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2013年9月

2013年9月29日 (日)

◆米・イラン首脳協議の意味 2013.9.29

 米国のオバマ大統領とイランのロウハニ大統領が電話で約15分協議した。両国首脳の直接の接触は1979年に断交してから初めて。関係改善に一気に進むかどうかは不透明だが、画期的な接触であることは間違いない。

▼世界が注目

 35年ぶりの直接協議は、全世界注目の中で、多少意外な形で行われた。

 イランのロウハニ大統領は国連総会出席のためにNYを訪問。この機会にオバマ米大統領や欧州各国首脳などとの接触が注目された。結果、米・イラン首脳会談は実現しなかったが、代わりに27日に電話での協議が実現。ホワイトハウス高官によれば、協議は和やかな雰囲気だった。

 オバマ大統領は会見で、核開発疑惑の解決に向けた合意が得られると期待していると強調。イラン側はツイッターで会談内容を紹介した。

▼対話の模索

 これに先立つ9月24日の国連総会の首脳演説で、オバマ大統領は核問題解決に向けて外交努力を加速すると強調。ロウハニ大統領は、米国との緊張を高めたくないと、対話に前向きな姿勢を示した。

 26日にはケリー米国務長官とイランのザリフ外相が断交後初めて個別の会談を開催。閉ざされていた窓口を開き、対話推進を模索する環境作りが進んでいた。

▼緊張と対立の30年余

 1979年のイラン革命後、米国とイランの関係は悪化。緊張が続いた。革命後にはテヘランのイラン大使館が占拠される事件が発生。米国はイランと断交した(この辺の事情は、2013年のアカデミー賞受賞作映画"Argo"にも生々しく描かれている)。

 米国はイラン革命前のパーレビ国王統治の時代まで、水面下でイランの政治に関与した。1953年にはモサデク政権打倒のクーデターにCIAが協力した。同政権は石油資源の国有化政策を推進、国際石油資本の利害と対立していた。こうした経緯もありイラン国民の反米感情は強い。大使館占拠事件の背景にもこうした国民感情がった。

 その後、イランでは改革派のハタミ大統領登場(1997年)で経済改革や国際社会との協調が期待された時期もあったが、米国や欧州との関係改善は進まず、緊張が続いた。

▼イランの核開発疑惑

 2002年になると、イランが核兵器を開発しているとの疑惑が表面化した。中止を求める米欧に対し、イラン側は民生用の開発と主張。イランと米欧は度重なる協議でもさしたる歩み寄りができないまま、10年以上が経過した。

 2005年には強硬派のアハマディネジャド大統領が誕生。米欧との関係はハタミ政権時代よりさらに緊張した。国連はイランに対し経済制裁を実施。この影響でイラン経済は疲弊している。

▼地域大国
  
 米・イラン断交の30年余りの間に、中東情勢は激変した。

 イスラム原理主義が力を得て、過激派や武装勢力が伸長。2001年の9.11に代表されるテロの拠点が広がった。イラクは湾岸戦争(1991年)やイラク戦争(2003年-)を経験し、サダムフセイン政権が崩壊。イラク戦争後はなお混乱が続いている。

 2011年のアラブの春ではエジプト、チュニジア、リビアなどの独裁政権が崩壊したが、その後は民主化の進展ではなく、むしろ混乱が拡大する。シリアでは内戦が泥沼状態だ。パレスチナ紛争は和平が停滞。トルコは2013年のデモで曲がり角に来ている。

スンニ派とシーア派の対立がイラク、シリアなどで表面化。産油国を始めとした各国の経済モデルは、2008年の世界金融危機の盈虚もあり改革を迫られている。

 そうした中で、イランはシーア派の大国として、地域における存在感と影響力を増している。イランはシリア内戦ではアサド政権を支援し、反政府組織を支援するスンニ派のサウジやトルコなどと対立する。レバノンのヒズボラやイラクのシーア派などには多大な影響力を保持する。

▼穏健派大統領

 米国とイランの関係改善模索の動きは、6月のイラン大統領選で穏健派ロウハニ大統領が当選したのが大きい。国際的な経済制裁の影響もあり、イランの経済は疲弊。国民の間には欧米との関係改善や経済改革を求める願望が強まっている。ロウハニ大統領誕生の背景には、そうした事情がある。

 ロウハニ大統領は穏健主義であると共に、現実主義者としても知られる。国益のために妥協できない核開発は維持しながら、米欧との関係改善を図るとの見方が多い。

▼流動的

 もちろん、米国や欧州とイランの関係改善が進むという保証はどこにもない。

 イランの大統領は政府の成功責任者に過ぎず、国の最高権力は最高指導者のハメネイ師が握る。ハメネイ師は現在、ロウハニ大統領の穏健路線を支持しているが、将来的に継続する保証はない。

 国内保守派の力は強い。ロウハニ大統領がNYでオバマ大統領と直接会談をしたかったのも、保守派への配慮からと言われる。

 楽観は禁物だ。しかし、35年ぶりの首脳協議が重要な節目であることは間違いない。そして、中東情勢の行方に、イランの動向は決定的に重要だ。

2013.9.29

2013年39号(9.24-29 通算692号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年9月24-29日

