4.2  イラン核問題枠組み合意。
・4.2  ケニアで大学襲撃テロ。147人死亡。

▼地域・テーマごとに見た動き

(1)「イスラム国」を巡る動き
・イラク、シリア北部で活動を維持している。各地のテロ組織が「イスラム国」のブランドを使う。
・各国から「イスラム国」への流入はなお続く。英国人少女の入国などが話題になった。
・空爆でイラクでは勢力後退も伝えられるが、実態は不透明な部分が多い。

(2)シリア
・内戦状態が続く。
・北部中心に「イスラム国」の活動。アサド政権も存続。情報は交錯している。

(3)イラク
・「イスラム国」が北部を支配。米軍などの支援でティクリートを奪回した。
・政権内部の宗派や民族の対立は根強い。

(4)イエメン
・シーア派過激派の「フーシ」が首都サヌアを制圧。南部アデンに迫る。
・サウジが介入し空爆。ハディ暫定大統領(スンニ派)を支援するが、空爆だけでは効果限定的。
・アラブの春で政権を追われたサレハ前大統領系も反政府(反ハディ政権)の立場。
・イランはフーシを支援(支援の内容は諸情報)。サウジとイランの代理戦争の側面もある。
・過激派「アラビア半島のアルカイダ」が拠点を構え、国際的なテロの輸出拠点になっている。
・各勢力の対立で、同国は無政府状態になりつつある。そうなればテロの輸出拠点の色彩がさらに強まる。

(5)サウジアラビア
・アブドラ国王→サルマン国王。スンニ派の大国。
・イランと敵対。シリアでは反アサド派を支持、武器等供与の情報も。
・石油市場に影響力。原油価格下落容認で「イスラム国」への打撃を狙うとの情報も。

(6)イランと核問題
・2014年のロウハニ大統領誕生以降、米欧と関係改善模索の兆候がある。
・核問題の前進で経済制裁の解除を狙う。
・シーア派の盟主。シリアのアサド政権、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシなどを支援している。

(7)イスラエル
・選挙で右派リクードが勝利。ネタニヤフ政権が継続する。
・パレスチナ問題では強硬姿勢を示し、イランの核問題は交渉に反対する。
・米オバマ政権との関係はかつてないほど緊張している。
・欧州でもイスラエルの強硬姿勢に対し、批判的な世論が強まっている。
・ネタニヤフ首相がどのような連立政権を組むかが当面の焦点。

(8)パレスチナ
・イスラエルとの和平交渉は事実上停止状態にある。
・ヨルダン川西岸の自治政府とハマス中心のガザの対立は、一時より緩和した。ただ関係は複雑だ。
・ICC加盟などパレスチナにとって前向きな動きもあるが、パレスチナ情勢全体を変えるものではない。
・かつてのように中東問題の中心がパレスチナ問題という状況でなくなっている。

(9)エジプト
・シシ政権は治安安定をある程度実現しているが、強権姿勢が強い。
・テロのリスクなどを抱える。
・米国は軍事支援を再開。
・経済は苦境。国民の不満は大きい。
・アラブの春を主導した民主派の若者は屈折感を抱えている。

(10)リビア
・中央政府が機能を果たしていない。各地に民兵組織などが拠点を構える。
・過激派が入り込み、テロが頻発する。

(11)チュニジア
・アラブの春の後、曲がりなりにも民主化プロセスが進んでいる唯一の国。
・経済は苦境。若年中心に失業率高い。「イスラム国」への出国者も少なくない。
・先の博物館テロのように、過激派が活動している。

(12)ナイジェリア
・北東部でイスラム過激派ボコ・ハラムが活動を続ける。
・人口1億7800万、アフリカ1のGDPを誇る大国。産油国。
・石油収入の恩恵は国民に及ばず、半数近くが貧困にあえぐ。汚職など多い。
・2015年3月末の選挙で元軍事政権のブハリ氏が当選。平和裏に政権交代が実現した。
・北部はイスラム教徒、南部派キリスト教徒が多い。

(13)その他アフリカ
・ソマリアは中央政府の支配が地方支配に及ばず、各地に勢力が散在。
・過激派の拠点も紛れ込んでいる。
・ケニアでもイスラム過激派によるテロがしばしば発生。
・マリ、コンゴ、スーダン、南スーダンなど紛争の火種を抱える地域は多い。

(14)欧州におけるイスラム過激派によるテロ
・1月にパリで連続テロ。2月にデンマークでテロが起きた。いわゆる「一匹狼型のテロ」が頻発。
・「イスラム国」への応募も止まらない。
・背景に欧州社会に受け入れられないイスラム系移民の不満などがある。
・地元の住民の間では、移民排斥の動きも強まっている。

(15)国際社会の動き
・2月にワシントンでテロ対策閣僚会議を開催。G7などでもテロ問題を協議している。
・様々なテロ防止策が講じられているが、抜本策は見つからない。
・テロとの戦いは長期的なものになるという見方が、「共通認識」として共有されている。

(16)米国の動き
・オバマ政権はイラク、アフガンからの撤退を表看板にする。しかし実質修正を余儀なくされている。
・イランやエジプトと関係改善の動きがある。
・イスラム国というより深刻な脅威への対応を優先させている。

 以上、一部に触れただけだが、状況は極めて複雑だ。冷戦の終了による米ソの分割統治が終わり、イラク戦争やアラブの春でサダム・フセイン政権やリビアのカダフィ政権などが倒れた。シリアのアサド政権は弱体化した。その結果、以前なら強権政治が押さえ込んでいた紛争の種が、表面化した格好だ。
 イスラム過激派の影響は拡大している。インターネットなどの発展により新たな新たな情報伝達の方法や人的ネットワークが形成された。テロ問題は国単位では考えても意味がない。中東混乱には、そうした特徴が表れている。

2015.4.5

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