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2014年7月21日 (月)

◆ウクライナでのマレーシア機撃墜事件のインパクト 2014.7.20

 ウクライナ東部でマレーシア機が撃墜され、乗客乗員289人が死亡した。事件は混迷するウクライナ情勢の局面を変える可能性がある。同時にに、紛争の地域外への飛び火など新たなリスクを突きつける。

▽世界に衝撃

 アムステルダム発クアラルンプール行の航空機が墜落したのは現地時間17日夕方。数時間後には機体の破片や乗客の持ち物が散乱する映像が世界に流れ、大きなショックを与えた。

 墜落直後から、バイデン米副大統領などは「事故でなく撃墜」と表明。その後、親ロシア派が地対空ミサイルで誤射したという状況証拠が次々に公表された。地対空ミサイルはソ連製のSA11の可能性が高い。

 事故後の現場は混乱が目立つ。遺体の引き渡しや遺品の扱いが秩序立って行われているとは言い難い。一部遺品の略奪も指摘され、それが遺族の怒りを呼んでいる。

 国際社会はまず真相究明が最優先課題とし、OCSEは現地に調査団を送った。しかし、親ロシア派による妨害妨害も目立つ。ブラックボックスを巡っては、当初親ロ派とウクライナ政府双方にが回収したと表明し、その後否定されるなど混乱が目立つ。情報隠しの試みや情報戦もあるとみられる。

▽ロシアへの圧力

 ロシアのプーチン大統領の表情は、事故後2日間の反応を見る限りでは普段より精彩を欠く。墜落事故があったのは、欧米による対ロ追加制裁の発表があった数時間後。大統領はウクライナにおけるロシアの利権維持とともに、国際的な孤立を回避すべく、あらゆる手を講じてきた。事件の主責任が親ロ派にあるとなれば、そうした戦略は抜本的な見直しを迫らっる。

 今後の展望は難しい。事件が親ロ派の責任大となれば、国際世論はウクライナ政府側に傾く。しかし、ウクライナ情勢が政府側有利で決着する道筋が見えるかと言えば、そう簡単ではない。

▽制御不能?

 今回の事件は、プーチン・ロシア大統領がすでに一部では親ロ派をコントロールし切れなくなっている可能性を示唆する。親ロ派をこれ以上追い込めば、さらに過激化し、強硬な行動に出ないとも限らない。そうなれば、ウクライナ東部の一層の混迷→テロの拡散という事態になりかねない。

 欧米はこれまで、ロシアに対し親ロ派支援を止めるよう求めてきた。この主張の裏には、ロシアによる親ロ派制御の期待があった。しかし、それがどこまで効くかは分かりににくくなっている。また、ウクライナ東部でロシアに譲歩を求めることができるとしても、ロシアがクリミア編入を撤回することなど想像しにくい。落としどころは見えて来ない。

▽偶発アクシデント拡大の危機
 
 今回の事件は、偶発アクシデントの懸念を改めて想起させた。歴史は偶然の衝突や戦闘が制御不能になり、大規模紛争や戦争に発展した例をいくつも示している。今回の事件も、そうなる懸念を否定できない。

 欧米もロシアもウクライナ東部を失敗国家ならぬ失敗地域にすることは回避し、ウクライナ東部紛争を周辺に拡大させないという点では一致している。しかし、今年2月以来のウクライナ危機の背景には欧米vsロシアの勢力争いの面があるし、相互の不信感は相当募っている。そして国内世論は、事態を単純化し指導者に譲歩しない強い姿勢を求める(米国では中間選挙にらみ、対ロ強硬論が力を増している)。危機封じ込めには、相当複雑な連立方程式を解く能力が必要だ。

2014.7.20

 

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