◆米・イラン大統領が初の直接協議、関係改善模索が進展(27日) ☆
・オバマ大統領とロウハニ大統領は、約15分の電話協議を開催した。
・イラン核問題の外交的解決を目指す事などで一致した。
・両国首脳の直接協議は、1979年断交以来初めて。
・オバマ氏は先立つ24日の国連総会演説で、核問題の外交による解決を強調した。
・ロウハニ氏も同日、米国との緊張の高まりを望まないと述べた。
・直接会談は国内保守派への配慮などから見送られた。代わり電話協議となった。
・ケリー米国務長官とザリフ外相は26日、79年以来初の個別外相会談を開いた。
・6月の大統領選で穏健派のロウハニが当選。関係改善の模索が動き始めた。
・今回の直接協議で関係改善が一気に進むかは不透明。しかし重要な節目だ。

◆安保理がシリア化学兵器全廃決議(27日)☆
・国連安保理は、シリアに化学兵器の全廃を義務付ける決議を採択した。
・化学兵器禁止機関(OPCW)が10月に査察を実施。14年前半までに全廃する。
・実現しない場合には、「国連憲章7条に基づく措置を取る」としている。
・ただし、実際に武力行使の場合には安保理の再決議が必要になる見通し。
・シリアでは8月に化学兵器が使用され、多数の死傷者が出た。
・米オバマ政権はアサド政権への武力行使に傾いたが、外交解決の解決に修正。
・今回の決議は一つの節目。ただ実効性にはなお疑問が残る。

◆国連IPCC、6年ぶりの報告、地球温暖化進展に警告(27日)☆
・国連のIPCC(政府間パネル)は気候変動などに関する報告書を6年ぶりに発表した。
・人為的な原因で温暖化が進展。各地で熱波や豪雨などが頻発していると指摘した。
・報告は1990、95、2001、07年に続いて5回目。
・温暖化対策は2012年の京都議定書約束期間修了後進んでいない。

◆ブラジル大統領が米の情報収集批判(24日)☆
・ルセフ大統領は国連総会演説で、米安保局による個人情報収集を批判した。
・収集行為は国際法違反と指摘した。
・同大統領は先に10月に予定していた米国訪問中止を決定。それに続く批判だ。
・米当局が同大統領の情報を収集していたことも明らかになっている。
・米・ブラジル関係は改善・強化が進んでいたが、個人情報問題で停滞した。
・元CIA職員のリークを契機に発覚した問題は、根が深く影響は大きい。

◆独、大連立協議入り
・総選挙(22日)を受け、メルケル首相は最大野党の社民党に大連立を呼び掛けた。
・社民党も27日、協議開始を決定した。
・選挙では首相率いるキリスト教民主・社会同盟が勝利。議席を伸ばした。
・しかし連立相手自民党は得票率5%に達せず議席喪失。新たな枠組みが必要。
・大連立が成立すれば2009年以来5年ぶり。
・新政権発足まで独政治は動きにくく、ユーロ圏の意思決定も滞りがちになる。

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◎寸評:of the Week
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 【国連外交】 国連総会は各国首脳の演説が行われ、国連を中心に首脳外交が繰り広げられた。中でも重要なのは国連安保理によるシリア決議と、米・イラン間に対話の窓口が開こうとしていることだ。

 【シリア問題国連安保理決議の意味】 国連安保理がシリアに化学兵器廃棄を求める決議を採択した。OPCWが10月から査察を実施し、シリアは2014年前半までに化学兵器全廃を義務付けられる。実現しない場合は、安保理が「国連憲章7条(軍事制裁など)に基づく措置を取る」としている。ただし、実現できない場合に即座に武力介入するという表現に派なっていなく、再度の決議が必要になると見られる。
 8月末に米国が軍事介入方針を打ち出してから揺れ動きた国際社会のシリア政策は、今回ん決議でひとまず方針が固まった。
 今回の調整はロシア主導で進み、米国はイニシアティブを取ったとは言い難い。オバマ米大統領は8月末に「シリア政府は(化学兵器使用というレッドラインを越えた」としていったん限定軍事介入を決断した。しかし有志同盟を期待した英国の不参加決定や国内の反対などで、最終決断を先延ばし。結局、結論を議会承認を委ねる形にし、外交的解決を優先させる方向に転換した。安保理決議で外交努力はようやく一息ついた感があるが、米国の指導力が大きく傷ついた事は否定のしようがない。
 もう一つは内戦の行方。戦いは泥沼状態が続き、先行きは全く見えない。そうした情勢下で、化学兵器破棄が進むのかという疑問もある。
 決議は1つの節目ではあるが、解決へのマイルストーンというのは楽観的すぎる。

 【オバマ米大統領の苦悩】 オバマ大統領の苦悩は深い。シリア問題に加え、国内では財政を巡り野党共和党との対立が続く。10月1日からの新会計年度は、予算未成立のまま始まりそうだ。長引けば政府機関の閉鎖などの懸念もある。
 共和党は、大統領が肝いりで成立させた医療保険制度改革の見直しを迫る。大統領は対決色をあらわにする。
 混乱の背景には上下院のねじれがあるが、シリアなど外交でオバマ大統領の指導力が問われ、威信が揺らいでいることも大きい。大統領には白髪が増え、苦悩の表情が目立つ事が増えた。
 ただ、外交で威信が傷ついた割には、国民の支持率はそれほど落ち込んでいないとの情報もある。いずれにしろ、大統領の力量が問われる。

