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2015年1月

2015年1月26日 (月)

◇世界の関心と国際世論2015年04号(2015.1.19-25)

・欧州中銀の量的緩和に世界の注目が集まった。

・英Financial Timesは基本的に量的緩和が必要との立場で報道してきた。今回の決定も、必要な決定との判断を示している。ただ、その効果については楽観的ではない。Chief Economics CommentetorのMartin Wolf氏は、「この行為が降下を表すかどうかは誰も分からない。しかし、少なくとも物事がスタートした」と述べている。デフレ懸念が深まり、経済が低迷する中、無作為は許されないとの立場だ。

・FTは量的緩和を実施する一方で、中長期的には構造改革が欠かせないとも強調する。この視点はほぼすべての有力メディアが一致する。それが「できそうか」についての言及は少ない。

2015.1.25

◆動乱連鎖の世界 2015.1.25

 2015年に入り、世界は想像外の動乱に見舞われている。パリ、ベルギーでの連続テロに続き、今週は「イスラム国」による日本人拘束事件が表面化。イエメンでは混乱が拡大し大統領が辞任を表明した。中東の盟主・サウジアラビアのアブドラ国王が死去した。

 原油下落の影響が広がる中、ギリシャは議会の解散・総選挙へと動き、ユーロへの影響が懸念されている。欧州中銀はデフレ懸念が強まる中、量的緩和の導入を決定した。ウクライナでは政府と親ロ派の戦闘再燃が心配される。

 こうした動きはバラバラに起きているわけではない。中東の混乱、国際的なテロ・ネットワーク、経済悪化、格差拡大、人々の不満の増加などをキーワードに、それぞれの動きが結びつき、動乱の連鎖や混乱伝播ともいうべき動きが起きている。

 それぞれの動きの背景は不明な点も多く、関係を軽軽に説明するべきではない。しかし、「何らかの形で結びついている」ことは重要だ。重要な動きを整理する。

▼「イスラム国」と日本人拘束事件

 「イスラム国」による日本人拘束は20日、映像がインターネット上に流れて表面化した。犯人は身代金2億ドルを72時間以内に支払うよう要求。払わなければ殺害すると警告した。拘束されたのはフリージャーナリストの後藤健二氏と、湯川遥菜氏。その後、24日になって湯川が殺害されたとする情報が投稿され、身代金の代わりにヨルダンにとらわれているテロ実行犯(死刑囚)の解放を求めた。

 「イスラム国」はこれまでも外国人を誘拐し身代金を求める行為を繰り返している。しかし、人質の映像をネットで公開したのは、米国と英国のジャーナリストなどだけ。イスラム国への空爆に関与していない国民は、日本が初めてだ。

 事件の詳細は不明な点が多く、「イスラム国」と日本、ヨルダンなどの交渉も不明。今後の展開は予断を許さない。ただ、「イスラム国」の残虐性、行動の予測の困難な事、問題の国際的広がりなどを改めて突きつけた。

 「イスラム国」対策を話し合う有志国の閣僚級会合が22日、ロンドンで開かれ、軍事作戦などについて協議した。空爆が一定の効果を上げていると強調。「イスラム国」の収入源や情報活動対策、欧米などから「イスラム国」に兵士として参加する動きの阻止策などを話し合った。難民支援策なども話し合った。

▼イエメンの混乱と欧州の連続テロ

 イエメンではシーア派系ザイド派の民兵が20日、首都サヌアの大統領宮殿を襲撃し、制圧。ハディ暫定大統領を監視下に置いた。ハディ氏は22日大統領辞任を表明した。

 同国では2001年のアラブの春の後、長期政権を維持してきたサレハ大統領に退陣を求める運動が拡大。サレハ氏は2012年に退陣下。同年、ハディ氏が暫定大統領に当選した。2013年から憲法制定作業が始まった。ザイド派は憲法制定などを巡りハディ氏と対立。2014年位は反政府デモが発生し、武力衝突も起きていた。

 混乱が続く中、過激派武装組織のアラビア半島のアルカイダ(AQAM)が勢力を伸ばしている。AQAMはスンニ派中心でザイド派とは対立するが、体制の混乱を利用しようとしている。

 このAQAMが国際的なテロのネットワークを拡大。先のパリでの連続テロの容疑者も、イエメンのAQAMで訓練を受けたとされる。イエメン混乱は、国際テロネットワークの温床拡大につながりかねない。

 
▼アブドラ国王の死去とサウジの行方・原油価格

 サウジのアブドラ国王の死亡は、高齢であったため予期できなかったことではない。しかし、その影響がどう出るかは明確ではない。

 サウジは世界最大の産油国であるとともに、イスラム教の聖地メッカを抱える地域大国として、中東における影響力は大きい。しかし、国の実情や政策については不透明な点も多い。

 原油価格下落が続く昨年末のOPEC総会で、サウジは減産を打ち出さなかった。これが原油安に拍車をかけた。背景には、石油収入に頼るイランやロシア、ベネズエラへの打撃を与える狙いがあったとか、米シェール(石油・ガス)産業潰しの狙いがあったなどの観測が流れている。真意は何であるにせよ、原油価格の安定や世界経済への好影響というった単純な原理ではない判断を下した。

 スンニ派の厳格なワッハーブ派の国家であるサウジは、シーア派のイランと対立。シリア内戦ではシーア派系アサド政権の打倒をめざし、反政府勢力を支援してきた。サウジから流れた武器や資金が、結果的に「イスラム国」に回ったとの可能性も指摘される。アサド政権への空爆に一時傾きながら回避した米オバマ政権とは、関係が悪化した。

 アブドラ国王は国内では女性の地位向上などに努めたとされる。しかし、サウジが王族支配に基づき、民主選挙は限定された国家であることは否定の使用がない。サルマン新国王は当面アブドラ路線を継承すると伝えられるが、そもそもサウジアラビアが閉ざさらた国家であり、情報が限られていることは改めて認識しておく必要がある。

◆欧州中銀の量的緩和決定とギリシャ問題

 欧州中銀が量的緩和導入は、昨年から市場にメッセージが送られていた。その意味では予想通りだ(ただし、規模は市場予測を上回った)。ただ、決定の背景には激しい利害対立があったし、導入の効果は不透明だ。

