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2011年8月

2011年8月29日 (月)

◆リビア・カダフィ政権崩壊の意味と影響  2011.8.28

 リビアのカダフィ政権が崩壊した。NATOの支援を得た反政府軍がリビア23日までに首都トリポリをほぼ制圧、6か月にわたる内戦に終止符を打った。40年以上の独裁を続け、世界の政治にも存在感を示したカダフィ政権の崩壊は、「アラブの春」3カ国目の政権交代では済まない影響を持つ。

▼あっけない政権崩壊

 政権崩壊は予想外ともいえるあっけなさだった。反政府軍は14日、トリポリ西方の都市ザウィヤを掌握しチュニジア-トリポリ間の補給路を寸断。21日夜にはトリポリに到達した。カダフィ政権側はさしたる反撃も示せないまま、23日には反政府軍が首都の大部分を制圧。1969年の軍事クーデターで権力を掌握してから42年間続いたカダフィ政権は崩壊した。

 カダフィ大佐の行方は28日になっても不明。首都潜行説、アルジェリアへの亡命説などが流れているが確定情報はない。

▼6か月の内戦

 リビア情勢が急変したのはことし2月。チュニジア、エジプトと続いた政権交代を受けて、東部のベンガジで反カダフィ勢力が政権への反抗活動を開始。3月には国民評議会がリビアを代表する政権であると表明した。

 カダフィ政権が反乱の動き弾圧に出ると、国際社会は国民評議会側を支持。NATOは空爆などで支援した。この後、カダフィ政権側と反カダフィ政権の内政が続いた。カダフィ政権側は徐々に追い詰められ、8月に入ると有力者の離脱も相次いでいた。

▼リビアの先行き不透明

 国民評議会は8カ月以内に大統領選と議会選を実施すると表明。リビアの民主化と国家再建を強調した。また、世俗主義を強調し、イスラム原理主義への警戒を示した。国際社会も支援を表明した。

 しかし、行方は必ずしも楽観できない。国民評議会はこれまで反カダフィで一致していたが、様々な勢力の寄せ集めだったのが実態。中心となる指導者がいるわけでなく、民族や地域による対立もある。内戦中も意思決定方法が明確だったわけではなく、内部対立も表面化した。

 実はこうした対立は、先行して政権交代を実現したチュニジアやエジプトも同じ。革命から半年を経て、いまだに民主化の方向性も、選挙のスケジュールも定まっていない。そうした中で人々の不満は拡大し、社会不安定の懸念が増大。イスラム原理主義台頭の懸念も大きくなっている。

 リビアの場合、豊かな原油収入という経済再建に向けた有利な材料はある。しかし、先行き不透明であることは2国と同じだ。

▼シリアなどへの影響必至

 専門家やメディアの見方が一致するのは、他の中東諸国に与える影響の大きさだ。

 特に注目されるのはシリア。同国では反アサド政権のデモなどに対し、政権側が激しい弾圧を加えている。国政社会はこれに反発し、欧米は対シリア制裁を強化。米国はアサド大統領の退陣を公式に求めている。

 独裁国家、政権による反対派弾圧の構図は、リビアとシリアの共通する点。アサド政権は一段と追い込まれるだろう。ただ、より強硬姿勢を強めるのか、譲歩を模索するかは不明だ。

 イエメンなど他のアラブ諸国への影響も当然ある。強権国家の象徴だったリビア・カダフィ政権の崩壊は、「アラブの春」にインパクトを与える。

▼NATO戦略

 NATOへの影響も様々な面で及ぶ。今回のリビア・反体制派支援を主導したのはフランスなどの欧州諸国。国民評議会をいち早く承認したのはフランスだったし、NATOの空爆も欧州諸国が主導した。

 米国は終始、欧州の後ろに控えた支援にとどまった。英Economist誌は、「米国がバックシートドライバーにとどまった初の例」と位置付ける。国際情勢変化を反映している。