◎今週の注目(2013.9.30-10.5)&当面の注目
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・イタリアのレッタ首相が上下両院に信任投票をかける見通し。ベルルスコーニ元首相(脱税で有罪判決)の上院議員資格剥奪問題を巡り、連立政権内の自由国民が剥奪阻止に圧力を強めている。新任で圧力を封じ込める狙いだが、不信任となればレッタ政権は崩壊する。
・シリア情勢、イランと米欧の対話、エジプト情勢に引き続き注目。
・新興国を中心とする市場の動きも目が離せない。

・ノーベル賞確各賞の発表が10月上旬に行われる。

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2013年9月23日 (月)

2013年38号(9.15-23 通算691号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年9月15-23日
 

◆独総選挙で与党勝利、メルケル首相続投へ(22日) ☆
・下院選挙が行われ、与党キリスト教民主・社会同盟が第1党を維持した。
・ただ連立相手の自民党は交代。与党として過半数割れとなった。
・最大野党社民党(第2党)も票を伸ばし、2大政党の比重が高まった。
・メルケル首相が続投する見通し。首相は連立工作に入る。
・2009年以来のキ民同盟と社民党の大連立の可能性がある。
・ドイツ経済は順調に推移氏、失業は5.3%。与党の投票を支えた。
・ユーロ危機ではユーロ維持を強調する一方、南欧への安易な支援は拒否姿勢だ。

◆シリア問題調整、国連総会など舞台に ☆
・シリア問題を巡る国際調整が継続。
・当面の舞台は17日開幕の国連総会などに移った。
・国連は16日、シリアの化学兵器使用に関する報告書を発表。サリン使用を断定した。
・ただ、アサド政権、反体制派のいずれが使用したかは断定していない。
・シリアは化学兵器禁止機関(ハーグ)に保有化学兵器の情報を提出した。
・国際社会はシリアに化学兵器の破棄を求める。米英仏は強力な安保理決議を目指す。

◆薄熙来元書記に終身刑(22日)☆
・山東省の地裁は、元重慶市トップの薄煕来被告に無期懲役の判決を下した。
・政治権利の終身剥奪、個人財産没収なども命じた。
・同被告は収賄や横領の容疑で起訴されていた。
・習近平指導部は厳刑で事件を処理し、権力基盤強化を目指したと見られる。
   
◆ケニアでテロ、ソマリアのイスラム過激派組織(21日)☆
・ナイロビで武装集団10数人がショッピングモールを襲撃。人質を取って立てこもった。
・ソマリアのイスラム過激派組織アッシャバーブが犯行声明を出した。
・軍が22日突入した。23日までに大半を制圧し、1000人以上の客を救出した。
・69人以上が死亡、多数のけが人が出ている。犠牲者には外国人も多い。
・イスラム過激派のテロ組織は各地に分散。テロ活動も国境を越えて広がる。
・ソマリアは過激派の拠点の1つになっている。

◆スリランカの北部で選挙、タミル人政党大勝(21日)☆
・スリランカ内戦で反政府組織の拠点だった北部州で議会選が行われた。
・タミル人政党野TNAが38議席中30議席を獲得し大勝した。
・同国でてみる人政党中心の州議会が誕生するのは初めて。
・ラジャパクサ大統領の中央政府との対立も予想され、推移が注目される。
・同国では1983-2009年に内戦。5万人以上が死亡した。

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◎寸評:of the Week
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 【メルケル首相3選へ】 独総選挙はメルケル首相与党のキリスト教民主・社会同盟が第1党の座を維持。同首相が続投する見通しになった。2005年以来の長期政権になる。
 ユーロ危機でユーロ圏経済が揺らぐ中でも、ドイツ経済は堅調。安定した成長を維持し、失業率は5%台と東西ドイツ統一から最低にまで改善した。失業率20%以上に悩む南欧のギリシャやスペインなどとは全く風景が異なる。
 ユーロ危機の際には南欧諸国への支援を巡り、ドイツへの批判が高まった。ドイツの南欧支援の姿勢が消極的で、これが危機を長引かせているとの批判だ。ただ、ドイツは元々財政規律に厳しく、国内世論は安易な南欧支援に反対が圧倒的。その点では野党の社民党も変わらない。オランダや北欧などユーロ圏北部の国も似た立場だ。
 支援に慎重なメルケル首相の姿勢をとらえ、ユーロ危機はメルケル問題という批判もあった。選挙結果はドイツ国民が、メルケル首相の姿勢支持を映した。

 【米量的緩和の縮小見送り】 米FRBの公開市場委員会が17-18日開かれ、量的緩和縮小の開始を見送った。雇用の改善が十分でないと判断した。市場では縮小開始を見込む事前予想も多く、決定を受けて株価上昇などの反応を見せた。
 先進国の金融緩和の行方は、新興国経済にも大きな影響を与える。FRBや欧州中銀の動向に、市場が敏感に反応する状況が続いている。

 【時期FRB議長】 サマーズ元財務長官は15日、バーナンキFRB議長の後任候補から辞退する意向をオバマ米大統領に伝えた。大統領は同日声明で辞退を発表した。後任人事はイエレン副議長を中心に絞り込みが進む見込み。