 量的緩和は2010年のユーロ危機後、何度か議論された問題。主として南欧諸国やフランスが当面の危機回避や景気刺激を狙いに緩和を求めたのに対し、ドイツや北欧の諸国が財政規律を重視して反対した。今回、ドラギ総裁以下導入派が押し切ったのは、ユーロ圏のデフレ懸念がこれまでになく強まったのが大きい。2014年12月の消費者物価指数は、前年比マイナス0.2%と水面下に落ち込んだ。

 ただ、効果となると明確ではない。たとえ資金を供給しても企業への融資→設備投資に回る分は少なく、景気刺激にはあまり役に立たないという見方は、ドイツなどを中心に根強い。バブルを生むだけとの指摘もある。

 それ以上に懸念されるのが、財政規律重視で保たれてきた構造改革圧力が弱まり、南欧諸国などが改革努力を後退させるのではないかという点だ。そうなれば、長期的に経済への悪影響は避けられない。

 これが端的に表れるのがギリシャ。同国ではEUの求める財政緊縮策に反対する急進左派連合が支持を集め、25日投票の総選挙でも第1党になりそうな勢いだ。仮に同党中心の政権ができれば、EUとの再交渉で追加支援を求めるのは確実。交渉は簡単に進むわけもなく、混乱→場合によってはユーロ離脱という可能性も否定できない。ドイツ国民などが「経済改革努力をしている我々の税金で、改革努力をさぼってきたギリシャの支援をするのか」と非難するのも、国民感情的にはもっともだ。

 ただ、ギリシャ問題(あるいは南欧諸国問題)は、経済合理性だけでは片付けられない。ギリシャのユーロ加盟は、欧州統合の象徴の1つ。仮にギリシャを突き放すようなことになれば、半世紀以上のEU統合の理念を傷つけ、政治的なダメージは避けられない。

 加えて、経済的な困窮→人々の不満の拡大→社会不安の拡大→テロなどの温床、という懸念も消せない。経済問題は実は、格差やテロの問題も絡んでいる。
 

◆米一般教書とダボス会議

 米大統領による一般教書演説は、状況によっては世界の行方を示すイベントとして注目される。ただし、オバマ大統領は昨年の中間選挙の敗北などで求心力を大きく低下させており、一般教書演説が世界の行方に直接影響を及ぼす環境にはない。そんな中で、国内的に富裕層への課税強化を強調した。2016年の大統領選(民主党候補の応援)もにらみ、中間層重視を明確に示した。今後の最優先課題の一つになる。

 国際的にはキューバとの国交正常化など、政権のレガシーとして残したい課題を掲げたが、海外の注目はイスラム国などテロとの戦いの姿勢などに注がれた。従来路線から新しい情報は少ないとはいえ、やはり世界が米国頼みである事実も否定できない。

 ダボス会議も局面によっては世界の世論形成をリードする。今年の会議にも中国に李克強首相らが参加し、世界経済の行方など広範な議論を展開した。しかし、欧州の連続テロやイスラム国など焦眉の問題にタイムリーに答える議論は多くなく、国際メディアの会議の報道もあまり大きくなかった。

2015.1.25

2015年04号(1.19-25 通算759号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2015年1月19-25日
 

◆欧州中銀が量的緩和導入(22日) ☆☆
・欧州中銀は国債を大量に購入して資金を供給する「量的金融緩和」の導入を決定した。
・3月から毎月600億ユーロの資産を買い取る。当面2016年9月までで総額1兆ユーロ超となる。
・欧州中銀傘下の各国中銀を通じて行う。デフレ阻止と物価の底上げを狙う。
・欧州は財政規律を重視。米国や日本が量的緩和を導入する中でも控えてきた。
・しかしデフレ懸念の強まりに導入を決断した。独などの理事の反対を多数が押し切った。
・ギリシャなどの国債買入は条件付きとして、今後に含みを残した。
・決定を受け市場は国債利回り低下(価格上昇)、株高、ユーロ安に動いた。
・ただ、量的緩和の効果がどこまで出るかは未知数だ。
・資産バブルの発生やユーロ加盟国への構造改革圧力が弱まるとの懸念もある。
・いずれにせよ時代を画する決定。国際金融市場や世界経済への影響も大きい。

◆サウジのアブドラ国王死亡(23日)☆
・アブドラ国王が死去した。90歳だったとさっる。
・異母弟のサルマン皇太子が新国王に即位した。79歳と言われる。
・石油政策や外交に、当面大きな変化はないとの観測が強い。
・しかしサウジの体制、政策には不透明な部分も多く、行方に不透明な面もある。
・同国は世界最大の産油国であると同時に、聖地メッカ抱え、地域での影響力は大きい。
・外交的にはイランやシリア・アサド政権と対立。シリアの反体制派を支援してきた。

◆イエメン混乱拡大、大統領辞任表明、過激派拡大の恐れ(20、22日)☆
・シーア派系ザイド派民兵が20日、サヌアの大統領宮殿を襲撃。制圧した。
・ハディ暫定大統領は22日、辞意を表明した。
・新憲法制定を巡り政府とザイド派が対立。昨年以来衝突を繰り返していた。
・同国にはアラビア半島のアルカイダ(AQAP)が拠点を構え、国際テロネットの温床になっている。
・情勢混乱により、テロの拡散リスクの拡大など、世界の安全保障にも影響する。

◆「イスラム国」が日本人拘束(20日)☆
・「イスラム国」は日本人2人を拘束する映像を公開。身代金2億ドルを求めた。
・24日には1人を殺害した画像をアップ。ヨルダンで死刑判決を受けたテロ実行犯の釈放を求めた。
・日本政府は行為を激しく批判。国際社会の協力を得て問題解決を目指している。
・日本時間25日深夜において、問題は未解決。

◆ギリシャ総選挙(25日)☆
・総選挙が25日投票された。
・事前の世論調査では最大野党の急進左派連合が第1党になる勢い。
・ただし、政権を発足できるかどうかは不明だ。
・同党はEUによる支援の条件となっている財政緊縮に反対。政権を取れば再交渉を求める姿勢。
・その場合、交渉難航は必至。ギリシャのユーロ離脱の可能性も否定できない。
・選挙結果はユーロやEUの行方にも影響し、世界が注目している。

