◆米欧の金融規制強化案 2009.6.21
米国と欧州が新しい金融規制案を発表した。金融危機をもたらした現行の規制・監督体制の不備を正そうというもの。その行方は今後の金融システム、ひいては資本主義の在り方を左右しかねない重要な問題だ。
関係者は新規制が必要性では一致するが、それを「いかなる方法で」「どこまで」となると意見は対立する。議論の行方は曲折が予想される。
▼米国の改革案
米国の改革案はWhite Paperの形でオバマ大統領が17日発表した。
88ページの白書の要点は(1)これまで銀行、証券、保険に分かれていた大手金融機関の監督権限をFRBに集中(2)OTSなど一部監督機関を統廃合(3)財務省主導の協議会を設置(4)デリバティブ販売時の規制強化(5)金融消費者保護庁の設置など。
米国の金融監督体制は複雑に入り組んでいる。現在、銀行はFRBと通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)など、証券はSEC、保険は州当局が監督しているほか、S&LはOTSなどが責任を持つという体制。横の連携はいいとは言い難い。
金融機関の業務は1980年代以降自由化が進み、業態の垣根が消滅した。それにもかかわらず監督体制の改革は遅れ、これが金融危機の原因の一つになったと指摘される。
▼大恐慌以来の改革?
オバマ大統領は「砂上の楼閣だったリスク規制の新しい土台に他ならない」と強調。英Economistは「政府が市場経済の中により深く入り込み、過去30年の市場自由化を一部戻すもの」と評した。
改革実現となれば、1930年代以来の規制体系の大変革になる。米メディアも「大恐慌以来」という表現で報じる。
ただ、調整の行方は不透明だ。
リスク管理を重視する立場からは、「これだけで十分か」という指摘が出ている。改革案が実現しても、監督体制はなお複雑だ。
一方、市場機能を重視する立場の人々は、規制強化の行き過ぎを警戒する。米ウォール・ストリート・ジャーナルは「大統領は市場を守ると言いながら政府の支配を広げている」と警戒。議会にはFRBの権限拡大を警戒する見方もある。消費者保護拡大には、金融業界の強烈なロビーイングも予想される。
Economistも、「最終的にどうなるかはなお不確か」と指摘している。
▼EUの改革案
EUの改革案は18-19日に開催した首脳会議の共同宣言で表明した。
要点は、(1)欧州全域の金融動向を監視し、金融システム全体の危機を防止する欧州システム・リスク理事会(European Systemic Risk Board=ESRB)を設置(2)各国当局の情報を吸い上げる欧州金融監督システム(European System of Financial Supervisors=SFS)を設置、など。
EUは共通通貨ユーロを共有し(参加は16カ国)欧州中央銀行を持っている。それにも関わらず、金融監督は各国ばらばら。このため金融危機発生時にも、各国が連携して対応できなかった経緯がある。
首脳会議宣言は、共通監督機関設立に向けた計画を示そうというもの。ただ、中身はまだ詰まっていないところが多く、具体論はこれからだ。
▼同床異夢
各国とも適切な規制強化では一致する。しかし、汎欧州的な組織の強化を訴えるフランスなど大陸諸国と、金融センター・シティを抱える英国の利害は大きく異なる。英国のブラウン首相は汎欧州の新組織ができても「英国政府の規制政策が欧州の命令を受けることはない」と強調した。
大陸諸国内でも、細かい点になるとフランスとドイツなど各国の意見は異なる。
英Economistは「EUのインチキの銀行(規制)改革」(An EU fudge on bank reform)と皮肉を込めた見出しで報道。EU各国首脳はあいまいな銀行規制案で決定的な喧嘩を避けたと分析した。
米国も欧州も議論の先行きはまだ見えない。議論の行方は今後の世界経済にとって極めて重要だ。
20090621

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