« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »

2013年3月

2013年3月31日 (日)

◆キプロス混乱の2週間が問うもの 2013.3.31

 キプロスへの支援策が曲折の末、何とかまとまり、危機は一服した。大手2行の整理などを条件に、ユーロ圏とIMFが100億ユーロの支援を実施する。預金残高10万ユーロ以上などの富裕層にも、相応の負担を求める。16日から休業していた銀行は28日に営業を再開した。とはいえ、1日の預金引き出しの制限や外国への送金制限は続き、正常化には程遠い。

▼ドタバタ劇

 キプロス危機の2週間を振り返ると、どう見ても「ドタバタ劇」という表現がふさわしい。ユーロ圏が最初に支援を決めたのが15日。支援の条件として、少額を含めた預金者にも一部負担を求める内容だった。ところが国民の反発を受けて議会が19日に関連法案を否決。キプロス当局が支援の枠組み見直しを模索して国内調整、EU・ユーロ圏との調整、ロシアとの交渉などに駆け回る事態になった。

 交渉を通じてEU・ユーロ圏はキプロス(預金者)が相当額を負担する事にこだわった。結局、28日になって合意が成立した。

▼いびつな金融構造

 背景にあったのは、同国のいびつな金融状況。同国銀行への預金残高はGDP比で8倍と高い。ロシアをはじめとする海外からの預金が流れ込んでいたためだ。しかも、同国への預金にはマネーロンダリングの疑惑が消えない。

 ユーロ圏は同国支援に対して、応分の負担を求める強い姿勢に出た。これも、状況を踏まえたものだ。

▼地政学的重要性

 地政学的な重要性も欠かせない。同国は欧州諸国といいながら地理的にはアジアに近く、軍事的拠点としての意味合いは大きい。冷戦時代には東西対立の前線だった。ギリシャ系とトルコ系の住民対立から、国は39年前から事実上2分割されている。

 EUとしてもキプロスを追い込んで、ロシアへの接近が加速しても困る。キプロスとロシアは正教を信じる人が多い点で一致し、歴史・文化的につながりがある。

▼ユーロ危機の構図

 もちろん、ユーロ危機で問題になっている南北対立の構図も当てはまる。キプロスはユーロ圏への支援を求めた後も、金融改革や財政改革が進まなかった。国民は負担増に抵抗した。これはギリシャ、イタリア、スペインなどと同じ図式だ。

 ドイツなど北部の国々は、自国のお金が安易に南欧救済に使われることに抵抗。「支援を求めるならそ応分の負担を」と求めた。これもギリシャやイタリアなどの支援交渉と同じだ。

 ユーロ危機脱出を巡る南北対立。不十分な金融・財政改革。国民の抵抗。EUやユーロ圏の意思決定の構造的欠陥。今回はそれに、安保・地政学的な問題が加わった。--キプロス危機が突き付けた課題は大きい。

2013.3.31

2013年13号(3.25-31 通算666号)  国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年3月25-31日

◆キプロス支援合意、送金規制など長期化(25日)☆
・ユーロ圏・IMFとキプロスは、同国の金融危機回避のため100億ユーロ支援で合意した。
・条件として高額所得者に負担を求め、2大銀行を整理・縮小する。
・支援決定を受けて同国銀行は28日に営業を再開した。16日から休業していた。
・ただ同国政府は預金引き出しを1日300ユーロに制限し、国外送金も規制した。
・資本規制は長期化し、最低1カ月は続く見通し。
・キプロスはギリシャ危機後、金融機関の経営が悪化。ユーロ圏に支援を求めた。
・ユーロ圏は15日、小口も含む預金者への6-10%課税を条件に支援を決めた。
・しかし国民が反発。議会が法案を否決し、銀行破綻などの危機が表面化した。
・同国銀行にはロシアなど外国人の預金が多く、マネーロンダリング疑惑も消えない。

◆BRICS首脳会議、開銀設立合意(26-27日)☆
・BRICS5か国は南アのダーバンで首脳会議を開催した。
・途上国のインフラ整備などを支援するBRICS開銀の設立で基本合意した。
・金融危機の際に資金を融通し合う基金の設立でも合意した。1000億円規模。
・アジアのチェンマイ・イニシアティブやEUのESMのようなIMF地域版のような機能を目指す。
・欧米中心のブレトン・ウッズ体制を脱し、新国際金融秩序樹立を目指す意図が透ける。
・BRICSの名が認知されて10年を経過。人口は世界の4割、GDPは2割を占める。
・ただ経済成長が鈍化し、後発新興国に追われるなど問題点も表面化してきている。

◆アラブ連盟首脳会議、シリア反体制派に代表権、軍事支援容認(26-27日)☆
・アラブ連盟はドーハで首脳会議を開催。シリア反体制派「国民連合」に代表権を与えた。
・同連盟は昨年11月、アサド政権の資格を停止していた。
・反体制派への支援拡大も合意。軍事支援も容認した。
・これに先立つ24日、国民連合のハティーブ議長は辞任を表明した。
・同議長は連合内の穏健派。強硬派との内部対立が原因を見られる。
・仮にアサド政権退陣が実現した場合も、混乱の懸念は消えない。

◆中央アフリカ、反政府勢力が首都制圧。仏が介入
・中央アフリカで反政府勢力のセレカが首都バンギを制圧した。
・ボジゼ大統領はコンゴに亡命。セレカを率いるジョトディア氏は暫定大統領就任を宣言した。
・フランスは在留国民保護を理由に300人の部隊を派遣した。マリに続く介入となる。
・ボジゼ大統領は2003年にクーデターで権力を掌握。2005年に大統領に就任した。
・その後、政府と複数の反政府勢力の戦闘が続いていた。

◆北朝鮮が「戦時」宣言(30日)☆
・北朝鮮は特別声明を発表し、南北関係は「戦時状況に入った」と宣言した。
・核戦争の可能性にも触れ、米韓などを威嚇した。
・米韓軍事演習に対する反発をあらわにした。
・北朝鮮は昨年来、ミサイル発射、核実験など強硬姿勢を強めている。今回の動きも一環。

 ┌─────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【3カ月終了】 今年も3カ月が過ぎ、第1四半期が終了した。主な動きを振り返れば、以下のような問題がある。
(1)中東アフリカの混乱: アルジェリアのテロ、マリの混乱とフランスの軍事介入、チュニジアの野党党首暗殺と混乱、エジプトの混乱、シリア情勢の混乱拡大など。
(2)中国習・李体制正式始動 
(3)オバマ政権第2期スタート
(4)キプロス危機: ユーロ危機は形を変えてくすぶり続ける。イタリア総選挙後の混乱長期化。
(5)サイバー攻撃: 攻撃が相次ぎ、問題への関心が高まる
(6)ローマ法王の退位と新法王フランシスコ選出
(7)北朝鮮核実験と強硬姿勢