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 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
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 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
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◎寸評:of the Week
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 【重要ニュース続出】 重要ニュースが相次いだ。中東では「イスラム国」による日本人拘束、イエメンの混乱、サウジのアブドラ国王死亡と重なった。前週の欧州の連続テロに続き、世界を揺るがすニュースが駆け巡った。欧州では欧州中銀が量的緩和を決定。ギリシャの総選挙が続く。米大統領一般教書(20日)やダボス会議(21日から)もベスト5から外れる状況だ。(→国際ニュースを切る「騒乱連鎖の世界」)

 【重要ニュース・その2】 その他にも重要ニュースが多い。ウクライナ東部では政府と親ロシア派の衝突が拡大。米国とキューバの国交交渉が行われた(結論は出ず、協議継続)。共和党主導の米議会はオバマ大統領の頭越しにイスラエルのネタニヤフ首相の招待を決定。オバマ氏は首相には会わない姿勢だ。タイの国家立法会議はインラック元首相の弾劾を決め、公民権を5年間停止した。中国の2014年の成長率は7.4%。IMFと国連は、2015年の経済予測を共に下方修正した。

◎今週の注目(2015.1.26-2.1)&当面の注目
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・「イスラム国」による日本人拘束事件の行方に注目。
・1月25日実施のギリシャ総選挙の結果が明らかになる。連立政権交渉も含め、行方に注目。市場の動きからも目を離せない。
・イエメン情勢、アブドラ後のサウジの動きにも注目。
・2月18日にワシントンでテロ対策の首脳級会議が開かれる。

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2015年1月18日 (日)

◇世界の関心と国際世論2015年03号(2015.1.12-18)

 

・パリの連続テロに端を発するテロ問題に世界の関心が集中した。

・この問題を巡ってはマスメディアはもちろん、SNSやニューメディアデモ様々な情報が飛び交っている。SNSなどの中には、いたずらに対立を煽ったり、反イスラム感情をあらわにするものも少なくない。

・メーンストリームのメディアの多くは、反過激派と反イスラムを混同しないように強調した。FT社説(13日付)は、我々が現在直面している問題がイスラムの価値観と欧米の対立ではなく、穏健なイスラムとイスラム過激派の対立であると強調した。この視点は、欧米の政治リーダーの見方と近い。

2015.1.18

◆パリ連続テロ:広がる余波 2015.1.18

 パリ連続テロの余波が広がっている。動きは広範かつ複雑だが、現時点で表面化している事象を整理すれば、欧州各地におけるテロの懸念拡大、警備の強化、反移民の動きの高まり、新たな亀裂の懸念、サイバーテロの懸念、などだ。

▼テロの懸念の拡大

 ベルギー当局は15日、テロの計画があるとして国内12カ所を捜索。15人を拘束した。東部ベルビエでは銃撃戦となり、容疑者2人が死亡した。16日になり容疑者5人を起訴した。捜査の結果、武器や爆破物を発見した。ベルギー政府はテロ警戒レベルを4段階の上から2番目に引き上げた。

 ドイツでは11日、日刊紙ハンブルガー・モルゲンポストの社屋が放火された。同紙はシャルリエブドの風刺画を転載していた。ブルガリア当局はフランス当局が手配していた男を逮捕した。仏でのテロを計画した組織に関わっていた疑い。こうした表面化した情報だけでなく、未確認のテロ計画の情報は欧州各地に流れている。

▼国際的な組織

 アラビア半島のアルカイダは仏新聞社テロに対する犯行声明を出した。今回の連続テロの容疑者はアルカイダのほかイスラム国との関係を疑わせる情報がある。同じイスラム過激派でもアルカイダとイスラム国は対立しており、状況は複雑だ。テロもアルカイダなどが全体計画を立てたものではなく、末端のテロリストやテロリスト集団が計画・実行した可能性もある。

 具体的な関与の方法には不透明な部分が残る。しかし、一連の事件の背景にアルカイダなど国際テロ組織が存在することは間違いない。

▼警備の強化
 フランスの首相は13日議会演説し、「テロとの戦争に入った」と宣言。情報機関の機能強化、テロ予備軍とみられる組織の監視強化などの方針を示した。

 欧州各国は11日の閣僚級の会議で、欧州域外との国境管理強化で一致した。フランス、ドイツ、ベルギーなど各国は警備を強化。パリなどは厳しく警戒する兵士が各処で目につく。

▼反イスラム・反移民の動き

 こうした中で反イスラムや反移民の動きが強まっている。フランスの極右政党国民戦線は、従来の反移民政策の必要性を強調。政府の対応を批判し、相応の支持を得た。

 ドイツでは反イスラム・反移民の「ペギーダ」が集会を組織。旧東独中心に集会を開催している。欧州では昨年5月の欧州議会選でも各国で極右政党が議席を伸ばし、反移民の動きが広がる土壌がある。

▼社会の亀裂に懸念

 反イスラム・反移民の動きは、社会の亀裂を広め軋轢を拡大しかねない。それは欧州の基本価値観の多様性や寛容とも対立する。メルケル独首相、オランド仏大統領など各国首脳は「イスラムと過激派は違う」と強調。イスラム教徒と強調する社会であると繰り返している。その上で、過激派対策強化を訴える。オバマ米大統領もこうした立場に同調する。

 社会にも同様の動きは広がっている。ドイツでは移民容認派による数万人単位のデモが各地で行われ、反イスラム・反移民の動きに対抗した。

▼サイバー攻撃

 新たに加わったのはサイバー攻撃だ。米中軍(中東管轄)のツイッターやユーチューブのアカウントが12日、「イスラム国」の同調者を名乗るグループに乗っ取られた。

 14日には北朝鮮の高麗航空のファイスブックも「イスラム国」を称するハッカーにサイバー攻撃を受けた。

 背景・詳細については不明な点も多いが、イスラム過激派によるテロとサイバー攻撃が何らかの結びつきを持っているのは間違いないだろう。テロもサイバー攻撃を抜きに語れない時代になっている。

▼「表現の自由」巡り対立

 仏風刺週刊誌のシャルリエブドは14日、最新号を発行した。「私はシャルリ」のメッセ-ジを手にし涙を流すムハンマドの風刺がを表紙にした刺激的な内容。テロに屈しない姿勢をした。