▼カダフィ大佐の42年

 カダフィ政権を歴史的にどう位置付けるかは、なお意見がまとまらない。カダフィ大佐は1969年のクーデターで権力を掌握して以来、異色のリーダーとして世界の中で存在感を保ってきた。

 70-80年代は、米帝国主義批判や直接民主制を演出した独自の政治システム(実態は独裁主義)で途上国やアラブ世界の関心を集め、対米テロ支援で反米勢力の支持を獲得した。80年代には米国の暗殺計画が発覚。それをかいくぐった事実は大佐のカリスマ性を高めた。石油収入を背景にしたアフリカ諸国などへの支援も、支持獲得の背景にあった。

 冷戦が終了し、軍事的に米1極集中の時代が来るとカダフィ大佐は方向転換。過去の大量破壊兵器開発計画を破棄し、テロ支援終了を宣言して欧米との関係を修復した。現実主義者の顔を見せつける決断だった。

 しかし、今回のアラブの春では強硬姿勢を前面に打ち出す昔の顔に戻った感がある。そして、政権崩壊という結末になった。

▼カダフィの歴史的な位置付け

 各国メディアの間では、カダフィをサダム・フセインとなぞらえて報道するものが多い。独裁者、現実主義者、強硬派、そして一時反米の主張で地域の一部の人々の心をとらえた点などが共通する。政権崩壊後に行方が不明になった点も同じだ。

 ただし、それより深掘りの解説は少ない(サダム・フセイン、カダフィ両者とも)。もちろん、情報が不十分な中で安易に論じるような軽い問題ではない。

 しかし歴史のあだ花であるにせよ、このような存在感の大きい人物を生み出したのはなぜか。世界はカダフィの権力掌握と没落から何を学ぶべきか。こうした問題点を持ち続けないと、リビアもアラブの春も読めない。

2011.8.28

2011年35号(8.22-28 通算583号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2011年8月22-28日

◆リビア、カダフィ政権崩壊(23日) ☆☆
・リビアの反政府勢力が首都トリポリを制圧。カダフィ政権は事実上崩壊した。
・反政府勢力は21日夜首都に到達。23日までに政権拠点を含め全市を制圧した。
・26日には同国西部の都市を相次いで制圧した。
・反カダフィ派の国民評議会は24日、8月以内に大統領選と議会選を行うと発表した。
・評議会は25日には、拠点を東部のベンガジから首都トリポリに移すと発表した。
・カダフィ大佐の行方は28日現在不明。
・欧米諸国は相次ぎ新政権を承認。支援を約束した。
・しかしアフリカ連合は26日の緊急会合でも新政権承認に合意でなかった。

◆アップルのジョブズ氏がCEO辞任(24日)☆
・アップルは創業者スティーブ・ジョブズ氏のCEO辞任を発表した。
・同氏は病気療養中。後任にはクックCOOが昇格した。
・ジョブズ氏は76年アップル創設。同社を世界をリードするIT企業に育てた。
・2000年以降はiPodやiPhons、iPadなどの新製品を相次ぎ開発。
・ネット業界の構造を変え、パレダイムの変化をもたらした。
・アップルはことし一時、時価総額世界1を記録した。
・同氏の健康はアップル最大のリスク要因と言われ、市場は今後の動向に注目する。

◆米東部ハリケーン、250万人が避難(27日)☆
・米東部をハリケーン「アイリーン」が襲い、オバマ大統領は27日非常事態宣言を出した。
・ブルームバーグNY市長は30万人に避難命令。東部全体では250万人に命令が出た。
・NYの地下鉄は運休。航空機は5000-1万便が運休した。
・米国では2005年のニューオリンズのハリケーン被害以来、政府の警戒は厳しくなっている。

