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2014年10月13日 (月)

◆マララ氏ノーベル賞受賞の意味 2014.10.12

 2014年のノーベル平和賞が、パキスタンの17歳、マララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)氏らに決まった。2012年、パキスタン・タリバンによる狙撃で一躍有名になった少女。その後も活動を続け、女性への教育機会の拡大や人権の領域で世界的なアイコンになっていた。授賞には多くの意味が込められ、インパクトは大きい。

▼インド・パキスタン同時受賞

 マララ氏への授賞は事前の本命ではなかったが、意外ではない。英国のブックメーカーなどの事前予想では、最有力はローマ法王フランシスコ。次いで、紛争下のコンゴ民主共和国で性暴力を受けた女性の治療に携わったデニス・ムクウェゲ医師が有力視され、その次にマララ氏や元CIA職員のスノーデン氏らの名が挙がっていた。

 意外感を持って受け止められたのは、マララ氏への授賞より、インドの児童労働問題でNGOを展開してきたサトヤルティ氏への授賞だ。同氏の知名度は国際的にはそれほど高くなく、事前予測も少なかった。結果はパキスタンのマララ氏とインドのサトヤルティ氏の同時授賞となった。

▼授賞効果と反響

 授賞の効果はすでに各方面で表れている。授賞発表と同時に、世界のメディアはマララ氏が11歳の時から匿名でブログにパキスタンにおける女性への教育の状況や「女性にも教育を」という主張を発信していたこと、そして2012年にイスラム原理主義のタリバン運動に射撃されたこと、その後英国に運ばれ、奇跡的に助かったことなどを繰り返し報じた。報道は当時のニュースを知る人には記憶を呼び起こさせ、知らなかった人には改めて事実を伝えた。

 パキスタンのシャリフ首相は授賞を歓迎する声明を発表。女性への教育に取り組む姿勢を示した。国際社会も授賞を歓迎し、マララ氏
の活動を支持する姿勢を示した。

 一方、パキスタン国内には保守派を中心に反発する声も上がっている。女性への教育はイスラムの教えに反する西洋流価値観の押し付け、などとする理屈だ。タリバン運動は、マララ氏が帰国したら再び射殺を試みるという姿勢を変えていない。
 
▼ノーベル委員会のメッセージ

 ノーベル平和賞は、政治的立場と無縁であるどころか、強いメッセージが込められている。過去には南アのアパルトヘイト廃止に貢献したマンデラ氏らや、パレスチナ和平を推進したラビン元首相らに授賞した。異例ともいえる就任初年の米オバマ米大統領への授賞は、核なき世界推進の後押しだった。

 マララ氏は史上最年少17歳でもあり、話題性は十分。女性への教育推進や女性の権利擁護を後押しするメッセージが明確に込められていると解するべきだろう。

 同時に、サトヤルティ氏への同時受賞には、ノルウェー・ノーベル委員会の深謀遠慮がうかがえる。

 マララ氏のみの授賞だと、彼女を射撃したイスラム過激派への批判が必要以上に表に出る可能性がある。それは、委員会の望むメッセージではない。むしろサトヤルティ氏との同時受賞により、女性の教育や児童労働という社会問題への焦点を明確にし、さらにインドとパキスタンの両国への応援を込めることが可能になる。このような見方は、たとえばFT紙掲載のGideon Rachman氏の解説記事”The Nobel committee gets it right”(10月10日電子版参照)などに示されている。

 ノーベル賞の受賞式には、インドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相が出席する見通しになった。ここにも、ノーベル賞効果が出ている。
 
▼マララ氏の活動

 それにしても、マララ氏が弱冠17歳にして世界に及ぼした影響に、改めて印象を深める。彼女が2013年に国連で行った演説は、「銃ではなくペン」「女性の教育を」と明快。ノーベル賞受賞決定後も、活動継続の決意を語った。また、発言や態度からは、そうした運動のアイコンになっている自分の立場をよくわきまえているとの印象を受ける。

 昨年の国連演説は、次のアドレスが分かりやすい。
 http://www.aljazeera.com/video/asia/2013/07/20137126351897418.html

 ノーベル賞の機能、特にネット時代の市民運動やNGO運動の広がり方という面からも、有意義な材料を提供してくれる。

2014.10.12

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