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2014年3月24日 (月)

◆クリミア併合の問うもの 2014.3.23

 ロシアがクリミアを併合した。クリミア住民投票による独立・ロシア編入支持を受け、プーチン大統領が一気に踏み切った。米欧は対ロ制裁を発動、関係悪化はさらに深刻になりかねない。今後の数によっては混乱はさらに拡大し、冷戦後の国際秩序を根底から揺るがしかねない。

▼ウクライナ危機からクリミア併合へ

 ウクライナ危機発生以来の動きは以下の通り。

・2012年11月 ヤヌコビッチ政権がEUとの連合協定締結を先送り。反体制派のデモ拡大。
・2013年2月18日 治安当局が野党デモ隊を強制排除。70人以上死亡。91年の建国以来最大の惨事。
・2月21日 大統領が野党と大統領選前倒しなど妥協案。反体制運動止まらず。大統領は首都脱出。
・2月22日 反体制派が大統領府など占領。首都掌握。
・2月23日 ヤヌコビッチ政権崩壊。議会が大統領代行指名。
       議会がロシア語公用語の法律廃止。親ロ路線決別。
       クリミア半島などで住民の新政権への反発拡大。 
・2月27日 親欧米派の新内閣が発足
・2月28日 オバマ米大統領がロシアの軍事介入に警告
・3月1日  クリミア自治共和国のアクショーノフ首相がロシアに介入要請。
       プーチン・ロシア大統領が軍介入辞さずとの姿勢表明。
・3月3日  ロシアと親ロ勢力がクリミア半島事実上制圧。
・3月4日  プーチン大統領がウクライナ新政権と違憲と批判
・3月6日  クリミア自治共和国議会がロシアへの組替え問う住民投票実施決定。3月16日実施。
       米がロシア制裁を発動。
・3月16日 クリミアが住民投票実施。独立とロシアへの編入を支持。
・3月17日 クリミアが独立を宣言
・3月18日 ロシアがクリミア併合を決定、条約に調印
・3月19日 英首相がロシアのG8追放に言及
・3月20日 米国が対ロ追加制裁、EUは21日追加制裁
・3月24日 核安保サミット(オランダ・ハーグ)。プーチン大統領は不参加。

 ロシアのプーチン大統領の動きは急速だった。ヤヌコビッチ政権崩壊の数日後には、クリミアを事実上掌握。国際法に整合性を持たせるように段取りを踏みながら、クリミア住民投票→独立・併合へと突き進んだ。米国や欧州からの抗議や圧力に対しても動じることなく、妥協の姿勢を見せなかった。

▼武力による国境線変更

 今回のクリミア併合は、大国ロシアが武力を使い、直接併合した。この点は重要だ。

 冷戦後に地域が独立を宣言したり、国境線が変わった事例は、少なくはない。代表的な事例は次のようなケースが含まれる。

・チェコとスロバキアの分離(1993年)
・旧ユーゴスラビアの分裂(1990年代)
・東ティモールの独立(2002年
・コソボ紛争、コソボの独立(2008年)
・グルジア紛争、南オセチアなどが独立宣言。ロシアなどが承認(2008年)
・南スーダンの独立(2011年)

 ロシアは2008年のグルジア紛争でもロシア系住民の多い南オセチアとを軍事支援、独立を承認した。しかし今回のケースがグルジア紛争と違うのは、ロシアが直接介入し、直接併合した点。大国が支援ではなく著当事者となって、国境線を変更した。

 東アジアでは中国が南シナ海や東シナ海で領土問題を抱える。南シナ海の南沙諸島などでは、武力を背景にした実効支配を行っている。

 「大国による、武力を使った国境線変更」が安易に認められれば、世界秩序は大きく揺らぐ。

▼ウクライナ紛争:さらなる飛び火の懸念

 今回の紛争は、これで終わりではない。ウクライナはロシアによるクリミア併合を当然認めず、関係はかつてなく悪化している。

 ウクライナ西部では反ロシアの声が大きくなっている。一方でロシア系住民の多い東部や南部ではロシアとの関係悪化や新政権の欧州傾斜を懸念する住民が多い。国内で両勢力が対立し混乱が拡大してもおかしくない。

 そうなった時、ロシアがロシア系住民の保護などを名目に介入を拡大する懸念も否定できない。

▼民族・地域紛争と排他的民族主義の強まり

 今回の紛争の背後に、排他的民族主義が見らえるのも気がかりだ。

 ウクライナの混乱は、直接はヤヌコビッチ政権がEUとの連合協定締結先送りを決めたことで表面化した。しかし、背後には親欧米系(西部)と親ロシア派の対立があった。

 そうした勢力からは、相手方の主張を認めない排他的な動きも目立っている。極右勢力も絡む。こうした極右や排他的民族主義の台頭は、全世界的な傾向だ。

 冷戦終了時、世界の安全保障の脅威は東西対立から地域紛争や民族紛争に変わったと指摘された。その後21世紀に入り、テロやサイバー攻撃が新たな脅威に加わった。

 冷戦終了から4半期を経て、地域紛争・民族紛争はテロとも相まって中東、アフリカや中央アジア、南アジアで表面化した。旧ソ連でもカフカスや中央アジアで紛争が断続的に起きてきたが、ウクライナにも飛び火した形だ。

▼民族独立の動き

 クリミア併合(国境線の変更)で、世界各地の民族自立運動や独立運動に火が付く可能性がある。

 旧ソ連のモルドバでは、ロシア系住民の多い沿ドニエストル・モルドバ共和国がロシア併合を求める、ロシア下院に働きかけた。アゼルバイジャン内でアルメニア系住民の多いナゴルノカラバフでは、自治権強化を求める動きに火がついている。ロシア南部のカフカス地方では、イスラム系住民が分離・独立を目指している。

 中国は新疆ウイグルやチベットで自治拡大や独立の動きがある。こうした動きは、世界各地で数えきれない。

▼経済関係にも影響?

 米国や欧州は対ロ制裁を発動した。その効果は短期的には限定的という見方が強い。しかし、長期的にはボディーブローのように効いてくる可能性がある。そのダメージはロシアだけでなく、同国に石油や天然ガスを依存する欧州にも返ってくる。

 たとえ政治的な関係は冷え込んでも、経済は密接に結びついており、相互依存関係はそう簡単に崩れない、というのが冷戦後の国際関係をみる一つの視点だった。これがそのまま通用するか、問い直される。

▼G8崩壊

 キャメロン英首相はロシアのG8からの追放の可能性に言及した。リーマンショック後にG20 が形成され、G8の重要性は以前に比べれば相対的に低下した。しかしそれでも、世界秩序を形成する重要な枠組みの1つだ。

 冷戦時代の世界はG7が大きな影響力を持ち、ソ連が仮想敵国だった。1990年代にG7がG8に改組されたことには、冷戦時代の敵対関係がなくなり、仲間になった意味合いが込められている。G8追放が声高にんじられるところには、ロシアが仮想敵国に逆戻りとも受け止められる。
 
▼パンドラの箱

 ウクライナ危機はクリミア併合は、様々な波及効果が予想される。さながら「パンドラの箱」が開かれたようで、冷戦後の世界秩序を揺るがしかねない。歴史が大きく動き時には、事実が想像より速く動くことも多い。予断を持たず、冷静に見つめる必要がある。

2014.3.23

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