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2013年4月

2013年4月30日 (火)

2013年17号(4.22-29 通算670号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年4月22-29日


◆イタリア新首相にレッタ氏、大連立合意(28日)☆
・ナポリターノ大統領は24日、レッタ前民主党副書記長を首相に指名した。
・同氏は27日、主要政党と大連立で合意。大統領に閣僚名簿を提出した。
・出身の中道左派に中道右派、財政再建派のモンティ連合などが加わる。
・28日に宣誓式を経て就任。当面、上下両院で信任投票がカギとなる。
・大連立内でも政党間の政策の違いは大きく、まとまりが維持できるかは微妙だ。
・2月の総選挙ではどの政党も上下院の過半数を握れず、新政権が2カ月できなかった。
・とりあえず新政権はできたが、政局の行方はなお不透明だ。

◆鳥インフルエンザ、台湾にも感染者(24日)☆
・中国の鳥インフルエンザ感染が拡大。台湾でも感染者が確認された。
・感染者は中国・蘇州などを訪ね戻った後に発症した。中国本土以外の感染者は初。
・中国国内では感染者が数百人単位。
・WTOはまだ人から人への感染は確認されていないとしているが、真相は不明。

◆北朝鮮の工業団地、引上げへ(26日)☆
・韓国政府は北朝鮮の開城工業団地に派遣している関係者の撤収を発表した。
・工場維持のために残っていた従業員170人弱が29日までに帰還した。
・ただし、北朝鮮は残り7人の帰還を認めていない。賃金未払い問題等を理由とする。
・同工業団地は2004年に開業した南北経済協力の象徴的案件。
・北朝鮮は今年に入り兆発行動を強め、停止を宣言した。
・韓国は運営正常化に向けた会談を提案したが、北朝鮮は拒否。撤収を発表した。

◆バングラデシュでビル崩壊、縫製工場に批判 ☆
・ダッカ近郊で縫製工場が入った8階建てビルが24日崩壊。使者が350人を突破した。
・事故は安全対策違反が原因とみられる。
・縫製工場の労働者らが安全対策強化などを求め、各地でデモを展開した。
・同国は低賃金を武器に縫製業を発達。世界の縫製工場に育ちつつある。
・事故は安全対策など問題を露呈。同国経済にも影響を与えかねない。

◆アイスランド選挙、政権交代(27日)☆
・総選挙が行われ、保守系野党が中道左派与党を破った。4年ぶりに政権復帰する。
・保守の独立党が63議席中19議席で第1党。保守進歩党と連立政権発足の見込み。
・EU加盟交渉は遠のく可能性が大きい。
・同国は2008年の世界金融危機で金融破綻。09年独立党から中道左派に政権交代した。
・中道左派政権は財政緊縮などを進めたが、国民の間では改革疲れも表れていた。

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◎寸評:of the Week
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 【欧州の改革疲れ】 欧州で「財政改革疲れ」と言うべき動きが出ている。イタリアでは2カ月の政権空白の後、ようやくレッタ首相を首班とする大連立政権ができた。しかし、政権には財政緊縮路線見直しを求めるベルルスコーニ元首相の中道右派が加わる。レッタ首相も28日の所信表明演説で、景気回復を重視する方針を示した。
 2008年に金融破たんしたアイスランドでは、総選挙で保守の独立党などが返り咲いた。同党は金融危機前の「金融バブル」ともいえる状況を作り出した。2009年に発足した中道左派政権は財政緊縮を重視した。しかし再びの転換となる。
 欧州員会のバローゾ委員長は22日、緊縮策が限界にきていると指摘。政策の見直しを求めた。
 欧州では2009年のユーロ危機表面化以来、財政再建を優先させてきた。しかし南欧など経済・財政が弱い国を中心に、成長の低下(あるいはマイナス)、失業率の上昇など経済状況が深刻化。国民の財政緊縮への抵抗は高まっている。
 財政規律重視のドイツなどは反発する。しかし、欧州の改革疲れが深刻化し、政策の曲がり角に来ていることは否定しがたい。

 【シリアの化学兵器使用】 シリアのアサド政権がサリンなど化学兵器を使用したとの見方が強まっている。米当局は議会への報告で、使用の可能性があると伝えた。オバマ政権はシリアへの軍事介入などの判断材料として化学兵器の使用を上げており、米国や欧州の対応が変わる可能性がある。
 一方、同国では反体制派によるテロ攻撃も後を絶たない。情勢は混とんとし、何があってもおかしくない。 

