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2010年11月

2010年11月28日 (日)

◆北朝鮮の砲撃と朝鮮半島情勢の注目点 2011.11.28

 北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃。朝鮮半島の緊張が一気に高まった。北朝鮮の真意など不明な点が多いが、朝鮮半島が戦争の懸念を変えて推移している事が改めて浮かび上がった。北東アジア情勢の注目点も見えてくる。

▼砲撃の推移
 北朝鮮の砲撃があったのは23日午後2時半過ぎ。海岸部の基地から合計170発の砲撃があり、うち80発が島に着弾した。島では民家などを破壊、集落や山林の火事を引き起こすなど甚大な被害を及ぼした。兵士2人と民間人2人が死亡し、約1700人の島民の大半の島民が島を脱出した。
 韓国軍は応酬し、約1時間に渡り砲撃戦が繰り広げられた。警戒態勢は最高レベルに引き上げた。
 北朝鮮が韓国の陸地に攻撃したのは、1953年の朝鮮戦争休戦以来初めて。

▼北朝鮮の準備
 今回の砲撃は偶発的なものではなく、北朝鮮は準備を重ねてきたと考えるのが自然だ。
 砲撃した島は休戦協定の軍事境界線(北方限界線)からわずかに南方。しかし北朝鮮が主張する境界線より北方にある。北朝鮮は砲撃についてすかさず、境界線付近での韓国の軍事演習が原因と批判した。
 事件に先立ち、金正日総書記と後継者に指名された金正恩氏が砲台を付近を視察したとの情報も流れた。用意周到な砲撃を裏付ける。
 砲撃の数日前には、北朝鮮がウラン濃縮の実施を米国の研究者を通じて公開している。核開発と砲撃は連動していると見るのが、関係者の共通認識だ。

▼米感軍事演習と韓国の対応
 韓国は警戒態勢を最高レベルに引き上げた。李明博大統領は断固とした態度で応じることを表明した。
 米国と韓国は共同軍事演習を予定通り28日から実施し、北朝鮮に圧力をかける姿勢を示した。共同演習には米空母が参加。緊急時には平壌に10分で空爆できる態勢を誇示した。これに対し北朝鮮は防空態勢を整えるなど対応している。
 韓国内では対北朝鮮強硬姿勢が一気に強まり、死亡した兵士の葬儀では司令官が弔辞で「10倍、100倍の報復」を発言。退役軍人らのデモも相次ぎ、北朝鮮への経済支援停止を求める声も大きい。
 南北関係が冷却化し、緊張の高い状況が続くことは間違いない。

▼国際社会の動向
 米国や欧州、日本は相次いで北朝鮮を非難。ロシアも砲撃を批判した。
 北朝鮮に影響力を持つ中国は、それに比べると北朝鮮に配慮する。しかし、緊張の高まり回避では米韓などと一致しており、調整に動いている。28日には6カ国協議の首席代表会議を呼びかけた(米韓などは効果に否定的)。国連でも協議が進む。
 ただ、こうした国際的調停の行方は不透明。予断は許さない。

▼北朝鮮の強硬姿勢と危機感
 最大のなぞは、北朝鮮の狙いだ。
 専門家の間では、金正恩氏への体制移行をにらんで、緊張を作り出す狙いとの見方が強い。
 北朝鮮は金日成主席から金正日総書記への体制移行を進めた80年代から90年代前半にも緊張を作り出している。83年のラングーン事件、87年の大韓航空爆破事件、90年代初頭の核開発危機などがその代表だ(金日成主席は94年に死去)。
 米国を対話に引き出すための瀬戸際外交という面もある。米国との対話は、北朝鮮が終始求めている。
 しかし、北朝鮮の強硬姿勢の裏に隠れる強い危機感を見逃してはならない。
 冷戦終了後、韓国や中国が経済発展を実現する中で北朝鮮の発展から取り残された。経済は危機的な状況にある。
 体制的には軍依存が一層強まり、金正日総書記の健康問題が生じた。脱北者は続出している。
 米ブッシュ政権のイラク侵攻などを見れば、いつ侵攻されてもおかしくない。瀬戸際外交も核開発もこうした危機感を背景に生まれてくると見るべきなのだろう。

▼戦争、核、国家崩壊のリスク
 国際社会から見れば北朝鮮問題はアジアの大きな不安定要因であり、戦争の火種だ。
 冷戦終了後の北朝鮮と国際社会の関係は、危機の発生→対話→経済支援などの引き出し→新たな危機、という連続だった。
 その過程で北朝鮮は核保有国になった。経済発展の面からは世界の潮流にますます取り残され、北朝鮮崩壊のリスクも高まっている。その場合の混乱の深刻さは計り知れない。
 北朝鮮の情報は限られており、同国の実態、政権の権力構造、考えなどは分かりにくい。国際常識からはかけ離れた行動も多く、予測しがたいことが付きまとう。
 砲撃事件は、軍事衝突の懸念があることを改めて認識させた。朝鮮半島は常に戦争リスクを抱えているのだ。平時には忘れることもあるが、この当たり前の事実は重い。

2010.11.28

2010年48号(11.22-28 通算544号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2010年11月22-28日
 