◆北朝鮮・ロシア首脳会談(24日)
・金正日総書記とメドベージェフ大統領が東シベリアで会談した。9年ぶりの首脳会談。
・北朝鮮の核問題や経済協力を協議した。
・ロシアにとっては朝鮮半島への影響強化、北朝鮮は中国依存軽減などの思惑がある。

◆米FRB議長、金融政策講演(26日)
・バーナンキ米FRB議長はワイオミング州で開いた中銀総裁セミナーで講演。
・追加金融緩和の可能性に触れた。来月の公開委員会で協議する。
・しかし注目の第3次量的緩和(QE3)は言及しなかった。
・財政再建や政府の経済政策の重要性を強調。金融への過度の期待を警戒した。
・米経済については、景気回復が予想より弱いと指摘した。

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◎寸評:of the Week
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 【カダフィ政権崩壊】 カダフィ政権がついに崩壊した。2月に反政府運動が表面化してから6カ月。あっけないほどの幕切れだった。アラブの春のへの影響も必至で、次はシリア、イエメンに注目が集まる。

 【ジョブズCEO辞任】 アップルのスティーブ・ジョブズ氏がCEOを辞任した。市場はニュースに反応、同社株は一時下落した。アップルはiPodで音楽流通業界を変え、iPhoneでスマートフォン市場を拡大。iPadではタブレット端末時代を切り開くなど、経済・社会を変えてきた企業。今年は一時、時価総額世界1を記録し、まさに時代を象徴する会社だ。そのアップルをリードし、同社躍進の最大の原動力となっているのがジョブズ氏だ。1人の経営者がここまで世界を動かしているのか、と改めて実感する。

◎今週の注目(2011.28-9.3)&当面の注目
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・日本の次期首相を決める民主党代表選が29日に行われる。5人が立候補。震災復興、財政再建など重要テーマは多いが、あまり深い政策論争が行われないままの投票となる。

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2011年8月21日 (日)

◆IT・ネットの再編加速--グーグルのモトローラ買収 2011.8.21

 グーグルがモトローラ買収を発表した。Web2.0時代を代表する同社はこれまで、検索やユーチューブ買収、アンドロイドOSの提供などソフト・サービス中心に発展してきた。買収で事業をハードまで延長する。

 一方、HP(ヒューレットパッカード)はパソコン(PC)事業の分離検討を発表した。HPはPC最大手。その同社ですら、PCから利益を稼ぎにくくなっている実態を物語る。IT・ネット業界の急激な再編を象徴する動きだ。

▽Web2.0後の変化

 IT業界の変化は速度を増している。グーグルが上場し、Web2.0の時代が喧伝されたのは2004年。

 その後わずか6年の間に、既存のパレダイムを転換するような出来事がいくつも起きた。次のようなものだ。

>SNSの普及: フェースブックの会員は7.5億人に拡大。パソコン、インターネットに続くネット第3世代という指摘もある。

>PCからスマートフォンへの主役交代: アップルiPhoneなどでスマホ普及が加速。2010年10-12月期にスマホの出荷台数がPCを上回った。2011年は通年でも逆転。

>ミニブログTwitterの急速な普及: PCがなくても携帯やスマホから情報発信しやすい。PC→携帯・スマホの変化と連動している。

>iPadなどタブロイド端末の普及

>クラウド化

▽スマホの競争

 競争は激しい。目下最激戦区のスマートフォンでは、主要プレイヤーは(1)iPhoneのアップル(2)アンドロイドOCで事業を拡大するグーグル(3)マイクロソフト(4)ブラックベリーのRIM--だ。

