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2015年1月15日 (木)

◆パリ連続テロのインパクト 2015.1.12

 パリでイスラム過激派によるとみられる連続テロが発生。世界に衝撃を与えた。

▼新聞社襲撃から立てこもりに

 最初は風刺画を使った紙面が特徴の新聞社「シャルリエブド」襲撃(7日)。銃などで武装した犯人が侵入し、記者や警察官ら12人を殺害し逃走した。容疑者はサイド・クアシとシェリフ・クワシの兄弟を中心とした人物。アルジェリア系フランス人で、かねてイスラム過激派との関係を指摘されていた。

 新聞社襲撃は言論・報道の自由に対する挑戦でもある。フランスではオランド大統領が声明を出し、テロに屈しないこと、言論の自由を守ることをなどを強調した。

 事件はそれだけにとどまらなかった。翌8日の朝、パリ南部で男が警察官を襲撃。女性警察官が殺害された。犯人はアメディ・クリバリ容疑者で、やはりイスラム過激派との関係があった。

 2組(3人)の犯人は、その後9日、パリ北東部の印刷工場とパリ東部のユダヤ系商店に人質を取って立てこもった。仏当局が突入して3人を射殺したが、記者、警察官、人質など合計17人が犠牲になった。

▼様々な問題投げかけ

 事件が投げかけたインパクトは大きい。

 まず事件にはアルカイダ系の関与が疑われる。「イスラム国」との関係を疑う情報もある。今回のテロは単独犯の思い付きではなく、アルカイダやイスラム国などイスラム過激派の組織的な犯行であるとの可能性がある。国際的ジハードの一環とすれば、問題の広がりは大きく、根絶は容易ではない。

 9.11後、世界はイスラム過激派のテロに直面する状況になった。欧州でも2004年のスペイン・マドリッドの列車爆破テロ、2005年のロンドンでの多発テロなど大規模テロは断続的に発生している。今回のテロは、そうしたリスクが引き続き大きく、しかもアラブの春の後の中東混乱や、イスラム国の台頭、SNSを始めとした情報通信手段の発展など、新しい環境下で形を変えて進化していることを示した。

 テロの温床となる中東の混乱、格差の拡大(世界的な格差、フランスなど国内での格差両方)などによる人々の不満の高まりももちろん無視できない。

 言論・報道の自由とイスラム的価値観の対立という点も正面から見つめる必要がある。アラーを冒涜するような表現は、西洋的な価値観では表現と自由とのバランスの中で考えるレベルの問題だが、イスラムの一部の人びとにとっては「命を賭してでも許せない事」となる。国連憲章などで定めた世界的な共有価値との関係などはさて置き、世界に西洋の価値観とは全く相いれない価値観を持って暮らす人々がいるという事実も無視できない。

▼規制・監視の強化

 事件をきっかけに、欧州では国境検査を強化する動きが広がろうとしている。それは当然ながらEUが理想とする移動の自由とは相反する。さらには、移民規制そのものが強化される可能性も大きい。

 そうした流れは政治的には、欧州内(あるいは世界的な)反移民政党(極右・極左政党であることが多い)の勢力拡大にも結び付きかねない。

 さらには、国家によるによる情報監視の行方にも影響を与える可能性がある。ウィキリークスやスノーデン事件で、米NSAや英GCHQなどによる違法の情報収集問題に焦点が当たった。個人情報の保護と安全保障のバランスは難しい問題だが、大規模テロはこのバランスを安全保障重視の方向に動かす傾向がある。

▼人々の反応

 欧州など約50か国の首脳・閣僚は11日パリに集結。反テロのデモに参加した。フランス中でデモに参加した人は370万人を数え、同国史上最大の規模となった。

 今回のテロに関してはまだ不明な点が多く、分析も十分でない。容疑者のひとりはフランス国外に逃亡したとの情報もあり、今後事件を受け継いだ動きが出てきてもおかしくない。

 現在のテロの背景には、上記のように国際的過激派ネット、価値観の違い、格差など様々な問題があり、複雑だ。問題を単純化したり、過小評価したら物事の本質を見失う。

 冷徹な目と同時に、政治リーダーや国民にテロを許さず問題の解決に向けた意欲がなければ、何も始まらない。これまた重要な事実だろう。

2015.1.12

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