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2012年12月23日 (日)

◆韓国大統領選に見る現状と課題 2012.12.23

 韓国の大統領選で保守与党セヌリ党の朴槿恵氏(60)が当選した。1997年のアジア通貨危機から15年を経て、韓国経済はサムスンなどを中心に成長し、外部からは順調すぎるように見えるほど。しかし格差の拡大や新興国との競争など抱える課題も多い。韓国を巡る情勢をまとめる。

▼血筋・悲劇・カリスマ性

 朴氏を語る場合、韓国初の女性大統領という点はもちろん重要だ。しかしそれ以上に、朴正煕元大統領の長女という点を抜きに語れない。

 朴正煕元大統領は1961年のクーデターで実権を握り、63年大統領に就任(大統領としては5-9代)。軍事独裁・権威主義の体制で韓国経済を発展させた。独裁政治への批判などから1974年には暗殺未遂事件が起き夫人が死亡。79年には自身が暗殺された。朴正煕元大統領への評価は長らく軍事独裁への批判が強かったが、近年経済発展や安全保障面での功績を再評価する声も強まっている。

 朴槿恵氏は74年の母親殺害後は父の下で実質ファーストレディを務めた。また98年に国会議員となり政界に進出した後、2006年にカッターナイフで顔を切りつけられる被害にもあっている。こうした経歴からくるカリスマ性や悲劇のヒロインとしてのイメージなど抜きに、朴氏は語れない。

▼保守・高齢層

 選挙結果は朴氏の52%で野党民主統合党の在寅氏を破った。韓国では地域による支持層の違いが鮮明で、朴氏は保守の基盤である東部の慶尚北道・南道など(旧新羅の支配地域と重なる)。一方野党は西南部の全羅北道・南道などが基盤。首都ソウルや釜山など大都市は接戦地域になることが多い。

 今回の選挙でもこうした傾向がはっきり表れたが、朴氏が保守層を着実に押さえた。また、50歳以上の比較的高齢層の票も取り込んだ。韓国では若い世代がネット選挙などで影響力を伸ばしており、これに危機感を抱く高齢層の投票率が今回の選挙では高かったとの分析もある。

 逆に野党は、文氏と無所属の安哲秀氏の一本化が遅れたことも響いた。

▼民主化6代目
 
 第2次大戦後、実質的な軍事独裁政権が続いた韓国政治は、1987年の民主化宣言と大統領選で事実上民主化した(第6共和政)。その後の大統領以下の通りだ。

 朴氏は民主化後6代目の大統領になる。この間、韓国の政党は離合集散を繰り返している。 

・盧泰愚(1988-93、保守民正党):民主化後初の大統領、ソウル五輪、冷戦の終結
・金泳三(1993-98、与野党合同の民主自由党):朝鮮半島核危機、アジア通貨危機
・金大中(1998-2003、革新新千年民主党):IMF管理下で通貨危機から回復、南北首脳会談、9.11
・盧武鉉(2003-2008、革新民主党など):人権は、イラク戦争、野党との対立
・李明博(2008-2013、保守セリヌ党):CEO型大統領、世界金融危機、ウォン安
・朴槿恵(2013-、保守セリヌ党)

▼格差拡大vs経済成長

 今回の大統領選で最大のテーマになったのは「経済民主化」(Economic Democracy)だった。

 韓国経済は1997年のアジア通貨危機でIMF管理下に入った後、大胆な改革を実施。旧財閥が解体し、サムスンなどの企業が国際競争力を高めた。この結果2000年代には高い経済成長を実現した。

 特に李明博政権下ではウォン安も手伝って輸出が拡大。サムスン電子や現代自動車、ポスコなどが世界的なブランドに成長した(ウォン安については李政権の政策という指摘もあるが、政府が資本規制などをしない限り意のままに為替を動かせる訳ではない。むしろ通貨危機後の韓国からの資本流出や韓国企業の海外進出などを理由に結果的にそうなったという側面が大きい)。

 その一方で、大企業と中小企業の格差が拡大し、人々の不満も高まった。特に創業家が少ない持ち株でグループを支配する「循環出資」といわれる仕組みに批判が集まった。

 革新系の文候補はもちろん、保守の朴氏も経済民主化や循環出資規制を強化すると主張。選挙戦では「全面対決」というような違いにはならなかった。

 ただ、サムスンなど一部企業が韓国経済成長の原動力になっているのも事実。中国やインドなど新興国の追い上げも急だ。あまり強い規制を導入すれば、経済全体の失速につながりかねない。朴氏もあまり強力な規制は持ち込まないという見方が強い。

 いずれにせよ、成長と格差のバランスに韓国経済のジレンマがあり、朴新大統領にとっても重い課題としてのしかかる。

▼経済の数字

 ちなみに、通貨危機後の1998年からの韓国に実質経済成長率は以下の通り。
 1998=-5.71%、99=10.73%、2000=8.8%
 2001=3.97%、2002=7.15%、2003=2.8%、2004=4.62、2005=3.96%
 2006=5.18%、2007=5.11%、2008=2.3%、2009=0.32%、2010=6.32%
 2011=3.63%、2012=2.69%(見通し)

 韓国の直近の失業率は3.3%。GDPは1.2兆ドル。

▼安保・社会
 
 北朝鮮情勢を抜きに韓国は語れない。朝鮮戦争派いまだ「休戦」状態。北朝鮮の核開発、ミサイル攻撃などのリスクは常に付きまとう。同国の安定が揺らげば、難民の流入などで韓国社会をも揺るがす。世界で最も急速な高齢化などの課題もある。

 外から見ると一見順調そうな韓国だが、安全保障、経済、社会のいずれの面でも難しい課題を抱える。

20121223

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