 ここに危機を提供するサムスン電子や台湾HTCなどが絡む。携帯最大手だったノキアは自社ソフトでの事業拡大に出遅れ、MSとの提携に活路を見出す。

 合従連衡も急だ。 グーグルはアンドロイドOSのオープン化でサムスン、台湾HTCなどと協力関係にある。ハード進出後も関係は変わらないとするが、不透明要素を残す。

 アップルとサムスン、HTCは特許問題で紛争を抱える(独裁判所はアップルvsサムスンでアップルに有利な判断をした)。提携・協力と対立は複雑に絡み合う。

▽合従連衡と対立

 合従連衡と対立は幅広い分野に及ぶ。マイクロソフトはSNSでフェースブックと提携。グーグル対抗軸の一環だ。

 電子書籍の分野では、アップルとアマゾン、グーグルなどが対立。陣営形成を急ぐ。昨日の敵は今日の友(あるいはその逆)が日常時のように起きる。

▽変化の流れ

 1980年代にはPCが普及。90年代にはインターネットと携帯電話が普及した。それを経て、2000年代には様々なネットの新サービスが拡大。業界再編をもたらすとともに、社会に大きな変化を与えた(iPodによる音楽業界の変化、グーグル検索サービスによる広告業界の変化、携帯普及による途上国の経済流通の変化など)。

 SNSやスマートフォンで変化は加速している。中東革命ではフェースブックやTwitterが革命を演出した。中国などではネット規制を強める。G8首脳声明はサイバー攻撃に言及し、ネットが安全保障上でも最重要課題になりつつあることを表明した。

 2011年にはアップルの時価総額が一時世界1を記録。主役の変化を反映した。

 IT、ネットを巡る変化は加速し、予測を許さない。しかし、背景にある変化の流れを押さえておくことは必須だ。

2011.8.21

2011年34号(8.15-21 通算582号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2011年8月15-21日 (日本時間)

◆グーグルがモトローラ買収、IT業界の再編進展(15日) ☆
・グーグルはモトローラ・モビリティーを125億ドルで買収すると発表した。
・検索やOS提供などのサービス→ハードにも事業を拡大する。
・モトローラの製造事業とともに特許を活用する狙い。アップルやMSと対抗する。
・モトローラは携帯電話で世界をリードした。しかしITの変化に遅れ経営悪化した。
・パソコン最大手のHPは18日、PC事業の分離検討を発表した。
・PC事業の採算性が低下しているため。
・IT業界はクラウド化やSNS、PC→スマホの構造変化が急速に進展。再編が加速する。

◆リビア反体制派がトリポリに迫る ☆
・内戦の続くリビアで反体制派が攻勢を強め、首都トリポリに迫っている。
・NATOの支援を受けた攻撃で15日にはトリポリ西部のザウィヤを制圧した。
・首都とチュニジアを結ぶ補給路を切断した格好。首都東部の要衝も制圧した模様。
・AFPなどは20日、カダフィ政権からジャルド元首相らが離脱したと報道した。
・20日には反体制派の軍がトリポリ攻撃を開始したとの情報がある。
・カダフィ政権崩壊が近いとの観測も強まってきた。

◆インドで反汚職の抗議行動拡大 ☆
・社会活動家の反汚職運動に市民が呼応し、抗議行動が広がっている。
・アンナ・ハザレ氏は政府の汚職対策法案の厳格化を求めハンストを計画。
・当局が16日無許可を理由に同氏を逮捕すると、各地でデモが拡大した。
・当局は後同氏を釈放。氏はニューデリー市内の広場でハンストを始めた。
・シン首相は17日声明を発表し自粛を呼びかけた。しかしデモなど混乱は収まらない。
・議会は20日、15日間のパブリック・コメント期間を設けると発表した。
・インドでは汚職が蔓延。先年末は携帯電話利権などで汚職が発覚した。
・ハザレ氏は対策を要求。政府の法案は首相監視が弱いなどとし、厳格化を求めた。
・同氏は「現代のガンジー」とも称され、影響を持っている。
・シン政権は経済成長で実績を残してきたが、汚職体質改善遅れなど問題も抱える。