 【イタリア政局混乱】 イタリアの政局混乱が続く。ナポリ他ーの大統領は29日、連立政権樹立に向けた調整をいったん中断した。各政党の対立が続き、連立のメドは立たない。非議員の実務家内閣でしのぐ案も、実現は難しい状況。大統領自身も近く任期切れという問題を抱えており、再選挙をやるにも手続き上煩雑な問題が求められる。
 2月の総選挙から1カ月以上を経過し、いまだ政権樹立のメドが立たないのは異常だ。平時ならとにかく、ユーロ危機など重要な問題を抱えているのにもかかわらず、である。  
 かつてのように、政治混乱がイタリア国内にとどまる時代ではない。加盟国の政治の不安定は、ユーロの抱える構造上の弱点の一つ。それが露呈している格好だ。

◎今週の注目(2013.4.1-7)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・4月にはベネズエラ大統領選(14日)、マレーシア総選挙(28日以前)などが行われる。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2013 INCD-club

2013年3月24日 (日)

2013年12号(3.18-24 通算665号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年3月18-24日

◆キプロス危機深刻化、ユーロ圏を揺るがす(19日)☆
・キプロスの金融危機が深刻化。ユーロ圏を揺るがす事態に発展した。
・同国議会は19日、ユーロ圏の支援の条件となっていた預金課税法案を否決。
・この結果支援が宙に浮き、銀行破綻などの懸念が拡大した。
・当局は大手銀整理で一部資金を捻出するなど代替案を策定。議会も22日可決した。
・しかし支援の条件には不十分。高額預金者の負担増などを模索中だが、先行き不明だ。
・人々は預金引き出しに殺到。経済活動は鈍化し、深刻な事態になっている。
・同国の銀行経営は世界金融危機後に悪化。ユーロ圏に支援を求めていた。
・ユーロ圏は15日、預金者の一部負担などを条件に100億ユーロの支援を決めた。
・しかし預金者は反対。世論を受けた議会は法案を否決し、危機が表面化した。
・今回の危機には、財政・金融機関の経営悪化というユーロ圏の他国と共通する部分がある。
・それに加えて同国がロシアと関係が深い事情もある。
・同国銀行の預金の30%はロシア企業や国民。マネーロンダリングなどの疑惑もささやかれてきた。

◆イラク戦争10年(20日)☆
・2003年のイラク戦争開始から10年が経過した。
・米国など多国籍軍は2011年に撤退。国防・治安維持はイラク軍が守る形に移行した。
・しかし治安はなお不安定で、20日も各地でテロが発生。60人が死亡した。
・10年間の犠牲者は10万人以上。数十万人との推定もある。米兵も4000人以上が死亡した。
・戦争は各地反米感情の高まり、テロ拡散などをもたらし、中東地殻変動の契機にもなった。
・米国外交は中東に縛られ、軍事介入は慎重に。リビアやシリアでも軍事作戦は控えた。
・大量破壊兵器が発見されなかったことで、戦争開始の判断は誤りだったとする意見が多い。
・ただ、総括はなお成されていない状況だ。

◆オバマ大統領が中東訪問(20日)☆
・オバマ米大統領がイスラエル、パレスチナ、ヨルダンを訪問した。
・イスラエル訪問は大統領就任後5年目で初。パレスチナ和平、イラン核問題などを協議した。
・不協和音が目立った関係修復をアピールした。ただ、個々の問題では意見相違も残った模様。
・パレスチナでは2国家共存を強調。和平促進の意欲を示した。しかし具体策は乏しかった。
・ヨルダンではシリアからの難民増加などを踏まえ、支援の拡大を約束した。
・シリアはアサド政権退陣が実現したても混乱が続き、テロの巣窟になる懸念があると述べた。

◆習中国主席がロシア訪問(22日)☆
・中国の習近平・国家主席が就任後初めて外遊。ロシアを訪問した。
・プーチン大統領と22日会談。共同声明を発表した。
・領土や主権など国家の核心的利益にかかわる問題で、相互の立場を理解すると明記。
・アジア太平洋地域の安全保障と協力強化のため新秩序の確立を提唱した。
・米国のアジア戦略に中ロで対抗する姿勢を映した内容だ。
・習主席はロシアの後、タンザニア、南アフリカ、コンゴ共和国を訪問。アフリカ重視を示す。

◆仏前大統領に捜査(21日)
・仏捜査当局は、サルコジ前大統領に対する捜査を正式に開始した。
・2007年の大統領選で、ロレアル大株主の富豪から違法献金を受け取ったとの疑惑。
・前大統領の疑惑は在職中からささやかれていたが、免責特権で捜査は進まなかった。
・大統領退任で捜査が動き出した模様だ。
・当局は20日、ラガルドIMF専務理事の自宅も捜査した。
・同氏はサルコジ政権で経済財政相を務めた。職権乱用にかかわった可能性があるとされる。

 ┌─────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【キプロス危機の奥深さ】 3月15日にユーロ圏による支援が決まってから4日後、キプロスの危機が火を噴いた。ユーロ圏の支援条件になっていた預金者に負担(最大10%程度)を求める法案を、議会が否決。支援が宙に浮き、銀行破綻などの懸念が高まったためだ。
 その後は世界注目の中、政府による代替策の模索、国民の抵抗、ユーロ圏との調整と進んでいる。ニコシアの街は閑散とし、経済破綻の直面する同国の状態は深刻だ。しかし、ドタバタに見える対応は、喜劇のようでもある。
 世界経済危機をきっかけにした財政悪化や金融機関の経営悪化、進まぬ財政改革、国民の緊縮財政への抵抗などは、ギリシャなど他のユーロ圏諸国と共通する。しかし、キプロスの場合他の国にない要素がある。ロシアとの関係だ。
 ロシアとキプロスの関係は深く、キプロスの金融機関の預金の30%はロシアの企業や国民。キプロスは外国企業呼び込みのために税制面などで様々な優遇措置を導入しており、これをロシア企業が活用した。マトモな経済活動だけでなく、マネーロンダリングに活用していた事例も少なくないとされる。
 ユーロ圏もそれを知っていたから、預金者に負担を強いる支援策をあえて打ち出したという勘ぐった見方もある。いずれにしろ、キプロス問題の解決は他国のようにユーロ圏・EUとの関係だけでなく、ロシアも関わるから複雑だ。
 キプロスは欧州諸国と言いながら、地理的にはアジアに近い。地政学上重要で、EUや米国から見れば単に経済の問題だけで割り切れない。
 キプロスがこれだけで世界から脚光を浴びるのは、1974年の紛争(島北部のトルコ系住民が独立宣言)以来と言っても言い過ぎでない。

 【中東の動き】 イラク戦争開始から10年経った。折しもオバマ米大統領がイスラエル、パレスチナ、ヨルダンを訪問。パレスチナ問題、シリア情勢、イランの核問題などに改めて焦点を当てた。
 レバノンではミカティ首相が23日スレイマン大統領に辞表を提出し、内閣総辞職した。背景には親シリアのヒズボラと、反シリアの野党勢力の対立激化がある。新政権樹立の調整難航は必至で、空白期間の長期化も予想される。

 【英国の法人税切り下げ】 英国のオズボーン財務相が20日の予算演説で、法人税率の追加引き下げを発表した。同国は2011年28%だった税率を14年までに21%へ下げるが、さらに2015年に20%に下げるという内容。財務相は親ビジネスのメッセージを強調した。
 世界各国は企業誘致・競争力強化をめざし法人税の引き下げを競っているが、先進国では英国が先頭に立つ。目下ユーロ危機が国際ニュースの見出しを取ることが多いが、経済政策は多方面から見る必要がある。