◆北朝鮮が韓国の島砲撃、朝鮮半島緊張(23日)☆☆
・北朝鮮は黄海の軍事境界線付近の韓国・延坪島に砲撃を加えた。
・海岸から170発程度の砲撃があり一80発が島に着弾。韓国兵・民間人4人が死亡した。
・韓国軍も反撃し、約1時間の砲撃戦になった。
・同国が韓国陸上に砲撃したのは、53年の朝鮮戦争休戦後初めて。緊張が一気に高まった。
・北朝鮮は攻撃を認めた上で、韓国の軍事演習による領海内砲射撃が原因と主張した。
・金正恩氏への体制移行を背景に、緊張創出した可能性がある。米朝協議開始の狙いも指摘される。
・米韓は断固たる姿勢をとることで一致。黄海での共同軍事演習実施を確認した。
・日本や欧州諸国も北朝鮮を批判。国連でも対応策の協議が始まった。
・一方、北朝鮮に影響力がある中国は、米韓とは一定の距離を置く姿勢だ。
・北朝鮮は砲撃の数日前にはウラン濃縮の実施を米研究者を通じて公表した。動きは連関している。

◆米韓共同軍事演習開始(28日)☆
・米韓の共同軍事演習が黄海上で始まった。12月1日までの予定。
・朝鮮半島緊張下で軍事力を誇示。北朝鮮砲撃に対する対抗措置の意味合いもある。
・米原子力空母やイージス艦、哨戒機などが参加。実弾射撃も行う。海域は軍事境界線の南方。
・北朝鮮は当然のように演習を批判。緊張を高めている。
・海域一部は中国が漁業権を主張する領域と重なる。これもあり、中国は演習を批判した。

◆アイルランドがEUなどに財政支援要請。財政再建策発表(21、24日)☆
・アイルランド政府は21日、EU とIMFに金融支援を要請した。
・EUとIMFは同意。同国と調整に入った。
・支援額は800-900億ユーロとの観測が流れている。
・同国では大手銀の金融危機表面化などを契機に財政危機が表面化。
・国債利回りが急上昇し、来年以降の債務不履行が懸念された。
・金融支援要請を踏まえ、同国政府は24日、2014年までの財政再建計画を発表した。
・2010年にGDP比約30%に達する財政赤字を14年までに140億ドル削減し、3%に減らす内容。
・社会保障費の削減、公務員の削減。付加価値税の13年に21→23%への引上げなどが柱。
・欧州主要国で最低の法人税は12.5%に維持する。
・計画は2.75%の成長を前提としており、実現を疑問視する見方も多い。

◆欧州の国債利回り、上昇続く ☆
・欧州各国の国債利回り上昇が続いている。
・ギリシャ、アイルランドに続きポルトガル、スペインの利回りも上昇。
・ポルトガルの利回りは7%超。スペインも5%を超えた。ギリシャは10%超。アイルランドは9%に達した。
・財政・金融不安はくすぶり続ける。

◆米、成長見通し下方修正、経済一進一退続く(23日)
・FRB は10年の実質成長率を2.4-2.5%、11年を3-3.6%と発表した。6月予想から下方修正。
・出業率も2010年が9.5-9.7%。11年が8.9-9.1%と改善が遅い。
・10月の個人消費支出(24日発表)は、前月比0.4%増。食品・エネルギーを除く物価は0.9%
・10月の住宅販売は前月比で3カ月ぶり低下の8.1減となった。
・個人消費の鍵を握るクリスマス商戦がスタート。出足は好調との報道もあるが、見通しは不明。
・オバマ政権の支持率にも直結する経済は、なお不透明な状況が続く。

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◎寸評:of the Week
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 【北朝鮮砲撃】 北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃。朝鮮半島の緊張が高まっている。北朝鮮の思惑など不明な部分は多い。しかし、こうした事件があると、朝鮮半島が「戦争の懸念」を抱えながら推移していることを改めて認識させる。

 【アイルランド危機】 「自力再建」にこだわっていたアイルランドがEUとIMFに金融支援を要請した。次いで2014年までの財政再建計画を発表。付加価値税の引き上げ、歳出の大幅削減など厳しい計画を打ち出した。しかし市場は計画の実行性などに疑問を抱き、先行き不透明感は残る。
 次の焦点は多額な不良債権を抱える大手銀行の国営化。そして財政再建計画が実行できるかだ。こうした動きを見て、市場も動く。
 政治情勢も注目点。シンフェイン党などアイルランドの野党はカウエン政権の責任を追及。総選挙を求めている。25日の下院補選では野党が勝利した。連立政権の支持率は2割に低下。政治の行方も不透明だ。

◎今週の注目(2010.11.28-12.4)&当面の注目
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・朝鮮半島情勢は緊迫した状況で推移する。韓国内では対北朝鮮強硬論が高まり、米韓は28日から共同演習を実施中。米韓中ロ日本などを中心に外交調整が進み、国連での協議も進展する。こうした中で北朝鮮の出方は予断を許さない。軍事衝突の懸念をはらみながら、予断を許さない状況で推移する。
・ハイチ大統領選が28日に実施された。同国では震災からの再建が課題になる中でコレラが流行中。選挙は国の今後を占う重要な節目になる。
・メキシコのカンクンで地球温暖化のCOP16会議が開催される。京都議定書が2012年末で期限切れになるのを踏まえ、新たな枠組み作りが焦点になる。事前交渉は難航。京都議定書の枠組み延長論も浮上している。

