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2015年1月18日 (日)

◆パリ連続テロ:広がる余波 2015.1.18

 パリ連続テロの余波が広がっている。動きは広範かつ複雑だが、現時点で表面化している事象を整理すれば、欧州各地におけるテロの懸念拡大、警備の強化、反移民の動きの高まり、新たな亀裂の懸念、サイバーテロの懸念、などだ。

▼テロの懸念の拡大

 ベルギー当局は15日、テロの計画があるとして国内12カ所を捜索。15人を拘束した。東部ベルビエでは銃撃戦となり、容疑者2人が死亡した。16日になり容疑者5人を起訴した。捜査の結果、武器や爆破物を発見した。ベルギー政府はテロ警戒レベルを4段階の上から2番目に引き上げた。

 ドイツでは11日、日刊紙ハンブルガー・モルゲンポストの社屋が放火された。同紙はシャルリエブドの風刺画を転載していた。ブルガリア当局はフランス当局が手配していた男を逮捕した。仏でのテロを計画した組織に関わっていた疑い。こうした表面化した情報だけでなく、未確認のテロ計画の情報は欧州各地に流れている。

▼国際的な組織

 アラビア半島のアルカイダは仏新聞社テロに対する犯行声明を出した。今回の連続テロの容疑者はアルカイダのほかイスラム国との関係を疑わせる情報がある。同じイスラム過激派でもアルカイダとイスラム国は対立しており、状況は複雑だ。テロもアルカイダなどが全体計画を立てたものではなく、末端のテロリストやテロリスト集団が計画・実行した可能性もある。

 具体的な関与の方法には不透明な部分が残る。しかし、一連の事件の背景にアルカイダなど国際テロ組織が存在することは間違いない。

▼警備の強化
 フランスの首相は13日議会演説し、「テロとの戦争に入った」と宣言。情報機関の機能強化、テロ予備軍とみられる組織の監視強化などの方針を示した。

 欧州各国は11日の閣僚級の会議で、欧州域外との国境管理強化で一致した。フランス、ドイツ、ベルギーなど各国は警備を強化。パリなどは厳しく警戒する兵士が各処で目につく。

▼反イスラム・反移民の動き

 こうした中で反イスラムや反移民の動きが強まっている。フランスの極右政党国民戦線は、従来の反移民政策の必要性を強調。政府の対応を批判し、相応の支持を得た。

 ドイツでは反イスラム・反移民の「ペギーダ」が集会を組織。旧東独中心に集会を開催している。欧州では昨年5月の欧州議会選でも各国で極右政党が議席を伸ばし、反移民の動きが広がる土壌がある。

▼社会の亀裂に懸念

 反イスラム・反移民の動きは、社会の亀裂を広め軋轢を拡大しかねない。それは欧州の基本価値観の多様性や寛容とも対立する。メルケル独首相、オランド仏大統領など各国首脳は「イスラムと過激派は違う」と強調。イスラム教徒と強調する社会であると繰り返している。その上で、過激派対策強化を訴える。オバマ米大統領もこうした立場に同調する。

 社会にも同様の動きは広がっている。ドイツでは移民容認派による数万人単位のデモが各地で行われ、反イスラム・反移民の動きに対抗した。

▼サイバー攻撃

 新たに加わったのはサイバー攻撃だ。米中軍(中東管轄)のツイッターやユーチューブのアカウントが12日、「イスラム国」の同調者を名乗るグループに乗っ取られた。

 14日には北朝鮮の高麗航空のファイスブックも「イスラム国」を称するハッカーにサイバー攻撃を受けた。

 背景・詳細については不明な点も多いが、イスラム過激派によるテロとサイバー攻撃が何らかの結びつきを持っているのは間違いないだろう。テロもサイバー攻撃を抜きに語れない時代になっている。

▼「表現の自由」巡り対立

 仏風刺週刊誌のシャルリエブドは14日、最新号を発行した。「私はシャルリ」のメッセ-ジを手にし涙を流すムハンマドの風刺がを表紙にした刺激的な内容。テロに屈しない姿勢をした。

 しかし、同紙の表現が過激派やイスラム教徒から反発を呼ぶのは必至だ。事実、イスラム過激派は同紙を敵視する声明などを繰り返し発表。パキスタンの各地では16日、シャルリエブドの風刺画の抗議するデモが各地で起き、阻止する当局と衝突した。 

 欧州首脳らは表現の自由を重視する姿勢を明確に示している。しかし、世界には表現や報道の規制をある程度認めるべきだとの国は多い。先進国の一般国民のレベルでも、表現の自由よりテロ防止を重視する意見も少なくない。この問題は目先の「宗教に対する風刺表現の自由か、テロ対策か」という問題にとどまらず、中長期的には社会の在り方・価値観に関わる問題になる。この点を忘れてはならい。

▼グローバルな広がり

 世界の目は欧州のテロに注がれているが、テロの規模や被害者の数ではさらに大きい事件が起きている。ナイジェリアでは今年に入り、少女に爆弾を巻きつけた自爆テロが横行。少なくとも23人が死亡した。同国北部では今月、ボコ・ハラムにより数百-2000人が虐殺された模様だ。イエメンでは7日、テロで37人が死亡した。

 これらのテロはイスラム過激派がイスラム教徒を殺害するもの。欧米とイスラム社会の「文明の衝突」と捉える見方の範疇外だ。

 国際的テロの根は深く広い。そして複雑だ。パリ連続テロの余波は、さらに広がっていく。

2015.1.18

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