 【韓国にサイバー攻撃】 韓国の放送局や銀行が20日サイバー攻撃を受け、システムが停止した。KBSテレビ、MBCテレビ、YTNテレビではPCが機能しなくなり、復旧まで風時間かかった。新韓銀行などではATMが停止。ネットバンキングも使えなくなった。韓国政府は官民軍合同の対策本部を設置し、調査に乗り出した。北朝鮮の関与などの情報も交錯している。

◎今週の注目(2013.3.18-24)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・キプロス危機の行方に注目。
・南アでBRICS首脳会議が開かれる。習近平中国国家主席も参加。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2013 INCD-club

2013年3月17日 (日)

◆中国胡・温体制の遺産 2013.3.17

 中国全人代が5-17日行われ、習近平国家主席(共産党総書記)-李克強首相を中心とした新体制に移行した。胡錦涛主席-温家宝首相は完全に引退した。胡・温体制10年の総括は、中国の現状を考える材料になる。

▽胡・温氏の10年

 胡錦涛氏が共産党の総書記に就任したのは2012年秋、国家主席に就任したのは2013年春。その後10年の歴史は、以下の通りだ。

・(2001年) WTO加盟
・2002年 胡錦涛体制発足
・2003年 SARS
・2004年 レノボがIBMのPC部門買収。中国企業のグローバル化の象徴例。
・2005年 人民元改革(2%切り上げなど、その後も人民元問題くすぶる)、反日デモ(小泉首相の靖国訪問)
・2007年 GDP世界3位
・2008年 北京五輪、チベット問題、四川地震、台湾総統選馬英九勝利→中台関係改善へ
       世界金融危機。4兆元の財政支出で対応。
・2010年 GDP世界2位に。上海万博。尖閣問題で日中対立
・2012年 共産党大会で習近平体制に。薄康来事件(重慶市書記解任)。尖閣問題で日中対立。
・2013年 全人代で習国家主席、李首相の体制に

▽経済成長の10年

 胡・温体制発足の2002年から2012年の間、中国経済は年率10%前後の成長を実現し、経済規模は約4倍になった。2010年には日本を抜いてGDP世界2位になり、それに先立ち輸出世界1などの座を固めた。

 アップルを始めとするIT機器など、国際経済を支える生産拠点が集中。「世界の工場」としての存在感を拡大した。自動車などは世界の最大市場となり、「巨大市場」としての地位も固めた。交通、通信、住宅などのインフラ整備が進み、特に都市部では生活水準が格段に向上した。

 もちろんGDP2位といっても、1人当たりの所得は先進国の10分の1。経済成長が輸出と公共事業依存のいびつな構造であることも事実だし、格差拡大などの問題も深刻化している。それでも驚異的な経済成長を実現した事実は重い。
 
▽危機対応

 胡錦涛時代には数多くの危機に直面した。2003年のSARS、2008年の異例の雪害と四川地震、チベット問題、2012年の列車事故、度々起きた新疆ウイグルの民族問題や深刻な公害被害など枚挙にいとまがない。2011年のアラブの春を受けたネット上での自由を求める動き、2012年の薄煕来事件をはじめとする政治的問題なども浮上した。こうした事態を、当局は硬軟両面の策で押さえ込んだ。

 中でも大きかったのは2008年の世界金融危機。当局は経済悪化や金融危機防止のため4兆元の財政支出を実施し、危機の拡大を押さえ込んだ。

 こうした押さえ込みが長い目で見てプラスかどうかの見方は色々ある。しかし、短期的に当局(中国共産党)の危機管理能力が高いことを示したのは間違いない。

▽深刻な格差・汚職

 胡錦涛体制は当初から格差拡大、汚職の蔓延、環境悪化などの問題に取り組んだ。和階社会の実現を目標に掲げ、西部大開発など地域格差是正の政策を推進した。汚職の摘発も強化し、多数の公務員汚職を摘発した(全人代報告では、過去1年間に4万7000人)。温家宝首相は地方視察を繰り返し、不正問題に取り組む姿勢を示し続けた。

 それでも事態改善は限定的だった。職が見つからない若者「蟻族」や地下の劣悪なの場所に住む「モグラ族」は拡大。地方の不正への抗議活動は、年間数万件とも数十万件とも言われる。

▽政治改革は進まず

 政治改革は進まなかった。農村レベルで模索された選挙は拡大せず、法による支配の浸透も遅れた。私有財産拡大などの変更はあっても、共産党独裁の原理は不変。統治の正統性の問題は、解消されることなかった。

▽高成長が矛盾を吸収

 第1-第3世代の中国は、様々な激震に見舞われた。毛沢東の第1世代には、文化大革命や数々の権力闘争が展開され、経済は混乱した。鄧小平の第2世代から江沢民の第3世代にかけては、天安門事件とそれに続く混乱などをけいけんした。それに比べると胡錦涛の第4世代の10年は、数々の問題を抱えながらも国体が揺らぐことなかった。

 数々の社会問題や社会矛盾があっても態勢を揺るがすような混乱にならなかったのは、高い経済成長があったからこそ。胡体制の10年は、「高成長が矛盾を吸収した時代」である。

▽引き継がれた課題

 英BBCは胡・温体制のlegecy(What did Hu Jintao and Wen Jiabao di for Chine?)と題する記事で、過去10年を「成長第1、政治・社会改革第2」と位置付けたうえで、次の10年が不安定と党の分裂のような事態に陥ったとしたら、胡・温体制の10年は「機会を逸した時代」と判断されかねないと評した。諸問題は、習・李体制に引き継がれたと見るべきだろう。

2013.3.17 

◆ローマ法王情報メモ 2013.3.17

 新しいローマ法王に13日アルゼンチン出身のフランシスコ1世が選ばれた。前法王ベネディクト16世の存命中の退位が異例(約600年ぶり)なら、新法王が米州出身、イエズス会出身なのも初めてだ。

 法王やカトリック教会を巡る問題は奥が深く、世俗的な視点からだけの表面的な分析はかえって本質を見誤らせる恐れがある。それでも今回の一連の動きからは、ローマ教皇やカトリック教会を巡る情勢変化や課題が見えてくる。情報を整理する。

▽新旧法王

 前法王ベネディクト16世(85)は265代目。ヨハネ・パウロ2世の死去を受けて2005年に就任した。独出身の法王は950年ぶり。今年2月に高齢を理由に辞任を表明し28日退位した。法王の存命中の退位は1415年のグレゴリオ12世以来約600年ぶり。

 新法王となったフランシスコ1世(76)は266代目。本名ホルへ・マリオ・ベルゴリオ氏で、ブエノスアイレス大司教を務めていた。両親はイタリア移民。大学で化学を学び、イエズス会に入会して聖職の道に入った。米州出身の法王は初めてで、イエズス会出身の法王も初。欧州出資以外は1300年ぶりという。