 しかし、同紙の表現が過激派やイスラム教徒から反発を呼ぶのは必至だ。事実、イスラム過激派は同紙を敵視する声明などを繰り返し発表。パキスタンの各地では16日、シャルリエブドの風刺画の抗議するデモが各地で起き、阻止する当局と衝突した。 

 欧州首脳らは表現の自由を重視する姿勢を明確に示している。しかし、世界には表現や報道の規制をある程度認めるべきだとの国は多い。先進国の一般国民のレベルでも、表現の自由よりテロ防止を重視する意見も少なくない。この問題は目先の「宗教に対する風刺表現の自由か、テロ対策か」という問題にとどまらず、中長期的には社会の在り方・価値観に関わる問題になる。この点を忘れてはならい。

▼グローバルな広がり

 世界の目は欧州のテロに注がれているが、テロの規模や被害者の数ではさらに大きい事件が起きている。ナイジェリアでは今年に入り、少女に爆弾を巻きつけた自爆テロが横行。少なくとも23人が死亡した。同国北部では今月、ボコ・ハラムにより数百-2000人が虐殺された模様だ。イエメンでは7日、テロで37人が死亡した。

 これらのテロはイスラム過激派がイスラム教徒を殺害するもの。欧米とイスラム社会の「文明の衝突」と捉える見方の範疇外だ。

 国際的テロの根は深く広い。そして複雑だ。パリ連続テロの余波は、さらに広がっていく。

2015.1.18

2015年03号(1.12-18 通算758号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2015年1月12-18日
 

◆欧州で広範なテロ懸念、反移民の動きも広がる ☆
・欧州でテロの懸念が拡大。各国は警戒態勢を強化している。
・バルス仏首相は13日、対テロ戦争に入ったと宣言。情報機関の機能強化などの方針を示した。
・アラビア半島のアルカイダ(イエメン)は14日、7日のパリ新聞社テロの犯行声明を出した。
・ベルギー当局は15日、テロ容疑で国内12拠点を捜査。15人を拘束した。銃撃戦で2人が死亡。
・各国では反移民の動きが拡大。独東部では反移民組織によるデモが広がった。
・こうした動きが欧州内に新たな亀裂を生む懸念も出ている。
・仏週刊紙「シャルリエブド」最新号が14日、事件後初めて発売された。500万部発行の予定。

◆スイスフラン無制限介入を終了、急上昇で市場混乱(15日)☆
・スイス中銀は、外国為替市場での無制限介入を終了すると発表した。
・政策はスイスフランの対ユーロ上昇を抑えるため2011年9月に導入した。1ユーロ=1.2SFを上限とした。
・政策に沿ってSF売り・ユーロ買いを進めた結果、同国の外準はGDP比7割まで膨らんだ。
・ユーロはこの先緩和を進め、ユーロ安・SF高圧力が強まる見込み。介入継続に限界が見えていた。
・昨年来のドル高で、SF独歩高の懸念が後退したことも、判断の背景にあるとみられる。
・市場は決定を予想してなく、SFフラン相場は一時30%上昇した。ユーロは他通貨に対しても下落した。
・中東欧諸国にはSF建ての債務を抱える人も多く、これら地域へも影響が広がる。

◆米軍のツイッターなどハッキング(12日)☆
・中東地域を管轄する米中央軍のツイッターとユーチューブのアカウントが乗っ取られた。
・「イスラム国」の同調者を名乗るグループが犯行を声明。米国を脅すメッセージを表示した。
・中央軍はアカウントが約30分間乗っ取られたことを認めた。同軍のネットへの影響はないとしている。
・16日にはNYポストやUPIのツイッターのアカウントが一時ハッキングされた。
・テロとサイバー攻撃がかかわり合うケースが増えている。

◆キューバが政治犯を釈放(12日)
・キューバ政府は政治犯53人を釈放した。
・同国が米国との国交正常化交渉入りにで約束していた事項。
・両国は21日から国交交渉をハバナで始める予定。
・政治犯釈放を受け、米国はキューバへの渡航・送金制限を緩和した。

◆アフガニスタンが閣僚発表(12日)
・ガニ大統領が新内閣の閣僚人事を発表した。
・昨年9月の政権発足から3カ月半を経ての組閣。6月の大統領選(決選投票)からは半年。
・国防相には国軍トップのカリミ参謀長を起用した。
・同国では2014年末に米軍が戦闘任務を終了。国軍や警察などによる治安維持が最大の課題だ。

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◎寸評:of the Week
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 【テロ続報】 パリの連続テロに関連する様々な動きがあり、世界の関心が集まった。

 【主要ニュース】 今週のその他のニュース: グーグルは15日、グーグルグラスの個人向け販売を中止すると発表した。プライバシー侵害の懸念への対応。すでに英国でソフト開発業者向けに販売しているが、停止する。世界経済フォーラムは15日、2015年の世界のリスクを発表。第1位は国家間の衝突を上げている。ギリシャ情勢への不安が高まる中、大手銀2行が16日、中銀に資金支援を要請した。中国のネット管理当局は13日、WeiboなどSNSに実名制度を全面導入する方針を明らかにした。

◎今週の注目(2015.1.19-25)&当面の注目
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・テロ関係の動きが広がっている。パリ連続テロのあった欧州はもちろん、アフリカや中東諸国の動きも急だ。何が起きてもおかしくない。
・1月20日に米一般教書。
・1月21日にダボス会議が始める(24日まで)。
・欧州中銀の理事会が1月22日。量的緩和の導入が焦点。
・ギリシャの総選挙が1月25日に行われる。反緊縮財政とEUとの再交渉を主張する急進左派連合が勝利すれば、再び政治の混乱が拡大するのは必至。同国のユーロ離脱問題も現実味のある問題として浮上しかねない。
・2月18日にワシントンでテロ対策の首脳級会議が開かれる。

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2015年1月15日 (木)

◆欧州の現状とリスク 2015.1.12

 2015年の焦点の1つとして欧州情勢に注目が集まる。経済は停滞し国民の不満がうっ積。EUの求心力が低下し、多くの国で移民排斥や反EUの勢力が勢いを増している。ユーラシアグループは2015年のリスクの第1位に欧州政治を挙げた。欧州の現状とリスクを見直してみる。