◆円75円台記録、ドル安続く(19日)☆
・NY市場で一時1ドル=75円95銭を記録。戦後の円高を更新した。
・3月の76円25銭を上回った。
・米欧の景気減速や財政・金融不安を背景に資金が円に流れた。
・日本の財政状況は先進国最悪。しかし消去法で円が買われた形だ。
・市場では株安、ドルやユーロの下落が続く。NYダウは4週連続で下落した。

◆北朝鮮総書記がロシア訪問(20日) ☆
・金正日総書記がロシアを訪問した。メドベージェフ大統領と会談する。
・9年ぶりの訪問で、経済協力、核を巡る6カ国協議などを協議する見込み。
・金正恩氏への権力継承を整備する狙いもあるとみられる。
・同国は体制維持に瀬戸際外交を続けている。
・しかし制裁で経済が悪化。国際社会と関係修復や周辺国の支援が欠かせない。

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◎寸評:of the Week
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 【中東情勢の急変】 中東情勢が急変した。内戦の続くリビアではNATOの支援を受けた反政府勢力の攻勢が進展。首都トリポリ近郊の要衝を制圧した。カダフィ政権の崩壊が近いとの観測も強まっている。
 シリアではアサド政権の反対派弾圧に対し、欧米が反発を強めた。オバマ大統領は18日、アサド政権の退陣を要求。欧州や日本も同調し、国連安保理理での批判決議も検討される。しかしロシアは米国の要求に賛成しない。周辺のアラブ諸国も民主化より地域の安定を重視し慎重だ。この間もシリア国内では反対派の弾圧が続く。
 イスラエルでは18日、武力勢力による襲撃があり、イスラエル軍が反撃した。ガザへの攻撃を強化した。この過程でエジプト人警察官が巻き込まれ死亡。エジプトは抗議し、20日イスラエル大使の召還に踏み切った。イスラエルの反撃で友好国に被害→関係悪化という図式は、昨年5月のトルコとの関係冷却化と同じ図式だ。イスラエルにとっては地域での孤立化が強まる。
 イエメンではサウジで負傷治療中のサレハ大統領が近く帰国すると表明した。しかし、実現するかどうかは不明だ。
 1月以来中東にはアラブの春の波が押し寄せた。各国では体制派と反体制派の攻防が続き、不安定な状況が続いている。動きには緩急があるが、ここにきて緊張が高まっている。

 【不安定な市場】 市場の混乱が続く。NY市場では4週間連続で株価(ダウ)が下落。ドルは対円で戦後最安値を記録した。
 背後にあるのは、欧米の財政危機と金融システムの不安、景気減速懸念などだ。前週の米国債格下げなども市場動揺の材料になっている。不安定な状況が続きそうだ。

 【独仏首脳のユーロ防衛策】 ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が16日パリで会談。財政ルールの強化や税制の調整推進などで合意し、発表した。ユーロ危機の打開に向けて、政治的意思を誇示した形。しかし、焦点だった「ユーロ共同債」の導入は否定した。市場の反応は冷淡だった。
 EUが16日発表したユーロ圏の4-6月の成長は、前期比年率0.7%。独仏が減速し、全体の成長率を押し下げた。

 【米中関係】 バイデン副大統領が訪中し北京や成都などを訪れた。1週間近くの滞在中、次期指導者が確実視されている習近平副主席が同行。米中関係の強化に布石を打った格好だ。
 

◎今週の注目(2011.21-27)&当面の注目
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・リビア情勢が緊迫の局面を迎えている。いつ政権崩壊のような緊急事態があってもおかしくない。
・ロシア訪問中の北朝鮮の金正日総書記とメドベージェフ大統領の会談が23日ごろ行われる。内容に注目。
・FRBのバーナンキ議長が26日、米ワイオミング州のフォーラムで講演する。米経済は回復が遅れ、金融緩和の長期化も予想さている。市場では株安、ドル安が続く。議長の発言に注目。
・日本の次期首相を決める民主党の代表選が29日行われる。日本は震災復興と経済立て直しに直面し、本来マニフェストの見直し、増税の是非などが大きなテーマになるはず。しかしスケジュールの切迫もあり、政策論議はあまり行われていない。強烈な候補者もなく、本命なき争いになっている。