▽コンクラーベ

 新法王を選出するコンクラーベ(法王選出選挙)には80歳未満の枢機卿115人が参加。無記名投票で3分の2の表を集めると決まる。ただし、特定期間を過ぎた後には上位2人の決選投票などに切り替える。20世紀に置きなわれたコンクラーベは8回。2-3日で決まることが多かった。

▽信者数

 新法王の選出は、カトリック教会を取り巻く環境変化を抜きには語れない。全世界のカトリック信者12億人の地域的分布は、中南米が最大で4.8億人。次いで欧州の2.8億人、アフリカ2億人弱、アジア1.5億人、北米1億人弱などと続く。中南米は最大の信者を抱えるだけでなく、その伸び率も高い。

▽保守とリベラルの対立

 カトリック教会内部では、キリスト教の原理を忠実に追及すべきだとする保守派と、現代社会に即した行動を主張するリベラル派が対立してきた。1960-70年代には中南米で実践を前面に出した解放の神学が広がった(教会との関係は単純ではないが)。近年においても、保守対リベラルの対立は重要な問題点になっている。

▽他宗教との和解

 ヨハネ・パウロ2世(1978-2005年)時代から他宗教との対話・和解を推進した。同法王は就任後、プロテスタント諸会派との会合や東方正教会をの和解を推進。ユダヤ教のシナゴークも訪問した。2000年にはエルサレムを訪問し、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の和解に向けた姿勢を示した。こうした動きは他宗教・宗派からも一定の評価を受け、距離が縮まった。

 ベネディクト16世も和解を目指したが、2006年にイスラム教のジハードを批判する(と受け止められる)発言をし、イスラム諸国の反発を招いた。この影響もあり、イスラムとの対話促進は進まなかった。

▽スキャンダル

 カトリック教会内の権力闘争やスキャンダルはしばし表面化している。

 最近のスキャンダルで注目されるのは、カトリック聖職者による幼児の性的虐待スキャンダル。アイルランドやドイツ、米国などで表面化した。教官の威信を揺るがした。

 2012年には強硬あての告発文書がリークされる事件(バチリークス・スキャンダル)が発生。バチカン内の権力闘争を垣間見させた。

▽黒いカネ

 中でも深刻なのは、黒い資金を巡る問題。バチカンとカネの問題は古くから指摘され、1982年代にはバチカンの資金管理を行うアンブロシアーノ銀行の頭取がロンドン・テムズ川のブラックフレイアーズ橋で首吊り死体で発見される事件があり、世界の注目を浴びた。ヨハネ・パウロ2世時代にバチカンの資金がポーランドの連帯支援などに流れていたという疑惑もある。

 その後もマネーロンダリングの疑惑は消えず、近年は米国などが名指しで批判。海外銀行もバチカンとのATM取引を中止するなど問題が広がった。前法王に対しては、こうした問題に十分対処できていないなどの批判も出ていた。

▽海外メディアのコメント

 海外有力メディアのコメントは様々だ。

 新法王への期待はもちろん大きい。新法王の名前の元となった聖フランシスコは、貧しい人々を助け平和を愛した聖人。BBCはPope Francis wants "poor church for the poor"(新法王は貧しい人のための貧しい教会を望む)と評価した。

 NYタイムズは"With Blessing, Pope Shows an Openness to Other Faiths"(他の信念に寛容差を見せた)と他宗教との和解などに期待を示した。

 一方で、教会の改革は容易でないとの認識もうかがわせる。英FTは”A Pope in scandals to lead the Church"という社説で、New way pope faces old forces (新しいやり方を目指す法王は旧勢力と直面する)と指摘。貧困対策などに取り組むことが、スキャンダルに焦点が当たる現状の打開につながるとの見方を示した。

 英Economistは”Rejigging the colleage of cardinals, a thirs of whome are Italian、should be a priority"(枢機卿の改革が優先課題であるべき)と指摘した。

 問題の広がりは大きく、世界への影響も大きい。

2013.3.17

2013年11号(3.11-17 通算664号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年3月11-17日
 

◆ローマ法王に初の南米出身、フランシスコ1世(13日)☆
・法王選出会議は新ローマ法王にベルゴリオ・ブエノスアイレス大司教(76)を選んだ。
・フランシスコ1世として266代目の法王に就任した。
・米州出身の法王は初。欧州以外の出身者は1300年ぶり。イエズス会出身者も初。
・新法王は保守派だが穏健派。社会問題への取り組みでは革新的とも指摘される。
・教会内の権力闘争やスキャンダル、他宗教との関係改善などの課題に取り組む。
・世界のカトリック信者12億人中、中南米は4.8億人で最大。過去20年で約8倍増した。
・新法王選出にも、カトリックのこうした変化が反映されている。
・ベネディクト16世退位を受け、コンクラーベ(選出会議)が12日開催、2日目に決まった。

◆中国国家主席に習氏、新体制始動(14日)☆
・中国全人代は習近平総書記を国家主席に選出した。
・首相には15日李克強氏を選出。他の閣僚も決めた。習・李体制が正式に始動した。
・経済成長の維持や格差是正、汚職防止、環境などの課題に取り組む。
・国家副主席に李源湖政治局員が就任。常務委員でない国家副主席は15年ぶり。
・全人代は政府改革として鉄道省解体などを決定した。ただし当初目的より骨抜き部分も多い。
・全人代は17日7.5%成長を目指す政府活動報告などを採択して閉会した。
・習主席は演説し、生活向上、格差是正や愛国主義、軍の強化などを強調した。
・ただし、政治改革への言及はなかった。
・オバマ米大統領は14日習主席と電話会談。サイバー攻撃への懸念などに言及した。

◆ケニア大統領選、懇談拡大、対抗候補が異議申し立て(16日)☆
・選管は9日、4日実施の大統領選でケニヤッタ副首相の当選を発表した。
・次点のオディンガ首相支持派は不正があったと抗議。一部は暴徒化し各地で警察と衝突した。
・オディンガ首相派は16日最高裁に異議申し立てた。認められれば再選挙になる。
・同国では2007年の大統領選後も支持者同士が衝突。1100人の死者が出た。
・背景には貧富の格差拡大、民族対立、政治の腐敗などがある。
・他のアフリカ各国にも共通する構造的問題。

◆イスラエル連立政権合意、中道参加で和平始動も(14日)☆
・ネタニヤフ首相は中道政党3党などど連立政権樹立で合意した。
・首相が属す右派リクードと、中道「未来」「ハトヌア」、右派ユダヤの家の連立。
・法相はハトヌアのリブニ党首(元外相)が就任、中東和平を担当する。同氏は和平推進派。
・2009年からのネタニヤフ政権は対パレスチナ強硬姿勢を取り、入植地建設も進めた。
・リブニ氏らの入閣で強硬姿勢が弱まり、停滞していた交渉が動き出す可能性がある。
・オバマ米大統領は20日、就任以来初めてイスラエルを訪問する。

◆ユーロがキプロスに支援(16日)☆
・ユーロ圏はキプロスに最大100億ユーロの金融支援を行う事で合意した。
・財務相会議が発表した。IMFも支援に参加する。
・ユーロ圏による金融支援はギリシャ、ポルトガル、アイルランド、スペインに続き5カ国目。
・キプロスは昨年6月に支援を要請。9カ月を経ての決定となった。
・2月末の大統領選で財政再建に前向きなアナスタシアディス氏が当選。調整が進んだ。
・キプロスの銀行への預金者は、1回に限定し約6-10%の課徴金を徴収する。

