◆2011年のレビュー(2) 中東革命・原発・ユーロ危機 2011.12.25
2011年が間もなく終了する。1年をレビューすると、中東革命(アラブの春)、日本の震災と原発事故などの大ニュースがあり、ユーロ危機に世界経済が揺れた年だった。前週に続き、主要メディアの報道などを参考に今年をレビューする。
▼INCDの10大ニュース
INCDが選んだ10大ニュースは以下の通り。
(1)中東革命(アラブの春)
(2)日本の地震・津波・原発事故
(3)ユーロ危機
(4)スマホ革命の進展
(5)ビンラディン殺害
(6)反ウォール街など世界各地で抗議デモ
(7)世界人口70億人突破
(8)世界経済減速、米など先進国相次ぎ格下げ
(9)ロシア・プーチン首相が大統領復帰へ、抗議も表面化
(10)米がイラク撤退、イラク・アフガン情勢は不安定続く
▼中東革命--長期政権打倒、ネット、イスラム
1月のチュニジア・ジャスミン革命を皮切りに、民主化・政権打倒の動きが中東全域に広がった。2月にはエジプト・ムバラク政権が崩壊。リビアにも飛び火し、内戦を経て8月にカダフィ政権が崩壊。カダフィ大佐は10月殺害された。
イエメンは反体制運動が拡大する中、サレハ大統領が退陣を表明したが、実行はなお不透明。バーレーンでは反体制運動が封じ込められた形。シリアではアサド政権による弾圧が続いている。
政権交代した国々は、いずれも長期独裁政権下で自由の抑圧、富の独占などが続き、民衆の不満が蓄積していた。それが爆発したのには、フェースブックやツイッターなどのネットが果たした役割が大きい。
ただ、政権打倒後の国の再建は難しい。憲法制定→選挙→民主政権の樹立を進めようとしているが、各国とも多くの利害調整が必要になり、混乱が続く。エジプトではなお権限を握り続ける軍への不満が表面化し、衝突も起きた。
アラブでは60-70年代に国づくりの求心力になった社会主義や民族主義が力を失った後、イスラムへの回帰が起きた。中東革命後の各国でも、イスラム組織や政党が力を得る傾向が出ている。
▼自然災害と原発事故--日本の地震・原発事故
3月の東日本大震災と津波被害は、世界に自然災害の凄まじさを改めて見せつけた。津波被害などの映像は世界に送られ、人々の記憶に強いインパクトを与えた。
生産拠点の被災による生産体制の麻痺は、世界経済がサプライチェーンで結び付き、リスクが波及することを見せつけた。この問題は、10-11月のタイの洪水被害でも再度確認された。
福島第1原発の事故は原発の安全に改めて問題を突き付け、ドイツやイタリアなどが脱原発を決定。世界のエネルギー産業に多大な影響を与えた。フクシマの名前はヒロシマ、ナガサキと並んで世界の記憶になった。
▼ネット革命進展--スマホ時代、中東革命、サイバー攻撃、アップル
ネット革命は引き続き加速。スマートフォン時代が本格的に到来し、先進国の多くでは従来型の携帯電話の出荷台数を上回った。
アラブの春ではネットが世界の変化に決定的な役割を果たしていることを見せつけた。こうした動きを受けて、中国などではネット規制を強化。また、サーバー攻撃の問題が従来以上に認識されるようになり、米国防総省は陸海空軍に続いてサーバーを安全保障上の領域にする方針を表明した。
ネット時代の象徴企業とも言えるアップルが時価総額世界1の座を記録。創業者のスティーブ・ジョブズの死は、単に経営者の死亡を超えたニュースとして世界に受け止められた。
▼金融危機のツケ--ユーロ危機、米国債格下げ
ユーロ危機が深まった。2010年にはギリシャ、アイルランドがEUやIMFへの支援要請に追い込まれたが、2011年はポルトガルが支援要請。ギリシャは2度目の支援要請に陥った。また危機がイタリア、スペインなど南欧諸国に波及し、国債の利回りが急上昇。PIIGSと呼ばれる5カ国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)で政権が退陣に追い込まれた(選挙あるいは市場圧力を受けた退陣)。
各国は財政危機克服のために再建計画を策定。社会保障削減や増税を打ち上げた。しかしこれには国民が反発し大規模な抗議活動を展開。状況ままらなない。
ユーロ危機の深まりには様々な要因がある。ユーロの持つ構造的な矛盾の表面化(金融政策は一体だが財政はばらばら)、政治的リーダーシップの不足、市場の暴走を食い止める規制の欠如などだ。しかし2008年の金融危機のツケという面も大きい。各国は財政支出の拡大で不況をしのいだが、その矛盾が形を変えて露出してくる。ユーロ危機は、その一環だ。