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2010年11月21日 (日)

◆NATO首脳会議と世界の安全保障 2010.11.21

 NATOがリスボンで首脳会議を開催。今後10年の新戦略概念(Strategic Concept)を採択した。首脳会議の背後には、世界の安全保障の変化が透けて見える。

▼新戦略概念のポイント

 NATOの新戦略概念は、1999年以来11年ぶり。そのポイントは次の通りだ。

・集団安全保障体制の確認。抑止力の維持確認。
・テロ、サイバー攻撃など新たな脅威への対応強化。
・EUなど他の機関、国家との協力強化。それを通じた紛争防止、平和維持。
・核なき世界を目指すが、現時点では核抑止力を維持。
・欧州としてのミサイル防衛システムの開発。
・NATO拡大に門戸は開く。
・ロシアとの協力強化。
・効率的な運営。

 新戦略概念全文は次のアドレスで確認できる。
http://www.nato.int/cps/en/natolive/official_texts_68580.htm

▼新たな脅威

 東西冷戦規のNATOは、ソ連圏に対抗する軍事同盟だった。冷戦終了でその脅威が消えると、NATOは自らの存在意義を自問することが必要になり、首脳会議や新戦略概念で新たな役割を再確認した。

 東西対決に代わり、まず世界の安全保障の脅威になったのが、地域紛争や民族紛争。NATO は脅威に対応するため、域外派遣などの新機能を打ち出した。

 伝統的な集団防衛の役割、90年代以降の地域紛争・民族紛争への対応に加え、今回の新戦略概念で新たに確認したのは、テロやサイバー攻撃など新たな脅威への対応だ。化学兵器なども例示している。

 もう1つが核拡散を背景にした、新たな核の脅威。オバマ米大統領が提唱した「核なき世界」を将来目標として追求するとしながら、当面は核抑止力を重視。欧州としてのミサイル防衛システムも打ち出した。

▼他国・地域との協力

 新戦略概念はまた、EUなど他の組織との協力を強調している。

 EUは93年に共同体から欧州連合に発展した後、独自の安全保障機能を強化。2009年のリスボン条約発効後はその役割を一段と強めた。旧ユーゴの安全維持などでは、EUが大きな役割を果たしており、EUとの協力抜きにNATOは安全保障上の役割を果たせない。

 アフガンやイラクではNATOと地域外の国(豪州、中東諸国、ロシア、中央アジア諸国など)との協力が欠かせない。「協力の強調」は、こうした国際情勢の変化を反映した必然なのだ。

▼ロシアとの距離・世界的なバランス

 ロシアとの関係も前面に出した。米ブッシュ政権時代、米国やNATOとロシアの関係は、米ミサイル防衛システムの配置計画やグルジアやウクライナのNATO加盟問題、ロシアのグルジア侵攻で冷え切った。

 オバマ政権になり、関係をリセット。新たな強調を模索しているところだ。

 今回のNATO首脳会議には、メドベージェフ・ロシア大統領が初めて参加。ミサイル防衛での協力など出合意した。

 NATOは自由と民主主義を共通の価値観とする国の安全保障システム。ロシアとは表面上はとにかく、本年のところでは違和感が残る。ロシアを安全保障上の潜在的な脅威とみなす見方も消えていない。

 一方で、中国などアジアの台頭が著しい中、バランス上ロシアとの関係を重視する意見もある。ロシア問題は全世界的な安全保障から考える必要があり、まだ意見は割れている。

▼対立のない首脳会議

 今回の首脳会議は新戦略概念中心で、具体的な課題であるアフガニスタン問題、グルジアなどのNATO加盟問題など、加盟各国の死活的利害に絡む問題について、詰めた議論はなかった。英Economistがrowless1 summit(喧嘩のない首脳会議)と書いたのも、そうした状況を表している。

 新戦略概念はその意味では包括的なものだが、現在の世界が抱える安保上の課題と、国際力学の変化を反映している。

2010.11.21

2010年47号(11.15-21 通算543号)  国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2010年11月15-21日

◆NATO新戦略概念、テロ脅威に対応(19-20日)☆
・NATOがリスボンで首脳会議を開催。今後10年の戦略概念を採択した。
・集団防衛体制の維持、抑止力の保持を再確認。
・テロやサーバー攻撃など新たな脅威への対応を前面に打ち出した。
・核廃絶を目指すも当面は必要と確認。欧州のミサイル防衛(MD)構築を明示した。
・域外との強調も重視し、特にロシアとの協力追求を明示した。
・20日にはロシアのメドベージェフ大統領と会談。MDでの協力を確認した。

◆GMが再上場(18日)☆
・米GMがNY証取などに株式を再上場した。昨年6月の破綻から17カ月ぶり。
・初値は35ドル。時価総額は約500億ドルになる。トヨタは1300億ドル。
・米政府は約3.6億株を売却し118億ドルを得た。持株比率は60&→37%になる。
・GMは上場と同時に優先株発効も実施。200億ドル超を調達した。
・同社は破綻後、銀行の債権カット、北米で10工場の閉鎖などで再建を推進。
・10年は3四半期連続で利益を計上した。特に中国など新興国で販売が伸びている。
・産業史に残る大型破綻は、予想を上回る速度の再上場になった。
・ただGM救済の是非はまだ議論が分かれる。米政府は救済に500億ドルを投じた。
・今後は小型車や電気自動車戦略などが課題。米政府が資金回収できるかも不透明だ。