 ┌─────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【ケニアの大統領選後の混乱とアフリカ】 ケニアの大統領選(4日)を巡り、混乱が拡大した。選管はケニヤッタ副首相の当選を発表したが、オディンガ首相派が反発。衝突も発生した。2007年の大統領選後も衝突が起き1000人以上が死亡したが、その二の舞になりかねない。
 ケニヤッタ氏は故ケニヤッタ初代大統領の息子。2007年の暴動を巡り、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に訴追されている(ケニヤッタ氏は関与を否定)。
 混乱の背景にある民族対立、富の分配を巡る争いなどは、アフリカの他の国にも共通する。アフリカ諸国は先進国から途上国への経済シフトや豊富な資源を背景に経済成長を高めているが、格差も拡大している。若者などが不満を強め、何かをきっかけに対立がしばしば表面化する、という構図だ。ここに宗教、民族などの対立が絡む。 ケニア大統領選の混乱には、アフリカの抱える問題も凝縮されている。

 【ヒッグス粒子】 CERN(欧州合同原子核研究機関)は14日、昨年発見の新粒子がヒッグス粒子であると事実上断定した。「ヒッグス粒子であることを強く示唆している」と発表した。CSRNは昨年7月、粒子発見を発表。その後データ解析を進めていた。重力を除く3つの力(電磁気力、強い力、弱い力)をまとめる「標準理論」が完成することになる(らしい)。国際社会の今日明日がどうなるいという話ではないが、歴史的に重要な話だ。

 【シリア反体制派支援】 英国のキャメロン首相は12日、シリアの反体制派に武器供与に踏み切る可能性を示唆した。EUは今のところ武器供与はしない方針だが、単独でも実施する可能性に触れたもの。EU内ではフランスも従来より前向きな姿勢を示している。これに対しロシアのラブロフ外相は13日英国訪問時に会見し、首相を批判した。
 シリア情勢は同国内の問題(アラウィ派中心のアサド政権とスンニ派中心の反体制派の対立)であるとともに、アサド政権を指示するイランやロシアと、反体制側を支持するアラブ諸国や米欧の対立、という側面もある。武器支援は、情勢を大きく動かす要素になる。

◎今週の注目(2013.3.18-24)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・イラク戦争の開始から20日で10年。イラクは内戦状況を脱し米軍(戦闘部隊)などの撤退も終了したが、なおテロが散発する。10周年に合わせ、世界の主要メディアなどはイラク戦争の総括も行う見込み。英FTは今月初めの社説で、イラク戦争開始の判断が誤りだったことと、その反省から欧米が「国連決議なしの行動」にあまりにも慎重になったなどと指摘した。世界を見るうえで注目に値するコメントを押さえたい。
・オバマ米大統領が20日イスラエル、パレスチナを訪問する。それに先立ち、イスラエルに連立政権が正式に発足する。

・習近平中国国家主席が3月下旬にロシア、南アフリカを訪問する。国家主席就任後、初の外遊になる。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2013 INCD-club

2013年3月10日 (日)

◆チャベス大統領の死去と中南米情勢 2013.3.10

 ベネズエラのチャベス大統領が死亡した。中南米の左翼反米政権の代表格で、国際的存在感も大きかった人物。その死去は、中南米情勢にも影響を与える。

▼様々な反響

 チャベス大統領は昨年10月の大統領選で4選された後、ガンが悪化。キューバで治療を受けた後、自国に戻って入院治療を受けていた。この間、マドゥロ副大統領を事実上の後継者に指名した。3月5日に死亡した。

 同氏死亡のニュースは様々な反響を呼び起こした。大統領支持派は追悼の集会などを繰り返した。キューバは3日間、喪に復した。8日に行われた葬儀には、ボリビアのモラレス大統領など近隣左派政権を率いるぼ指導者に加え、イランのアフマディネジャド大統領、ベラルーシのルカシェンコ大統領など友好国の首脳が参加した。

 一方、敵対してきた米国のオバマ大統領は「ベネズエラと建設的な関係を発展させる用意がある」などと表明。欧州諸国もチャベス後をにらんだ“外交的”なコメントが多かった。

▼左翼・反米の象徴

 チャベス氏が政治の表舞台に登場したのは1992年。陸軍中佐時代にクーデターを起こした時だ。この試みは失敗したが、国民に向けた声明などが貧困や格差の拡大、腐敗に苦しむ国民の気持ちをとらえた。

 1998年の大統領選で当選。その後国民投票で大統領再選を可能にする憲法改正(1999年と2012年)を行い、2000年、2006年、2012年の大統領選で再選を果たした。この間2002年には軍部のクーデター(背後には米国の関与が指摘される)で一時拘束されたが、国民の支援デモなどを背景に2日で復帰した。

 チャベス氏は石油資本などの国営化を断行。豊かな石油収入を背景に貧困対策を推進した。これにより、貧困層からは絶大な支持を得た。大統領はこうした政策を「21世紀の社会主義」と表現した。

 一方、国際的には反米主義を公然と主張。国連総会でも米国公然と批判する演説を実施した(2006年)。キューバと緊密な関係を築き、近隣の左派勢力に対しては石油を供与するなど支援した。こうした行動を通じ、1国の指導者にとどまらず、中南米の左派・反米指導者の象徴として存在感を拡大した。

▼割れる評価

 評価は当然割れる。国内では貧困層などからカリスマ的指導者として支持を受ける一方で、経済界などからは激しい反発を招いた(それが2002年のクーデターに結びついた)。

 国際的には反米の中南米の左派勢力やイランやベラルーシなどと緊密な関係を構築。一方で米国とは対立し、欧州とも冷たい関係が続いた。

 評価の言葉も様々だ。カリスマ的指導者という好意的な評価の一方、ポピュリスト、独裁者などの批判も多い。

▼軍事独裁から中南米左派まで(中南米の動き)

 中南米の歴史は、国際情勢や米国との関係に翻弄される形で動いてきた。20カ国以上に及ぶ中南米各国を動きを一つにまとめるのは無理があるし、特に小国では理屈では説明できないような対立や混乱が続く。それでもあえていくつかのトレンドをまとめれば、以下の整理が可能かもしれない。 

(1)社会主義政権の発足と軍事独裁政権の樹立
・1950-70年代。東西冷戦を背景にキューバのカストロ政権、チリのアジェンデ政権などが発足した。
・これに対抗する形で米国の支援で軍事政権が発足。チリではクーデターでピノチェト政権が成立した。
・チリ、グアテマラなどの軍事独裁政権化では多数の反対派が殺害された。

(2)クーデターの頻発
・1964年のブラジル、73のチリ、76年のアルゼンチンなど、ほとんどの国でクーデターや未遂を経験する。

(3)政治的混乱と内戦
・1960-80年代中心。軍事独裁政権と左翼組織(ゲリラなども)の対立などで内戦が起きた。
・グアテマラ、エルサルバドル、ニカラグア、コロンビアなど。
・数年から20年余り続き、数万人単位の死者を出している。
・内戦終了後も心理的な対立などは残り、社会の傷になっている。