▼数々の問題

 上記ユーラシアグループの例が示すように、欧州が直面する課題やリスクについては様々なメディアや研究機関が指摘している。主な内容をまとめれば、以下の通りだ。

(1)経済の停滞とデフレのリスク
 2010-12年のユーロ危機は乗り切ったものの、欧州経済は低成長と高失業、デフレ懸念などの問題に直面している。2014年の成長率は0.7%程度で新興国や米国よりも低い。ユーロ圏の失業率は12%前後で高止まりしており、特にギリシャは27%、スペインは26%、ポルトガル、キプロスは16%と高い。若年失業率は50%に達する。
 ここに来て深刻になっているのがデフレのリスクだ。2014年12月のユーロ圏の物価上昇率は、原油価格の下落もあってマイナス0.2%に落ち込んだ。市場では欧州中銀が近く大規模な量的緩和に踏み切るとの観測が強い。

(2)反移民・反EU勢力の拡大
 2014年5月の欧州議会選では英国、フランス、デンマークで反移民・反EUの極右政党が最大の得票率を獲得した。ギリシャでは反EUの左翼政党が首位だった。英国では10月の下院補選で、極右の英国独立党が初めて議席を獲得した。
 背景にあるのは、移民の増加と、「移民に職を奪われている」「移民のせいで治安が悪化した」などと言う意識。たとえばイタリアには2014年に10万人が移民として流入し、アラブの春の混乱で移民が急増した2011年をも上回った。ただ、実際のそうした移民数の増加よりも、「移民のせいで…」という意識の方が大きい。
 反EUや反移民を掲げるこれら政党は、移民排斥などナショナリズムに訴える主張を展開。経済改革に正面から取り組むより財政支出に依存するなど、ポピュリズム的な色彩が強い。

(3)テロのリスク
 2015年早々、パリで新聞社襲撃などのテロが発生した。イスラム過激派による大規模テロは2004年のスペイン・マドリッドの列車爆破テロ、2005年のロンドンでの同時爆破テロ以来しばらく押さえ込まれていたが、ここに来て再びリスクが高まっている。
 背後にあるのは中東の混乱情勢だ。アラブの春以降の混乱、シリア内戦、「イスラム国」に台頭などにより、武器や過激派が地域から流出。また欧州からイスラム国に戦士として参加したり、中東を訪問して過激派の訓練を受ける人も増えている。

(4)ウクライナ危機とロシアとの緊張
 2014年のウクライナ危機で、欧米とロシアの関係は悪化。冷戦後の国際秩序の枠組みの1つだったG8は事実上崩壊し、「新冷戦」も指摘されるようになった。欧米とロシアは互いに経済制裁を課す。
 関係悪化は不測の事態を呼びかねないし、経済的な悪影響は双方に及ぶ。

(5)人口の高齢化
 ただし、高齢化の進展スピードは日本や中国などアジアに比べると緩い。

▼キーワード

 上記の問題は相互に連関しているが、同じことを角度を変えてみる意味合いも含め「キーワード」を挙げてみる。以下のようになる。

・経済低迷、競争力の低下、高失業、デフレ懸念
・移民・難民問題、変化に乗り遅れた人々の不満拡大、改革疲れ、社会の緊張の高まり、
・内向き、ポピュリズム
・テロのリスク、イスラム過激派
・反移民、反EU
・ウクライナ危機、ロシアとの関係悪化、新冷戦、制裁合戦

▼冷戦終了時の危機対応

 ただ、こうした問題・課題山積なのは、必ずしも欧州だけでなく、今の時代だけでない。

 テロのリスクに直面するのは米国や中東、アジアも同様。経済競争力の相対的な低下は、日本や米国など他の先進国にも共通する。世界の経済発展の中心がアジアなどの新興国に移動しているのであるから、当然の流れだ。反移民などの内向き志向矢ポピュリズムは、先進国のみならず世界各国に共通する。

 冷戦崩壊時やその後の欧州は、現在以上に激しい変化の直面し、問題を抱えていた。旧東側諸国の経済は数年間、マイナス10%以上で縮小し、社会不安が拡大。核の流出などのリスクもあった。旧ユーゴ紛争では数百万人の難民が欧州に流出した。

 そうした困難に、欧州は何とか対応した。それが可能だった要因を挙げれば、EU統合という「安定の求心力」と「発展のシナリオ」を創造できたこと。そして、数々の危機や課題に柔軟に対応できる政治的指導者を抱えていた事が大きいように見える。

▼問われるEUの求心力とリーダーシップ

 今回、世界の中でも特に「欧州リスク」への関心が高まるのは、デフレ突入という焦眉の問題があること、ウクライナや中東など現在最も不安定な地域と直接つながっている事、などの理由がある。

 同時に、EUの求心力が低下し、欧州の問題解決能力が低下しているように見える点が大きい。ユーロ危機の際、EUは後手後手に回った印象がぬぐえない。英国はEUから距離を置くなど、求心力を高めるよりむしろ遠心力を作り出している。

 ギリシャが1月の総選挙で野党が勝利し、EUによる支援プログラムの再交渉を求める事態になれば、同国ののユーロ圏離脱が現実のものになるかもしれない。それはユーロの短期的な安定には寄与するかもしれないが、EU統合には傷になる。

 EUは経済競争力強化のためにこれまでも何度も戦略を打ち上げているが、必ずしも成果を上げているとは言い難い。ドイツが2000年代前半のシュレーダー改革で競争力を回復し、現在完全失業・財政赤字ゼロの経済にしているのとは対照的だ。

▼ローマ法王の警告

 ローマ法王フランシスコは2014年11月、欧州議会を訪問した際に「欧州はずいぶん老け込み、やつれた印象を受ける」と語った。

 欧州は1970-80年にもEurosclerosis(ユーロスクレローシス=欧州の動脈硬化)という停滞の時期を迎えた。それを打破したのは、市場統合から通貨統合につながる欧州統合と、英国の新自由主義革命だった。

 ローマ法王の懸念を払しょくするのは容易ではない。理念として新たなものは見えて来ないが、多くの人が抽象的であれ共通して指摘するのはEUの求心力回復による統合の推進。そして政治家のリーダーシップだ。