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2011年8月14日 (日)

2011年33号(8.5-14 通算581号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2011年8月5-14日

◆米国債格下げ、市場が動揺(5日)☆
・S&Pは米国債の長期格付けを最高のAAA→AA+に引き下げた。
・米国の財政赤字削減が不十分なことを理由に挙げた。
・米国債格付けが最高レベルから下がるのは1941年の現行制度開始後初めて。
・格下げを受けて8-12日の市場は世界的な株安が進むなど動揺した。
・市場ではフランス(AAA)国債の格付け引き下げの噂も流れた。
・G7の財務相・中銀総裁は8日電話協議。市場安定に協調行動をとると強調した。
・米国をはじめとした財政問題の深刻さ、金融市場の不安定を改めて示した格好だ。

◆欧州4か国が金融株の空売り禁止(11日)☆
・仏、伊、スペイン、ベルギーは金融株の空売り禁止を決めた。12日から15日間。
・投機的な動きを抑えるのが目的としている。
・決定を受けて12日の欧州市場では株価が反転した。
・ギリシャは9日に全株式を対象に空売り禁止を決定している。
・EU域外では韓国やトルコも同様の措置を実施している。
・米国や英国も、2008年の金融危機直後は空売り禁止策を導入した。
・禁止は市場の流動性低下など悪影響もあるが、当面安定を優先させた。
・欧州中銀はイタリアとスペインの国債買い入れを行った。

◆英国各地で暴動(6日)☆
・英国各地で若者や移民らによる暴動が拡大。商店破壊や放火など被害が広がった。
・暴動はロンドン北部では警察官による黒人射殺事件をきっかけに発生。
・各地に広がり、4日間続いた。9日までに逮捕者は1500人を超えた。
・ロンドンでは低所得者の多い東部を中心に40か所で暴動が起きた。
・キャメロン首相は休暇中止し帰国。治安緊急会議を9日開催した。
・首相は警察の初動を批判。これに警察が不満を示し、両者の対立も表面化した。
・2012年開催のロンドン五輪運営にも不安を浮かび上がらせた。
・暴動拡大の背景には緊縮財政による福祉削減、移民の不満などがあると指摘される。
・福祉切り下げ、移民の不満は欧州各国に共通する構造的問題ともいえる。

◆アップルが時価総額世界1(9日)☆
・アップルの時価総額が一時エクソンモービルを抜いて世界1になった。
・同社の時価総額は約3400億ドル。
・アップルはIT時代をリードする企業。iPhoneやiPadのヒットで市場評価も高まっている。
・世界の時価同額上位企業は、他にチャイナモバイル、中国商工銀行など。

◆ミャンマー与野党に対話機運(12日)
・民主化指導者のアウン・サン・スー・チー氏とアウン・チー労働相がヤンゴンで会談。
・民主化の進展や経済発展を目指す協力で合意し、共同声明を発表した。
・情報相はスー・チー氏の政治活動再開を容認する考えを示した。
・ミャンマー新政権はASEAN議長国に立候補するなど、国際社会復帰を目指している。
・スー・チー氏との対話もこうした姿勢の表れの可能性がある。
・同国では昨年11月に20年ぶりの総選挙が行われ、軍事政権→新政権に移行した。
・しかし選挙は実質野党を排除する形で行われ、野党は解党処分を受けた。
・民主化進展の行方は予断を許さないが、対話気運が出てきたのは事実だ。

