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2014年3月 9日 (日)

◆ウクライナ危機のインパクト 2014.3.9

 ウクライナ情勢が世界を揺り動かしている。ヤヌコビッチ政権が予想を超えるスピードで崩壊した後、クリミア半島のロシア系住民の新政権への反発、ロシアの事実上の軍事介入と、事態は刻々と進展した。ロシアと欧米の対立は深刻化し「新冷戦」も懸念される。影響はウクライナにとどまらず欧州、世界情勢に及ぶ。ソ連崩壊や9.11に続く重大事件との位置付けてもオーバーではない。

▼事態の推移

 2月下旬の親ロ派・ヤヌコビッチ政権の崩壊以来、事態は予想を超える速度と広がりで動いている。まず押さえるべき経緯は、以下の通りだ。

・2012年11月 ヤヌコビッチ政権がEUとの連合協定締結を先送り。反体制派のデモ拡大。
・2013年2月18日 治安当局が野党デモ隊を強制排除。70人以上死亡。91年の建国以来最大の惨事。
・2月21日 大統領が野党と大統領選前倒しなど妥協案。反体制運動止まらず。大統領は首都脱出。
・2月22日 反体制派が大統領府など占領。首都掌握。
・2月23日 ヤヌコビッチ政権崩壊。議会が大統領代行指名。
       議会がロシア語公用語の法律廃止。親ロ路線決別。
       クリミア半島などで住民の新政権への反発拡大。 
・2月27日 親欧米派の新内閣が発足
・2月28日 オバマ米大統領がロシアの軍事介入に警告
・3月1日  クリミア自治共和国のアクショーノフ首相がロシアに介入要請。
       プーチン・ロシア大統領が軍介入辞さずとの姿勢表明。
・3月3日  ロシアと親ロ勢力がクリミア半島事実上制圧。
・3月4日  プーチン大統領がウクライナ新政権と違憲と批判
・3月6日  クリミア自治共和国議会がロシアへの組替え問う住民投票実施決定。3月16日実施。
       米がロシア制裁を発動。

▼予想外の速度の政変

 今回の事変は昨年11月に始まり、今年2月に入り急転した。

 ウクライナは過去の親欧米派の政権が、将来のEU加盟を目指してEUとの連合協定の締結準備を進めてきた。ところが2012年11月、ヤヌコビッチ政権が連合協定締結の先送りを決めた。ロシアへの配慮を優先させたためだ。これに親欧米派の野党が反発。連日の抗議活動を展開した。

 約3カ月後の2013年2月18日に治安部隊が野党デモ隊を強制排除。70人以上が死亡し、1991年の同国建国以来の惨事となった。この後反政権の抗議活動は先鋭化、あれよあれよというまに首都キエフを制圧し、惨劇から5日後にはヤヌコビッチ政権の崩壊へと発展した。

 同国では親国家樹立後の親ロ政権→2004年オレンジ革命の親欧米政権(ユーシェンコ大統領)→2010年に親ロ政権(ヤヌコビッチ大統領)と揺れ動いてきた。背後にあるのは、「親欧米派の西部」対「親ロシア派の東部」という地域対立がある。今回は親ロ派→親欧米派の権力の交代が、反政府活動や建国以来の惨事の中で起きたところに特徴がある。

 強硬に見えたヤヌコビッチ政権が、惨劇からわずか5日という短期間に崩壊した原因など、まだ分からない点は多い。いずれにしろ事態の変化は、ウクライナ国内の当事者はもとより欧米やロシアの想像を超える速度で進んだ。

▼ロシア介入

 野党中心の議会は23日に大統領代行を指名。親欧米の内閣を27日発足させ、次々と親欧米・脱ロシアの政策を進めた。これに親ロ派の東部は反発した。特にロシア系住民が多いクリミア半島では、自治政府が新政権に公然と反旗を翻した。