◎今週の注目(2013.9.22-28)&当面の注目
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・ドイツで連立工作が本格化する。2009年以来のキリスト教民主・社会同盟と社民党の大連立政権が成立するかどうかが注目。
・国連総会は24日から首脳演説が始まる。焦点はシリア問題。
・総会を機に2国間協議も含む様々な国連外交が展開される。シリア問題と並んで焦点になるのが、イランと米欧関係。ロウハニ新大統領がNYを訪問。米欧とも接触する見通しだ。

・エジプト情勢、新興国を中心とする市場の動きにも引き続き注目。

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2013年9月15日 (日)

◆9.11から12年と9.15から5年の世界 2013.9.15

 世界の安全保障を揺るがした9.11から12年。世界経済のあり方を根本から揺るがした9.15のリーマンショックから5年。世界と米国について、考えることが多い週となった。

▼米国の威信低下

 シリア情勢は米国による武力行使がいったん遠のき、当面の焦点は外交努力による調整に移っている。外交工作は、シリアの化学兵器を国際監視下に置くロシア提案中心で進む。1週間前まで武力行使を前面に出してきた米国の威信低下は隠しようがない。

 11日は2001年の同時多発テロから12年。その後2003年のイラク戦争で、開戦理由とされた大量破壊兵器が発見されなかったこともあり、米国の信頼は揺らいだ。米国内では嫌戦感情が高まり、紛争への不介入の傾向が強まった。

 アラブの春が起きリビアやエジプト、シリア情勢が混乱しても、米国は深入りを避けた。これが地域の混迷を深めたとの指摘がある(英IISSの戦略概観など)。

▼警察官なき世界

 シリア問題ではオバマ大統領が早期に「化学兵器使用は越えてはならない一線」と明言したことが自縄自縛となり、選択肢を狭めた可能性がある。その背景には、地域情報の収集能力の低下がある。

 オバマ大統領は「当面外交努力優先」と述べた10日のテレビ演説で、米国は世界の警察官ではないとの認識を強調した。それは事実だし、米国が世界の現状や自国の力を勘違いするともっと困る。しかし、警察官がいない世界の安全保障は脆弱で、世界は多くのリスクに直面する。シリア情勢を巡る動きは、そうした現実を突き付ける。

▼実体経済は回復

 リーマンショックからはや5年が過ぎた。世界は恐慌のリスクは回避し、実体経済に限れば5年前に比べ成長を実現。新興国経済は急速な発展を遂げた。

 当時は、「100年に1度のショック」と懸念された。恐慌の回避で、いまやそのような表現が使われることはまずない。

▼先送り

 しかし、当時指摘された金融システムの見直しや新自由主義経済のモデルの問い直しは十分に行われていない。財政赤字は拡大し、金融分野では新たなバブルが膨らんでいる可能性が大きい。

 「喉元過ぎれば」ではないが、構造的問題は先送りされいる。それを克服する政治指導力も十分でない。リーマンショックから5年の現実だ。

2013.9.15

2013年37号(9.8-15 通算690号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年9月8-15日(アジア時間)
 

◆シリア情勢当面は武力行使回避、米の威信低下明白に ☆
・ロシアは9日、シリアの化学兵器を国際監視下に置いたうえで廃棄する提案を表明。
・オバマ米大統領は10日テレビ演説し、当面外交努力を優先する方針を示した。
・シリアは12日、化学兵器禁止条約に加盟するための文書を国連に提出した。
・ケリー米国務長官とラブロフ外相は12-14ジュネーブで会談。
・シリアの化学兵器を2014年前半までに廃棄させる枠組みで合意した。
・ただ、実効性がどこまであるかは疑問が残る。
・米国はいったん表明した武力行使を当面見送る格好になり、威信低下は隠せない。
・世界の安全保障にも影響する。

◆リーマン・ショック5年(15日)☆
・2008年のリーマン・ショックから5年が経過した。
・ショック後主要国は金融緩和と政府による財政出動などで恐慌を回避した。
・しかし出口戦略は描けず、緩和が長期化し財政悪化。新バブル発生の懸念もある。
・金融規制改革も一部にとどまり、金融システムのリスクは消えない。
・財政悪化をきっかけにユーロ危機も表面化。くすぶり続けている。
・5年間に中国など新興国の比重が急激に増大した。G20も発足した。
・しかしここに来て新興国経済が動揺。世界経済の不安要因になっている。

◆IISS報告書、米の指導力低下を指摘(12日) ☆
・英IISS( 国際戦略研)は2013年版の戦略概観(Strategic Survey)を発表。
・米国の指導力低下が過去10年で急速に進んだと指摘した。
・米国の不干渉主義が、エジプトやシリアなど中東混迷の一因になったと分析した。
・シリアやエジプトに対する国際社会の対応は場当たり的だったと指摘した。
・戦略概観はミリタリーバランスと並ぶIISS報告の代表。

◆ノルウェー総選挙、8年ぶり政権交代(9日)☆
・中道右派保守党中心の野党陣営が勝利。8年ぶりに政権を奪還する。
・保守党のソルベルグ党首(女性)が首相に就任する予定。
・1院制169議席中野党4党は90以上を獲得。労働党など与党は70台。
・現政権に比べ自由主義的な色彩を出し、医療の民間開放などを主張した。
・政府系基金(世界最大)の分離構想も打ち出し、議論に入る。