(4)民主化の実現
・ブラジル、チリ、アルゼンチンなどで1980年代以降民主化が実現した。
・東西冷戦の雪解け、解消などが背景にある。
・内戦経験のエルサルバドル、ニカラグアなども90年代以降、選挙による政府が実現した。
・しかし混乱が続き、民主化が順調に進んだとは言い切れない国も多い。

(5)奇跡の成長から失われた10年
・1960年代にはブラジルなどが奇跡の成長ともてはやされた。しかし70年代の石油危機を経て混乱した。
・1980年代には債務危機が表面化し、失われた10年を経験した。
・80年代末から90年代初頭にはハイパーインフレを経験。経済混乱は深刻だった。

(6)中南米ルネサンスとBRICsの時代
・90年代の改革で中南米ルネサンスと期待された。しかし、90年代末の通貨危機で再び混乱した。
・アルゼンチンはデフォルトを宣言し、その後経済が破綻した。
・一方ブラジルなどは乗り越え、2002年以降BRICsともてはやされた。

(7)地域統合
・1995年のメルコスル発足が代表。地域内の経済統合は徐々に進んでいる。
・2008年の世界金融危機後、アルゼンチンなどで保護主義的な政策も出ている。

(8)中南米左派
・2000年代に入ってからのキーワードの一つ。
・99年にチャベス氏がベネズエラ大統領に就任。その象徴的な存在になった。
・2002年にはブラジルにルーラ大統領が就任。穏健派だが左派色も帯びる。
・ボリビアのモラレス大統領(2005年)、エクアドルのコレア大統領(2006年)などが続く。
・資源の国営化、原住民の権利保護などが共通項。

▼中南米年表

 上記のトレンドを含む第2次大戦後の中南米の主な動きを年表にまとめれば、以下の通りだ。

・1953 キューバ革命。カストロ政権成立。
・1962 キューバ危機。
・1964 ブラジルで軍事政権(クーデター)。85年に民政移管。
・1970 チリ選挙でアジェンデ政権(社会主義)発足。
・1973 チリでクーデター。ピノチェト政権(軍事独裁)。89年に民政移管。
・1976 アルゼンチンで軍事政権。83年に民政移管。
・1980 エルサルバドル内戦(92年まで。死者7万5000人)。ニカラグア内戦(90年まで5万人死亡)
・1982 メキシコの債務危機が表面化。その後中南米全体の債務危機に発展。
     中南米は経済で失われた10年を経験。
・1982 フォークランド戦争でアルゼンチン敗北。軍事政権崩壊の引き金に。
・1989 冷戦終了。1991年にはソ連崩壊。
・80年代末 ブラジル、アルゼンチンなどでハイパー・インフレを経験。経済混乱深刻。
・1994 ブラジルがレアル・プラン。中南米ルネサンス。アルゼンチンはメネム政権下で経済改革。
・1995 メルコスル発足。
・1997-98 通貨危機。各国経済悪化。
・1999 ベネズエラでチャベス大統領就任(中南米左派の代表)
・2001 アルゼンチンがデフォルト。経済崩壊状態に。
・2002 ブラジルでルーラ政権発足。BRICsの時代
・2004 ボリビアにモラレス政権(左翼)。2006年にはエクアドルにコレア政権。
・2013 チャベス大統領死亡

▼チャベス後の中南米

 2000年代に入り脚光を浴びる中南米左派は、貧富の格差拡大への反発、外国資本による富の収奪への反発などが背景にある点で共通する。しかし、各国の事情は異なる。膨大な石油資源を持つベネズエラの試みが各国にそのまま通用するものではない。

 ベネズエラの政治も中南米左翼も、チャベス氏個人に支えられて成り立ってきた面がある。チャベス氏はベネズエラの民衆の心をとらえるカリスマ性があったし、中南米左翼という理念を支える象徴的な存在だった。同時に石油を通じた支援も重要だった。

 ベネズエラでは10年以上にわたるチャベス氏独裁による硬直性も指摘される。中南米左翼諸国の指導者もその理念とともに、米国との関係改善など現実的な側面も持ち合わせている。ベネズエラも中南米も、チャベス後はこれまでと変わざるを得ないだろう。

2013.3.10
 

2013年10号(3.4-10 通算663号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年3月4-10日
 

◆チャベス大統領が死亡(5日)☆
・ベネズエラのチェベス大統領がガンのため死亡した。58歳。
・同氏は99年就任。反米左派政権の象徴的存在で、国際的存在感も大きかった。
・国内的には石油資本の国有化や貧困対策を推進。貧困者の強い支持を受けた。
・その一方で経済界などとは対立。同国内は支持派と反対派で2分されていた。
・昨年10月の大統領選で4選されたが、その後ガン再発で治療を受けていた。
・後継大統領選は30日以内に実施。マドゥロ副大統領と野党候補の一騎打ちの見込み。
・8日の葬儀にはイラン、ベラルーシなどの首脳が参加。影響の大きさを見せつけた。
・同大統領の死亡で、中南米情勢も大きく動く可能性がある。

◆中国全人代、成長7.5%目標、安定成長を前面(5日)☆
・中国の全人代が開幕。温家宝首相が活動報告を行った。
・経済の安定成長を前面に出し、13年の経済成長目標は7.5%とした。
・成長維持のため積極的な財政出動を維持。一方で物価抑制策も強化する。
・格差の是正、汚職対策、環境対策強化なども強調した。
・会議は習近平国家主席、李克強首相など新体制を選ぶ。

◆国連安保理が北朝鮮制裁決議、北朝鮮は反発(7日)☆
・安保理は北朝鮮への新たな制裁決議を採択した。3回目の核実験への措置。
・禁輸品輸送の疑いがある船舶への臨検強化などが内容。
・北朝鮮は反発。8日には南北朝鮮相互不可侵合意の破棄を発表した。
・朝鮮半島非核化共同宣言の白紙化、板門店の連絡通路閉鎖なども宣言した。

◆NY株が5年ぶり高値、世界的に株高(5日) ☆
・NYの株式が上昇。ダウ平均は5年5月ぶりに(07年10月以来)最高を更新した。
・その後8日まで4日連続で最高値を更新。1万4397ドルまで上がった。
・日本の日経平均は8日、リーマン・ショック前の水準を一時回復した。
・世界各国の株価は上昇。リーマン・ショック前の水準回復したところが多い。
・先進国の金融緩和→カネ余りへの思惑などが背景にある。

◆欧州、金融期間や企業トップに報酬規制の動き
・スイスで上場企業トップへの高額報酬に制限をかける事が決まった。
・3日の国民投票の結果、憲法改正を通じ導入する。株主に決定権を持たせる。
・EUは銀行員の賞与の上限を年間給与の額以内にする規制案で大筋合意した。
・早ければ14年から導入する。ただし、英国などは慎重で調整が必要。
・欧州では金融機関や企業トップの高額報酬に批判が拡大。対策を模索している。

 ┌─────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【中国全人代】 中国全人代が17日までの日程で始まった。全人代がここまで注目されるようになったのも、中国の経済力・存在感の拡大を映す。同国の定点観測には絶好のポイント。そして、世界の他の国と異なる中国の特異性も印象付けられる。