◆ウィリアム王子が婚約(16日)
・英国のウィリアム王子がケイト・ミドルトンさんと婚約発表した。
・同王子はチャールズ皇太子と故ダイアナ妃の長男。
・英国の皇位継承第2位で、将来国王になる予定。
・婚約指輪にはダイアナ妃から受け継いだブルーサファイアを贈った。
・王室関係では、世界で最も注目されていた案件の1つ。
・英国の国のあり方という重い視点からも、芸能ニュース的にも注目される。

◆中国インフレ懸念拡大、預金準備率引き上げ ☆
・中国のインフレと不動産バブルの懸念が拡大している。
・10月の消費者物価は4.4%上昇。目標の3%を大きく上回った。
・温家宝首相は17日、物価抑制への本格的な取り組みを表明した。
・人民銀は19日、預金準備率を0.5%引き上げると発表した。29日実施。
・10月16日にも引き上げたばかりで、2週間で2度の上げとなる。

◆アイルランド危機くすぶる
・アイルランドの経済危機がくすぶり続けている。
・ユーロ圏財務相会議は16日、同国支援に備えることで合意。発表した。
・しかし同国は支援要請を回避しようとする態度を示し、混乱させた。
・18日になってレニハン財務相が外部支援が必要との判断を初めて示した。
・EU、IMFなどと調整を本格化させる。
・同国財政赤字はGDP比32%に拡大。再建計画実施も難航が予想される。

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◎寸評:of the Week
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 【市場・経済】 G20が終わり、市場は世界経済の次の「材料」に関心を移している。注目されているのはアイルランドの危機、中国のインフレ、米国の景気動向と金融政策など。数ヶ月続いたドル安の流れも変化を迎えたとの見方もある。膨大な不均衡、政策協調の弱さ(G20もメッセージは弱かった)、世界的な経済構造の変化(先進国中心→新興国)などを背景に、関心も猫の目のように変わる不安定な状況が続く。

 【英ロイヤル・エンゲージメント】 英ウィリアム王子がケイト・ミドルトンさんとの婚約を発表した。世界の王室の中でも英国は注目の的。しかもダイアナ妃の結婚、悲劇を経た後であり、英国の国家体制や社会と王室のかかわりにも絡む。ダイアナ妃の時、英メディアの報道はおとぎ話からスキャンダル報道に振れた感がある。それに比べると、今回は比較的冷静な感じがする。

【北朝鮮の核】米NYタイムズは20日、北朝鮮を今月訪問したスタンフォード大のヘッカー教授の話として、北朝鮮が既に2000基の遠心分離器を稼働させている報道した。同国は教授に、新設の大規模ウラン濃縮施設を公開したという。3回目の核実験実施も情報も流れている。北朝鮮の核問題が、また動き出す情勢だ。

◎今週の注目(2010.11.22-27)&当面の注目
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・アイルランド危機を巡る同国とEU、IMFなどの調整が続く。

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2010年11月14日 (日)

◆G20とAPECが映す世界・アジアの課題 2010.11.14

 ソウルでのG20首脳会議、横浜でのAPEC首脳会議を中心に、アジアで幅広い首脳外交が繰り広げられた。

 一連の会議・会談を巡り、世界や地域の抱える様々な問題が改めて浮かび上がった。
 気付いたところを挙げれば、例えば点がある。

▽通貨政策巡る対立

 G20首脳会議は通貨・世界経済を協議した。会議は通貨安定や不均衡是正に、協調して問題に取り組む「政治的意思」を示したものの、具体論では立場の違いが埋まらなかった。

 今回特に問題になったのが、米国の金融緩和。新興国は米国の緩和が世界的金余りを生み出し、新興国のインフレ懸念を高めていると批判を強めている。米国は政策に理解を求めたが、溝は埋まらなかった。

 一方、不均衡問題では米国が参考値の設定など是正のメカニズムを導入しようと提案した。しかし具体的合意には至らず、さらに検討することになった。人民元でも、切り上げを求める米国と早急な対応には否定的な中国の意見対立が続いた。

 通貨政策を巡る新興国と先進国、米国と中国などの対立が改めて浮かび上がった。

▽問われるG20の体制

 G20は2008年の金融危機に対応するため、従来のG8を拡大する形で発足した。成長著しい新興国を加えなければ、世界経済・金融の問題には対処できないという問題意識があった。金融危機後の非常時には、G20の政治的メッセージは効果を示した。

 しかし時間の経過と共に、利害調整の難しさなど課題が浮き彫りになってきた。参加者が多く、経済発展や政治体制も異なれば、調整はG7に比べはるかに複雑で難しい。ソウル会議も、そうした難しさが浮き彫りになった格好だ。

▽地域統合巡る主導権争い

 APEC首脳会議では貿易自由化や地域統合を協議した。会議は貿易自由化や地域の経済統合推進を強調したが、政治的意思の表明を別にすれば具体的中身はインパクトに欠く。1994年のボゴール宣言のような、明確なメッセージとは言い難い。