 欧州の2015年を眺めるには、デフレ懸念や量的緩和、テロ対策だけでなく、底流を流れるこうした視点が欠かせない。

2015.1.12

◆パリ連続テロのインパクト 2015.1.12

 パリでイスラム過激派によるとみられる連続テロが発生。世界に衝撃を与えた。

▼新聞社襲撃から立てこもりに

 最初は風刺画を使った紙面が特徴の新聞社「シャルリエブド」襲撃(7日)。銃などで武装した犯人が侵入し、記者や警察官ら12人を殺害し逃走した。容疑者はサイド・クアシとシェリフ・クワシの兄弟を中心とした人物。アルジェリア系フランス人で、かねてイスラム過激派との関係を指摘されていた。

 新聞社襲撃は言論・報道の自由に対する挑戦でもある。フランスではオランド大統領が声明を出し、テロに屈しないこと、言論の自由を守ることをなどを強調した。

 事件はそれだけにとどまらなかった。翌8日の朝、パリ南部で男が警察官を襲撃。女性警察官が殺害された。犯人はアメディ・クリバリ容疑者で、やはりイスラム過激派との関係があった。

 2組(3人)の犯人は、その後9日、パリ北東部の印刷工場とパリ東部のユダヤ系商店に人質を取って立てこもった。仏当局が突入して3人を射殺したが、記者、警察官、人質など合計17人が犠牲になった。

▼様々な問題投げかけ

 事件が投げかけたインパクトは大きい。

 まず事件にはアルカイダ系の関与が疑われる。「イスラム国」との関係を疑う情報もある。今回のテロは単独犯の思い付きではなく、アルカイダやイスラム国などイスラム過激派の組織的な犯行であるとの可能性がある。国際的ジハードの一環とすれば、問題の広がりは大きく、根絶は容易ではない。

 9.11後、世界はイスラム過激派のテロに直面する状況になった。欧州でも2004年のスペイン・マドリッドの列車爆破テロ、2005年のロンドンでの多発テロなど大規模テロは断続的に発生している。今回のテロは、そうしたリスクが引き続き大きく、しかもアラブの春の後の中東混乱や、イスラム国の台頭、SNSを始めとした情報通信手段の発展など、新しい環境下で形を変えて進化していることを示した。

 テロの温床となる中東の混乱、格差の拡大(世界的な格差、フランスなど国内での格差両方)などによる人々の不満の高まりももちろん無視できない。

 言論・報道の自由とイスラム的価値観の対立という点も正面から見つめる必要がある。アラーを冒涜するような表現は、西洋的な価値観では表現と自由とのバランスの中で考えるレベルの問題だが、イスラムの一部の人びとにとっては「命を賭してでも許せない事」となる。国連憲章などで定めた世界的な共有価値との関係などはさて置き、世界に西洋の価値観とは全く相いれない価値観を持って暮らす人々がいるという事実も無視できない。

▼規制・監視の強化

 事件をきっかけに、欧州では国境検査を強化する動きが広がろうとしている。それは当然ながらEUが理想とする移動の自由とは相反する。さらには、移民規制そのものが強化される可能性も大きい。

 そうした流れは政治的には、欧州内(あるいは世界的な)反移民政党(極右・極左政党であることが多い)の勢力拡大にも結び付きかねない。

 さらには、国家によるによる情報監視の行方にも影響を与える可能性がある。ウィキリークスやスノーデン事件で、米NSAや英GCHQなどによる違法の情報収集問題に焦点が当たった。個人情報の保護と安全保障のバランスは難しい問題だが、大規模テロはこのバランスを安全保障重視の方向に動かす傾向がある。

▼人々の反応

 欧州など約50か国の首脳・閣僚は11日パリに集結。反テロのデモに参加した。フランス中でデモに参加した人は370万人を数え、同国史上最大の規模となった。

 今回のテロに関してはまだ不明な点が多く、分析も十分でない。容疑者のひとりはフランス国外に逃亡したとの情報もあり、今後事件を受け継いだ動きが出てきてもおかしくない。

 現在のテロの背景には、上記のように国際的過激派ネット、価値観の違い、格差など様々な問題があり、複雑だ。問題を単純化したり、過小評価したら物事の本質を見失う。

 冷徹な目と同時に、政治リーダーや国民にテロを許さず問題の解決に向けた意欲がなければ、何も始まらない。これまた重要な事実だろう。

2015.1.12

◇世界の関心と国際世論2015年02号(2015.1.5-11)

・世界の関心は当然ながらパリでの連続テロに集中。主要メディアは連日1面トップ、テレビニュースのトップニュースで伝えた。

・新聞社襲撃に関しては、言論・表現の自由への挑戦を許しては成らないとの論調が多い。英FT7日(電子版)の"Murderous attack on freedom of expression""The right of Charlie Hebdo to lampoon religion should not be in doubt"などが一来だ。

2015.1.12

2015年02号(1.5-12 通算757号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2014年1月5-12日(アジア時間)
 

◆フランスで連続テロ、イスラム過激派関与(7-9日)☆☆
・パリ市内の新聞社「シャルリエブド」に7日武装集団が侵入し、記者ら12人が死亡した。
・犯人はアルジェリア系仏人で逃走。うち2人が9日パリ北東の印刷工場に人質を取り立籠った。
・これとは別にパリ南部で8日、男が警察官に銃を乱射し、女性警察官らを殺害した。
・男はその後9日、パリ東部でユダヤ系商店に人質を取って立籠った。
・当局は9日立籠り2カ所に突入。犯人3人を射殺した。人質4人が死亡し犠牲者は計17人。
・2つのテロは連携して計画された可能性が大きい。アルカイダ系関与の見方も強い。
・犯人はかねてイスラム過激派との関係を指摘され、イエメンで軍事訓練を受けたとの情報がある。
・オランド大統領は引き続き警戒を呼びかけると共に、テロに屈せず表現の自由を守ると強調。
・欧州首脳は11日パリに集合し、反テロ行進を実施した。50か国・地域の首脳・閣僚が参加した。
・パリでの反テロのデモには市民120-160万人が参加。仏全土では370万人が加わった。
・欧州各国の閣僚級会合は、国境管理の強化などテロ対策強化で一致した。
・世界がテロのリスクを抱える現実を改めて示した。影響は大きい。

◆ユーロ圏の物価下落(7日)☆
・EU統計局の発表によると、2014年12月のユーロ圏消費者物価指数は前年比0.2%下落した。
・マイナスは2009年10月以来5年2か月ぶり。
・原油価格の下落が影響した。しかし背景には物価全体の下落傾向がある。
・ユーロ圏のデフレ突入懸念が一段と強まった。
・欧州中銀が量的緩和に踏み切るとの観測が強まっている。

