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2015年1月26日 (月)

◆動乱連鎖の世界 2015.1.25

 2015年に入り、世界は想像外の動乱に見舞われている。パリ、ベルギーでの連続テロに続き、今週は「イスラム国」による日本人拘束事件が表面化。イエメンでは混乱が拡大し大統領が辞任を表明した。中東の盟主・サウジアラビアのアブドラ国王が死去した。

 原油下落の影響が広がる中、ギリシャは議会の解散・総選挙へと動き、ユーロへの影響が懸念されている。欧州中銀はデフレ懸念が強まる中、量的緩和の導入を決定した。ウクライナでは政府と親ロ派の戦闘再燃が心配される。

 こうした動きはバラバラに起きているわけではない。中東の混乱、国際的なテロ・ネットワーク、経済悪化、格差拡大、人々の不満の増加などをキーワードに、それぞれの動きが結びつき、動乱の連鎖や混乱伝播ともいうべき動きが起きている。

 それぞれの動きの背景は不明な点も多く、関係を軽軽に説明するべきではない。しかし、「何らかの形で結びついている」ことは重要だ。重要な動きを整理する。

▼「イスラム国」と日本人拘束事件

 「イスラム国」による日本人拘束は20日、映像がインターネット上に流れて表面化した。犯人は身代金2億ドルを72時間以内に支払うよう要求。払わなければ殺害すると警告した。拘束されたのはフリージャーナリストの後藤健二氏と、湯川遥菜氏。その後、24日になって湯川が殺害されたとする情報が投稿され、身代金の代わりにヨルダンにとらわれているテロ実行犯(死刑囚)の解放を求めた。

 「イスラム国」はこれまでも外国人を誘拐し身代金を求める行為を繰り返している。しかし、人質の映像をネットで公開したのは、米国と英国のジャーナリストなどだけ。イスラム国への空爆に関与していない国民は、日本が初めてだ。

 事件の詳細は不明な点が多く、「イスラム国」と日本、ヨルダンなどの交渉も不明。今後の展開は予断を許さない。ただ、「イスラム国」の残虐性、行動の予測の困難な事、問題の国際的広がりなどを改めて突きつけた。

 「イスラム国」対策を話し合う有志国の閣僚級会合が22日、ロンドンで開かれ、軍事作戦などについて協議した。空爆が一定の効果を上げていると強調。「イスラム国」の収入源や情報活動対策、欧米などから「イスラム国」に兵士として参加する動きの阻止策などを話し合った。難民支援策なども話し合った。

▼イエメンの混乱と欧州の連続テロ

 イエメンではシーア派系ザイド派の民兵が20日、首都サヌアの大統領宮殿を襲撃し、制圧。ハディ暫定大統領を監視下に置いた。ハディ氏は22日大統領辞任を表明した。

 同国では2001年のアラブの春の後、長期政権を維持してきたサレハ大統領に退陣を求める運動が拡大。サレハ氏は2012年に退陣下。同年、ハディ氏が暫定大統領に当選した。2013年から憲法制定作業が始まった。ザイド派は憲法制定などを巡りハディ氏と対立。2014年位は反政府デモが発生し、武力衝突も起きていた。

 混乱が続く中、過激派武装組織のアラビア半島のアルカイダ(AQAM)が勢力を伸ばしている。AQAMはスンニ派中心でザイド派とは対立するが、体制の混乱を利用しようとしている。

 このAQAMが国際的なテロのネットワークを拡大。先のパリでの連続テロの容疑者も、イエメンのAQAMで訓練を受けたとされる。イエメン混乱は、国際テロネットワークの温床拡大につながりかねない。

 
▼アブドラ国王の死去とサウジの行方・原油価格

 サウジのアブドラ国王の死亡は、高齢であったため予期できなかったことではない。しかし、その影響がどう出るかは明確ではない。

 サウジは世界最大の産油国であるとともに、イスラム教の聖地メッカを抱える地域大国として、中東における影響力は大きい。しかし、国の実情や政策については不透明な点も多い。

 原油価格下落が続く昨年末のOPEC総会で、サウジは減産を打ち出さなかった。これが原油安に拍車をかけた。背景には、石油収入に頼るイランやロシア、ベネズエラへの打撃を与える狙いがあったとか、米シェール(石油・ガス)産業潰しの狙いがあったなどの観測が流れている。真意は何であるにせよ、原油価格の安定や世界経済への好影響というった単純な原理ではない判断を下した。

