◆COP15会議の成果 2009.12.19
コペンハーゲンで開催されていたCOP15会議は、具体的成果を生み出すには至らず、問題を来年以降に持ち越す形で終了した。ただ、地球温暖化会議として初めて首脳級会合を開き、オバマ米大統領をはじめ各国首脳が真剣に議論した意義は過小評価すべきでない。「次のステップへの重要な第一歩」になるかどうかは予断を許さない。
▼合意採択できず
米、欧州諸国、中国、インド、日本など主要国は、18日から首脳級会議を開催。期限を延長して19日午前までの協議で合意案をまとめた。しかし、その後の全体会議でスーダン、ベネズエラなどを中心とする途上国は反対。結局文書の採択は断念し、議長の「合意に留意する」という宣言を了承する形で終了した。
▼主要国合意の内容
その主要国合意の内容は、(1)来年1月末までに、先進国は2020年に向けた削減目標、途上国は行動計画を提示する(2)先進国は途上国支援に10-12年に300億ドル拠出。2020年までに1000億ドル拠出を目指す(3)ポスト京都議定書の枠組み交渉作業部会を継続--など。
合意は削減目標について法的約束を強いるものではないし、ポスト京都議定書の枠組みを示すものでもない。2007年12月のバリ島でのCOP13で決めた交渉日程の目標に比べたら後退した内容だ。全体会合ではそん合意すら採択できず、温暖化問題の難しさを改めて認識させる結果となった。
▼根深い対立
地球温暖化を巡っては先進国対途上国、欧州や日本対米国、途上国内(中国やインド対島嶼諸国)などの間に根深い対立がある。それはCOP15会議でも解消できなかった。
中国は今や世界最大のCO2排出国。しかし「温暖化の責任は先進国にある」として一貫して主張し、削減義務受け入れを拒否し続けている。会議でもこの立場は変わらなかった。
この「まず先進国が(一段の)責任を」という立場は、インドやアフリカ、中南米諸国など多くの途上国が共通して主張した。
米国(京都議定書不参加)はオバマ政権になって温暖化問題取り組みに前向きな姿勢を示している。それでも「中国の参加しない枠組みへの参加は意味がない」という基本姿勢は崩さなかった。
京都議定書参加のEUや日本は、次の枠組みには米中の参加が不可欠との繰り返した。ツバルなど島嶼諸国は先進国、途上国を問わず排出国の責任を追及した。
会議は12月7日から精力的に続けられた。議長は様々な提案を示した(京都議定書の延長+非参加国については新たな枠組み協議、などの提案もあった)。しかしいずれも決定打にならなかった
▼夜通しの首脳会合
COP15には米国のオバマ大統領をはじめ欧州各国(英独仏)首脳、温家宝中国首相、シンインド首相ら各国首脳が参加。オバマ大統領らはメンバーの組み合わせを変えて精力的に協議した(米中印と主要途上国の会合、米欧中心の会議等々)。最終的には、夜を徹した会議で主要国合意を目指した。その結果、何とか合意案をまとめ上げ、決裂を回避した。
COP会議で首脳会合が開かれたのは初めて。コペンハーゲン合意の内容はとにかく、首脳がリスクを追って地球温暖化に取り組む姿勢を見せた政治的な意義は軽視すべきではない。
▼最低限の合意
世界の主要メディアの会議直後の評価は、基本線では似ている。英Economist誌はbatter than nothingと論評。英Financial Times紙はClimate conference ends in discord(温暖化会議は意見の違いを残したまま終了)と表現した。NY Times紙はA grudging Accord in Climate Talks(ぱっとしない合意)と伝えた。いずれも最低限の合意という見方だ。
▼持ち越された課題
京都議定書の期限は2012年まで。それまでに政治合意のみならず、法的な枠組みができなければ温暖化問題は協定なしの時代に入ってしまう。
当面は来年1月までに先進国、途上国がどのような数値目標や行動計画を出すかが焦点。そこをクリアすれば、ポスト京都議定書の枠組み作りなどの議論に入れるという段階だ。課題は大きく、打開には米欧中などの首脳の政治決断しかない。
国連の潘基文事務総長は、意味のある第一歩(an essential beginning)と強調した。ただ会議の成果が今後の交渉にどこまで生かせるかは不透明。行方は予断を許さない、としか言いようがない。
2009.12.19
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