◆モスクワ市長選、野党候補が予想外の票(8日)
・市長選が10年ぶりに実施。現職のソビャーニン氏が有効票の51%で当選した。
・野党指導者のナワリニー氏が27%を獲得し、予想以上の善戦をした。
・ソビャーニン氏はプーチン大統領側近。2010年は当時の大統領指名で就任した。
・ナワリニー氏は有名汚職追及ブロガー。先に裁判所から横領罪で有罪判決を受けた。
・これに対し欧米は政治的野党潰しと批判。政権も出馬を認めた経緯がある。

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◎寸評:of the Week
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 【9.11と9.15】 世界の安全保障を揺るがした9.11から12年。世界経済のあり方を根本から揺るがした9.15のリーマンショックから5年。世界と米国について、考えることが多い週となった。

◎今週の注目(2013.9.15-21)&当面の注目
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・シリア情勢は当面、外交調整に焦点が移った。一方で米議会の武力行使を巡る議論などからも目を離せない。
・エジプト情勢、新興国を中心とする市場の動きにも引き続き注目。
・17-18日に米FRBの政策決定委員会。今回は政策内容以上に注目されるのが、来年1月で任期を終了するバーナンキ議長の後任人事。サマーズ元財務長官などが有力とされる。オバマ大統領が近く発表するとの情報もある。

・独総選挙が9月22日。選挙戦が佳境を迎える。

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2013年9月 8日 (日)

◆シリア情勢と世界 2013.9.8

 シリア攻撃を巡り、激しい外交戦が繰り広げられた。

▽外交戦舞台のG20首脳会議

 外交戦の舞台は、G20首脳会議が開催されたロシアのサンクトペテルブルク。オバマ大統領は、シリアによる化学兵器は確実と表明。シリア攻撃の支持を取り付けるべく各国に働きかけた。これに対しシリア支持のロシア・プーチン大統領は「攻撃反対が国際世論の多数」という状況を作るべく動いた。

 米国は英仏やサウジアラビア、日本などの支持を取り付け。自国も含め11カ国(米加、英仏伊西、日韓、豪、サウジ、トルコ)によるシリア非難の共同声明を6日発表した。10カ国は米国の立場を支持する姿勢を示した格好だ。ただし、支持と言っても濃淡があり、各国が米国の攻撃に加わるわけではない

▽対立

 ロシアのプーチン大統領は議長国としてシリア問題に何度となく言及。「世界の大勢は攻撃反対」などと繰り返した。G20 終了後の記者会見では、たとえ米国によるシリア攻撃があっても同国支援を続けると明言した。

 シリア攻撃反対はロシアのほか中国やインド、アルゼンチン。欧州ではドイツが攻撃反対に回っている。世界の安保を巡る問題で、ドイツとフランスの判断があからさまに分かれるのも多くない。

 G20以外に目を向けると、イランはシリアのアサド政権を強力に支持。米国による攻撃があれば、イラクの米軍施設に攻撃を加えるなどとけん制する。

▽影響は中東から世界に

 元々シリア紛争は、中東情勢に多大な影響を与えている。シリアからの難民は100万人を超え、周辺のトルコやヨルダン、レバノン、(海上を経由し)エジプトなどに流出している。イランとその傘下のレバノンのイスラム原理主義組織ヒズボラは強力にアサド政権を支援しているし、サウジやトルコなどスンニ派の諸国は反体制派に対し武器供与も含め支援を与えている。 

 影響はさらに広い地域に及ぼうとしている。米国の下院委員会は、アサド政権が使用した化学兵器をロシアが供与したとの報告を発表した。ロシアはシリア攻撃が世界経済に与えるダメージや、他のイスラム地域に与える悪感情を強調する。

 かくしてシリア情勢を巡り、世界を巻き込んだ外交線が繰り広げられている。G20を中心とした先週は、それが端的に表れた。首脳たちの決断により、世界が変わるという場面を、G20を中心とした一連の動きは示した。

▽米大統領、議会承認請求

 そうしたシリア情勢を巡る駆け引きの中で、懸念されるのが米オバマ政権の指導力低下だ。オバマ大統領が8月末にシリア攻撃の可能性に言及した際には、9月初めにも限定攻撃を加えるとの観測があった。しかし大統領は31日になって議会の承認を求めると表明。結論をG20首脳会議後に先延ばしした形だ。

 大統領には元々開戦などの決断をする権限がある。その強権を使用せず、議会の理解を求めるという行動に出たのは、世論の後押しが必要という判断からと推定される。しかし、決断力の弱さを指摘される懸念も同時に生んだ。

▽誤算

 オバマ大統領にとって打撃だったのは、英国の動き。キャメロン首相はシリア攻撃を目指し、議会に軍事介入を認める法案を提出した。しかし議会は否決。軍事介入断念に追い込まれた。オバマ大統領が描いていた「幅広い有志同盟」によるシリア攻撃が難しくなった。フランスの動き次第では、単独軍事介入の選択も迫られる。

 G20首脳会議でも、軍事介入に反対するロシアや中国との溝を埋めることはできず、むしろ対立が際立った。現地ではオバマ大統領の存在感より、むしろプーチン・ロシア大統領の存在が目立った感もする。