 地域統合を目指す組織は、APEC以外にも東アジア首脳会議やASEAN+3などいくつもの機構がある。それぞれの機構にどの国の参加を認め、どの機構を核に地域統合議論を進めるかは、参加国の利害が絡む。地域統合は、重層構造で進んでいる。この辺りはEU中心の欧州とは異なる。

▽中国の存在感

 G20では人民元問題がひとつの中心テーマになるなど、各会議で中国の存在感の拡大が目立った。10月末の東アジア首脳会議やASEAN+3では、中国のプレゼンス拡大や領土問題が隠れた中心テーマになった。

 英キャメロン首相はG20前に中国を訪問。経済関係の拡大を協議した。サルコジ仏大統領は前週に訪仏した中国の胡錦涛主席と会談。1兆円規模の大型商談をまとめた。

▽価値観の異なる体制

 G20やAPECなどがG7と決定的に異なるのは、政治体制や価値観の異なる国がメンバーになっていること。キャメロン英首相は訪中時の演説で、人権問題についてさりげなく言及した。

▽東アジア秩序の変化

 世界的には新興国の台頭、東アジアでは中国の台頭、日本の退潮、日米同盟の揺らぎなどの構造変化が起きている。日中、日ロの領土問題(尖閣諸島や北方領土)が表面化しているのは、こうした変化と密接に結びついている。

 このほか、中国への対抗パワーとしてのインドの役割、新たなキーワードになるTPP、オバマブランドの低下など重要なポイントがいくつかある。

 少し前まで、夏のG8サミットが世界の定点観測の1つの機会だった。その機会もG20などに移っている。

2010.11.14

2010年46号(11.7-14 通算542号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2010年11月7-14日

◆G20首脳会議、協調確認、具体策は限定(11-12日)☆
・G20主脳がソウルで通貨問題や国際経済を協議、共同宣言を発表した。
・通貨の切り下げ競争回避を確認、不均衡是正の参考指標設置も盛り込んだ。
・ただ具体的決定は少なかった。
・会議および事前調整では人民元の切り上げを巡り米中が意見対立。
・新興国は米国の金融緩和がカネ余りを呼んでインフレ要因になっていると批判した。
・首脳宣言は各国の協調を強調したが、こうした対立が残った。
・G20は2008年のワシントンでの初会合から5回目。

◆APEC首脳会議、地域統合推進強調(13-14日)☆
・APEC首脳会議が開かれ、首脳宣言「横浜ビジョン」を発表し閉幕した。
・貿易自由化と地域経済統合の推進を確認する内容。
・食糧安全保障や感染症対策など、地域が協力して取り組む課題にも触れた。
・ただ具体策は新鮮味を欠いた。
・G20、APEC主脳会議を利用して、広範な首脳外交が行われた。

◆ミャンマー総選挙、軍事政権与党圧勝(7日)☆
・軍事政権主導の「総選挙」が行われ、政権支持政党が圧勝した。
・軍事政権系のUSDPは9日、連邦議会と地方議会の8割を獲得したと発表した。
・選挙は連邦上下院と地方議会で実施。連邦の4分の1は軍に割り当てている。
・アウン・サン・スー・チー氏率いる最大野党NDLは選挙をボイコットした。
・同国では90年の選挙でNDLが圧勝したが、軍事政権は結果を無視し権力を維持。
・今回の選挙に対しても、米欧は不正として認めない立場。
・これに対して中国は占拠を支持。タイなども理解を示している。
・軍事政権は選挙後の13日、自宅軟禁中のスー・チー氏を7年半ぶりに解放した。

◆イラク首相にマリキ氏指名、空白8カ月で解消へ(11日)☆
・イラク連邦議会は次期首相に現職のマリキ氏を指名した。母体はシーア派会派。
・大統領にはクルド人のタラバニ氏。議会議長はスンニ派世俗会派に分配した。
・3月の総選挙でスンニ派世俗派が第1党を獲得。小差でマリキ首相派が続いた。
・その後の政権樹立調整は難航。8ヶ月間次期首相が決まらない空白となっていた。
・結局他会派の支持を得たマリキ首相が続投。重要ポストを他派に配分し妥協した。
・ただし、組閣を巡って再び利害衝突が生じる可能性もある。
・同国は8月に米軍戦闘部隊が撤退。政権による治安維持能力が急務になっている。

◆アイルランド信用不安再燃、国債利回り急騰
・アイルランド国債の利回りが急騰。信用不安が再燃した。
・10年ものは10月初旬の6%→9%程度に上昇した。
・財政再建への懸念→投資家の同国国債離れが進んだ。
・動揺はスペイン、イタリアなどにも飛び火。国債利回りが上昇した。
・英独仏伊スペインの財務相は12日、共同声明を発表。鎮静化に努めた。
・これを受けて利回りは下落した。
・しかし、欧州の金融懸念がくすぶり続ける状況に変わりはない。

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◎寸評:of the Week

【アジアで首脳外交】 ソウルでのG20首脳会議、横浜でのAPEC首脳会議を中心に、アジアで幅広い首脳外交が繰り広げられた。世界や地域の抱える様々な問題が改めて浮かび上がった。