◆原油50ドル割れ(5日)☆
・NY市場の原油先物(WTI)が1バレル50ドルを割り込んだ。
・5年8か月ぶり。
・原油価格は2014年夏には100ドルを上回っていたが、半年で半額に落ち込んだ。
・産油国の経済悪化、市場のかく乱などを通じ、世界経済への影響も大きい。
・米シェール石油やガス開発のWBHエナジー社は7日までに破産法11条適用を申請した。
・昨夏以来の局面で、米シャール企業の破たん表面化は初めて。

◆スリランカ大統領交代(8日)☆
・大統領選が行われ、野党統一候補のシリセナ前保健相が当選した。選管が9日発表した。
・同氏は9日大統領に就任した。任期は6年。
・前大統領のラジャパクサ氏の3選を阻んだ。
・同国は1983-2009年にシンハラ人中心の政府と少数派タミル人組織の内戦を経験。
・2005年就任のラジャパクサ氏は大統領として内戦終結を実現した。
・しかし大統領への権限集中のや親族による利害独占の弊害も目立つようになった。
・シリセナ氏は大統領側近から突如出馬を決定。タミル系政党などの支持も得て当選を決めた。
・前政権は中国との関係強化に偏っていたが、新政権は欧米とのバランスを重視する見通し。
・事前にはラジャパクサ氏が敗北を受け入れないとの見方もあったが、平和に政権交代が実現した。

◆香港政府が新選挙案、民主派は反発(7日)
・香港政府は2017年の行政長官選の制度改革案を発表した。
・中国全人代が昨年8月に決めた案に沿う内容で、民主派の立候補を事実上締め出す。
・民主派は反対。立法院の明氏は議員は反対票を投じる構え。
・香港では昨年9-12月に民主派が抗議活動を展開。世界の注目を集めた。
・民主化を巡る動きは今後も予断を許さない。

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◎寸評:of the Week
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 【パリ連続テロ】 パリで新聞社襲撃など連続テロが発生、世界に衝撃を与えた。(→「国際ニュースを切る」参照)

 【スリランカ大統領選】 スリランカの大統領選(8日)で野党統一候補のシリセナ前保健相が当選した。同氏は9日大統領に就任した。ラジャパクサ前大統領から平和裏に政権を受け継いだ。
 スリランカは2009年まで25年以上の内戦を経験。2005年に就任し内戦を終了させたラジャパクサ氏は強大な権力を誇った。内戦終了を共に推進した2010年には憲法を改正し、3選を可能に改めた。内戦を共に戦ったフォンセカ参謀長も対立の後、結果的に切っている。しかし、こうした権力集中に加え、親族による利害独占も目立つようになっていた。
 選挙前には、ラジャパクサ氏が敗北した場合には選挙結果を認めないなどの情報も流れていた。実際には無事政権の委譲が行われた。ホッとする動きだ。

◎今週の注目(2015.1.12-18)&当面の注目
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・パリ連続テロの捜査・解明が進む。関係した様々な動きが出て来る。
・15-16日にワシントンで米英首脳会談。テロ対策などを話し合う。
・1月20日に米一般教書。
・1月21日にダボス会議が始める(24日まで)。
・欧州中銀の理事会が1月22日。量的緩和の導入が焦点。
・ギリシャの総選挙が1月25日に行われる。反緊縮財政とEUとの再交渉を主張する急進左派連合が勝利すれば、再び政治の混乱が拡大するのは必至。同国のユーロ離脱問題も現実味のある問題として浮上しかねない。
・2月18日にワシントンでテロ対策の首脳級会議が開かれる。

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2015年1月 4日 (日)

◇世界の関心と国際世論2015年01号(2014.12.27-2015.1.4)

 

・2014年末には世界の各メディアが10大ニュースを発表した。立場による違いはあるが、エボラ、イスラム国などが上位に来ることは同じだ。

・英AP通信が1937年から発表している10大ニュース(世界と米国の区別をしていない)は以下の通り。
(1)米ファーガソン事件などを契機に人種差別への抗議拡大。警察の捜査に対する問題にも焦点。
(2)エボラ流行
(3)「イスラム国」の勢力拡大
(4)米中間選挙、オバマ与党大敗
(5)米医療保険制度改革が始動、共和党は撤回要求
(6)マレーシア航空機墜落
(7)米移民法改革、オバマ氏大統領令で推進
(8)ウクライナ危機
(9)米で同性婚を認める最高裁判決、導入広がる
(10)米退役軍人省のスキャンダル

・日本の時事通信の選んだ海外10大ニュースは以下の通り。
(1)ウクライナ危機
(2)「イスラム国」が勢力拡大、有志連合空爆
(3)エボラ出血熱感染拡大、死者6000人
(4)韓国旅客船事故で304人死亡・不明
(5)米、キューバが国交正常化へ
(6)米中間選挙で共和が過半数奪還
(7)英スコットランド住民投票で独立否決
(8)ノーベル平和賞にマララさん
(9)パキスタンで学校襲撃、140人超死亡
(10)香港民主派デモ隊、幹線道路を占拠
(10)(同順位)白人警官不起訴、米各地で暴動

2015.1.4

◆FTの2015年展望 2015.1.4

 英フィナンシャル・タイムズ紙は2014年12月30日、恒例の「新年展望」記事を掲載した。専門記者が予測するもの。主なポイントを羅列してみる。

▼安全保障・世界秩序
・ロシアはクリミアに続いてウクライナや欧州の領土を編入するか--しない(少なくとも今年は)
・米国は「イスラム国」対策でイラクやシリアに地上軍を派遣するか--しない。

▼世界経済
・原油価格は1バレル=50ドル以下に低下するか--するだろう。
・欧州中銀は量的緩和を導入するか--する。
・中国の成長率は7%に低下するか--する。
・米FRBと英中銀のどちらが先に利上げに踏み切るか--米FRB。
・ロンドンの不動産価格下落は始まるか--始まる。
・モディ政権の下でインドの成長率は上昇するか--する。

▼各国政治
・英国総選挙(5月)の後に大連立内閣が成立するか--そうなりそう。
・2016年米大統領選をにらみクリントン元国務長官のライバルは登場するか--2015年中はない。