 米国の決断に背景には、いくつもの誤算があったと指摘される。シリア問題解決の国際会議が開催できなかった事、化学兵器使用を「越えてはいけない一線」と明言し、後戻りができなくなったこと、英議会の否決などが上げられる。

▽影響力低下の懸念

 オバマ大統領は元々国際協調重視を強調しているし、米国民を新たな戦場に送りたくないという気持ちは人一倍強いといわれる。その大統領が、単独軍事介入の決断を迫られるのは皮肉だ。しかし、そうした逆境の中でも最善の判断を求められるのが、米大統領の宿命である。

 今後の対応いかんでは、大統領の影響量や米国の指導力に悪影響が出かねない。それは、世界の不安定に直結する。シリア情勢の動きと米国の対応は、世界の安定というより広い観点からも重要な局面を迎えている。

2013.9.8

2013年36号(9.1-8 通算689号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年9月1-8日(アジア時間)

◆シリア攻撃で世界割れる、米は議会承認に ☆
・米オバマ大統領は31日、議会に軍事介入の承認を求めると表明した。
・攻撃は大統領権限で可能だが、オバマ氏は議会承認を求める判断をした。
・米上院外交委員は4日、限定的なシリア攻撃を承認する決議を可決した。
・再開する議会で9日以降に決議する見通し。
・ロシアで開催したG20(5-6日)などを中心に、シリアを巡る激しい外交戦が展開された。
・G20では攻撃支援を求める米と反対の中ロなどが対立した。
・英仏日や豪サウジなど11カ国は6日、シリア非難の共同声明を発表した。
・プーチン・ロシア大統領は攻撃があってもシリア支援継続を表明。米と明確に対立した。
・シリア情勢は世界を巻き込み激しく動き、緊迫した状況が続く。

◆G20構造変質(5-6日) ☆
・G20首脳会議がロシアのサンクトペテルブルクで開催した。
・首脳宣言は金融市場の触れ拡大、一部新興国の経済減速などのリスクに言及。
・米国の量的金融緩和縮小が新興国経済に与える影響を注視することなどを指摘した。
・リーマンショックから5年経つが、世界経済は依然金融不安、財政赤字などの課題を抱える。
・首脳宣言はそうした実態を反映している。
・シリア情勢は2国間協議も含む一連会議の中心課題だったが、首脳会議では言及なかった。
・G20はリーマンショック後の2008年に開始。世界経済を議論・調整する場となった。
・しかし今回はシリア情勢など政治問題論議の場に変質した。
・G20 は世界統治の重要なメカニズムの1つ。その変化は、世界の変貌を映している。

◆2020年五輪東京で開催(7日) ☆
・IOC総会がブエノスアイレスで開かれ、2020年の夏季五輪の東京開催が決定した。
・委員の投票でイスタンブール、マドリッドを破った。
・東京での五輪開催は56年ぶり。日本での開催は冬季の札幌、長野を含め4回目。
・東京はコンパクトな五輪、安全性などを強調した。
・トルコの反政府デモ、スペインの財政危機などによる競合候補のイメージ低下も寄与した。

◆豪州総選挙、野党の保守連合が圧勝(7日)☆
・総選挙が行われ、野党保守連合(自由党・国民党)が圧勝。6年ぶりに政権を奪回した。
・下院150議席中、保守連合が88(改選前72)、与党労働党が57(改選前71)程度。
・首相には自由党のアボット党首が就任する予定。
・労働党政権下で、経済は新興国動揺などの影響で減速。環境政策等の成果も乏しかった。
・労働党内のラッド首相とギラード前首相の主導権争いも国民の失望を招いた。
・保守連合の政策も労働党から大きく河得らないが、小さい政府や財政改革をより重視する。

◆マイクロソフトがノキアの携帯部門買収(2日)☆
・マイクロソフトはノキアの携帯部門を買収すると発表した。54億ドル。
・スマホ部門を強化し、グーグルやアップルに対抗する狙い。
・ノキアは2-3年前まで携帯で世界最大企業だった。
・しかしスマホ化の波に乗り遅れ、この分野でのシェアは数%にとどまっている。
・スマホ分野で技術革新の速さやダイナミズムを感じさせる。

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 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
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 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ           
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
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◎寸評:of the Week
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 【シリア巡り激しい外交線】 G20首脳会議を中心に、シリア攻撃を巡り激しい外交線が繰り広げられた。首脳外交1つ1つに、世界の行方がかかっている緊迫した局面が続いた。

 【G20の変質】 2008年9月15日のリーマンショックから間もなく5年が経つ。この間、政府による財政資質や金融緩和などで世界経済の崩壊(恐慌など)は回避できたが、財政赤字問題は深刻化。金融不安は消えない。G20首脳会議は金融危機対応で始まった組織で、世界経済に対し世界の首脳が一致団結して当たるというメッセージの発信や相互監視に一定の役割は果たしている。しかし、世界経済の課題に強力に対応できているかとなると、限界もある。
 今回のサンクトペテルブルクの首脳会議も、世界経済への対応という意味ではそうした構図の下にあることを改めて映した。
 それ以上に注目すべきは、一連会議の主題がシリア情勢だった事実。シリア問題は言うまでもなく政治問題。G20も経済サミットから政治サミットへと変わりつつある。