 【B787運航再開へ】 米連邦航空局(FAA)は19日、米ボーイング787の運航再開を認めると発表。公聴会などを経て、5月からユナイテッド航空などが運航を再開する予定だ。日本の国土交通省も26日、運航再開を認めた。ただし、バッテリートラブルの原因は不明なまま。FAAはボーイングの対策を評価したとしているが、エアバスの攻勢に直面するボーイング社支援の色彩があるとの指摘も消えない。

◎今週の注目(2013.4.29-5.5)&当面の注目
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・オランダのベアトリスク女王が退位。30日にアレクサンダー皇太子が新国王に即位する。123年ぶりの男性国王。
・イタリアの政局はなお波乱含み。当面は新政権に対する上下院の信任投票が焦点。

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2013年4月21日 (日)

2013年16号(4.15-21 通算669号)  国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年4月15-21日

◆ボストンマラソンで爆弾テロ(15日) ☆
・ボストンマラソンのゴール付近で爆発があり、3人が死亡し170人以上が負傷した。
・警察当局は19日、容疑者と銃撃戦の末1人が死亡。1人を拘束した。
・それに先立ち、警官1人がMIT内で殺害された。容疑者はチェチェン人の兄弟。
・9.11(01年)後の米国でテロ被害者が出たのは初。
・米国、世界がテロの脅威にされされる実情を改めて認識させた。
・事件後ボストンには外出禁止令が出され、メディアは実況で事件を伝えた。

◆ベネズエラ大統領にマドゥロ氏。チャベス後継(19日就任)☆
・大統領選が14日行われ、与党のマドゥロ暫定大統領が勝利した。19日就任した。
・同氏は死亡したチャベス前大統領から後継指名を受けていた。
・チャベス氏の社会主義的な政策を継承する見通し。
・チャベス前大統領は左翼反米を前面に打ち出し、地域への影響も大きかった。
・選挙ではチャベス色の継続か変化かが注目されていた。

◆イタリア大統領、現職が異例の続投、政局混乱拡大(20日) ☆
・議会・州代表による大統領選挙が20日まで5回行われたが、当選が決まらなかった。
・各党指導者はナポリターノ大統領(87)の続投を要請。6回目の投票で再選された。
・第2次大戦後大統領の再選は初めて。
・就任後、議会を解散し再選挙か、首相候補を指名し連立調整継続を判断する。
・中道左派連合は投票を巡り分裂。ベルサニ民主党党首は19日辞任を発表した。
・同国では2月の総選挙後、連立政権が決まらない状況が続いている。
・大統領選出の難航、ベルサニ氏辞任表明は、政局混乱の深刻さを物語る。

◆セルビアとコソボが関係正常化合意(19日)
・セルビアとコソボが関係正常化に向けた調停案に合意した。
・EUの仲介で、タチッチ首相とサチ首相がブリュッセルで会談し決めた。
・セルビア人の多いコソボ北部では、警察や司法で一定の自治を認める。
・コソボは2008年にセルビアから独立を宣言。セルビアは認めていなかった。
・EUはセルビアの加盟について、コソボとの関係正常化を条件にしていた。

◆イラン・パキスタンと中国四川で地震
・イラン南東部のパキスタンとの国境付近で16日M7.8の地震が発生した。
・両国で各数十人以上が死亡した模様。
・中国四川省では20日地震が起き、数十人以上が死亡した。

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◎寸評:of the Week
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 【ボストンマラソン爆破テロと銃規制法案否決】 ボストン・マラソンの爆破テロが世界を揺るがした。同マラソンは1897年からの伝統を誇り、世界最大級の市民マラソンとしても有名。テロの様子は映像で世界に流れ、生々しい状況を伝えた。犯人はチェチェン人の兄弟で、警察当局と銃撃戦の末、4日後に兄は死亡。弟は拘束された。中央アジアと転々とした後米国で育ったイスラム教徒。過激派組織との接触はいまのところ確認されていない。犯行の動機などは調査中だ。
 2001年の9.11の後、米国でテロの被害者が出たのは初めて。9.11の後、米国がテロ警戒を強めていたのは衆知の事実。それにもかかわらず、しかもボストンマラソンという注目の場でテロが起きた事に、国民は衝撃を受けている。テロ戦争の時代の重い事実を、改めて見せつけた形だ。
 米上院は17日、銃規制法案を否決した。成立に必要な賛成票を得られなかった。法案は昨年のコネチカット州での乱射事件を受けて、オバマ政権が成立を目指してきた。
 テロ、宗教、移民、銃。米国と世界が抱える安全保障上の問題が噴出された形だ。