 【ミャンマー総選挙】 ミャンマーの総選挙が行われ、予想通り軍事政権支持政党が圧勝の勢いだ。選挙後の14日、軍事政権は反体制の象徴になっているアウン・サン・スー・チー氏を自宅軟禁から7年半ぶりに解放した。
 ミャンマー軍事政権は、そもそも1990年の選挙でスー・チー氏率いるNDLが圧勝した後も政権を手放さず、軍事独裁を続けている。米欧が今回の選挙を茶番と断じ、正統性を認めないのもその立場からは当然だ。
 しかし、中国は選挙を支持。タイなども評価を与えている。国際社会が全て半軍事政権かと言えば、決してそうではない。
 米欧が経済制裁を実施した後も、ミャンマー軍事政権が20年間も持続した事実も無視できない。制裁を中国などとの交易で持ちこたえ、国内的には強権と懐柔で権力維持してきたこの構図は、北朝鮮とも通じる。
 ミャンマーの動向は、欧米や国連憲章の価値観とは異なる国が存続する、世界の現実の一面を感じさせる。

◎今週の注目(2010.11.15-20)&当面の注目

・19-20日にNATO首脳会議が開かれる。中長期の戦略概念を1999年以来11年ぶりに見直す。脅威はテロ、サイバーテロなど。NATOとしてのMDも検討する見通し。世界の安全保障にとって、重要な会議になる。

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2010年11月 7日 (日)

◆米追加金融緩和策の影響~新たなバブルの懸念も? 2010.11.6

 米国が追加金融緩和に踏み切った。量的緩和の第2弾で、市場では「QE2」として中身が注目されていた。

 長期国債購入の再開を打ち出したが、市場の予想以上だったのがその規模。2011年6月までの8カ月に6000億ドルを予定しており、MBS償還額を使った購入と合わせると9000億ドルに達する。GDPの7%前後、国家予算の4分の1程度に相当する額だ。

 この膨大な資金が市場に流れ込み、新たな投資先を探して駆け回る。特に向かっているのが中国、インド、ブラジルなどの新興国。これらの国で株価上昇をもたらし、物価上昇、通貨安の要因になっている。

 気まぐれな資金の移動は、経済に深刻な副作用を及ぼす懸念がある。中国などが米政策を批判するのはそのためだ。

 米国もそうした批判が出るのは十分に承知している。それでも2番底懸念を払拭し、デフレ懸念に対応するためには追加緩和策を取らざるを得ない。そこに、現在の米経済の苦しさがある。

 いずれにしろ、金融危機後の「非常時の超緩和策」からの「出口作戦」は棚上げになった。しばらくは金余り状態が続くだろう。

 バブルが弾けた後に、通常「痛みを伴う改革」による経済再建の必要性が指摘されるい。しかし結局は新たなバブルを形成して、景気刺激してきた例は多い。近年ではITバブルも、不動産証券バブルもそうだった。

 現在の世界経済も、過剰流動性の下で新たなバブルを形成している可能性がある。それは、中国・新興国バブルへと進む可能性もあるし、技術や金融工学など見えにくいところで発生しているかもしれない。

 いずれにしろ、副作用までを考えた観察眼が必要だ。

2010.11.6

◆米中間選挙とオバマ政権・世界 2010.11.6

 米中間選挙はオバマ大統領の与党・民主党が大敗した。大統領の政治基盤は弱まり、今後の政策に影響を及ぼすのは必至。選挙が映した米国の政治・社会の潮流や世界への影響を整理してみる。

▼新たな政治地図

 与党・民主党の議席減は予想通りだったが、負け方は事前に予想されたものではなかった。結果のポイントを上げれば次のようなものだ。

(1)下院で野党共和党が勝利。
 会員議席435のうち、共和党の獲得した議席は選挙前の179→239以上(未確定が残る)で、60議席以上の増加。逆に民主党は256→188+αに落ち込んだ。民主党の議席減は1930年代以来72年ぶりの大幅なもの。
 上院と下院の多数党が異なる議会のねじれは10年ぶり。ただ、大統領と議会の多数党が異なるのは、クリントン政権時、ブッシュ政権時などたびたびある。

(2)上院はからくも過半数維持
 上院は改選議席が全体の3分の1強ということもあり、民主党が辛くも過半数を維持した。民主は59→53。共和は41→46+αだ。

(3)知事選でも共和党勝利
 同時に行われた知事選でも、共和党が躍進した。全米の知事数は選挙前の24→29に増加した。知事は州の政策を決定する権限があるのみならず、大統領選における影響なども重要。

▼敗因は経済、今後の鍵も経済

 オバマ与党敗北の原因について、専門家はほぼ一致して「経済」と指摘する。
 リーマンショック後の不況の中で、オバマ政権は7000億ドル超の景気対策を実施した。しかし米経済の回復は弱く、今夏には2番底懸念が浮上するなどむしろ悪化した。
 失業率は10%弱に高止まりし、失業者や就職できない若者などの不満は高まっている。
 2008年の大統領選でオバマ当選を支えたのは、民主・共和両党の支持に固まっていない無党派層。オバマ氏の掲げる「変化」に期待し、オバマブームを引き起こした。しかし経済・雇用の悪化で、期待はしぼんだ。
 2012年の大統領選の行方を占うのも、「経済」。とりわけ雇用という見方が多い。

