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2014年8月31日 (日)

◆EU次期首脳に見る欧州の現実と課題 2014.8.31

 EUの次期大統領(首脳会議常設議長)と外交安保上席代表が決まった。大統領にポーランドのトゥスク首相(中道右派)、外交安保上級代表にイタリアのモゲリーニ外相(中道左派)という組み合わせだ。次期欧州委員長に内定しているルクセンブルクのユンケル前首相(中道右派)と合わせて、11月以降の新体制が固まった。

▼課題山積

 EU首脳人事は加盟国の利害が絡み、いつも調整が難航する。今回の人事は、課題山積の中で進められた。主要かつ喫緊の課題を挙げれば以下の通りだ。

(1)ユーロ危機でEUの求心力が低下した。その維持、回復。
(2)各国で反EU政党が伸長。先の欧州議会選でもその傾向が顕著になった。反EUやポピュリズムへの対抗。
(3)ウクライナ危機で対ロシア関係が緊張し、「新冷戦」の懸念も指摘されるい。危機への対応。
(4)シリア、イラクなど中東情勢が悪化している。中東問題および移民・難民問題の対処。

 こうした問題に対応するため、新指導部にに加盟国間の調整を進める強いリーダーシップと、複雑な国際問題に対応する外交力が求められる。人事に注目が集まった所以である。

▼関係国の利害調整

 一方で人事を巡っては、加盟28カ国の利害調整を軽視するわけにはいかない。特に新加盟の東欧諸国は、これまで重職に着いたことがほとんどない。地域や政党バランスへの配慮は、加盟国の団結のために欠かせない。

 EUの首脳に就いてきたのはこれまで西欧の出身者。現首脳のファンロンパイ大統領はベルギー、バローゾ欧州委員長はポルトガル、アシュトン外交安保上席代表は英国出身だ。歴代の欧州委員長は全員が西欧出身で、特にEU現加盟国6か国(独仏伊ベネルクス3国)の出身者が多かった。

 結局、地域バランスが重視される形で、初の東欧出身の大統領が決定。外交安保上席代表には、41歳と若く女性のモゲリーニ氏が決まった。

▼英国の反対

 人事を巡って英国はいずれも反対した。ユンケル次期委員長について、英国は指導力の不足を指摘。結局決定は、EU恒例の全会一致ではなく、多数決で決まった(英国とハンガリーが反対)。

 大統領と上席代表についても、英国は同様の理由を挙げて反対を表明した。FT紙などメディアも、明確に同調した。

 人事が滞る様ではEUのますますの求心力低下は避けられない。混乱を避ける共通認識もあり、結局は無難な線に落ち着いた感がある。

▼軽量級

 しかし、新首脳が「軽量級」の印象なのは否定できない。大統領や欧州委員長はEUの「顔」だ。安全保障にしても経済にしても、EUは米国と並んで世界の秩序作り(グローバルガバナンス)を進める役割りを担っている。「顔」の意味は大きい。

 もちろん、EUの政策決定に最も大きな影響力を行使しているのは加盟国の首脳だ(中でも独仏英首脳)。しかし、加盟国首脳は「EUの顔」ではないし、なりえない。

 過去を振り返ると、強い欧州委員長が欧州統合を進めEUの存在感を高めた歴史がある。1980-90年代に強力なリーダーシップで市場統合から通貨統合への道筋をつけたドロール委員長が典型だ。

 新首脳にドロール時代のような指導力を期待するのは難しいだろうし、意味のないことかもしれない。しかし直面する課題を一つ一つ着実にこなし、「顔」としてメッセージを発信する機能は重要だ。それがなければ、独仏英首脳らとの役割分担も空振りに終わる。

 新首脳の実力は今のところ未知数だが、それは今後5年のEUの行方を左右するのはもちろん、世界の行方にも影響する。

2014.8.31

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