 【サッチャー元首相葬儀】 サッチャー英元首相の葬儀が17日ロンドンで行われた。エリザベス女王も出席、国葬に準ずる形になった。女王の葬儀参加は1964年のチャーチル元首相(国葬)以来。サッチャー元首相が英国史に残した重みを改めて感じさせる。

 【中国国債の格付け下げ】 中国の地方財政に対する懸念が強まり、格付け会社は中国国債の格付けを厳しくしている。フィッチが先に1段階格下げ。ムーディーズも見通しを「強含み」から引き下げた。中国の中央政府の財政赤字は先進国に比べて低いが、地方は不透明な点が多い。

◎今週の注目(2013.4.22-28)&当面の注目
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・イタリアの政局。混乱が長引けば、ユーロ危機再燃などの懸念も強まる。

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2013年4月14日 (日)

◆サッチャー元首相の遺産 2013.4.14

 サッチャー元英首相が死亡した。1980年代に「サッチャー革命」で英国を変え、冷戦の終結にも大きな役割を果たした人物。英国初の女性宰相であり、「20世紀の平時最高のリーダー」とも称される。その遺産は、現代世界にも受け継がれている。

▼サッチャーの11年

 巷間言われる「鉄の女」(iron lady)や「サッチャー主義」(Thatcherism)、「新自由主義」(Neo Liberalism)、「小さい政府」(small government)、「英国病の克服」などがサッチャー氏と同氏の政治を体現していることは間違いない。しかし、それだけで済ませるほど物事は単純ではない。

 サッチャー時代の11年に起きたことを振り返れば、次の通りだ(特に重要な事項は●)。

・1979年 ●首相に就任。「小さい政府」、国営企業の民営化などの方針を表明。ソ連のアフガニスタン侵攻。
・1980年 モスクワ五輪(政府のボイコット方針に対し、五輪委は参加決定)
・1981年 米大統領にレーガン氏就任。ポーランドで戒厳令。
・1982年 ●フォークランド紛争
・1983年 総選挙。再選。ゴルバチョフ(政治局員)と会談。
・1984年 ●炭鉱ストライキ(85年まで)。●ブライトンでIRAの爆破事件。中国へ香港返還を決定
・1985年 ●ソ連、ゴルバチョフ書記長に。プラザ合意。
・1986年 ●金融ビッグバン
・1987年 総選挙で3選。ブラックマンデー。
・1988年 ウェストランド社のスキャンダル。
・1989年 ●東欧革命、ベルリンの壁崩壊。天安門事件。
・1990年 湾岸危機。●ドイツ統一。首相退陣

▼サッチャー氏の業績
 11年の業績は、次のようにまとめることが可能だろう。

(1)新自由主義革命=国家の理念とデザインの変更
 サッチャー氏は就任時から、市場を重視した経済政策を掲げた。「もっと働け」「日本に学べ」などと自助努力を求め、国営企業の民営化や規制緩和を推進した。その政策・考想は、英国が戦後築いてきた福祉国家を抜本的に改革するもので、革命と呼ぶにふさわしい。
 同じ時期に登場したレーガン大統領と並んで、世界に新自由主義革命と呼ばれる潮流をもたらした。

(2)英国経済の再建
 具体的な経済政策で重要だったのは、国営企業の民年化やロンドン金融市場の自由化(ビッグバン)。法人税の切り下げなど企業が活動しやすくする環境を整備し、規制緩和を推進して企業の活力を引き出した。外国企業への規制の緩和は多数の企業進出を促し、経済の「ウィンブルドン現象」を引き起こした。
 こうした経済政策が功を奏し、英国経済は成長力を回復。物価の安定、失業率の低下などをもたらし、英国経済は再建した。
 70年代の英国は低成長と高失業に悩み、「英国病」を揶揄された。これを克服した。