▼茶会党躍進、行方は不透明

 今回の選挙は、「茶会党」(Tea Party)抜きには語れない。元々保守派の草の根運動だったが、選挙では政策的に近い共和党候補を支援。かなりの率で当選に持ち込んだ。
 茶会党の掲げる「小さい政府」や「反オバマ」は、共和党支持者層の共感を得やすい。しかし、進化論教育禁止など原理主義的な面もある。
 茶党会が今後も勢いを維持できるか、あるいは一時的ブームに終わるかは、様々な見方がある。

▼米社会の2極化

 民主党が議席を維持したのは、東部(NYやニューイングランドなど)と西海岸のカリフォルニアなど。共和党が勝利したのは南部や西部、中西部などだ。今回は中西部のSwing Statesをおさえた共和党が勝利した。しかし、東部・西海岸の「青い州」と、南部や西部の「赤い州」の構図は、ここしばらく不変だ。
 米メディアや調査機関の調査によると、共和党への投票が多かったのは白人、高齢者、高所得者。逆に民主党投票が多かったのは若者、黒人やヒスパニック、低所得者などだった。
 米社会が「赤い州」と「青い州」、白人と有色人種、富裕層と貧困層などに2分化されているとの指摘は多いが、今回の選挙ではその傾向が一層強まった。
 民主、共和両党とも中道穏健派が落選。極端なリベラル、保守派が力を得た。ここにも2極化が表れている。

▼重要政策に影響、景気対策も

 大統領と議会がねじれとなる米国で、焦点となる国内重要政策は次のようなものがある。

(1)医療保険改革
 オバマ大統領が大統領選時から「内政の最大課題」に掲げ、3月に(まがいなりにも)成立させたもの。無保険者の減少などを目指している。共和党はこれに反対、廃案に追い込むと強調している。

(2)減税 
 ブッシュ政権が実施した減税の効力が年末に切れる。オバマ政権は富裕層以外だけについて減税措置継続を目指しているが、共和党は富裕層の減税継続も主張。対立している。

(3)景気対策
 オバマ政権は必要なら財政措置を含む柔軟な景気対策を目指している。これに対し共和党は、大きな政府につながる財政拡大は反対の立場。特に中間選挙で力を得た保守層は抵抗する。一方税制では、富裕者層課税強化を狙う大統領に対し、共和党は反対。景気回復の「手柄」を大統領に渡したくないという思惑も絡み、問題がこじれる可能性がある。

(4)環境・エネルギー
 共和党は環境やエネルギー開発の規制を批判する。オバマ政権が掲げきたグリーン・ニューディール政策にも影響する。

▼国際的影響

 国際的な影響も大きい。大統領が推進してきた核軍縮に共和党保守派は反対の姿勢を隠さない。ロシアと合意した核軍縮条約も、議会の承認が得られなければ発効しない。

 アフガンなどの安全保障問題、対中関係、FTAなどの通商、環境問題なども、共和党の意向に配慮せざるを得なくなる。

 各国が大統領の影響力低下を見越して、足元を見るようになるのも間違いない。それはイランの核問題、北朝鮮の各開発問題、米中関係、中東和平の問題などに影響してくる。

▼世界的なオバマ・ブームの終焉?

 米国で2009年後半からオバマ大統領に対する支持が冷え込んだ後も、海外ではオバマ大統領への期待が高いまま続いてきた。そうしたオバマ・ブームは、徐々に修正されていく過程にある。中間選挙の結果は、そうしたプロセスを決定的する可能性がある。世界はオバマ・ブームに支えられた面のある2008年米大統領戦後の時代から、新しいステージに入る。

2010.11.6

2010年45号(11.1-6 通算541号) 国債ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2010年11月1-6日

◆米中間選挙、民主大敗(2日)☆
・米中間選挙が実施され、オバマ大統領与党の民主党が大敗した。
・下院(435議席)は256→179に減少(共和は188→239、未定あり)、過半数を割った。
・議席数の減少幅は1930年代以来の歴史的な敗北。
・上院は過半数をかろうじて維持したものの、59→53に減少した。
・同時実施の知事選も野党共和党が躍進。共和党知事は24→29程度になった。
・長引く経済不振で、2年前の大統領選の支持層がオバマ離れを起こした。
・大統領の政治基盤は弱まり政策運営が難しくなる。早々共和党に協調を呼びかけた。
・富裕層への減税、医療保険改革等の重要問題で影響が出そう。国際的影響も大きい。
・共和党では保守派「茶会党」推薦候補が躍進。中道派は劣勢だった。
・民主党でも中道派が後退。米社会の2極分裂が一層鮮明になった。

◆米FRBが追加緩和措置(3日)☆
・米FRBは追加金融緩和措置を決定した。量的緩和の第2弾(QE2)。
・2011年6月までの8カ月に6000億ドルの長期国債を追加購入し、市場に資金供給する。
・住宅ローン担保証券(MBS)等の元本償還分で国債を購入する措置も継続する。
・両方を合わせた国債購入は、9000億ドル程度になる見通し。
・米経済の失速とデフレ懸念に対応した。
・ただ資金供給は膨らみ、市場混乱やドルの信認低下の懸念を生む。
・中国など新興国は世界経済への副作用を懸念し、米国を批判した。
・米国は金融危機後実施の長期国債購入を09年10月停止、出口作戦を探った。
・しかし経済悪化とデフレ懸念で再度の緩和を余儀なくされている。

