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2009年12月 6日 (日)

◆米増派決定とアフガン情勢 2009.12.5

 オバマ大統領がアフガニスタン新戦略を決定、来年夏までの3万人増派を発表した。議論が本格化してから数カ月、政権内でも調整難航を極めた末の決定だ。しかし、アフガン問題の行方がすっきりしたとはとても言えない。むしろ状況の深刻さと問題解決の難しさが浮き彫りになった格好だ。

▼苦渋の決定
 増派問題は初夏以来議論が始まり、ホワイトハウスでは9月以降、10回に及ぶ会議が開かれた。現地駐在軍のマクリスタル司令官は4万人の増派を要求。これに対しバイデン副大統領らは増派の効果に懐疑的で、テロとの戦いの焦点をむしろパリスタンに移すべきだと主張した。
 この間アフガンの現地情勢は悪化。8月の大統領選も開票を巡るごたごたが続いた。11月になってカルザイ大統領の再選が決まったものの、求心力は一段と低下。汚職体質の改善も進まず、カルザイ大戦の統治能力に対する疑問は日増しに大きくなった。
 どのような決定をしても批判は避けられない。究極の決断を迫られる中、大統領は結局3万人の増派を決定。欧州などに1万人の増派を求めた(これが実現すれば現場の求めた4万人となる)。
 同時に「18か月後に撤退を始める」目標を明示。また「43カ国(国際治安支援部隊=ISAF=への派兵国)の支援を受けている」と強調し、国内世論に配慮を示した。

▼見えない展望
 しかし、目標実現への具体的展望が開けているわけではない。
 決定に対しタリバンは徹底攻勢を表明した。タリバンは2001年のアフガン戦争で壊滅的な打撃を受けたが2004年頃から勢力を回復。現在では国土の80%を実効支配していると言われる。
 アフガン政府は当然、歓迎を表明した。しかし2011年の撤退開始の目標については、非現実的との声が上がっている。統治能力が欠如していることは政権自身が承知し、外国軍の支援頼りが続く。 
 NATOは12月4日の外相理事会で増派問題を協議。英国など一部前向きな姿勢を示した。しかし、米国の希望する1万人が実現するかは不明だ。
  
▼重い課題
 アフガン情勢が同国や世界の安全保障に及ぼす懸念と、事態改善に向けた課題は数え切れない。改めて主なものだけ挙げても、次のようなものがある。

(1)治安一層悪化の懸念: 外国軍による掃討作戦を重ねても、むしろタリバンの勢いは増している。経済建設の遅れから貧困層が拡大、タリバンにリクルートされる人も少なくない。
(2)治安部隊育成の遅れ: アフガン政府は自身の治安部隊育成に努めるが成果は限定的。指導者の人材不足、給与財源の不足、そもそも政府に対する信頼の欠如など課題は山積している。外国軍頼りからの脱却は容易ではない。現在国軍は約9万人、警察は約8万人(外国軍は米国の6.8万を含め10.4万人)。
(3)アフガン政府の統治能力の欠如: 汚職の蔓延など政権への信頼は低いまま。カルザイ政権の統治能力は低く、大統領選で一層ひどくなった。カルザイ大統領に代わる指導者も見当たらない。
(4)パキスタン情勢への飛び火の懸念: パキスタン内には多数のタリバンが流入。同国の治安を脅かしている。パキスタンの政治闘争も続き、ザルダリ大統領の統治能力は弱い。情報機関とタリバンの関係も根深い。底に今回の増派で→タリバンのパキスタン領流入→同国の一層の治安悪化の懸念も消えない。最悪の場合には、過激派へのパキスタンの核兵器の流入という悪魔のシナリオが指摘される。
(5)イラン情勢への影響: アフガン情勢混乱が続き、米国や欧州の余力がなくなれば、イランは強硬姿勢を取りやすくなる。欧米は核問題などでも対応をしにくくなり、地域の新たな不安定要因になる懸念がある。 

▼第2のベトナム化懸念
 アフガン情勢は、オバマ大統領の政治基盤にも大きな影響を与える。今回の決定は政権の浮沈を左右し、今後の展開次第では決定的なダメージになってもおかしくない。
 アフガンでの死者はイラクを上回るようになった。増派が治安改善に役立てばいいが、成果を示さずにずるずると進み、第2のベトナム化となる懸念も消えない。
 軍事支出も膨大で、ただでさえ金融危機後痛んでいる米財政を直撃する。
 大統領の支持率は低下が続き、ついには50%を割って不支持が支持を上回る調査も出てきた。
 英Financial Timesは社説で、オバマ大統領は「掛け金を2倍に増やした」と評した。成功すればいいが、失敗すればダメージも倍増する。政治的な賭けというのも、的を射た表現だろう。

▼世界の問題
 米世論調査でも増派への賛成・反対は拮抗している。一方、アフガン情勢の今後については悲観的な意見が多数だ。世論も展望を見いだせず、心配ばかりが募る。それがアフガン問題に対面する米国や世界の現状なのだろう。
 ただ、あえて建設的な材料を見出そうとすれば、イラク戦争時のように「世界が割れた」状況ではないこと。欧州同盟国もアフガン問題を世界の問題としてとらえ、米国との連絡は密だ。オバマ大統領は新戦略発表の前に、同盟国はもとより中国、インド首脳にも連絡。世界の問題として協議している(日本は外相レベルの連絡のみ)。
 世界はアフガン情勢をアキレス腱として抱えながら2009年の暮れを越そうとしている。

2009.12.5

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