« 2014年6月 | トップページ | 2014年8月 »

2014年7月

2014年7月27日 (日)

◇世界の関心と国際世論 2014年29号(7.14-19)

・世界のメディアの関心は、引き続きウクライナ、ガザ中心。

・ウクライナ関連ではロシアのプーチン大統領への圧力が高まった。Economist誌7月26日号は、”A web of lie"と題するカバーストーリを掲載。プーチン大統領が今回の問題でウソを重ねてきたと批判している。英FT, 米NYTなども、プーチン氏の責任を追及する記事が多い。

・ガザの記事も連続しつこく報道している。1面には大きな写真が目立つ。

・インドネシア大統領選についてはジョコ氏の勝利、新大統領が直面する課題などを指摘する点は共通する。気にかかったのは新大統領の呼び方。英FT、 米WSJアジア版などはWidodo氏とよび、NYTはJoko氏と呼ぶ。地元のジャカルタ・ポストはJookiwiと愛称だ。たかが名称と言うなかれ。イメージの伝達、大統領のメッセージ戦略をどう見るかなど、深い問題が含まれている。

・2014年7月26日の英Economistの「読者からのコメントが多かった記事」。以下の通りだ。
1Russia, MH17 and the West A web of lies
2Israel and Gaza: Stop the rockets, but lift the siege
3Israel and Gaza: The bloodshed continues
4Anti-Semitism in France: Dark days
5Flight MH17: The evidence

20140727

2014年30号(7.20-27 通算733号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2014年7月20-27日
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

◆インドネシア大統領にジョコ氏(22日)☆
・15日投票の大統領選はジョコ・ウィドド・ジャカルタ州知事が当選した。選管が発表した。
・ジョコ氏は庶民派とされ、野党闘争民主党などの支援を受けた。10月に就任する。
・同国の従来の大統領は軍出身やエリート階級出身者。ジョコ氏は庶民派だ。
・政治の安定と腐敗の払しょく、経済改革推進などが課題となる。
・中央政府での行政経験のなさ、ポピュリズムや保護主義を懸念する声もある。
・インドネシアは人口2.5億(世界4位)。ASEANのGDPの4割を占める大国。
・その行方は東南アジア全体に及ぼす影響も大きい。

◆ウクライナ政府が対親ロ派攻勢、連立政権は崩壊 ☆
・ウクライナ政府が対親ロ派の攻勢を強め、拠点のドネツクなどに迫っている。
・親ロ派は地対空攻撃などで対抗。政府軍の航空機を撃墜した。
・ロシアからの義勇兵流入、武器供給の情報もある。
・米国とEUは対ロ制裁強化を発表。ロシアへの圧力を一層強めた。
・親ロ派は墜落機のブラックボックスをマレーシアに提供。遺体返還も始まった。
・ウクライナ政府内では24日首相が辞任。連立政権の枠組みが崩れた。
・秋に前倒し選挙を実施の予定だ。
・ポロシェンコ大統領は選挙勝利→政治基盤安定を目指すが、政治の行方も不透明だ。

◆ガザの戦闘激化、死者1000人超 ☆
・イスラエル軍が侵攻したガザで戦闘が激化。
・24日には国連運営の学校が砲撃を受け、子供を含む15人以上が死亡した。
・ケリー米国務長官が現地入りして調停を重ねた。期間限定の停戦合意が繰り返された。
・自治政府は26日、イスラエル軍事作戦開始の8日以来1000人超が死亡したと発表した。
・中東全域で混乱が拡大する中、アラブ諸国の支援も明確な動きになっていない。

◆ロシアの経済減速鮮明に(25日)☆
・ロシアの4-6月の実質成長率は前年1.1%だった。
・1-3月は0.9%で、連続で低成長。
・ウクライナ危機による欧米の経済制裁の影響が出ている。
・ロシアではルーブル安、物価上昇の圧力が高まっている。

◆台湾、マリで航空事故
・航空機の事故が相次いだ。
・台湾のトランスアジア航空機が23日、離島の澎湖島で緊急着陸時に墜落。
・乗客乗員58人中48人が死亡した。悪天候が原因とみられる。
・ブルキナファソからアルジェに向かうアルジェリア航空機が24日、マリで墜落。
・乗客乗員116人全員が死亡した。

  ┌────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【インドネシア新大統領と課題】 インドネシアの新大統領にジョコ・ウィドド氏が決まった。同国は人口2.5億人(世界4位)。ASEANのGDPの4割を占める地域大国だ。しかし経済発展ではシンガポールはもとより、マレーシアなどの後塵を拝している。
 インドネシアは1人当りGDPは3500ドルで、マレーシアの3分の1、タイの半分だ。
 同国では30以上年に渡るスハルト政権(ゴルカル)が1998年に倒れた後、ハビビ(1998-99、ゴルカル)、ワヒド(1999-2001、国民覚醒党)、メガワティ(2001-04、闘争民主党)と続いたが、政治は安定を欠いた。
 こうした中でテロが続発するなど治安は乱れた。これが経済発展の阻害になった面がある。
 2004年の初の大統領選直接選挙定でユドヨノ大統領が誕生すると、政治は比較的安定した。こうした中で同国への投資も増加。新たな生産拠点、市場としての注目も高まっている。人口の半分が30歳以下と若い点も、経済発展にはプラスだ。
 とはいえ、交通などインフラ整備の遅れ、汚職体質、縁故主義など克服すべき課題は多い。そもそも同国が多民族国家、多宗教国家であることは、強味にしうると同時に、国の運営を難しくする。
 新大統領はエリート階層出身でも軍出身でもない庶民性が売り物。しかし中央政府での行政経験はない。庶民性は既得権層とのしがらみがない一方、国民への人気取り(ポピュリズム)に傾く懸念も消しきれない。
 ASEANは2015年に市場統合を迎える。中国台頭への対抗の意味も含め、ASEANのまとまりと政策協力は欠かせない。インドネシア次期大統領には、国内統治だけでなくASEANリーダーとしての役割も求められる。
 
