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2014年7月21日 (月)

◆2014年前半の世界:「危うさ」が表面化 2014.7.20

 2014年前半が終了した。今年は年初から地政学リスクへの警戒が強かったが、実際ウクライナ危機やイラクの分裂危機、南シナ海での緊張などが表面化した。背後には格差拡大、民族主義や宗教勢力の伸長、米国の影響力の後退、中国の台頭による世界の構造変化などがある。

 折しも2014年前半は第1次大戦勃発から100年に当たり、1914年と2014年の類似性も指摘された。「世界の危うさ」の所在は、常に意識しておく必要があるだろう。

▽予想されたリスク

 2014年1月のダボス会議では、格差の拡大や地政学リスクに焦点が集まった。会議を主催するWorld Economic Forumの報告は、2014年の世界が抱えるリスクとして、「発生の可能性が大きいもの」として格差拡大、異常気象、失業、気候変動、サイバー攻撃を、「発生した場合にインパクトの大きいもの」として、財政危機、気候変動、水資源、失業、重要インフラのダウンを挙げた。

 一方、ユーラシアグループは2014年のリスクとして米国と同盟国の関係の揺らぎ(米国のリーダーシップ)、マーケットの動揺、中国、イラン、産油国、ITデータを巡る問題、アルカイダ2.0(新たなテロ)、中東、ロシア、トルコを挙げた。

▽冷戦後の体制変更を迫ったウクライナ危機

 中東混乱がある程度予想されたものだったのに対し、ウクライナ危機の拡大をここまで予想した人は少なかった。2月にヤヌコビッチ政権が崩壊して親欧米の政権が誕生すると、ロシアは自国利権(およびロシア系住民の利益)確保のために事実上介入。クリミアの独立→編入へと動いた。

 こうしたロシアの姿勢に欧米は反発、ロシアで開催のG8をボイコットし、冷戦後の世界秩序を支えてきたG8体制派事実上崩壊した(将来G8が再び開催されるとしても、これまでとは意味合いが異なるものになる)。

 ウクライナ東部では親ロ派過激派が分離独立闘争を続け、政府軍との戦闘が続いた。こうした中で7月17日に、親ロ派過激派の誤射によるとみられるマレーシア機撃墜事件が発生。国際社会に大きな衝撃を与えた。

 ウクライナ情勢は、紛争の泥沼化や周辺への拡散リスクをかかえながら先行きの見えない状況にある。そして、欧米とロシアの関係、グローバルガバナンスの行方も視界不良状況にある。

▽中東各地に混乱

 イラクでは4月の国民議会選後もイスラム教シーア派とスンニ派、クルド人の対立が続いた。こうした中、スンニ派の過激派「ISIS」が北部で勢力を拡大。6月には第2の都市モスルを戦力し、一時は首都バクダッドに迫った。ISISは6月末に「イスラム国」としての独立を宣言した。過激派はシリアの反体制派とほぼ一体で、急速に力を伸ばした背景には国境を越えた連携がある。リビアのカダフィ政権崩壊→過激派と武器が周辺各地に拡散した構図と似ている。

 シーア派とスンニ派衝突の間隙に、クルド人勢力は北部の油田地帯を掌握。イラクは事実上、3勢力に分断された状況になった。混乱が続くことは容易に予想されたが、「イスラム国」の宣言など具体的なステップは予想を超えている。

 シリアでは内戦が続くが、事態はアサド政権側有利に傾きつつある。パレスチナ問題では和平交渉の行き詰まり→戦闘という過去何度もあったパターンが繰り返され、7月には5年ぶりにイスラエルがガザ゙に侵攻した。

 エジプトでは2013年おクーデターでモルシ前大統領追放・全権掌握したシシ元国防相が大統領に就任(大統領選実施の結果)。治安は表面上安定しているが、経済再建などは先行き見えない。

 アフガニスタンでは大統領選を実施したが、少数民族タジク人の支援を得るアブドラ元外相と、多数派パシュトン人のガニ元財務相の対立が解けない。

 中東は2011年のアラブの春→混乱と失望の時代に逆戻りした。現在みられる紛争や混乱も、こうした脈略の中で捕えるべきだ。

▽中国の拡張と南シナ海

 中国では習近平体制が2年目(2013年の国家主席就任から)に入り、習氏個人への権力集中が進んでいる兆候が見える。経済は引き続き7%以上の成長を維持、世界における存在感は継続的に高まっている。

 こうした中で、中国の膨張が目立ち、南シナ海西沙諸島近海では資源開発強行→ベトナムとの対立深刻化をもたらした。中国の船舶がベトナム船に体当たりする映像が流され、ベトナムでは大規模な反中デモが起きた。一方、新疆ウイグルでは反政権のテロ屋抗議活動が断続的に発生するなど、民族問題はくすぶる。

 経済高成長下でも格差拡大や汚職、環境悪化が深刻な構図は変わらない。習政権は汚職撲滅に力を入れ、目下は石油閥のドンだった周永康元中央委常務委員の逮捕があるかどうかが焦点だ。

▽米国の影響力低下

 世界不安定の背景には、米国の影響力低下がある。オバマ大統領は2013年、シリア問題でもたつきを見せ米国の威信低下を露呈。「米国はもはや世界の警察官ではない」と述べた。スノーデン事件で暴露された同盟国に対する情報活動や、米国民や同盟国の国民を含めた個人情報の不正取得などは、民主主義の価値観尊重が支えるはずの米国への信頼を傷つけた。

 中国など途上国の発展で米国の地からが相対的に低下するのは世界の構造変化に伴うものだが、オバマ政権の姿勢がそれを必要以上に露呈し、影響力低下に拍車をかけている面もある。

 オバマ大統領は5月末の外交演説で、米国が引き続き指導的役割を果たしていく姿勢を強調した。しかし、現実には中東混乱、東アジアにおける中国の勢力拡大への対応などでアップアップしているのが現状のように映る。

▽第1次大戦100年

 2014年6月は第1次大戦開戦から100年。当時と現在の国際情勢の類似性を含め、様々な分析が議論された。

 主な議論の1つが、勢力均衡の移行期の危うさ。当時の欧州は英国優位に新興のドイツ帝国が挑戦する時代で、力のバランスが崩れる時代だった。

 偶発アクシデントの怖さも指摘される。サラエボ事件発生当初、事件は局地戦、短期戦で終わると予想されていたが、世界を巻き込む大戦に発展。世界は総力戦、大量殺戮の時代に入り、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、ロシア、オスマン・トルコの4大帝国が崩壊した。 

 こうした点が、現在と似ているという指摘はうなずける。

▽IT革命と経済

 もちろん、違いも大きい。最大級の違いは、情報通信の発展により情報がほぼ瞬時に世界に共有され、世界の国民が世論形成に参加するようになったこと。指導者の勝手な判断や勘違いで戦争が起きる可能性に限れば、小さくなった。

 一方、テロなど非対称戦争のリスクが高まり、サイバー攻撃が戦争の帰趨を決めるような時代になった。

 経済はリーマン・ショックから5年を経過し、財政バブルなど新たなリスクを抱えながらもとりあえずの成長を保っている。昨年表面化した新興国リスクも、対症療法で押さえ込む状況が続く(Fragile5、アルゼンチンのデフォルト危機など)。

 大きな変化として忘れてならないのが、現在の世界がIT革命の最中にあり、経済・社会が産業革命にも匹敵するインパクトで変わっていること。経済が何とかやっている背景にも、この大きなトレンドがあるように見える。

2014.7.20

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