 スンニ派の厳格なワッハーブ派の国家であるサウジは、シーア派のイランと対立。シリア内戦ではシーア派系アサド政権の打倒をめざし、反政府勢力を支援してきた。サウジから流れた武器や資金が、結果的に「イスラム国」に回ったとの可能性も指摘される。アサド政権への空爆に一時傾きながら回避した米オバマ政権とは、関係が悪化した。

 アブドラ国王は国内では女性の地位向上などに努めたとされる。しかし、サウジが王族支配に基づき、民主選挙は限定された国家であることは否定の使用がない。サルマン新国王は当面アブドラ路線を継承すると伝えられるが、そもそもサウジアラビアが閉ざさらた国家であり、情報が限られていることは改めて認識しておく必要がある。

◆欧州中銀の量的緩和決定とギリシャ問題

 欧州中銀が量的緩和導入は、昨年から市場にメッセージが送られていた。その意味では予想通りだ(ただし、規模は市場予測を上回った)。ただ、決定の背景には激しい利害対立があったし、導入の効果は不透明だ。

 量的緩和は2010年のユーロ危機後、何度か議論された問題。主として南欧諸国やフランスが当面の危機回避や景気刺激を狙いに緩和を求めたのに対し、ドイツや北欧の諸国が財政規律を重視して反対した。今回、ドラギ総裁以下導入派が押し切ったのは、ユーロ圏のデフレ懸念がこれまでになく強まったのが大きい。2014年12月の消費者物価指数は、前年比マイナス0.2%と水面下に落ち込んだ。

 ただ、効果となると明確ではない。たとえ資金を供給しても企業への融資→設備投資に回る分は少なく、景気刺激にはあまり役に立たないという見方は、ドイツなどを中心に根強い。バブルを生むだけとの指摘もある。

 それ以上に懸念されるのが、財政規律重視で保たれてきた構造改革圧力が弱まり、南欧諸国などが改革努力を後退させるのではないかという点だ。そうなれば、長期的に経済への悪影響は避けられない。

 これが端的に表れるのがギリシャ。同国ではEUの求める財政緊縮策に反対する急進左派連合が支持を集め、25日投票の総選挙でも第1党になりそうな勢いだ。仮に同党中心の政権ができれば、EUとの再交渉で追加支援を求めるのは確実。交渉は簡単に進むわけもなく、混乱→場合によってはユーロ離脱という可能性も否定できない。ドイツ国民などが「経済改革努力をしている我々の税金で、改革努力をさぼってきたギリシャの支援をするのか」と非難するのも、国民感情的にはもっともだ。

 ただ、ギリシャ問題(あるいは南欧諸国問題)は、経済合理性だけでは片付けられない。ギリシャのユーロ加盟は、欧州統合の象徴の1つ。仮にギリシャを突き放すようなことになれば、半世紀以上のEU統合の理念を傷つけ、政治的なダメージは避けられない。

 加えて、経済的な困窮→人々の不満の拡大→社会不安の拡大→テロなどの温床、という懸念も消せない。経済問題は実は、格差やテロの問題も絡んでいる。
 

◆米一般教書とダボス会議

 米大統領による一般教書演説は、状況によっては世界の行方を示すイベントとして注目される。ただし、オバマ大統領は昨年の中間選挙の敗北などで求心力を大きく低下させており、一般教書演説が世界の行方に直接影響を及ぼす環境にはない。そんな中で、国内的に富裕層への課税強化を強調した。2016年の大統領選(民主党候補の応援)もにらみ、中間層重視を明確に示した。今後の最優先課題の一つになる。

 国際的にはキューバとの国交正常化など、政権のレガシーとして残したい課題を掲げたが、海外の注目はイスラム国などテロとの戦いの姿勢などに注がれた。従来路線から新しい情報は少ないとはいえ、やはり世界が米国頼みである事実も否定できない。

 ダボス会議も局面によっては世界の世論形成をリードする。今年の会議にも中国に李克強首相らが参加し、世界経済の行方など広範な議論を展開した。しかし、欧州の連続テロやイスラム国など焦眉の問題にタイムリーに答える議論は多くなく、国際メディアの会議の報道もあまり大きくなかった。

2015.1.25

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