 【ウクライナ、ガザ、イラク】 世界の注目は、引き続きウクライナ危機、ガザの紛争、イラクなど。ウクライナ情勢に絡んでは、プーチン・ロシア大統領への国際的圧力が強まっている。
 

◎今週の注目(2014.7.28-8.3)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・ウクライナ情勢は引き続き緊迫。政府軍による親ロシア派拠点の攻撃、マレーシア機撃墜の真相究明、欧米制裁強化に対するロシアの反応などが焦点。

・ガザ危機も瀬戸際の動きが続く。

・イラクの新政権作りが難航している。マリキ首相の続投にはスンニ派やクルド人が強く反発する。決着は見えない。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2014 INCD-club

2014年7月21日 (月)

◇世界の関心と国際世論 2014年29号(7.14-20)

・ウクライナにおけるマレーシア航空機撃墜事件に当然ながら関心が集中した。世界の主要メディアの第1報は当然ながら、事実の的確な報道。しかし、事実報道の中でも、親ロ派によるミサイル発射に原因があるとの見方や、ロシアの責任をにじませる工夫が目立った。NYTは
"U.S. Sees Russian Links in Jet’s Downing" "Obama Points to Role of Kremlin in Arming Rebels"という記事を掲載している。

・事件により、プーチン・ロシア大統領い追い込まれたという分析も目立つ。英FTは18日付社説で、"Putin is facing his moment of truth"
”Tragedy of MH17 shows he is losing control in Ukraine"とかなり直接的な表現で状況を分析。スウェーデンのカール・ビルト外相は、FTへの投稿記事で、"Putin’s credibility in ruins"と指摘する。 英BBCは、"Pressure grows on Russia over crash inquiry"(20日)と、ロシアへの圧力・批判の高まりを指摘する。

・問題の収拾のためにはプーチン・ロシア大統領の決断が欠かせないという指摘も目立つ。NYTは事件直前の18日の社説で、"Vladimir Putin Can Stop This War"と掲載していた。FTの社説やビルト外相の投稿も、ロシアの責任を求めている。

・事件を巡り、読者の投稿も多い。Economistの投稿ページには1日で数百の投稿が集まり、数十―数百単位で推薦ボタンが押されている。内容は様々だが、単に感情的なだけの質の低い投稿は限定的だ(運用基準は分からない。基準に達していない投稿は排除しているか?)。各メディアからFacebookやTwitterなどのSocial Mediaにリンクされる件数は数知れず、今回の時間は様々なレベルの国際言論空間で語られている。それが世界世論形成にどう影響するか、興味深い。

・一連の紛争を巡り、親ロ派は報道には比較的マトモに対応し、取材拒否がとりわけ目立つ訳ではない。事件後も、指導者が記者会見を開き、OCSE調査団が入る現場も写真撮影フリーだ(これにより、調査拒否の事実も伝えられる)。もちろん規制もあるが、これはウクライナ政府も同様。そうした点では、報道陣のアクセスもままならぬアルカイダなどとは全く異なる。

・今週のもう一つの事件であるイスラエルのガザ侵攻も、1面への写真付きで大々的に報じているメディアが多い。めでぃにより立場は様々だが、あえて言えば欧州のメディアはイスラエルの批判的。過去の危機でもそうだが、人権的な立場からの批判が多い。

・BRICS首脳会議がBRICS開発銀行の設立を決めた。途上国のインフラ開発などに融資する目的だ。現在世銀やアジア開銀、米州開銀などが行っている業務ともバッティングしかねない内容となる。BRICS首脳会共同声明で、世銀・IMFを中心とした現在の国際機構が世界経済の現状を反映していないと批判。新機構設立の意義を強調した。第2次世界大戦後の国際金融秩序を形成してきた世銀・IMF体制への挑戦ともいえる。それだけに、欧米メディアも関心は高い。FTは1頁を割いて様々な角度から分析記事を掲載した。

・IT革命で世界は変わっている。このテーマに対する関心は高く、扱いも大きい。英FTは、グーグルとノバルティスが組んで健康管理を可能にするコンタクトレンズの開発を進める話を(一般記事でなく)社説で取り上げ、高齢化社会の医療に様々な新技術を取り入れる必要があると指摘。またマイクロソフトのリストラ(主に旧ノキア部門)も1面で取り上げ、フィンランド社会の怒りなどを報じた。時には過剰反応もあるが、世界の変化の最先端をとらえていることは、改めて指摘するまでもない。

◆2014年前半の世界:「危うさ」が表面化 2014.7.20

 2014年前半が終了した。今年は年初から地政学リスクへの警戒が強かったが、実際ウクライナ危機やイラクの分裂危機、南シナ海での緊張などが表面化した。背後には格差拡大、民族主義や宗教勢力の伸長、米国の影響力の後退、中国の台頭による世界の構造変化などがある。

 折しも2014年前半は第1次大戦勃発から100年に当たり、1914年と2014年の類似性も指摘された。「世界の危うさ」の所在は、常に意識しておく必要があるだろう。