財政の構造的な問題はユーロ圏以外の先進国にも共通する。米国の財政赤字もなおGDP比10%前後。S&Pなどが初めて米国債格下げ(最上位のトリプルAから引き下げ)に踏み切ったのも、こうした問題点の反映だ。
▼世界経済減速と重心の移動
財政のツケもあり、先進国経済は低迷。IMFなどは成長予測の下方修正を繰り返した。財政危機、金融市場の不安定などがあり、世界経済の行方は不安定。2010年ごろに模索された超緩和政策からの「出口戦略」も描けない状況だ。
中国をはじめとする新興国も、インフレ警戒と減速懸念の狭間を行き来する。それでも新興国経済は成長を維持、世界経済の重心変化をさらに印象付けた。
▼テロ戦争10年--ビンラディン殺害とアフガン、イラク情勢
2011年は9.11から10年の節目の年。テロの懸念は消えず、アフガニスタン、イラク情勢の不安定は変わらない。
そうした中で、米軍によるオサマ・ビンラディン殺害は衝撃的な事件だった。ビンラディンは9.11以来のテロのアイコンのような存在。殺害の象徴的な影響は計り知れない。
イラク駐在の米軍は12月に撤退した。イラクやアフガン、中東、中央アジアなどでテロは連日のように起きている。世界がテロの脅威にさらされている事実に変わりはなく、その背景にある貧富の格差拡大やイスラム過激派との価値観の違いは何も解決されていない。しかし、その中でも出来事は積み重ねられていく。
▼1年前のテーマ: 想定内と想定外
1年前の世界の大きなテーマは、(ⅰ)金融危機後済の行方(ⅱ)中国など新興国の台頭による世界の構造変化(ⅲ)アフガン・イラク情勢など安全保障(ⅳ)IT・ネット革命の進展などだった。米中ロなどの体制が変わり「政治の年」になる2012年をにらみ、「2011年は踊り場の年」という観測もあった。
想定の範囲内で動いたのはまず金融・経済。(3)のユーロ危機、(8)の世界経済減速と米格下げなどが該当する。IT・ネット革命の進展=(4)のスマホ革命に代表=も詳細はとにかく、予想される動きだった。安全保障もビンラディン殺害(5)は予想もつかなかったが、(10)のアフガン・イラク情勢などはある程度の想定が出来た。
一方、想定外だったのは(1)の中東革命や(2)の日本の地震・津波・原発。いずれの問題も、来年以降に引き継がれて世界を動かし続ける。
▼APの10大ニュース
参考にAP選出の10大ニュースを挙げる。米国内と世界のニュースの区別をつけていない。ペンシルバニア州立大のスキャンダルなど、いかにもアメリカらしい話が入っているのは笑える。
(1)オサマ・ビンラディン殺害
(2)日本の地震・津波・原発事故
(3)アラブの春
(4)ユーロ圏危機
(5)米経済
(6)ペンシルバニア州立大のセックス・キャンダル
(7)リビア・カダフィ政権崩壊とカダフィ殺害
(8)連邦債務上限引き上げ、増税など巡る議会対立
(9)反ウォール・ストリートデモ拡大
(10)ギフォーズ議員狙撃
2011.12.25
« ◆金正日総書記死去を巡る情報整理 2011.12.25 | トップページ | 2012年01号(2011.12.26-2012.1.1 通算601号) 国際ニュース・カウントダウン »
「世界の潮流」カテゴリの記事
- ◆仏大統領選とギリシャ総選挙--ユーロ・欧州の問題凝縮 2012.5.7(2012.05.08)
- ◆2012年の焦点 2012.1.1(2012.01.01)
- ◆2011年のレビュー(2) 中東革命・原発・ユーロ危機 2011.12.25(2011.12.25)
- ◆2011年のレビュー(1) 2011.12.18(2011.12.18)
- ◆一連の首脳会議が映したアジア情勢 2011.11.20(2011.11.21)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/510274/53569948
この記事へのトラックバック一覧です: ◆2011年のレビュー(2) 中東革命・原発・ユーロ危機 2011.12.25:
« ◆金正日総書記死去を巡る情報整理 2011.12.25 | トップページ | 2012年01号(2011.12.26-2012.1.1 通算601号) 国際ニュース・カウントダウン »

コメント