 こうした中でロシアが事実上の軍事介入を実施。クリミア半島をロシア系住民と協力して事実上制圧した。この経緯や詳細も、現時点では分かっていない点が多い。

▼何年も続く

 このようにして問題はウクライナの内政にとどまらず、欧州情勢、国際情勢を揺るがすものへと発展した。

 ヘイグ英外相は、「欧州において21世紀最大の危機」と述べた。英Financial Timesは、今後何年も続くかもしれない危機と指摘する。事態は半月前からは想像できないほどに膨らんだ。

▼ロシアの危機感: 勢力圏の縮小

 欧米からみるとロシアの攻撃的な姿が目立つが、逆にロシア側から見るとその危機感は強い。

 冷戦終了後の欧州は、基本的に「西の拡大・東の縮小」が進んだ。EUは1991年の12カ国から2013年のクロアチア加盟で28カ国に拡大した。NATOも1991年の16か国から、2009年にはクロアチアとアルバニアの加盟で28か国に拡大した。ロシアは勢力圏を縮小し続けた。

 ウクライナ危機はそうしたトレンドの中で起きた。ウクライナはロシアと同じ東スラブ民族の国で、旧ソ連国家。ロシアは元々勢力圏と考えてきた地域だ。ロシアが同国に天然ガス提供などで優遇してきたのも、結びつきを重視してきたためだ。

 しかしウクライナはEUとの経済的関係を強め、連合協定締結の直前まで進んだ。そればかりか、欧米の軍事同盟であるNATO加盟も可能性もささやかれる。これはロシアにとって、決して看過できない。

 2008年のグルジア紛争の際、親米派のサーカシベリ政権に対し親ロ派の南オセチアやアブハジアが分離独立を要求し対立した。ロシアは独立派を支持して介入、両地域を事実上の勢力下に置いた。今回も構図は似ているが、グルジアとウクライナではインパクトが違う。グルジアは地域問題で済んだかもしれないが、ウクライナは欧州全体の勢力図にかかわる。

▼妥協のない姿勢

 そうであるから、プーチン大統領は強硬姿勢を崩さないのだろう。

 クリミア半島は安全保障上の重要拠点。クリミア半島は、元々旧ソ連時代の1954年にロシアからウクライナに移管した地域だが、住民の6割はロシア系で、半島内のセバストポリにはロシアの黒海艦隊の基地がある。当初は自治共和国の独立などを示唆していたが、ここに来てロシアへの編入も口にするようになった。それを強行突破で実施してもおかしくない。

 ウクライナについても、様々なカードを切って圧力をかけてくるのは間違いない。親ロ派の多い東部が西部中心の新政権の勢力下に組みこまれるのを、手をこまぬいて見ているとは考えにくい。ウクライナのNATO加盟阻止は、ロシアにとって絶対譲れない線だ。ポケットの中には、軍事圧力や天然ガスの供給停止などの「北風」も、経済協力のような「太陽」もあり、その使い方を考えているとみられる。

▼新冷戦?

 欧米はウクライナの新政権の正統性を認め、ウクライナの領土保全や国境線の不変を支持する立場をとっている。その原則からロシアの介入を国際法違反と断定。ロシアを批判し、対ロ制裁を決定した。

 しかし、制裁だけでは効果は限定的だ。対ロを巡る欧米各国の立場も必ずしも一致してしない。ロシアに天然ガスや石油を依存する欧州は、強硬姿勢には慎重だ。

 問題はもちろん簡単ではないし、妙案があるわけでもない。国際社会やメディアの最大公約数を探れば、制裁など断固たる措置をとりつつも、対話のチャネルを残しておくべきだということだろうか。

 いかなる場合でも押さえておくべきのは、オバマ米大統領の「どこまで本気か」という覚悟が事態を大きく左右する事実。そして、世界がウクライナ危機で「第2の冷戦」の入口に差し掛かっており、今後の対応いかんで現実のものになりかねないことだろう。ウクライナ危機はそうした時代感覚で眺める必要がある。

2014.3.9

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