 【世界の経済と市場】 世界的に株高が進展。NYダウが史上最高を更新するなど、リーマンショック前の水準を回復した。背後にあるのは金融緩和→カネ余りの連想。日本は日銀新総裁下での金融緩和を促進、欧州、米国は緩和政策の維持を強調している。そこに実体経済回復が加わっていれば健全だが、どこまで評価できるのか。仮に実体経済改善がなければ、新たなバブル→新たな問題の発生ともなりかねない。それでも、経済・市場が「新たな動き」を見せていることは間違いない。

◎今週の注目(2013.3.11-17)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・中国の全人代が17日まで。閉幕までに習近平共産党小書記が新国家主席に選出され名目ともに習体制が始まる。新首相には李克強副首相が就任する予定で、17日には記者会見を行う。新体制のメッセージに注目だ。
・新しいローマ法王を選出するコンクラーベ12日に始まる。本命不在の選出とされる。
・EUの首脳会議が14-15日。ユーロ危機、経済対策などを協議するが、影を差すのがイタリアの政局。選挙後も新政権発足のメドが立たず、政権不在→再選挙の可能性は消えない。財政緊縮策後退への圧力も強く、そうなればユーロ危機再燃の懸念も高まる。そうしたイタリアの政局の行方を左右する1人であるベルルスコーニ前首相に対し、ミラノ地裁は7日通信の機密漏えいで有罪判決を下した。同氏は少女売春事件の公判も近く結審する予定。イタリア、EUの行方に、ベルルスコーニ氏の醜聞が絡んでいるところも、笑うに笑えぬ現実だ。
・東日本大震災から11日で2年。災害対策、原発政策など改めて見直す機会。

・習氏が3月下旬にロシア、南アフリカを訪問する。国家主席就任後、初の外遊になる見通し。
・イラク戦争開始から3月20日で10年になる。
・オバマ米大統領が20日からイスラエルを訪問する。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2013 INCD-club

2013年3月 3日 (日)

◆イタリア選挙結果が突き付けるもの 2013.3.3

 イタリア総選挙は上下院両方で過半数を獲得した政党がなく、政治混乱が避けられなくなった。改革路線の後退が懸念され、ユーロ危機再燃の不安も強まる。それにしても同国の政治は、英独仏に比べても混乱ばかりが目立つ。「イタリア的」と言えばそれまでだが、欧州が抱える構造的な問題も映している。

▼財政改革派、国民の支持得られず

 2月24-25日に行われた総選挙の焦点は、モンティ政権が推進してきた財政改革路線を継続するかどうかだった。

 改革推進を打ち出したのは、ベルサニ民主党党首を首相候補にする中道左派連合と、モンティ首相が率いる政党連合。これに対してベルルスコーニ前首相を代表とする中道右派と、コメディアンのグリッロ氏が率いる新党「5つ星運動」は反緊縮路線を打ち出した。

 選挙の結果、下院では中道左派が630中345議席を獲得し、過半数を確保した。同国の選挙は比例代表だが、下院では第1党が340議席以上を獲得できる仕組みになっており、これが寄与した。しかし中道左派連合は、州ごとに議席が決まる上院(315議席)で123議席しか獲得できず、改革派のモンティ連合(19議席)と合わせても過半数に達しなかった。

 中道右派連合は下院125、上院117議席と中道左派に肉薄。5つ星運動は既存政党への不満票を集め、下院109、上院54議席を獲得し第3勢力として躍進した。

 選挙は勝者不在に終わり、改革派は国民の支持を得られなかった。選挙後の議席は以下の通りだ。

-中道左派連合(ベルサニ民主党党首) 下院345議席(得票率29.5%)、上院123議席
-中道右派連合(ベルルスコーニ前首相) 下院125議席(得票率29.2%)、上院117議席
-5つ星運動(グリッロ氏) 下院109議席、上院54議席(得票率は上下院でそれぞれ24-26%)
-モンティ首相の政治連合 下院47議席、上院19議席(得票率は約10%)
-その他 下院4議席、上院2議席
-合計 下院630議席、上院315議席

▼「統治不能」

 イタリア議会は3月15日に招集され、ナポリターニ大統領が中心に政権発足の調整に入るが、難航は必至だ。民主党のベルサニ党首は新政権樹立に意欲を見せる。しかし中道左派連合とモンティ連合だけでは議席が足りない。

 中道右派と5つ星運動は、緊縮路線に反対の立場。政権樹立のために妥協すれば、財政再建路線が揺らぐ。

 選挙後、現地のメディアは「統治不能」などと報じた。連立工作失敗→再選挙を予測する見方もある。「政治のマヒ」は懸念ではなく、現実になっている。

▼市場の懸念拡大

 市場は改革の行方に不安を感じ、株価は下落。イタリア国債の利回りは上昇した。

 2011年秋のベルルスコーニ首相退陣は、市場の圧力が原因だった。イタリアは政府累積債務がGDPの125%に達し、ユーロ圏ではギリシャに次いで財政状態が悪い。ベルルスコーニ政権の改革は十分とは言い難く、イタリア国債の利回りは危機ラインとされる7%を上回った。首相は退陣を余儀なくされ、非議員のモンティ政権が発足した。

 モンティ政権は財政赤字削減策や硬直的と言われる労働市場の改革などを打ち出した。その結果、イタリア国債の利回りは4%台に低下し、市場は小康を取り戻した。しかし今回の選挙結果により財政懸念が再び拡大。ユーロ危機再燃の懸念も強まった。元の木阿弥になりかねない。

▼ポピュリズムに走る政治

 今回の選挙で、市場や欧州の他国は改革派の勝利を期待した。しかし、結果は反対。むしろ露呈したのは、財政緊縮に対する国民の強い抵抗だった。

 ベルルスコーニ前首相は選挙戦で、減税などポピュリスト的な主張を前面に出し、一定の指示を集めた。5つ星運動の主張も、ポピュリスト的だった。

 Economist誌は、ベルルスコーニ氏とグリッロ氏をピエロにたとえ、今回の選挙は政治を「ピエロにゆだねるもの」とコメント。「イタリアの人々は現実直視を回避する決断をした」(have decided to avoid reality)と分析した。
 
 Economistをはじめとした英国メディアは過去10年以上にわたり、ベルルスコーニ政権を批判してきた。同氏はたびたびのスキャンダルやメディアの独占など、英国や米国の価値基準からすれば信じられない行動を取ってきた。それにもかかわらず、ベルルスコーニ氏はイタリア国民から一定の支持を受け、何度も復活してきた。このことは英米のセンスからすれば理解しがたく、メディアは冷笑的なコメントを加えるしかできないのかもしれない。

▼混乱続くイタリア政治

 欧州主要国のうち英国、フランス、ドイツでは第2次世界大戦後一貫して比較的長期政権が続いたのに対し、イタリアでは短命政権が続いた。1989年の冷戦終了後も状況は同じ。1990年代の英国の政権交代は、サッチャー→メージャー→ブレア→ブラウン→キャメロンの5代。フランスではミッテラン→シラク→サルコジ→オランドの4代。ドイツはコール→シュレーダー→メルケルの3政権だ。