▽予想されたリスク

 2014年1月のダボス会議では、格差の拡大や地政学リスクに焦点が集まった。会議を主催するWorld Economic Forumの報告は、2014年の世界が抱えるリスクとして、「発生の可能性が大きいもの」として格差拡大、異常気象、失業、気候変動、サイバー攻撃を、「発生した場合にインパクトの大きいもの」として、財政危機、気候変動、水資源、失業、重要インフラのダウンを挙げた。

 一方、ユーラシアグループは2014年のリスクとして米国と同盟国の関係の揺らぎ(米国のリーダーシップ)、マーケットの動揺、中国、イラン、産油国、ITデータを巡る問題、アルカイダ2.0(新たなテロ)、中東、ロシア、トルコを挙げた。

▽冷戦後の体制変更を迫ったウクライナ危機

 中東混乱がある程度予想されたものだったのに対し、ウクライナ危機の拡大をここまで予想した人は少なかった。2月にヤヌコビッチ政権が崩壊して親欧米の政権が誕生すると、ロシアは自国利権(およびロシア系住民の利益)確保のために事実上介入。クリミアの独立→編入へと動いた。

 こうしたロシアの姿勢に欧米は反発、ロシアで開催のG8をボイコットし、冷戦後の世界秩序を支えてきたG8体制派事実上崩壊した(将来G8が再び開催されるとしても、これまでとは意味合いが異なるものになる)。

 ウクライナ東部では親ロ派過激派が分離独立闘争を続け、政府軍との戦闘が続いた。こうした中で7月17日に、親ロ派過激派の誤射によるとみられるマレーシア機撃墜事件が発生。国際社会に大きな衝撃を与えた。

 ウクライナ情勢は、紛争の泥沼化や周辺への拡散リスクをかかえながら先行きの見えない状況にある。そして、欧米とロシアの関係、グローバルガバナンスの行方も視界不良状況にある。

▽中東各地に混乱

 イラクでは4月の国民議会選後もイスラム教シーア派とスンニ派、クルド人の対立が続いた。こうした中、スンニ派の過激派「ISIS」が北部で勢力を拡大。6月には第2の都市モスルを戦力し、一時は首都バクダッドに迫った。ISISは6月末に「イスラム国」としての独立を宣言した。過激派はシリアの反体制派とほぼ一体で、急速に力を伸ばした背景には国境を越えた連携がある。リビアのカダフィ政権崩壊→過激派と武器が周辺各地に拡散した構図と似ている。

 シーア派とスンニ派衝突の間隙に、クルド人勢力は北部の油田地帯を掌握。イラクは事実上、3勢力に分断された状況になった。混乱が続くことは容易に予想されたが、「イスラム国」の宣言など具体的なステップは予想を超えている。

 シリアでは内戦が続くが、事態はアサド政権側有利に傾きつつある。パレスチナ問題では和平交渉の行き詰まり→戦闘という過去何度もあったパターンが繰り返され、7月には5年ぶりにイスラエルがガザ゙に侵攻した。

 エジプトでは2013年おクーデターでモルシ前大統領追放・全権掌握したシシ元国防相が大統領に就任(大統領選実施の結果)。治安は表面上安定しているが、経済再建などは先行き見えない。

 アフガニスタンでは大統領選を実施したが、少数民族タジク人の支援を得るアブドラ元外相と、多数派パシュトン人のガニ元財務相の対立が解けない。

 中東は2011年のアラブの春→混乱と失望の時代に逆戻りした。現在みられる紛争や混乱も、こうした脈略の中で捕えるべきだ。

▽中国の拡張と南シナ海

 中国では習近平体制が2年目(2013年の国家主席就任から)に入り、習氏個人への権力集中が進んでいる兆候が見える。経済は引き続き7%以上の成長を維持、世界における存在感は継続的に高まっている。

 こうした中で、中国の膨張が目立ち、南シナ海西沙諸島近海では資源開発強行→ベトナムとの対立深刻化をもたらした。中国の船舶がベトナム船に体当たりする映像が流され、ベトナムでは大規模な反中デモが起きた。一方、新疆ウイグルでは反政権のテロ屋抗議活動が断続的に発生するなど、民族問題はくすぶる。

 経済高成長下でも格差拡大や汚職、環境悪化が深刻な構図は変わらない。習政権は汚職撲滅に力を入れ、目下は石油閥のドンだった周永康元中央委常務委員の逮捕があるかどうかが焦点だ。

▽米国の影響力低下

 世界不安定の背景には、米国の影響力低下がある。オバマ大統領は2013年、シリア問題でもたつきを見せ米国の威信低下を露呈。「米国はもはや世界の警察官ではない」と述べた。スノーデン事件で暴露された同盟国に対する情報活動や、米国民や同盟国の国民を含めた個人情報の不正取得などは、民主主義の価値観尊重が支えるはずの米国への信頼を傷つけた。

 中国など途上国の発展で米国の地からが相対的に低下するのは世界の構造変化に伴うものだが、オバマ政権の姿勢がそれを必要以上に露呈し、影響力低下に拍車をかけている面もある。

 オバマ大統領は5月末の外交演説で、米国が引き続き指導的役割を果たしていく姿勢を強調した。しかし、現実には中東混乱、東アジアにおける中国の勢力拡大への対応などでアップアップしているのが現状のように映る。