 【ITの変化】 マイクロソフトがノキアの携帯部門買収を発表した。MSはパソコンOSでは世界1の企業だし、ノキア派2-3年前までは携帯で世界1。しかし、スマホ戦略では出遅れ、グーグルやアップルの後塵を拝している。買収は巻き返しをかけた決断だ。
 米通信大手のベライゾンは、傘下の携帯合弁会社ベライゾン・ワイヤレスを完全子会社化すると発表した。合弁相手のボーダフォンから株式を買い取る。金額は1300億ドルの見通しで、1999年のボーダフォンによる独マンネスマン買収に続く史上2位の規模。
 スマホの普及や通信高速化などの変化に対応して、携帯、スマホ、IT業界の再編が加速している。このクラスの再編劇は、これから頻発するだろう。

◎今週の注目(2013.9.8-14)&当面の注目
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・シリア攻撃を巡る情勢は緊迫した状況が続く。米議会は9日から審議を開始。12-13日頃に投票の可能性がある。フランスが軍事介入に加わるか、反対するロシア、イランなどがどう動くかなども焦点。目が離せない。
・2008年のリーマンショックから15日で5年になる。世界経済の変化を見直す節目となる。
・2001年の9.11からは13年になる。
・エジプト情勢、新興国を中心とする市場の動きにも引き続き注目。

・独総選挙が9月22日。選挙戦が佳境を迎える。

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2013年9月 1日 (日)

◆シリア:軍事介入瀬戸際の情勢 2013.9.1

 シリア情勢が緊迫している。米などが軍事介入に向けて調整を推進。オバマ大統領は限定攻撃の可能性に言及し、いわば「hold up(手を上げろ)」の状況になった。しかし、有志連合の形成は難しく、攻撃するにしても大義と正統性が覚束ない状況。攻撃がさらなる混乱を生む事態にもなりかねない。

▽越えてはならない一線

 米国などが限定攻撃の検討に動いたのは、アサド政権による化学兵器使用の可能性が極めて大きくなったため。米国などはかねて化学兵器使用を「越えてはならない一線」と警告しきた。

 そうである以上、化学兵器使用が明確になっても看過していたの示しがつかなくなる。それはシリアにとどまらず、他のアラブ諸国や北朝鮮など世界の安全保障にも影響する。

▽割れる国際社会

 ただ、軍事介入に対する国際社会の反応は割れている。米国と英国、フランスが軍事介入に前向きだったのに対し、ドイツやイタリアは慎重。ロシアやイラン、中国は反対する。ロシアなどが反対する以上、国連安保理の決議は望むべくもない。

 そこで米国などは有志連合の形成を模索。英国のキャメロン首相は、政府に軍事介入のオプションを認める法案を議会に提出した。しかし英下院は29日これを否決、首相は軍事介入を断念した。

 背景にはイラク戦争の経験がある。米英などはイラクが大量破壊兵器を保持しているとして戦争に踏み切ったが、そうした兵器は発見されなかった。誤った情報に基づいて戦争に踏み切ったというトラウマは大きい。

▽消去法の選択

 いずれにしろ英国の軍需介入断念で、有志連合形成は大きく後退した(仏などとの連合形成の可能性は残されているが、影響力などは限定される)。米国は、単独介入も含めた検討を進めざるを得ない状況に追い込まれたとも言える。

 オバマ大統領は、軍事介入するにしても限定的なものになると言明。具体的には軍事施設への攻撃などが取りざたされている。また、地上軍派遣は明確に否定。攻撃の際には、議会に事前承認を求める考えも明らかにしている。ただ、こうした策も消去法の選択の結果、という印象が否めない。

▽泥沼の内戦

 シリアではアラブの春が広がった2011年春に、アサド政権に対する抗議活動が反政府行動が開始。その後内戦状況に陥り、これまでに10万人以上の死者が出た。2012年には反政府勢力の攻勢が目立ったが、2013年に入り政権側が盛り返した状況だ。

 アサド政権は、イスラム教シーア派に属するアラウィ派中心。イランやロシアなどが支援し、イランの影響を受けるレバノンのイスラム原理主義組織ヒズボラが、アサド政権を軍事面で支援している。

 一方反体制派はスンニ派中心。サウジアラビアやトルコなどスンニ派の周辺諸国が支援し、資金や武器を供与している。ただ、反体制派と言っても一枚岩ではなく、むしろ分裂傾向にある。

 内戦は硬直化し、出口が見えない状況だった。そこに8月に入り、化学兵器使用が表面化。国際社会を巻き込み事態が動き出した。

▽米国のスタンス

 米国は一貫してアサド大統領退陣を要求。一方で軍事介入には慎重姿勢を取ってきた。

 当初は話し合いによる解決を目指し、国際会議開催を模索した。しかし、反体制派の分裂もあり実現しないまま、時が過ぎた。

 オバマ政権は化学兵器使用を「越えてはならない一線」と明言してきた。このため、アサド政権による使用がほぼ明確になった中で、何も行動を取らなければ政策の一貫性を問われる。ここに、限定的であろうと軍事介入に傾く理由がある。

▽混迷深化の懸念

 情勢は1日ごとに変化し、今後の展開は読みにくい。ただ、限定攻撃を実施したとしても、それがシリア情勢の解決にすぐに結びつくとは考え難い。むしろ、新たな混乱を生み、情勢が一層混沌とする懸念は大きい。

