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2013年9月 8日 (日)

◆シリア情勢と世界 2013.9.8

 シリア攻撃を巡り、激しい外交戦が繰り広げられた。

▽外交戦舞台のG20首脳会議

 外交戦の舞台は、G20首脳会議が開催されたロシアのサンクトペテルブルク。オバマ大統領は、シリアによる化学兵器は確実と表明。シリア攻撃の支持を取り付けるべく各国に働きかけた。これに対しシリア支持のロシア・プーチン大統領は「攻撃反対が国際世論の多数」という状況を作るべく動いた。

 米国は英仏やサウジアラビア、日本などの支持を取り付け。自国も含め11カ国(米加、英仏伊西、日韓、豪、サウジ、トルコ)によるシリア非難の共同声明を6日発表した。10カ国は米国の立場を支持する姿勢を示した格好だ。ただし、支持と言っても濃淡があり、各国が米国の攻撃に加わるわけではない

▽対立

 ロシアのプーチン大統領は議長国としてシリア問題に何度となく言及。「世界の大勢は攻撃反対」などと繰り返した。G20 終了後の記者会見では、たとえ米国によるシリア攻撃があっても同国支援を続けると明言した。

 シリア攻撃反対はロシアのほか中国やインド、アルゼンチン。欧州ではドイツが攻撃反対に回っている。世界の安保を巡る問題で、ドイツとフランスの判断があからさまに分かれるのも多くない。

 G20以外に目を向けると、イランはシリアのアサド政権を強力に支持。米国による攻撃があれば、イラクの米軍施設に攻撃を加えるなどとけん制する。

▽影響は中東から世界に

 元々シリア紛争は、中東情勢に多大な影響を与えている。シリアからの難民は100万人を超え、周辺のトルコやヨルダン、レバノン、(海上を経由し)エジプトなどに流出している。イランとその傘下のレバノンのイスラム原理主義組織ヒズボラは強力にアサド政権を支援しているし、サウジやトルコなどスンニ派の諸国は反体制派に対し武器供与も含め支援を与えている。 

 影響はさらに広い地域に及ぼうとしている。米国の下院委員会は、アサド政権が使用した化学兵器をロシアが供与したとの報告を発表した。ロシアはシリア攻撃が世界経済に与えるダメージや、他のイスラム地域に与える悪感情を強調する。

 かくしてシリア情勢を巡り、世界を巻き込んだ外交線が繰り広げられている。G20を中心とした先週は、それが端的に表れた。首脳たちの決断により、世界が変わるという場面を、G20を中心とした一連の動きは示した。

▽米大統領、議会承認請求

 そうしたシリア情勢を巡る駆け引きの中で、懸念されるのが米オバマ政権の指導力低下だ。オバマ大統領が8月末にシリア攻撃の可能性に言及した際には、9月初めにも限定攻撃を加えるとの観測があった。しかし大統領は31日になって議会の承認を求めると表明。結論をG20首脳会議後に先延ばしした形だ。

 大統領には元々開戦などの決断をする権限がある。その強権を使用せず、議会の理解を求めるという行動に出たのは、世論の後押しが必要という判断からと推定される。しかし、決断力の弱さを指摘される懸念も同時に生んだ。

▽誤算

 オバマ大統領にとって打撃だったのは、英国の動き。キャメロン首相はシリア攻撃を目指し、議会に軍事介入を認める法案を提出した。しかし議会は否決。軍事介入断念に追い込まれた。オバマ大統領が描いていた「幅広い有志同盟」によるシリア攻撃が難しくなった。フランスの動き次第では、単独軍事介入の選択も迫られる。

 G20首脳会議でも、軍事介入に反対するロシアや中国との溝を埋めることはできず、むしろ対立が際立った。現地ではオバマ大統領の存在感より、むしろプーチン・ロシア大統領の存在が目立った感もする。

 米国の決断に背景には、いくつもの誤算があったと指摘される。シリア問題解決の国際会議が開催できなかった事、化学兵器使用を「越えてはいけない一線」と明言し、後戻りができなくなったこと、英議会の否決などが上げられる。

▽影響力低下の懸念

 オバマ大統領は元々国際協調重視を強調しているし、米国民を新たな戦場に送りたくないという気持ちは人一倍強いといわれる。その大統領が、単独軍事介入の決断を迫られるのは皮肉だ。しかし、そうした逆境の中でも最善の判断を求められるのが、米大統領の宿命である。

 今後の対応いかんでは、大統領の影響量や米国の指導力に悪影響が出かねない。それは、世界の不安定に直結する。シリア情勢の動きと米国の対応は、世界の安定というより広い観点からも重要な局面を迎えている。

2013.9.8

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