▽第1次大戦100年

 2014年6月は第1次大戦開戦から100年。当時と現在の国際情勢の類似性を含め、様々な分析が議論された。

 主な議論の1つが、勢力均衡の移行期の危うさ。当時の欧州は英国優位に新興のドイツ帝国が挑戦する時代で、力のバランスが崩れる時代だった。

 偶発アクシデントの怖さも指摘される。サラエボ事件発生当初、事件は局地戦、短期戦で終わると予想されていたが、世界を巻き込む大戦に発展。世界は総力戦、大量殺戮の時代に入り、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、ロシア、オスマン・トルコの4大帝国が崩壊した。 

 こうした点が、現在と似ているという指摘はうなずける。

▽IT革命と経済

 もちろん、違いも大きい。最大級の違いは、情報通信の発展により情報がほぼ瞬時に世界に共有され、世界の国民が世論形成に参加するようになったこと。指導者の勝手な判断や勘違いで戦争が起きる可能性に限れば、小さくなった。

 一方、テロなど非対称戦争のリスクが高まり、サイバー攻撃が戦争の帰趨を決めるような時代になった。

 経済はリーマン・ショックから5年を経過し、財政バブルなど新たなリスクを抱えながらもとりあえずの成長を保っている。昨年表面化した新興国リスクも、対症療法で押さえ込む状況が続く(Fragile5、アルゼンチンのデフォルト危機など)。

 大きな変化として忘れてならないのが、現在の世界がIT革命の最中にあり、経済・社会が産業革命にも匹敵するインパクトで変わっていること。経済が何とかやっている背景にも、この大きなトレンドがあるように見える。

2014.7.20

◆ウクライナでのマレーシア機撃墜事件のインパクト 2014.7.20

 ウクライナ東部でマレーシア機が撃墜され、乗客乗員289人が死亡した。事件は混迷するウクライナ情勢の局面を変える可能性がある。同時にに、紛争の地域外への飛び火など新たなリスクを突きつける。

▽世界に衝撃

 アムステルダム発クアラルンプール行の航空機が墜落したのは現地時間17日夕方。数時間後には機体の破片や乗客の持ち物が散乱する映像が世界に流れ、大きなショックを与えた。

 墜落直後から、バイデン米副大統領などは「事故でなく撃墜」と表明。その後、親ロシア派が地対空ミサイルで誤射したという状況証拠が次々に公表された。地対空ミサイルはソ連製のSA11の可能性が高い。

 事故後の現場は混乱が目立つ。遺体の引き渡しや遺品の扱いが秩序立って行われているとは言い難い。一部遺品の略奪も指摘され、それが遺族の怒りを呼んでいる。

 国際社会はまず真相究明が最優先課題とし、OCSEは現地に調査団を送った。しかし、親ロシア派による妨害妨害も目立つ。ブラックボックスを巡っては、当初親ロ派とウクライナ政府双方にが回収したと表明し、その後否定されるなど混乱が目立つ。情報隠しの試みや情報戦もあるとみられる。

▽ロシアへの圧力

 ロシアのプーチン大統領の表情は、事故後2日間の反応を見る限りでは普段より精彩を欠く。墜落事故があったのは、欧米による対ロ追加制裁の発表があった数時間後。大統領はウクライナにおけるロシアの利権維持とともに、国際的な孤立を回避すべく、あらゆる手を講じてきた。事件の主責任が親ロ派にあるとなれば、そうした戦略は抜本的な見直しを迫らっる。

 今後の展望は難しい。事件が親ロ派の責任大となれば、国際世論はウクライナ政府側に傾く。しかし、ウクライナ情勢が政府側有利で決着する道筋が見えるかと言えば、そう簡単ではない。

▽制御不能?

 今回の事件は、プーチン・ロシア大統領がすでに一部では親ロ派をコントロールし切れなくなっている可能性を示唆する。親ロ派をこれ以上追い込めば、さらに過激化し、強硬な行動に出ないとも限らない。そうなれば、ウクライナ東部の一層の混迷→テロの拡散という事態になりかねない。

 欧米はこれまで、ロシアに対し親ロ派支援を止めるよう求めてきた。この主張の裏には、ロシアによる親ロ派制御の期待があった。しかし、それがどこまで効くかは分かりににくくなっている。また、ウクライナ東部でロシアに譲歩を求めることができるとしても、ロシアがクリミア編入を撤回することなど想像しにくい。落としどころは見えて来ない。

▽偶発アクシデント拡大の危機
 
 今回の事件は、偶発アクシデントの懸念を改めて想起させた。歴史は偶然の衝突や戦闘が制御不能になり、大規模紛争や戦争に発展した例をいくつも示している。今回の事件も、そうなる懸念を否定できない。

 欧米もロシアもウクライナ東部を失敗国家ならぬ失敗地域にすることは回避し、ウクライナ東部紛争を周辺に拡大させないという点では一致している。しかし、今年2月以来のウクライナ危機の背景には欧米vsロシアの勢力争いの面があるし、相互の不信感は相当募っている。そして国内世論は、事態を単純化し指導者に譲歩しない強い姿勢を求める(米国では中間選挙にらみ、対ロ強硬論が力を増している)。危機封じ込めには、相当複雑な連立方程式を解く能力が必要だ。

2014.7.20

 

2014年29号(7.14-20 通算732号)  国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2014年7月14-20日
 