(3)悲観主義・敗北主義の払拭
 「英国病」は経済不振だけではなく、招来像が描けない閉塞感も伴っていた。ロンドンの街は汚れ、治安も悪化。社会全体に悲観主義、敗北主義が充満していた。サッチャー政権は、結果的にこれを克服した。

(4)冷戦終結への貢献
 1989年にベルリンの壁が崩壊し冷戦が終了したのは、ソ連・東欧経済の疲弊やゴルバチョフ・ソ連共産党書記長の登場が大きい。しかし、その背景には新自由主義革命による西側経済の再建や、西側の結束がある。その意味では、サッチャー氏が先導した新自由主義革命は冷戦終結にも影響している。
 また、東西両陣営間で信頼性の情勢(CSCEなど)や政治指導者間のパイプ構築が進んでいたことも大きい。サッチャー氏とゴルバチョフ氏らの関係、冷戦末期の西欧主要国の指導者の存在(英国サッチャー、仏ミッテラン、西独コール)も重要だ。

▼リーダーシップ

 こうした業績は、サッチャー氏の政治哲学・政策はもとより、リーダーシップ抜きには考えられない。
 サッチャーの11年を振り返れば、リーダーシップの発揮と決断の連続だった。事例として以下のようなケースがある。

(1)労組との対決
 経済改革を推進する上で、絶大な力を誇ってきた労組との対決は避けられなかった。特に強力だったのは炭鉱労組。70年代には大規模ストで保守党ヒース政権を退陣に追い込む(選挙で保守党が敗北)など、絶大な力を誇った。

 83年の総選挙で保守党が勝利した後、サッチャー政権と炭鉱労組は全面対決に入る。84年に労組はストに突入。国民生活や英国経済に大きな負担を強いるストが1年あまり続いた後、サッチャー政権の全面勝利で終了した。この間、妥協を求める声をサッチャー氏は退けた。これが、経済改革の流れを揺るぎないものにした。

(2)フォークランド紛争
 1982年にアルゼンチンが英領フォークランド諸島を占拠した。軍事政権が国民の不満をそらす狙いがあったといわれる。これに対しサッチャー首相は軍隊を送り、島を奪回した。
 国際世論では戦争を回避を求める声も大きかった。しかしサッチャー氏は、主権の防衛重視などの原則にこだわり、戦争を選択した。 

(3)IRA対応
 1980年代に入っても北アイルランドのIRAのテロは頻発していた。1984年にはブライトンの保守党大会でホテル爆破事件があり、サッチャー首相も間一髪で難を逃れた。
 IRAに対してはテロに対する厳しい姿勢と政治的対話で対応。後の和平への環境づくりを進めた。

 改めて確認されるのは、問題に直面した時の決断力、ぶれない姿勢、高度な処理能力、そして強運だ(運を呼び込んだという面もあるだろう)。リーダーとしての資質を感じさせる。

▼光と影
 もちろん、サッチャー氏に対する批判は強い。福祉の改革や労組潰しとも言える対応には、「弱者切り捨て」の非難や怨嗟の声があふれた。政治手法が独裁的との批判も繰り返された。経済・外交政策でも、EU統合より英国の独自性を尊重した姿勢には批判がある(90年の退陣もそれが一因になった)。
 
 評価と批判は、サッチャー氏が退陣した後にも引き継がれる。市場重視や規制緩和を核にした経済政策は、後継のメージャー保守政権を経てブレア労働党政権にも引き継がれ、英国は90年代前半から16年の好況を謳歌した(その後2008年の世界金融危機を経て、新たな道を模索している)。

 一方、対EUでは揺れ続ける。特にユーロ危機の後には、EUと距離を置くべきだという考えが再び強まっている。EU統合に欧州の未来を描くドイツやフランスとは、大きな違いがある。

▼サッチャー氏の遺産

 サッチャー氏死亡を受けて、英Economist(電子版)は"The Lady who changed the world"(世界を変えた女性)と最大級の賛辞の表現で評伝を掲載した。「平時(非戦争時)の政治家で世界を変えたと言える人はわずかだが、サッチャー氏はその一人だった」と分析。さらに、20世紀最大の宰相と言われるチャーチル元首相と対比し、「チャーチルは戦争に勝ったが、(Thatcherismのような)"ism"(主義)は作り出せなかった」とコメントした。その上で、「サッチャー主義の本質を、現状維持(status quo)に反対し、自由に賭けること」と位置付けた。