 それは、ただでさえ混迷を深めている中東情勢を、一層不透明にする可能性がある(エジプトやイエメン情勢を見るまでもなく)。また、米国と米オバマ政権がまた重い課題を抱え込み、指導力に影を差すことも否定できない。オバマ大統領の表情も、苦悩の色が深まっているように見える。

2013.9.1

2013年35号(8.26-9.1 通算688号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年8月26日-9月1日(アジア)

◆米大統領がシリア限定攻撃言及、情勢緊迫(30日)☆
・シリアへの軍事介入を巡る動きが加速。緊迫を増している。
・米国務省は30日報告書を発表。アサド政権による化学兵器使用を断定した。
・オバマ米大統領は同日、シリアへの限定攻撃検討を表明した。近く議会に諮る。
・これに先立ち米英仏は有志連合による軍事介入の可能性を模索した。
・しかし英下院は29日軍事介入を認める議案を否決。首相は介入を断念した。
・米国は英国の断念により、単独介入も辞さない立場に追い込まれた格好。
・軍事介入を巡ってはロシアやイランが反対。国連安保理決議採択の見通しはない。
・シリアは2011年からの内戦で10万人が死亡。今月化学兵器使用が再度表面化した。

◆新興国経済変調、インドは3四半期5%割れ(30日)☆
・インドが発表した4-6月GDPは前年同期比4.4%増だった。3四半期連続で5%割れ。
・7月のWPI上昇率は5.7%に上昇。ルピーは5月から20%下落した。
・通貨安、物価上昇、減速に直面。先行き不安が強まっている。
・ブラジルは28日、政策金利を9%に利上げした。4回連続。
・減速懸念が強まっているが、インフレ防止を優先させた形だ。
・トルコのリラも史上最低を更新している。
・他の新興国も経済減速、インフレ懸念の拡大、株価下落などの問題に直面している。
・新興国経済の変調は、世界経済を揺るがしかねない状況になっている。

◆中国汚職摘発、石油閥にもメス ☆
・国営新華社は27日、CNPCの幹部らを党規律委員会が調査していると伝えた。
・香港紙は30日、当局が周永康・前党政治局常務委員を汚職容疑で調査すると報じた。
・同氏は石油閥の代表格。汚職で起訴された薄煕来・元重慶トップとも近いとされる。
・石油閥は中国のエネルギー利権を握り、政策にも大きな影響力を維持してきた。
・傘下にはCNPC(中国石油天然気集団)、シノペックG、CNOOCなどを抱える。
・習近平総書記は就任後、汚職摘発を前面に出し取り締まりを進めている。
・摘発には同時に権力闘争の側面もあり、複数の視点からの分析が必要だ。

◆キング演説50年(28日) ☆
・米公民権運の節目となったワシントン大行進から50年が経過した。
・キング牧師の有名な"I have a dream"は、1963年8月28日に行われた。
・オバマ大統領はワシントンのリンカーン記念堂で開催した式典に参加。
・今なお残る経済的格差解消への取り組みを強調した。

◆スイスと米、隠し口座の個人情報提供で合意(29日)
・スイス政府は、銀行顧客の個人情報の一部を米国に提供することで合意した。
・米国人顧客がスイス銀行に隠し口座を持ち、米当局が捜査に入った場合などに適用する。
・スイスは銀行法で、第3者への顧客情報の開示を禁じている。
・スイス政府は5月、一部情報提供を可能にする法改正を決めたが、議会が6月に否決した。
・このため現行法の枠内で情報提供を可能にする方法を模索していた。

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◎寸評:of the Week
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 【シリア攻撃前夜】 米国などがシリア攻撃に向けた調整を推進。緊張が高まっている。一刻も目を離せない状況が続く。 

 【キング演説50年】 米公民権運動のハイライトとも言えるワシントン・マーチ、キング牧師の「I have a dream」演説から28日で50年(半世紀)を経過した。演説を改めて見ると、いまだに心に訴えてくるものがある。キング牧師のカリスマ性が公民権運動推進の大きな要因になったことを改めて実感する。
 白人と黒人の格差はなお残る。それでも、過去50年の間に少なくとも法的な差別はなくなり、黒人の大統領が登場するとはキング牧師ですら想像できなかったかも知れない。国際的には南アのアパルトヘイトが1990年代に終了し、マンデラ元大統領が世界的にも最も尊敬される人物の一人として受け入れられる世界になった。
 不正を正し、かつ社会決定的混乱を避けて世の中を変えるためには、理想と現実、変化と安定、改革と抵抗のバランスをどうとるかなど、古くて新しい問題が立ちはだかる。それを乗り越えるには、社会の成熟度、国民の意識(教育)など様々な要素が影響するが、リーダーシップは決定的に重要だ。キング演説を久しぶりに眺めながら、そんな思いを抱いた。

◎今週の注目(2013.9.1-7)&当面の注目
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・シリア情勢。米国などが限定的攻撃に踏み切るか。
・G20 首脳会議が5-6日にロシアのサンクトペテルブルクで開催される。シリア問題が最大の焦点。
・引き続きエジプト情勢、新興国を中心とする市場の動きも注目。
・2020年夏季五輪の開催地が7日決定される。
・豪州の総選挙が9月7日に行われる。

・独総選挙が9月22日。

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