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◎寸評:of the Week
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 【市場動揺】 米国債の格付け引き下げなどをきっかけに市場が動揺。世界的な株価の下落、Gの緊急財務相・中銀総裁協議と共同声明、欧州4か国の空売り禁止など重要な動きが相次いだ。
 米FRBは9日の公開市場委員会で、米経済の回復が予想以上に悪いとの認識を示したうえで、超低金利政策を2013年まで継続する可能性が強いとの声明を発表した。
 欧州では欧州中銀がイタリアとスペインの国債を購入するオペレーションを実施。イタリアは12日、2012-13年に財政赤字を455億ユーロ減らす追加財政委検索を発表した。一方、オランダではEUのギリシャ支援策に対し、国内の批判が高まり政府を追及している。
 市場動揺の背後にあるのは先進国の財政悪化と金融市場の不安定だ。先進国は2008年の金融危機を財政出動と超金融緩和でしのぎ、問題先送りにした。そのツケが出てきている恰好だ。
 経済不安定の構図はしばらく変わらない。

 【夏休み返上】 金融危機に加えて英国では移民や若者による暴動が発生。キャメロン首相は夏休みを切り上げて帰国し、対応に追われた。フランスのサルコジ大統領も夏休み返上で金融危機対策に取り組む姿勢をPRした。オバマ米大統領は18日から休暇をとる予定だが、これにも批判が出る始末だ。

 【米大統領選】 2012年の米大統領選をにらみ、野党共和党の討論会が11日アイオワ州で開かれた。13日にはペリー・テキサス州知事が出馬表明した。共和党の有力候補はロムニー前マサチューセッツ州知事(中道)、ペリー氏、パックマン下院議員(茶会党の推薦)などが挙がっているが、先行き予断は許さない。今のところ、茶会党の影響がまだ強いことが印象的だ。
 一方現職の与党のオバマ大統領は支持率低下に悩む。財政赤字削減(および連邦債務の上限引き上げ)問題は野党共和党に妥協する形でとりあえず解決したが、福祉削減に対し民主党内左派などが批判を強めた。米国債の格付け引き下げも、大統領にとっては痛い出来事。
 オバマで決まり、とは言えない選挙になる、との見方が強い。

 【重要ニュース】 夏らしくなく(?)他にも重要ニュースが多かった。アフガニスタン中部で6日、米特殊部隊隊員などを載せたヘリが墜落。38人が死亡した。タリバンによる攻撃によるとの見方が強く、アフガンの治安が依然不安定なことを印象付けた。
 中国発の空母ワリャーク(旧ソ連の空母を改装)が10日、試験航海のため大連を出航。中国は世界10番目の空母保有国になった。
 日本の菅首相が10日退陣を正式に表明。日本は6年で6人目の新首相を選出することになる。
 シリアでは政府による反政府運動の弾圧が続き、アラブ諸国は柔軟な対応を要請。米国は制裁を強めた。しかし今のところ状況変化はない。
 リビアでは8日、反体制派「国民評議会」の内閣にあたる組織のメンバーが総辞職した。7月末に参謀長が射殺された事件をめぐり、反体制内でもごたごたが続く。

◎今週の注目(2011.15-20)&当面の注目
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・市場の動揺が続いている。前週は米国債格下げ、G7声明、欧州の空売り禁止など重要な動きが相次ぎ、株価は下落→反発と動いた。引き続き不安定な動きが続きそうだ。
・英国の暴動はなお収束していない。政府の対応策にも注目。
・オバマ大統領18日から夏休みをとる。

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2011年8月 6日 (土)

2011年32号(8.1-5 通算580号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2011年8月1-5日

◆米債務上限引き上げ法案可決、デフォルト回避(2日) ☆
・米連邦債務の上限を引き上げる法案が成立。懸念されたデフォルトは回避された。
・債務上限は14.3兆ドルから2.1-2.5兆ドル引き上げる。
・条件として今後10年で2.1-2.5兆ドルの財政赤字を削減する。
・詳細は議会の超党派委員会で11月までに固める。不調の場合2.1兆ドル削減。
・法案は1日に下院、2日に上院が可決。大統領署名を経て成立した。
・下院では共和党の3分の1以上が、赤字削減が不十分として反対した。
・一方民主党議員は福祉削減などを警戒し半数が反対。与野党双方から不満が出た。
・当面の危機は乗り切ったものの、財政問題はくすぶり続けるとの見方が多い。
・財政支出削減による経済悪化の懸念もあり、米経済・財政の先行きは晴れない。