◆ウクライナ上空でマレーシア機撃墜(17日)☆☆
・ウクライナ東部で、アムステルダム発クアラルンプール行きマレーシア航空機が墜落。
・乗客乗員298人全員が死亡した。
・地対空ミサイルで撃墜されたとみられる。
・現場は親ロシア派が支配するロシア国境付近。親ロ派による誤射との見方が強い。
・国際社会はまず公正な調査を主張。OSCEの調査団を送ったが、親ロ派の妨害も目立つ。
・ミサイルはロシアから供給された可能性も大きく、対ロ批判も強まっている。
・ウクライナ東部では政府軍と親ロ派の戦闘が続き、ロシアも親ロ派支援を強めていた。
・事故はこうした局面を一変させる可能性がある。地域を超えたリスク拡大の懸念もある。

◆イスラエルがガザに地上侵攻(17日)☆
・イスラエル軍はパレスチナ自治区のガザに地上侵攻した。2009年以来。
・イスラエルに対するミサイル発射基地や地下トンネルの制圧を目的とする。
・5年ぶりの侵攻で、和平の見通しはますます遠のいた。
・深刻な人権侵害との批判も高まっている。
・イスラエルとパレスチナは2012年に対話を再開したが、今年に入り中断した。
・双方市民の誘拐事件などもあり、関係は悪化していた。

◆BRICSが開発銀設立、欧米主導の秩序に対抗(15日)☆
・BRICS5か国はブラジル・フォルタレザで首脳会議を開き、BRICS開銀の創設を決めた。
・本部中国・上海に置き、初代総裁はインドから選ぶ。資本金は500億ドル。
・途上国のインフラ整備などに融資拡大を目指す。
・共同声明は、世銀・IMFなどの国際機構が世界経済の現状を反映していないと強調。
・欧米主導の金融秩序に対抗し、新たなシステムを構築する姿勢を示した。

◆中国が南シナ海の石油掘削調査終了(16日)☆
・中国は南シナ海西沙諸島周辺で行っていた石油掘削装置による資源調査活動を終了した。
・当初は8月中旬までと発表していたが、前倒しで作業を終えた。
・中国はだ捕していたベトナム人漁民も解放した。
・同島を巡っては中国とベトナムが領有権を主張。
・ベトナムは中国の掘削に抗議し、同国内では大規模な反中デモが起きた。
・現場海域では両国の船舶がにらみ合う緊張した状況が続いていた。
・作業終了で緊張はひとまず収まりそう。
・ただ、領有権を巡る対立構図に何ら変化はなく、今後形を変えて表面化する可能性がある。

◆アップルとIBMが提携(15日) ☆
・両社は法人業務で提携を発表した。
・IBMがアップルの端末用にアプリを開発。法人向けに販売する。
・アップルの製品力とIBMのソフト開発などの力を結びつける狙い。
・IT分野の合従連衡や提携は日常事だが、業界をリードする2社提携のインパクトは大きい。

  ┌────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【深刻な事態】 重大ニュースが重ねて発生した。ウクライナ東部でのマレーシア航空機撃墜事故は、紛争地帯でどの様な不測事態が発生してもおかしくない事実を改めて突きつけた。紛争が地域を超えてさらに拡大するリスクも認識すべきだ。イスラエルのガザ侵攻も地政学リスクから見て重要な動き。このほか、イラクの混乱、アフガニスタンの不安定な状況、シリアの混迷などは続く。NYTのコラムニストは、
"A Week of Agony, From Eastern Ukraine to the Gaza Strip"と表現した。その通りだ。

 【新世界秩序?】 BRICS首脳会議がBRICS開発銀行の設立で合意した。途上国のインフラ整備投資などを担う。本部は中国の上海に置き、総裁はインドから選出する(ちなみに共通語は英語になる?)。BRICSの協力が言葉の領域を超えて、具体的なモノになるのは初めてだ。
 BRICSと言っても一枚岩ではなく、共通利益より内部対立の方が大きいという指摘も多い。しかし、戦後の世界の金融秩序を形作ってきたIMF・世銀体制の対抗勢力を目指す機構設立の意味は大きい。その意味からも、欧米社会やメディアの注目は大きい。

 【金融政策】 FRBのイエレン議長は15日上院で証言し、量的緩和を10月に終了する意向を表明。同時にゼロ金利政策を当面継続する方針を示した。米金融緩和の出口戦略に関心が集まり、市場との対話は重要。一方、欧州中銀の金融政策に関しては「マイナス金利」に続く手法に関心が集まる。こうした中で応手中銀は議事抄録の公表、総裁会見の回数減少など対話方法の変更を発表した。

 【炭素税廃止】 豪州が17日、炭素税撤廃を決めた。温暖化ガス排出量が多い企業に課す税で、労働党政権が2012年に導入した。しかし2013年の選挙で保守党のアボット政権が誕生、環境より競争力を優先させて廃止に踏み切った。いったん導入した炭素税の撤廃は、少なくとも主要国では初めて。地球温暖化を巡っては、World Economis Forum などが引き続き世界の抱えるリスクの中で優先度の高い項目として掲げ、最近は米中間で議論前進の動きも出てきた。そんな中での決定からは、政権の持つ体質と価値観が透けて見える。

◎今週の注目(2014.7.21-27)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・ウクライナにおけるマレーシア航空機撃墜事故の衝撃が世界を駆け巡る。欧米など国際社会はまずは調査・原因究明を求めるが、現場を支配する親ロシア派は非協力的。どこまで調査が進むのか覚束ない。その一方で欧米、ロシアなどは事後処理を巡り水面上・水面下で様々な調整に走り出している。どう進むか。

・イスラエルによるガザ侵攻の行方も世界の注目の的。

・イラク情勢は引き続き深刻。周辺国の関与という面では、ウクライナにおけるマレーシア航空機撃墜事項で変化が生じる可能性がある。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2014 INCD-club

2014年7月15日 (火)