 社会・文化に与えた影響も重要だ。今となっては「女性初の首相」が前に出ることは少ないが、それでも英国市場初の女性首相が歴史的な偉業を残した事は、後世への影響からも重要だ。2012年の映画"The Iron Lady" を見ると、同氏が政治家としてだけでなく、人間としても後世の人々にとって伝えるべき人物であることを改めて感じさせる。

▼サッチャー後の世界

 サッチャー氏が首相を退いた後、90年代は冷戦後の時代だった。民族・地域紛争が世界の問題となり、新自由主義が世界に広がった時代でもある。
 その後、90年代半ばからはインターネットの普及でネット革命(あるいは新産業革命)が進展。21世紀に入ると、9.11でテロ戦争の時代になり、文明の衝突が世界の重大問題になるようになった。中国、インドなど新興国の台頭で、世界の構造も変わっている。世界は、1990年にサッチャー氏が想像した姿から大きく変わっているだろう。

 それでも、サッチャー氏の残した遺産はなお生きる部分が多い。新自由主義は政治思想として修正を迫られる部分はあるが、市場重視や政府の在り方を問う重要性は変わらない。現状維持への反対、自由を求める姿勢などサッチャー氏の考想が通じる部分の多い。そしてリーダーシップ不在と言われる現状の下では、サッチャー氏が示した政治指導力の重要性が改めて浮かび上がる。

 サッチャー氏とサッチャリズムは現代社会のあり方に、甚大な影響を与えている。その点を、改めて感じる。

2013.4.14

2013年15号(4.8-14 通算668号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年4月8-14日
 
◆サッチャー元英首相が死亡、新自由主義革命を先導(8日)☆
・サッチャー元英首相が死亡した。87歳。1979-90年まで首相を務めた。
・市場重視の政策を推進。民営化や金融ビッグバンで英経済を復活に導いた。
・レーガン米大統領と共に新自由主義革命を先導。冷戦の終結に貢献した。
・フォークランド紛争やIRAへの対応では、強いリーダーシップを示した。
・半面、弱者切り捨て、反欧州的姿勢への批判も強かった。
・その政策・思想はThatcherismと呼ばれ、後世への影響も大きい。
・世界を変えた政治家の一人だったことは間違いない。

◆北朝鮮危機継続、世界は対応策協議、米韓は対話可能性にも言及 ☆
・北朝鮮の挑発行動が継続。危機が続いている。
・金正恩氏の第1書記就任から11日で1年を経過した。
・同国は中距離弾道ミサイル・ムスダン発射をにおわしている。
・米韓は情報監視体制を1段階引き上げ。日本もミサイル発射に厳戒態勢を敷いた。
・G8外相会議は議長声明で北朝鮮を非難。追加制裁の可能性に言及した。
・韓国の朴大統領は11日、警戒態勢強化の一方で対話の可能性にも言及した。
・ケリー米国務長官は韓国、中国を訪問し問題を協議。対話の可能性も言及した。
・米議会や欧州でも北朝鮮問題はこれまでにないほど取り上げられ、注目を集める。

◆米予算教書、赤字10年で178兆ドル削減(10日)☆
・オバマ大統領は2014年度(13.10-14.9)の予算教書を議会に提出した。
・富裕層への増税と社会保障費の削減で、10年で178兆ドルの財政赤字を削減する。
・インフラや科学開発には優先的に経費を投入。競争力強化を目指す。
・2013年度の財政赤字は9730億ドルで、5年ぶりに1兆ドルを割り込む。
・これを受け議会では税制改革や国の債務上限引き上げの折衝を本格化させる。
・ただし富裕層増税や医療保険制度を巡る与野党の意見相違は大きく、難航は必至だ。

◆鳥インフルエンザ感染拡大
・中国の鳥インフルエンザH7N9型の感染が拡大している。
・北京市や河南省でも感染者が発覚。上海市周辺から広がっている。

◆G8外相会議(11日)
・G8外相会議がロンドンで開催。北朝鮮以外にシリア、イラン、パレスチナ、マリ情勢などを協議した。
・シリア問題では反体制派への武器支援を議論したが、意見は割れた。
・英仏が武器支援に積極的だったのに対し、ロシアが反対。独も慎重だった。

