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2014年8月17日 (日)

◆トルコ大統領選が映す転換点 20140817

 トルコ大統領選が行われ、イスラム色の強いAKPのエルドアン首相が過半数を獲得し当選した。初の直接選挙による大統領選で、今後は「強い大統領」として首相時代に続き直接政権を担う。選挙はトルコの政治、国の在り方とっての節目になる。

▼国民の支持

 10日の選挙ではエルドアン氏が約52%を獲得。決選投票を待たずに当選を決めた。野党が推すイフサンオール氏は38%だった。

 選挙で争点になったのは、エルドアン氏の首相としての11年に対する評価と、大統領権限および国のあり方だ。エルドアン氏は2003年の首相就任以来、これまでにDGPを約2倍に拡大させた。一方で昨年の反体制デモを力で制圧するなど、強権的な姿勢も特に近年は目立つようになった。さらに、首相が率いるAKP(公正発展党)はイスラム色が強く、1923年の建国から1990年代まで国是としてきた世俗主義と対立しかねない。

 昨年には与党のスキャンダルも発覚。また、かつて支持を得てきたイスラム教団体「ギュレン運動」とも近年は激しく対立するようになっていた。

 結果は、エルドアン氏の勝利。国民は、経済成長路線+イスラム色+強権的姿勢という同氏を支持したことになる。

▼強まる大統領権限

 トルコの大統領はこれまで儀礼的な役割が中心で、実権は首相の方が強かった。2010年の国民投票に伴う憲法改正で大統領権限は拡大し、首相の指名や国会の解散権を握った。しかし、現職のギュル大統領は権限行使を抑制していた。

 選挙戦で野党候補のイフサンオール氏は、大統領の役割を従来のスタイルのとどめると主張した。これに対し、エルドアン氏は「汗をかく大統領になる」と、強力な大統領像を主張した。

 さらにエルドアン氏は、2015年までに実施する次期選挙でAKPを勝利させ、再度の憲法改正を目指している。大統領権限をさらに強化することも可能だ。大統領は5年2期の再選が可能で、そうなれば2024年まで、首相時代も含め20年を超える長期政権になる。

▼強権的体質

 エルドアン氏が首相に就任した当初は、イスラム色を隠さないまでも弱めた姿勢を示し、法による支配の強化や人権問題にも配慮を示した。しかし、政権が長期化するに従い強権的姿勢が目立つようになってきた。

 象徴的なのは、昨年の反体制デモだ。イスタンブールでの都市開発をきっかけに発生した抗議活動は、反体制デモとなって全国に拡大した。同氏はイスタンブール開発では譲歩したものの、その他は対話や譲歩を拒否。治安部隊を使って制圧した。

 今年の地方選をにらんだ抗議活動の広がりには対しては、ツイッターを閉鎖するなど露骨に妨害した。

 イラク情勢悪化やしアラブの春とそれに続く中東の情勢悪化、シリア内戦など、トルコを取巻く環境が緊急事態的な面にあったのも事実だ。しかし、反対派は強権姿勢が民主化の弱め、政権の長期化で実情主義や腐敗を生んでいると批判する。

▼変わる針路?

 世界の地政学的にも、トルコの位置づけは重要だ。地理的に欧州とアジアをつなぐ場所に位置し、NATOのメンバー。従来は中東の中では宗教色の薄い世俗主義の国家という位置づけで、欧米と中東をつなぐ架け橋と期待された。

 トルコも欧米基準を尊重して経済・政治改革を進める方向を打ち出していた。EU加盟を目指してきたのも、この戦略に沿う。

 ただ、エルドアン政権になり徐々に変わってきた。イスラム色が徐々に強まり、EU加盟はもくとが立たないこともあり政策の優先課題から後退している(EU側の態度が煮え切らない面も原因)。欧米協調より独自の外交を目指す姿勢が目立ち、パレスチナ問題では欧米とはっきり一線を画した事例を数多く示した。

▼不安定な周辺国との関係

 エルドアン首相は地域の盟主を目指す姿勢を隠さない。しかし、周辺国とは関係強化というより、対立の拡大が目立つ。

 隣接するシリアではアサド政権と対立関係にあり、トルコには反体制派の難民が流れ込む。イラクではシーア派主導の政府と原油輸出などを巡り対立するうえ、北部のクルド人とも微妙な関係にある(トルコ国内にもクルド人が居住)。

 エジプトではもともとモルシ政権支持の姿勢を示しており、クーデターで登場したシシ政権とは大使を追放し合ったまま。シシ政権と支持するサウジアラビアやUAEとも関係がこじれている。

 シーア派の大国イランとは元々関係が悪い。イスラエルともパレスチナ問題を巡り対立が続く。

▼転換点

 トルコは人口7000万人、GDPは世界17位で、1人当たりのGDPも1万1000ドルを超えた。その成長に、エルドアン氏の果たした役割は大きい。「2013年までに世界のトップ10に入りたい」という目標も非現実的ではない。

 一方で、親欧米、欧米と中東の架け橋などについては、方向性が不明確になりつつある。

 建国の父・ケマル・パチャが描いた世俗主義は、この10年間でイスラム色が重な李、変質してきた。そして今回、象徴的大統領から強い大統領の時代に変ろうとしている。トルコが大きな転換点にあるのは間違いない。それが中東、世界の安保に影響するのも当然だ。

2014.8.17
 

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