◆ブラジル大統領にルセフ氏(31日)☆
・大統領決選投票が行われ、与党・労働党のジルマ・ルセフ元官房長官が当選した。
・ルラ大統領の後継者として中低所得者の支持を得た。
・ルセフ氏はルラ路線を引き継ぎ、経済成長と中低所得者の底上げに取り組む方針。
・ブラジル初の女性大統領。元ゲリラで投獄経験もある。ブルガリア系。
・新興国のリーダーの1人として、今後世界の注目を浴びることになる。

◆世界で株価回復、NYもリーマン前水準(4日) ☆
・世界の株式市場で株価の回復が進展している。
・NYダウは4日、リーマンショック前の水準に回復した。
・世界の主要20市場中14市場でリーマン前の水準を上回った。
・特に中国、インド、ブラジルなど新興国の株価上昇が目立つ。
・米国など先進国の金融緩和→資金が市場流入→株価押し上げ、とつながっている。
・金余りと新興国成長への期待が結びついて、相場を形成している。

◆IMF、新興国の出資比率拡大(5日)☆
・IMFは5日の理事会で出資の拡大と組織改革案を決定した。
・自己資本を7557億ドル(約60兆円)に倍増する。2012年までに実施の予定。
・出資比率は中国が僅差の3位に浮上。インド、ロシア。ブラジルも10位以内になる。
・国際金融秩序の核の1つであるIMFでも、新興国の存在感拡大が明確になる。
・IMFは金融危機後20カ国超に2000億ドルの支援を実施。自己資本拡大が課題となった。

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 INCDの採点
  ☆☆☆ 世紀の大ニュース                  
  ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
  ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
  無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
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◎寸評:of the Week
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 【中間選挙オバマ与党大敗】 米中間戦況はオバマ大統領与党が大敗。予想していた敗北とはいえ、その影響は大きい。

 【日中・日ロの領土問題と東アジア】 ロシアのメドベージェフ大統領が1日、国後島を訪問した。国家最高指導者の北方領土訪問は旧ソ連時代も含め初めてで、日ロの北方領土問題の一線を踏み越えた格好だ。
 尖閣諸島沖の漁船衝突事件のビデオが4-5日、ユーチューブ上に流出。緊張緩和を模索していた日中関係に、新たな懸念材料が浮上した格好。流出元は不明だが、海保庁や検察など日本の公的機関との観測も強い。
 いずれも日本周辺の領土問題で、新たな摩擦のタネになる。そして日本政府の対応のまずさ(外交力のなさ、国家としての危機管理体制の弱さ)が、問題発生・拡大の一因になっている。
 国際秩序が変わるときには、様々な摩擦・紛争が表面化する。しかし、不要な摩擦・紛争は、様々な害を及ばす。日中、日ロ関係は、東アジアの安定という観点からも注目されている。

 【A380事故】 シンガポール発シドニー行のカンタス航空・エアバス社製A380航空機が4日エンジン事故を起こし、出発地に引き返して緊急着陸した。4基中1基(左翼)のエンジンが火を噴き落下した。エンジンは英ロールス・ロイス製。
 カンタスは当面A380の使用を停止。シンガポール航空も見合わせるなど、影響が広がっている。
 A380は世界最大の航空機。全長70mで最大850人乗り、CO2の排出が少ないなど環境面の効率もよく、文字通り世界の最先端を行く航空機のひとつだ。現在5社37機が就航中で、17社が発注している。
 A380の本格的な事故は、2005年の就航以来初めてだ。今回の事故の原因や影響はまだ不明だが、世界注目の航空機だけに気になる。
 ちなにみ、フランスを公式訪問していた中国の胡錦涛国家主席は4日サルコジ大統領と会談し、エアバスの102期売却を含む大型商談に調印した。

◎今週の注目(2010.11.7-13)&当面の注目
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・G20首脳会議が11-12日、ソウルで開かれる。世界経済・金融システムを巡る問題を協議する。具体的なテーマになると見られるのが、米国など先進国の金融緩和の影響、通貨安競争防止に向けた努力、不均衡是正(経常収支など)の方策など。米国は先のG20財務相・中銀総裁会議で不均衡の数値目標設定を提案し、今回の首脳会議でも再び議論される見込み。

・13日には横浜でAPEC首脳会議が開催される。日中、日ロ首脳会談の実現可能性も注目のひとつ。

・ミャンマーで7日、“総選挙”が実施される。1990年の選挙はアウン・サン・スー・チー氏率いる民主化勢力が議席の8割を占めたが、軍事政権は結果を無視し、権力を握り続ける。今回の選挙でもスー・チー氏の立候補を認めていない。これに対して民主化勢力は選挙をボイコットした。軍事政権は選挙実施で正当性確保につなげたいと見られるが、国際的な批判は強い。選挙が無事行われるか、選挙後に軍事政権はどう動くか、国際社会はどう反応するか、などが焦点は多い。

・7日にギリシャで地方選が行われる。政府の打ち出した財政再建策に国民は抵抗。市場では改革の行方を危ぶむ見方もあり、ギリシャ国債の利回りは上昇している。選挙で政権への批判が出れば、パパンドレウ政権は議会を解散し、総選挙で信を問う構え。

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