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◎寸評:of the Week
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 【北朝鮮問題に揺れる世界】 北朝鮮危機が続いている。同国は先月以来、休戦協定無効の発言、原子炉の再稼働、韓国と共同運営する工業団地への入境制限、ミサイル・ムスダンの発射準備など挑発行為をエスカレート。先の読めない状態になっている。
 欧米の関心(普段はそれほど高くない)もさすがに高まり、米メディアは議会・委員会の北朝鮮問題論議を報道。ロンドンでのG8外相会議のヘッドラインも北朝鮮問題のところが多かった。文字通り、世界の関心が向いている。
 北朝鮮の狙いは、米国を協議に引きずり出すための瀬戸際外交、というのが多くの見方。しかし、金正恩体制の意図や動向は読みにくく、合理的に動くかどうかも分からない。ボタンの掛け違い→紛争になる可能性も排除できない。

◎今週の注目(2013.4.15-22)&当面の注目
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・引き続き北朝鮮情勢に注目。
・サッチャー英元首相の葬儀が17日に行われる。
・ベネズエラの大統領選(14日)の結果が出る。チャベス大統領後継のマドゥロ暫定大統領と、野党統一候補のカプリレス・ミランダ州知事の事実上の一騎打ち。チャベス氏の反米左派路線が引き継がれるか、路線転換となるかが焦点。

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2013年4月 8日 (月)

◆日銀の新金融緩和策 2013.4.7

 日銀が黒田新総裁下の初の政策決定会合で、新金融緩和策を打ち出した。マネタリー(通貨供給量)の2年で倍増など、従来とは「次元の異なる」金融緩和。2年内に2%の物価上昇を実現し、デフレ脱却を目指すとしている。

▼期待とリスク

 決定は市場の予想を上回るサプライズを与えた。内容は市場が期待したメニューをほぼ盛り込んだもの。決定を受けて株価は上昇し、長期金利は低下(乱高下を伴った)。為替市場では円安が進んだ。

 もちろん、課題も指摘される。通貨供給量を増やしても、実体経済の活性化に結び付くかは分からない(日銀は国債などの買い入れを通じて民間金融機関に通貨供給するのであって、実体経済に回るかどうかは民間金融機関や民間企業野の活動に関わる)。

 日銀券発行以上に国債買い入れを実施することは、資産インフレなどに結びつかないかとの懸念もある。政府が適切な財政再策や競争力強化策を行わなければ、金融緩和の効果もゆがんだ形でしか表れないとの意見も強い。

 ともあれ、今回の決定が市場や世界の金融当局から「従来とは変わった」と受け止められたことは事実。世界の中銀が進めている新局面の金融緩和で、日銀が先頭を行く面もある。大いに注目だ。

▼新政策の内容

 金融政策は正確な認識が何より重要。今回の決定の内容を整理する。

>物価2%上昇の2年程度内達成を目指す=従来の「なるべく早く」より一層明確に。
>量・質ともに次元の違う金融緩和=白川総裁時代からの転換を宣言。
>マネタリーベースを2年で2倍=現金と金融機関の当座預金。
・2012年末の138兆円→14年末270兆円。
・年60-70兆円増加するように調整。
>長期国債の増額
・保有額を2年で倍増=12年末89兆円→14年末190兆円。
・年50兆円増加するよう買い入れ。月額グロス7兆円。
・長期国債の買い入れ対象拡大(40年物を含む全ゾーンに)。平均残高3年→7年。
>金融市場兆節の目標を無担保コールレート→マネタリーベースに
>ETF、J-REITの買い入れ拡大
>資産買入基金廃止=買い入れを一本化
>銀行券ルール(国債買い入れ額<銀行券発行残高)の一時停止
・ただし、従来も基金買入れを含めると国債買い入れが銀行券発行を上回っており、事実上守られていなかった。
>財政ファイナンスではないと強調。
>市場との対話の強化。 

2013.4.7

2013年14号(4.1-7 通算667号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年4月1-7日
 

