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2010年5月24日 (月)

◆韓国哨戒艦沈没事件の見方 2010.5.23

 韓国の軍民調査団は、3月の哨戒艦沈没事件について「北朝鮮の魚雷によるもの」と断じる報告書を提出。朝鮮半島情勢の緊迫が一気に高まった。事件のインパクトと情勢の見方を考える。

▼事件の推移
 哨戒艦は3月27日に、北方限界線付近で2つに割れて沈没した。
 韓国は軍民に米国など海外の専門家も交えた調査団を組織し、事件の原因調査を実施。20日の発表では、魚雷のスクリューや操縦装置が北朝鮮のものであるという証拠資料が公表された。
 韓国は北朝鮮に通知文を送り、事件は休戦協定違反と批判。国連安保理に制裁に向けた協議を求める意向を示した。
 韓国は米国や日本、中国、ロシアなど関係国に説明し、理解を求めている。

▼背後にある軍事的事実確認
 事件の背景として、北朝鮮は米国や韓国が主張する北方限界線の場所を認めていない。
 また、昨年11月には黄海で南北艦艇の銃撃戦が発生。北朝鮮側は複数の死傷者と艦艇の損害を出し、韓国側の圧勝に終わった。
 北朝鮮潜水艦と特殊部隊による韓国領海侵犯や侵入事件も、1996年、98年など過去に何度か発生している。

▼北朝鮮の真意
 これだけの証拠物件があると、北朝鮮の魚雷による沈没という説明への疑念は、国際社会でもほぼない。
 問題は、北朝鮮がなぜ、どのように事件を演出したかだ。北朝鮮問題の常であるが、決定的な見解はなく、様々な憶測が流れている。  
 情報の中にあるのは、昨年11月の銃撃戦への報復説、国内体制引締めのための危機演出説、対外的に危機を演出する瀬戸際外交の一環、などの解説だ。金正日総書記の健康問題→後継者問題との絡みを指摘する見方もある。
 一方、国家のどのレベルで事件が計画されたのかも不明。韓国国防省は21日の会見で、魚雷攻撃は北朝鮮で対韓国・海外工作を担当する「人民武力省偵察総局」が主導した可能性が高いとの見解を示した。

▼歴史的軸で見ると
 歴史的な座標軸でみると、北朝鮮が韓国の体制転覆を目指したり、国際的な危機を演出する狙いで事件を起こした事は繰り返されている。
 1983年にはラングーン事件で、韓国の閣僚が爆殺された。87年には大韓航空機爆破事件が引き起こされた。
 1993年にはNPTから脱退を宣言。核危機を引き起こした。
 90年代に潜水艦による工作員侵入事件が起きたのは上述の通り。
 2000年代に入ると、2006年に核実験を実施。その後もミサイル発射などで何度も緊張を生む出した。
 こうした危機の演出と、交渉による緊張緩和が繰り返されたのが過去30年の北朝鮮問題の経緯だ。

▼北朝鮮の立場を考えると
 北朝鮮が“国家テロ”行為を実施し、国際社会に繰り返し緊張をもたらしてきたのは事実だ。ただ、同国を国際常識が通じないおかしな国と片付けるのでは、状況は理解できない。冷戦終了から20年経ち、飢饉に襲われたりしながら、同国は国体を維持している。北朝鮮指導者が、冷徹な計算の下に国を運営しているのも否定できない。
 今回の問題も、それだけを切り離し、過去とのつながりを軽視して見ると全体像を誤らせる。

▼大きな目で見た脅威
 朝鮮半島では、軍事紛争の懸念が常にある。今回のような単発事件はもちろん、ボタンを掛け違えれば大規模な衝突につながるリスクも抱えている。
 一方で、北朝鮮の体制崩壊リスクが存在する。それは難民発生などを通じ、地域の安定にとって大きな脅威になる。
 今回の事件に限らず、北朝鮮問題の個々の動きは内容が不明なものが多い。重要なのは、「大きな構図」を常に踏まえて物事を見ることだろう。

2010.5.23

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