 これに対し、イタリアはめまぐるしい政権の交代が続いた。

-1988 アンドレオッチ政権。キリスト教民主党(CD)と社会党などの連立。冷戦時代の構図。
-1992.6 アマート政権(社会党中心)。4月の総選挙でCDが後退。
      ミラノ福祉施設汚職事件を機に政界スキャンダル。CD、社会党など既成政党崩壊へ。
-1993.4 チャンピ政権(非議員)。
-1994.5 ベルルスコーニ政権(第1次)。総選挙でのフォルツァ・イタリア勝利を受けて。
-1995.1 ディーニ政権
-1996.5 プロディ政権(オリーブの木)。1996.4総選挙での中道左派「オリーブの木」勝利を受けて。
      共産主義再建党の閣外協力喪失で辞任。プロディ氏は1999-2004欧州委員長。
-1998.10 ダレーマ政権
-2000.4 アマート政権(第2次)
-2001.6 ベルルスコーニ政権(第2次)。総選挙での中道右派連合「自由の家」勝利を受けて。
-2006.5 プロディ政権(第2次)。2006.4総選挙での左派連合「イタリア民主党」勝利を受けて。
      選挙制度など巡り連立政権崩壊。
-2008.5 ベルルスコーニ政権(第3次)。総選挙勝利を受けて。
      2011年通貨危機で国債利回りが急上昇。市場に退陣を迫られる。
-2011.11 モンティ政権(非議員)。

 1990年代半ば以降はベルルスコーニ氏の中道右派とプロディ氏らの中道左派を対立軸にした政権交代が続いた。しかし、政治は政策による変化というより、政党間の駆け引きで翻弄されてきた度合いが強い。

▼欧州の問題

 イタリア政治の混乱には、同国特有の問題も多く、いかにもイタリア的と言いたくなる部分も少なくない。しかし同様の政治混乱は、ギリシャなどでも起きている。「改革vs国民の抵抗」やポピュリズムは、欧州各国でも(そして世界各国にも)共通する問題だ。

 それを改めるものがあるとすれば政治のリーダーシップだが、政治家がむしろポピュリズムに走ることも少なくない。イタリアの総選挙では、それが顕著に表れた。程度の差こそあれ、他の国も共通する部分がある。

 英Economist誌は、選挙結果がイタリアと欧州にとって災難であると断じ、今週は歴史的に、欧州は改革に関心がないことを示した週として記録されるかもしれないと指摘した。そして日本が過去20年に経験したような、経済のマヒと政治の機能低下につながる懸念を指摘した。

 選挙結果は、重大な問題を突き付けている。

2013.3.3

2013年09号(2.25-3.3 通算662号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2013年2月25日-3月3日

◆イタリア総選挙、政権メド立たず、混乱必至(24-25日)☆
・総選挙が行われ、財政改革派が上下両院での過半数獲得に失敗した。
・改革路線の中道左派は下院で過半数を獲得した。
・しかし上院は改革派のモンティ連合を合わせても過半数に届かなかった。
・反緊縮の中道右派は肉薄。反既成政党の5つ星運動が3位に躍進した。
・この結果、次期連立政権成立のメドがつかない状態に陥った。
・背景には国民の改革疲れや、ポピュリズムの強まりなどが指摘される。
・市場では財政路線後退の懸念が強まり、同国国債の利回りが上昇した。
・ユーロ危機再燃の懸念も強まった。

◆日銀総裁に黒田氏、金融緩和論者(28日)☆
・日本政府は次期日銀総裁に黒田アジア開銀総裁を起用する案を国会に示した。
・同氏は財務官を経験。物価目標の導入を主張する金融緩和論者だ。
・副総裁には緩和論者の岩田学習院大教授と中曽日銀理事を起用する。
・国会承認が得られれば3月20日に就任する。
・市場は緩和を期待し、長期金利の低下が進んだ。

◆朴韓国大統領が就任、経済成長に意欲(25日)☆
・朴槿恵氏(61)が韓国大統領に就任した。第18代で初の女性。
・演説した信大統領は、「第2の漢江の奇跡」を成し遂げると強調した。
・父親の朴正煕元大統領が率いた1970年代の高度成長の再現を目指す。
・大企業偏重の経済を是正する「経済の民主化」も強調した。

◆米国がシリア反体制派を直接支援(28日)
・ケリー米国務長官は欧州で開いたシリアの反体制勢力を支持する会合に出席した。
・その上で28日ローマで会見し、食料や医薬品など6000万ドルの支援を表明した。
・武器などの支援は行わない。
・米国はこれまで直接支援に消極的だったが、踏み込んだ。
・EU諸国と協調しながらアサド大統領への退陣圧力を強化する。

◆ローマ法王が退位(28日)
・ベネディクト16世が退位した。存命中の法王退位は約600年ぶり。
・次期法王を選出するコンクラーベは近く開催される。
・信者の多い南米やアフリカ出身者が選出されるかが一つの焦点だ。
・今回の退位を契機にイスラム等の他宗教との関係などの問題に改めて脚光があたった。
・資金管理の改善、同性婚や避妊への対応、女性聖職社の拡大なども注目される。

 ┌─────────────────────────────
 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 【イタリア・ユーロ危機・日本】 イタリア総選挙は財政改革はが上下両院で過半数を得ることに失敗。同国政治は混乱が続く可能性が大きくなった。財政改革が遅れ、ユーロ危機再燃の懸念も消えない。英Economist誌はイタリアを始めとする欧州の政治混乱が、日本の失われた20年に酷似しているとの分析を強調した。問題の根は深い。

 【米国の財政問題】 米財政問題が再び焦点になりつつある。連邦歳出の一定額を自動的に削減する措置は、与党民主党と野党共和党の合意で3月末まで延長された。しかし、その後の調整は進んでいない。オバマ米大統領は1日、2021年度までに連邦予算を総額1.2兆ドル削減する大統領令に署名し、歳出のうち一定額を自動的に減らす措置を発動させた。駆け引きは月末まで続きそうだ。

◎今週の注目(2013.3.4-10)&当面の注目
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・中国の全人代が3月5日に開幕する。習近平共産党小書記が新国家主席に選出され、名目ともに習体制が始まる。新首相には李克強副首相が就任する予定。新体制のメッセージに注目だ。
・習氏が3月下旬にロシア、南アフリカを訪問する。国家主席就任後、初の外遊になる見通し。
・イラク戦争開始から3月20日で10年になる。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 incd-club は国際問題に関係する内外のジャーナリストやビジネスマンらのグループです。「国際ニュース・カウントダウン」は、世界のニュースから週刊単位でベスト5を選び、解説したもの。日本のメディアの報道とは異なる視点から、面白くかつ分かりやすく地球を鳥瞰しています。
 ブログは毎週発行のメールマガジンを元に作成しています。

 ------------------------------------------------
 メールマガジンの登録変更・解除は次のアドレスから。(『まぐまぐ』を利用)。
 http://www.mag2.com/m/0000056121.htm
 ------------------------------------------------

 Copyright(c) 2000-2013 INCD-club

« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

ウェブページ