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2014年9月21日 (日)

◆スコットランド住民投票と英国・欧州・世界 20140921

 スコットランドの独立を問う住民投票が9月18日に投票され、独立反対が有効投票の55%を獲得した。英国への残留が決まり、「連合王国の分裂」という歴史的な事件には至らなかった。しかし、住民投票が投げかけた問題は大きい。

▼投票の経緯と結果

 今回の住民投票が決まったのは2012年。前年の2011年のスコットランド自治選で、独立を主張するスコットランド国民党(Scottish National Party)が勝利。サモンド党首が行政府の首相に就任した。翌2012年にキャメロン英首相とサモンドが住民投票実施で合意した。

 当初は独立反対(統一維持)派が大きくリードしていたが、2014年夏になると両者の支持が拮抗。一部世論調査では反対派が逆転という結果も出て、「連合王国分裂か」と世界の注目を集めるようになった。

 危機感を深めた統一維持派は、キャメロン首相はじめ労働党、自民党党首も現地入りしてキャンペーンを実施。投票ではからくも独立反対が上回った。しかし、数か月前の「反対圧勝」の予測から、競り合いになった事実は重い。

▼主流派vs草の根

 スコットランドがイングランドと合併する形で連合王国の一部になったのは約300年前の1707年。その後、イングランド優位の中で独立を求める声は元々あった。北海油田からの富がイングランドに流れるという不満や、EU 統合で国家の持つ役割が相対的に低下した状況変化などが、新たな独立運動を盛り上げた。

 今回独立運動を推進したのは、住民の草の根運動だった。独立賛成派は、Yes Scotland というキャンペーン母体を2012年5月に設立。集会や戸別訪問で支持層の拡大を進めていった。政党では地方議会の与党のスコットランド国民党(Scottish National Party=SNP)、緑の党などが独立運動を支えた。

 一方、経済界など社会の主流派は英国の統一維持を主張し、独立に反対した。全国政党である保守党、労働党、自由民主党はこぞって反対した。反対派は資金面などでは優位に立っていたが、賛成派ほどの幅広い活動は当初はなかった。

 大手メディアもほとんどが「独立反対」を主張した。英Economistは、7月12日号で”Don’t leave us this way” Why Scotland should stay in Britain というカバーストーリーを掲載し、独立に明確に反対。9月13日号でも UK RIP?(切り裂かれる?)というカバーストーリーで、統一の重要性を訴えた。

 Financial Times紙も社説で独立反対の立場を明確化。BBCも同様に統一の重要性を強調する報道が多かった(BBCには、独立賛成派が「変更(bias)報道反対」の抗議活動を展開。9月16日にはデモを繰り広げた。

 このように、英社会の主流派はこぞって反対したのにも関わらず、独立賛成派が半数近い支持を集めたところが重要だ。

▼キャンペーン

 両派のキャンペーンの中心は、独立賛成派がYes Scotland、反対派は、Better Together。それぞれが集会などのほか、オンラインを使ったキャンペーンを展開した。参考に、オンラインキャンペーンの実態は以下の通りだ(9月18日の投票直前の状況)。

>Yes Scotland (独立賛成派)
http://yesscotland.net
https://www.facebook.com/#!/YesScotland?fref=ts    いいね! 31万8155件
https://twitter.com/YesScotland/following         フォロアー 10万0517
https://www.youtube.com/watch?v=C-kcl7PQooc     再生6万4992

>Better Together (統一維持派)
http://www.bettertogether.net/#
https://www.facebook.com/#!/bettertogetheruk?fref=ts   いいね!  21万6256
https://twitter.com/UK_Together    フォロアー4万1960
https://www.youtube.com/results?search_query=%23letsstaytogether
https://www.youtube.com/watch?v=ZG6ttqzms6U  再生7万9128

▼草の根の背景

 独立派が英国からの独立を求めた背景には様々な理由がある。中でも大きかったのは、「スコットランドの事情を軽視、なんでもロンドンが決めてしまう」という中央政府への反発だ。これはスコットランドの文化や歴史を重んじる感情や、民族としての誇りとつながる。

 社会の主流派は、独立したら通貨面で混乱が起きる懸念や大手企業のイングランドへの移動など、経済的な弊害(損得勘定)を強調した。しかし、独立賛成派の草の根運動は住民の感情にも訴える。

 議論は理屈だけでは収まらない。ここに問題の難しさと根の深さがある。

▼EU統合と地域独立

 もう一つ重要なのはEUの統合だ。かつて、外交や安全保障、通過発行などを担うのは国家の役割りだった。通商交渉や経済政策の主体も国家だった。この機能を果たすには、あまりに小さい集団では十分な機能が望めなかった。

 しかしEU統合により、統合欧州(EU)-加盟国(英国)-地方政府(スコットランド)という新たな関係が発展し、それぞれの段階の間で権限委譲も調整された。たとえば外交や安保の一部は、EUの共通外交政策や安保政策が担うようになり、かつてのように国家の独占ではない。貿易交渉や農業政策はEUが重要な役割を果たしている。国家に頼るのではなく、EUに頼る領域が拡大した。

 小さな地域も、EUという枠組みの下なら、国家を飛び越して自分自身のことを決める(独立)が可能になる可能性が以前より大きくなった。そうなると、地域独立運動は「現実味のある話」として浮かび上がってくる。

 スペインのカタルーニャ州議会は19日、スペインからの独立を問う住民投票の関連法案を可決した。11月9日に実施する。ただし、スペイン政府はこれを違憲とし、住民投票を阻止する構え。仮に賛成多数となっても独立を認めない立場だ。EU内ではこの他にも、スペインのバスク、ベルギーのフランドルなど地域独立運動を抱える。

▼権限移譲の推進

 キャメロン首相は住民投票後、スコットランドへの権限の一層の譲渡を約束した。具体的にはスコットランドだけでなくウェールズや北アイルランドも加え、権限移譲の範囲などを定めた法案を来年1月までにまとめて国会を通す予定。

 EU-国-地方のあり方を巡る議論は、そう簡単に解決できるものではなく、続く問題。当面は、キャメロン首相の実行が知恵の絞りどころになる。

▼世界に波及

 EU意外の地域でも地域独立運動は数多い。ただし、例えば中国の新疆ウイグル、イラク、シリア、トルコのクルド人居住地域のように、政府が運動を認めない事例も多い。この辺は、議会での議論などを認めるスコットランドやEU内の独立運動とは性格が異なる。

 しかし、地域の独立を求める運動であるという点では一致する。「国家と地方」の問題は、世界のあり方を問い続ける。

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