▼IT・情報
・ビットコインは崩壊するか--しない。
・2015年はウエアラブル機器の普及元年となるか--まだ早い。

▼社会問題・その他
・エボラの流行は2015年中に止まるか--止まる。

2015.1.4

◆2015年の世界展望 2015.1.4

 2015年が始まった。ウクライナ危機と中東混乱(「イスラム国」など)は、昨年から続き世界の安全保障と秩序を揺るがしかねない問題として注目を浴び続ける。経済は米国の金融緩和解除、欧州の量的緩和導入などを視野に先行き予断を許さない。中国などアジアの台頭、ITを始めとする技術革新は続き、世界を変えていくだろう。

 INCDクラブが見る2015年の展望・注目点は以下の通りだ。

(1)「イスラム国」の動向と中東情勢の推移
 21世紀に入り中東の混乱はずっと継続。イラク戦争、テロの拡大、アラブの春とその後の混乱、シリア内戦、パレスチナ紛争など各地で紛争が表面化し、世界の安全保障を揺るがしかねない問題としてくすぶっている。「イスラム国」は、目下の最大の焦点だ。このほか、イラク、シリア情勢、イランの核問題、パレスチナ情勢なども予断を許さない。
 イスラム国の台頭を事前に予測できなかったように、2015年に予期せぬことが起きても全く不思議でない。確実な点は、地域の混乱が続く可能性が大きい事だ。

(2)世界経済・石油価格の行方
 2008年の世界金融危機から7年を経過した。米国は2014年に量的緩和を終了。2015年にはゼロ金利を解除して、金融超緩和を終了する見通し。一方ユーロ圏はデフレ懸念が強まり、年明け早々にも量的緩和に踏み切るとの見方が強い。ギリシャは1月に総選挙を予定しており、ユーロ危機再燃の懸念もある。
 2014年は石油価格が下落し、世界経済に混乱をもたらした。原油価格低下は2015年も続くとの見方が多い。

(3)ウクライナ情勢とプーチン政権の行方
 ウクライナ情勢は先行き不明な状況が続く。ロシア経済は欧米の制裁と石油価格低下で苦境に陥っている。プーチン大統領が国内支持維持のために強硬策を強めるとの見方もある。先行きは読みがたく、それは世界の秩序に影響する。 

(4)中国・習近平政権の行方
 7%程度の経済成長の維持、汚職対策、対外拡張などが焦点。

(5)オバマ米政権の動向
 中間選挙敗退で大統領の影響力低下は否めない。その中で、国際問題でどのように優先順位づけをし、影響力を行使していくか。

(6)予定される政治・経済日程
 2015年はASEAN経済共同体設立の目標年。具体的内容はどこまで進むか。英国では総選挙が行われ、米国とキューバの国交交渉が始まる。

(7)IT革命
 IT・ネット革命は引き続き加速し、世界を変え続ける。メディアやネットの規制、プライバシーの侵害など情報化革命に伴う様々な問題にも注目する必要がある。

2015.1.4

2015年01号(2014.12.27-2015.1.4 通算756号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2014年12月27日-2015年1月4日
 

◆ギリシャ議会が解散、ユーロ混乱の懸念も(12月29日)☆
・議会はパプリアス大統領の後任を選ぶ投票を実施。政府・与党系候補の就任を否決した。
・憲法の規定により議会は解散。1月25日に総選挙を実施する。
・世論調査では反緊縮財政の急進左派連合がリードしており、第1党になる可能性がある。
・政権党となればEUと支援条件変更などを交渉する意向。ただ、難航は必至だ。
・市場にはユーロ危機再燃の懸念もあり、ギリシャ国債利回りは上昇している。
・ギリシャは2010年以降財政危機が表面化。緊縮財政を条件にEUから2回の支援を受けた。
・しかし経済は2013年まで6年連続でマイナス成長。国民の間には改革疲れも出ている。
・1月25日に予定している総選挙に、世界の注目が集まる。

◆米が北朝鮮に経済制裁(1月2日)☆
・オバマ大統領は北朝鮮への追加制裁を認める大統領令に署名した。
・北朝鮮の政府機関などを金融性の対象に指定する。
・ソニー・ピクチャーへのサイバー攻撃への対抗措置。
・これに対し北朝鮮は反発。先の同国のネット混乱は米国からの攻撃と批判した。

◆米がアフガンでの戦闘任務終了(12月31日) ☆
・米国はアフガニスタンでの戦闘任務を終了した。12月28日に式典を開催した。
・アフガン駐留軍は最大10万人超→2015年に1万8000人→16年末撤退を目指す。
・ただ、アフガンの治安は悪化。テロなどによる民間人の犠牲者も増加している。
・政治も混乱が継続。9月にはガニ大統領が就任したが、閣僚任命は進んでいない。

◆エアアジア機が墜落(12月28日)☆
・マレーシアのエアアジアの旅客機(A320-200)が、スラバヤ→シンガポール飛行中に墜落した。
・乗客乗員162人が不明になった。全員死亡した模様。事故の可能性が大きい。
・エアアジアは急成長しているLCC。

◆リトアニアがユーロに加盟(1月1日)☆
・リトアニアがユーロに加盟した。19カ国目の参加国。
・ユーロは1999年に11カ国で発足。以後7回にわたり拡大した。

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◎寸評:of the Week
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 【新年】 2015年が始まった。「イスラム国」、ウクライナ危機などは前年から引き続き焦点。IT革命により世界が変わる状況も続く。

 【ユーロ危機再燃の懸念】 ギリシャ議会が予想通り、親大統領の選任を拒否。議会解散→総選挙になった。ここで反緊縮の政権ができる可能性がある。2012年のように、選挙のあと新政権ができず、再選挙になる可能性も否定できない。こうした中、独シュピーゲル誌は独政府がギリシャのユーロ離脱を容認すると報道した。当面は1月25日の投票に向けて、そしておそらくは選挙後も様々な動きがありそうだ。

◎今週の注目(2015.1.4-10)&当面の注目
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・年明けの市場の動きに注目。石油価格、ギリシャ総選挙決定をうけたユーロの動きなどに注目。
・ギリシャ総選挙は1月25日。
・米一般教書が1月20日。

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