◇世界の関心と国際世論 2014年28号(7.7-13)

・英Economist誌の7月12日号はスコットランドの独立問題を取り上げた。9月18日の独立を問う住民投票を控えてのこと。この問題は中東やウクライナのように紛争になる恐れがあるわけでないし、キャンペーンも定められたルールの中で行われて、静かだ。しかし、国家の在り方を問う大きな問題。仮に分離独立となれば「歴史的な事件」だ。「グローバル化と地域」「文化の独自性」など重要な問いを投げかける。

・パレスチナとイスラエルの紛争を、欧米のメディアは大きく取り上げる。英FT(7日)はあたらなインティファーダ(抵抗運動)になることを懸念。各紙とも1面には紛争の写真を使い、目立たせている。現状はGaza Crisisと表現される。

・米中関係は世界の大きな関心だ。米中戦略対話については様々な角度からの報道があったが、評価としては12日のNYTimes社説のように"Still at Odds With China"(食い違い)という見方が多い。

・それとは別に米中の紛争、問題などは多角的に取り上げられる。中国政府がアップルのiPhoneが個人情報を詐取していると批判した問題は、WSJアジア版が"China Labels IPhone a Securty Risk"と1面で報じるなど、各紙とも大きく取り上げた。関心は極めて高い。

・南シナ海の紛争や、それを踏まえた米国のアジア戦力についても、リーク記事、分析を含め扱いが大きい。関心の大きさを物語る。

20140713

2014年28号(7.7-13 通算731号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2014年7月7-14日(アジア、欧米13日)

◆インドネシア大統領選(9日)☆
・大統領選が実施。ジャカルタ州知事のジョコ氏と元軍高官のスビアント氏が競った。
・選挙は接戦で、一時は終了後両者が勝利を宣言した。正式発表は21-22日。
・調査ではジョコ氏が優勢で、同氏当選の可能性が高い。
・両候補の政策的主張は似ており、経済格差是正やインフラ整備などを掲げる。
・ユドヨノ大統領の10年は比較的政治が安定し、経済成長に結びついた。
・新政権下でも政治の安定が発展の鍵を握る。

◆米中戦略対話、領土やサイバーで対立(9-10日)☆
・米中戦略対話が北京で開催。政経両面で重要閣僚級の協議を行った。
・経済面では、年内の投資協定枠組み合意や地球温暖化での協力で合意。
・一方安保面では、南・東シナ海の領土問題やサイバー攻撃で対立が続いた。
・習近平国家主席は開幕式で、米中の対立は世界に災難と協調を訴えた。
・しかし領土など譲れない分野では譲歩しない姿勢も示した。
・対話は2009年に始まり今回で6回目。
・米国務・財務著感や中国副首相などが参加。今回はイエレンFRB議長も出席した。

◆イラク分裂傾向強まる、クルド人勢力が北部油田制圧(11日)☆
・クルド自治政府の治安部隊は、北部キルクークなどの油田を管理下に置いた。
・クルド系の閣僚は中央政府の閣議をボイコットする方針を表明した。
・北部を支配するスンニ派過激派「イスラム国」と政権の攻防は一進一退。
・イラクの中央統制は弱まり、国の分裂傾向が進んでいる。

◆W杯ドイツが優勝、ブラジル準決勝大敗が波紋(13日)☆
・サッカーW杯はドイツがアルゼンチンを破って優勝した。24年ぶり4回目。
・欧州の国が米大陸で開催したW杯で優勝したのは初めて。
・開催国ブラジルは準決勝でドイツに1-7で歴史的大敗を喫した。
・一部国民が略奪行為に走るなど混乱も発生。政権への批判も高まっている。
・サッカー大国のプライド、国民の誇りが打ちのめされたとの指摘もある。
・リオでの決勝戦はメルケル独首相やプーチン・ロシア大統領も観戦。
・サッカーの影響力の大きさを見せ付けた。

◆アフガン大統領選、開票めぐり混乱(7日)☆
・選管は大統領選(6月14日決選投票)の暫定結果を発表した。
・ガニ元財務相が56%でアブドラ元外相の43%を上回っている。
・アブドラ氏は大規模な不正があったとし、結果は受け入れられないとしている。
・ガニ氏は最大人口のパシュトン人。アブドラ氏は少数派タジク人の支持を受ける。
・今後の推移次第では、民族対立が一段と深まりかねない。

  ┌────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【W杯終了】 1ヶ月に及ぶサッカーW杯が終了した。米大陸で欧州勢として初めて優勝したドイツの強さが際立ったが、動揺に印象的だったのはブラジルの予想外の大敗(準決勝でドイツに1-7、3位決定戦ではオランダに0-3)。サッカー王国の凋落が白日の下にさらされた。
 たかがサッカーという見方もあるが、サッカーは社会や文化への影響も大きく、政治へのインパクトも無視できない。ブラジルの大敗に多くの子供が泣き叫び、メディアは「屈辱」「大虐殺」と表現。国民の誇りがズタズタにされたという悲痛な声も上がる。
 英FT紙などは大会前、優勝ができなければ政治的なダメージも大きく、10月の大統領選でルセフ氏の再選が危ぶむ可能性があると指摘した。結果は、それよりひどかった。
 NYタイムズのように、フィールドでは屈辱を受けたが、大会の開催国としてはよくやったと評価すべきだと強調する向きもある。興奮冷めたところで影響がどう出るか、まだ読みきれない。