◆北朝鮮が原子炉再稼働宣言、緊張高まる(2日)☆
・北朝鮮は北東部・寧辺にある原子炉(黒鉛減速炉)を再稼働すると表明した。
・同施設は6カ国協議に基づき2007年に無力化していた。
・使用済み燃料棒からプルトニウムを抽出し、核兵器を大量開発する意思の表明といえる。
・すでに再稼働の作業が始まった模様。米国の衛星画像などが確認した。
・北朝鮮は3日、韓国と共同で運営する南部開城工業団地への入境を制限した。
・同団地は現在稼働している唯一の南北協力事業。02年に着工し5万人以上が働く。
・米国は3日、グアムに迎撃ミサイル配備を発表。ヘーゲル国防長官は明白な脅威と述べた。
・北朝鮮は2月の核実験の後、休戦協定白紙化などで兆発。地域の緊張が高まっている。

◆日銀が新金融緩和策(4日)☆
・日銀は黒田新総裁の下で初の金融政策決定会合を開催。新量的金融緩和策を決めた。
・資金供給量の2年で倍増、長期国債の買い入れ倍増などが内容。
・量・質ともに次元の違う金融緩和を実施。2年で物価上昇2%を達成し、デフレ脱却を目指す。
・市場の期待以上の内容で、決定を受けて株高、長期金利低下、円安が進んだ。、
・新緩和策には実体経済への浸透具合、資産インフレの懸念などリスクも指摘される。
・政府の財政政策や競争力強化策が機能するかも問題だ。
・ただ、日銀の政策が従来と方針を明確に変えたことは間違いなく、世界は行方に注目する。

◆中国で鳥インフルエンザ ☆
・中国で新型の鳥インフルエンザが人に感染し始めた。
・「H7N9型」で上海市、江蘇省などで発覚。6日までに感染18人、死亡6人を確認した。
・H7N9型が人間に感染したのは初めて。中国政府は情報の迅速な公開を約束した。
・中国では2003年にSARSが広がった際、情報公開の遅れが批判された。
・鳥型インフルは2005年にアジアでH5N1型の感染が拡大。60人以上が死亡した。
・今のところ人から人への感染は確認されていない。

◆アップルが中国の消費者に謝罪(1日)☆
・アップルのクックCEOは中国の消費者に対し、サービス対応に問題があったなどと謝罪した。
・中国のメディアは3月15日以来、アップルのアフターサービスが悪いなどと連日批判してきた。
・アップルは批判に屈する形で謝罪に踏み切った。
・アップルの売り上げのうち中国は10%程度を占める模様。生産拠点も中国に多い。
・アップル批判の背景には、米国による中国からのサイバー攻撃批判への趣旨返しもある模様。
・グーグルは2010年に中国から撤退。サービス拠点を香港に移した。
・今回のケースも、中国ビジネスに潜むリスクを表している。

◆マレーシア、下院解散(3日)☆
・ナジブ首相は下院を解散した。4月下旬に総選挙を行う。小選挙区制で222議席を競う。
・与党連合・国民戦線が政権を維持できるかが焦点。
・与党と野党連合・人民連盟の支持率は拮抗しており、選挙の行方は予断を許さない。
・国民連合は1957年の独立以来政権を独占してきた。
・しかし汚職の横行や既得権層の固定化などに批判が強まっている。

 ┌─────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ           
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
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 【暗黒物質と脳機能プロジェクト】 自然科学の重要な動き2点。NASAやCERN(欧州合同原子核研究所)などの国際チームは4日、宇宙に大量に存在する暗黒物質(dark matter)の手がかりデータを得たと発表した。未知の素粒子である可能性がある。
 オバマ米大統領は2日、脳機能の解明に向けて国家プロジェクトを始動すると発表した。1990年代のヒトゲノム・プロジェクトに匹敵するような大型プロジェクトになる見込み。
 金融緩和、北朝鮮情勢も重要だが、自然科学の長期的なテーマを見る視点も忘れてはいけない。

◎今週の注目(2013.4.8-14)&当面の注目
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・北朝鮮情勢の次の展開に注目。
・ベネズエラの大統領選が14日に行われる。チャベス大統領後継のマドゥロ暫定大統領と、野党統一候補のカプリレス・ミランダ州知事の事実上の一騎打ち。チャベス氏の反米左派路線が引き継がれるか、路線転換となるかが焦点。

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