◆シリアがデモ隊の弾圧強化、国際社会が批判 ☆
・シリア当局が反体制派デモ隊の弾圧を強化している。
・31日には各地で140人が死亡。中部のハマでは100人以上が死亡した。
・クリントン米国務長官は、3月からの死者が2000になったとシリアを批判した。
・EUが対シリア制裁を強化。国連安保理は3日議長声明でシリアを非難した。

◆エジプトでムバラク前大統領初公判、情勢不安続く(3日)
・ムバラク前大統領の初公判がカイロ郊外の特別法廷で始まった。
・不正蓄財やデモ隊の殺害を命じた罪などに問われている。元大統領は罪状を否認した。
・大統領は移動式のベッドに横たわって出廷。鉄の檻に囲まれた被告席に入った。
・同国では2月のムバラク退陣後も情勢が安定せず、デモも相次いでいる。
・イスラム原理主義勢力の伸張も目立つ。

◆サイバー攻撃拡大、過去5年で72の国・国際機関・企業に(2日)
・米マカフィーが調査報告を発表した。過去5年で72の国などに大規模サイバーテロが発生。
・国連、ASEAN、IOCなども含まれる。
・同社は国家の関与が認められるの認識を示した。名指ししないが中国の可能性がある。
・サイバー攻撃には米国防総省が第5の戦場として宣言するなど、急速に関心が高まっている。

◆世界で株安(4日)☆
・世界的に株式の下落が続いた。
・4日は米国、欧州主要国、東京、中国などで軒並み株価が2-4%下落した。
・欧米景気の先行き不安高まりなどが背景。
・米財政削減→経済悪化や欧州中銀のユーロ圏経済下揺れリスク指摘も影響した。
・世界経済の先行きは不透明感を増している。

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 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース                  
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
 ├─────────────────────────────
 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
 └─────────────────────────────

◎寸評:of the Week
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 【米debt ceiling の合意】 ここ1-2週間世界の注目を集めていた米連邦債務上限引き上げ(および財政赤字削減)問題は、大方の予想通りぎりぎりで妥協が成立。懸念されたデフォルトなど市場の混乱は回避した。
 しかし議論を通じ、各勢力の立場の違いが改めて鮮明になった。与党民主党が富裕層への増税による財政赤字削減や福祉の維持を目指したのに対し、野党共和党は小さい政府路線で増税に反対。特に昨年の中間選挙で勢いを得た茶会党系の議員は、強硬姿勢を貫いた。大統領は富裕層への増税を断念する形で共和党に妥協したが、これに対しては民主党左派が反発。下院民主党は賛否同数で、どちらが与党か分からない状況。英Economistは、誰もに不満が残る合意と指摘した。
 政治的分裂以上に問題なのは、米経済の先行きが益々不透明になったこと。その後の世界的株式の下落、市場の混乱の伏線になった。

 【ムバラク公判】 エジプトでムバラク前大統領の公判が行われた。罪状否認は予想通り。それより印象的だったのは、前大統領がベッドで入廷し、しかもそのベッドが檻で囲まれていた光景だ。カイロなどの広場には前大統領の罪状を糾弾する人々が集まっていたが、檻の中の前大統領はその場で放し出された。
 2月の革命之後、エジプトは民主化の行方が見えない不安定な状況が続いている。ムバラク公判の風景からも、社会のフラストレーションがたまっているという印象を受ける。

◎今週の注目(2011.8.6-13)&当面の注目
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・市場の動きが荒い。要注目。

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