 【紛争】 イラク、シリア、アフガニスタン、パレスチナの紛争は引き続き深刻。連日のように、戦火のニュースが伝えられる。

◎今週の注目(2014.7.14-19)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・BRICS首脳会議が15-16日、ブラジルで開催される。BRICS開発銀の設立などが話し合われる。

・習近平中国国家主席はブラジル訪問の後、キューバなどを訪れる。

・イラク情勢は引き続き深刻であることに変わりはない。加えて周辺国や国際社会の動きが重要になっている。米国やイランに加え、シリアやロシアも加わり、世界への影響も拡大している。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2014 INCD-club

2014年7月 7日 (月)

◇世界の関心と国際世論 2014年25号(6.30-7.6)

・日本が1日、集団的安全保障の行使を容認できるよう憲法解釈変更を閣議決定した。このニュースは国際的にも、それなりに注目されている。米政府は歓迎を表明し、中韓などは警戒をあらわにしたが、この論調はそれぞれの国の主要メディアもほぼ同じ。

・日本国内の報道は「集団的自衛権」という言葉が先に来るが、海外メディアの表現はもっと平易だ。米WSJアジア版(4面)は"Tokyo eases limits on military"(東京は軍事的な制限を軽減)、英FTアジア版(1面)は"Japan to end ban on defence aid for allies"(同盟国への支援禁止を終了)だ。NYタイムズは"Japan Announces a Military Shift to Thwart China"(中国対抗のため軍事政策変更)  と、いずれも分かりやすい(単純化しすぎているという面は否定できないが)。これが国際世論の認識と受け止めるべきだろう。ちなみに、集団的自衛権の"collective self-difence"はカッコつきで表現する記事も多い。

・世界世論形成に影響がある米英メディアのうち、英FTは決定の過程の問題を指摘する。3面には、"Abe sparks constitutional debete on defence"、"Many oppose the way the PM seeks to reform without parliamentary agreement" という解説記事を掲載。数多い問題の中で、手続き面に焦点を当てている(記事の中では多くの問題に触れているが、見出しメッセージは上記の通り)。NYタイムズの社説は、安倍首相のナショナリスト的な政策が地域の緊張を高めかねない懸念に触れている。これに対し、WSJアジアは社説は、ほぼ全面的に決定を支持。過程の問題には触れていない。

・ちなみに日本の新聞の1面トップ見出しは、朝日が「9条崩す解釈改憲」、読売が「集団的自衛権、限定容認」、毎日「集団的自衛権閣議決定」、産経「積極平和へ大転換」、日経「集団的自衛権の行使容認」。朝日、毎日が反対の立場から、特に決定の過程に批判的であるのに対し、読売は社説で解釈改憲に当たらない旨の論を展開している。

・香港返還17周年のデモの様子は、欧米メディアが大きく報じた。1面に大きな写真を使い、読者にメッセージを伝える例が目立った。日本との温度差はかなりある。

・The Economist7月3日号のカバーストーリーは"The tragidy of the Arabs"と題してアラブの状況を特集している。イラクにシリア、エジプトなどアラブ諸国の状況は厳しい。歴史的な視点も踏まえ、アラブの問題を見つめなおすことは、世界的なテーマだ。

2014.7.6

2014年27号(6.30-7.6 通算730号)  国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2014年6月30日-7月6日
 

◆トルコ首相が大統領選出馬表明(1日)☆
・トルコのエルドアン首相が8月の大統領選に出馬を表明した。
・世論調査では同氏がリード。当選すれば首相・大統領で16年以上の長期政権になる。
・同氏はイスラム色の強いAKP(公正発展党)が支持母体。
・2003年に首相に就任。強力な指導力で経済成長を実現し、国民の支持を得てきた。
・一方2013年の大規模な反体制デモを武力で制圧するなど、強権姿勢も目立つ。
・同国は07年の改憲で大統領選を国会の選挙→直接選挙に改めた。
・エルドアン氏は2015年の総選挙後、再度の憲法改正を目指している。
・トルコは欧米と中東の中間に位置し、両者の架け橋としての意味も大きい。

◆アフガン大統領選集計巡り混乱、暫定集計発表を延期(2日)☆
・選挙管理委員会は当初2日に予定していた大統領選の暫定結果の発表を延延期した。
・不正告発やテロが相次ぎ、混乱が続いているため。
・選挙は6月14日、アブドラ元外相とガニ元財務相の間で決選投票が行われた。
・アブドラ氏の支持母体は少数派のタジク人、ガニ氏は多数派のパシュトゥン人だ。
・投票日だけでもテロ行為は500件に上ったと指摘される。
・大統領選が新たな民族対立を生むとの懸念も消えない。

◆イラク連邦議会招集、新政権調整難航、分裂危機拡大(1日)☆
・イラク連邦議会が4月末の議会選後、初めて招集された。
・新政権樹立に向けた調整を進めるが、意見対立は続き難航は必至。
・シーア派母体のマリキ首相への辞任要求は内外から高まっているが、首相は応じない。
・北部スンニ派過激派の「イラク・シリアのイスラム国」は「イスラム国」として独立を宣言。
・クルド勢力も独自の動きを強めている。背景には独立の模索もある。
・イラクは分裂危機を抱えたまま、混迷が続く。

◆中国主席が訪韓、北朝鮮より先に(3日)☆
・習近平国家主席が訪韓。朴槿恵大統領と首脳会談を行った。
・中国国家主席が北朝鮮より先に韓国を訪問するのは初めて。中韓国交正常化は1992年。
・会談では北朝鮮の核開発を認めない姿勢で一致。
・対日本では従軍慰安婦の共同研究を進めるなど協調姿勢を演出した。
・北朝鮮は2日、日本海に向けてミサイル2発を発射した。中韓へのけん制とみられる。

◆香港で民主化デモ、返還後最大級(1日)
・香港が英国から中国に返還されて17周年を迎えた。
・民主派団体が主催したデモには約51万人(主催者発表)が参加。返還後最大規模となった。
・中国政府が香港への介入姿勢を強めている事が背景とみられる。
・香港警察はデモ参加者500人余りを逮捕した。
・香港では2017年の次期行政長官選挙を巡り、中国の意を汲む体制派と民主派が対立する。

  ┌────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【動きの多い週】 重要なニュースが多かった。中東・周辺では、ベスト5にあるように、イラクとアフガニスタンの混乱、トルコ首相の大統領選出馬のほか、エジプトではシシ大統領の就任1ヶ月、イスラエルとパレスチナの紛争など。
 東アジアでは返還17年の香港で民主化デモがあり、新疆ウイグルではウルムチ騒乱5年を迎えた。中国本土では汚職追放(権力闘争?)の動きが軍に波及し、習近平中国国家主席が北朝鮮より先に韓国を訪問した。北朝鮮のミサイル発射や日本の拉致被害再調査(見返りに経済制裁一部解除)は当然ながら水面下でつながる。
 米国ではオバマ大統領が移民制度改革の年内実施を断念。アルゼンチンの債務問題はデフォルトの瀬戸際だ。ウクライナでは政府軍が親ロ派拠点の1つだったスリャビャンスクを奪回。欧州ではパリバへの多額(89億ドル)の罰金が話題になっている。 
 カネあまりの中、市場では株高がじっくり上昇。金融緩和のひずみへの警戒も強まっている。

 【中国の汚職追放、軍に】 中国共産党は人民解放軍の制服組ナンバー2だった徐才厚・元党中央軍事委員会副主席の党籍を剥奪した。新華社が30日伝えた。収賄容疑とされる。人民解放軍の首脳級が汚職で処分されるのは、1978年の改革開放以降で初めてだ。
 習近平政権は汚職追放を強化し「石油閥」の利権にメスを入れてきたが、これに加え、「軍」の利権までターゲットが広がってきた。
 石油閥ではすでに何人もの幹部級が党籍剥奪、逮捕などの処分を受け、目下は周永康元政治局中央委員常務委員に処分が及ぶかが焦点。
 中国の利権構造は複雑で、汚職追放も権力闘争と絡む。真相を見極めるのは困難だが、習近平政権がこれまでにないタブーに挑んでいるのは間違いない。汚職体質が中国社会の安定を揺るがし、その改善なしに社会の安定や経済の安定成長が望めないことも、これまた言うまでもない事実だ。

 【香港のデモとウルムチ騒乱5年】 香港が中国に返還されて7月1日で17年。今年は民主派のデモに、返還後最大の人数が参加。世界のメディアからも大きな関心を集めた。2017年の行政長官選挙などをにらみ、中国の意向を背景にした締め付けが強まり、民主派は危機感を深めている。「1国2制度」はもともと論理矛盾を含む言葉ではあるが、その行方は不透明だ。
 一方、2009年7月5日のウルムチ騒乱(ウイグル族と公安当局の大規模な衝突)から5年を経過した。ウイグルの民族問題はその後も形を変えて表面化。昨年の天安門への車両突入事件は記憶に新しい。習近平政権は「テロとの戦い」と断言し、締め付けを強化している。
 こうした民族問題や地域問題を、「弾圧する中国当局」vs「抵抗する民主派や民族主義者」という視点中心にとらえるほど事態は単純でない。経済格差、民主化、中国支配体制の正統性、民族問題、宗教、世界的なテロとの戦い、グローバル化への対応など様々な要素が関係する。

 【米移民制度改革】 オバマ米大統領は30日、移民制度改革の年内実現を事実上断念する考えを示した。第2期の内政の際優勢課題の一つに位置付けていた政策。下院を野党・共和党が支配する中で法案成立のメドが立たないと判断、大統領令を使い部分的な改革を優先させる。
 米国内には1100万人以上の不法移民がいると推定される。議会上院は昨年、国境管理を強化する一方、すでに国内に滞在している移民には市民権獲得の道を開く改革案を採択した。しかし下院は共和党が拒否している。中間逝去の結果次第だが、オバマ政権中の改革は困難との見方も強い。
 米国の影響力低下もあり、米国内問題は国際的に注目を集めるニュースになりにくくなった。世界の構造変化を映していると言えばそれまでだが、米国がなお世界で最も影響力のある国であることに変わりはない。医療制度改革や移民制度改革、教育改革などは本当は極めて重要だ。

 
◎今週の注目(2014.7.7-13)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・インドネシア大統領選が7月9日に投票される。ウィドド・ジャカルタ州知事と元軍人のスビアント氏の一騎打ち。支持率では野党・闘争民主党の支持を得ているウィドド氏がリードしてきたが、スビアント氏が猛追している模様。

・イラク情勢は引き続き深刻であることに変わりはない。加えて周辺国や国際社会の動きが重要になっている。米国やイランに加え、シリアやロシアも加わり、世界への影響も拡大している。

・アフガニスタン大統領選(6月4日投票)は7月2日予定の暫定結果発表が先送りされた。混乱の中、予想外のことが起きてもおかしくない。
・サッカーW杯がは7月13日決勝。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2014 INCD-club

« 2014年6月 | トップページ | 2014年8月 »

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

ウェブページ